どのようにユーザーインサイト(心理)を知るのか?

CXを高めるためにはユーザーインサイトを意識するのが重要である、とお伝えしましたが、どのようにユーザーインサイトを察知したり、絞り込んだりすればよいのでしょうか。

その答えは、先述したMVVにあります。

MVVを明確にしておけば、自ずとコンセプトである「どこよりも美味しいコーヒーを提供する」という自社の姿勢が固まります。これが自社の商品やサービスの核であり、コアコンピタンスの源泉として機能します。

コアコンピタンスは自社にしかない強み、つまりオリジナリティやクオリティの源となるものなので、ユーザーに「今日もあのカフェに行こうかな」と思わせる要素となるのです。

MVVには、大前提として「世の中はこういう課題を抱えているから、こんな変革を起こす」「私たちはこんな企業としてありつづける」というポジティブなものが設定されます。自社の商品やサービスを基軸として、それらに触れたユーザーにこんな変化を起こしたい、というポジティブなものも存在するでしょう。

裏を返せば、まだ自社を知らないユーザーは、MVVで設定した「解決すべき課題」や「自社商品やサービスによるポジティブな変化」を経験していない、とも言えます。先程のカフェの例で言えば、「仕事の合間に美味しいコーヒーを飲んでゆっくりしたい」というニーズを満たすお店がまだないので、ユーザーは「顕在化していない不満」を抱えているということです。

MVVを設定して「顕在化していない不満」の姿を描き出せば、ユーザーのインサイトが浮かび上がります。そのインサイトを満たせるようなCXをデザインすることで、効果的なCXの設計が可能になるのです。

CXの企業事例

CXのデザインについては業態や業種によってさまざまな方法があります。ここでは、CXのデザインに最新のテクノロジーを活用している企業例を紹介します。自社のCXデザインの参考にしてみてください。

USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)

大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、アプリを使ってゾンビを捕獲する、という施策を通してCXの向上に努めています。

「ゾンビ・ハンティング」と銘打ってリリースされたアプリをダウンロードしてUSJに入場すると、最新のGPS技術によってパーク内のゾンビの位置が分かる仕組みになっているのです。パーク内でゾンビに遭遇したら、アプリの指示に従ってゾンビを捕獲・収集。全部で20種類存在するゾンビのうち9種類のゾンビを収集して、コンプリートを目指します。

秋のシーズナルイベント「ハロウィン・ホラー・ナイト」の一環として行われたこの施策のポイントについて、USJの高橋広報室長は「ゾンビを見て逃げ回るだけでなく、アプリのゲームとしても楽しめる、これまでとは全く異なる体験をゲストの方々にお楽しみいただければ」と語っています。

遊園地に定着していた「アトラクションを楽しむ場所」という概念を打ち壊し、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」そのものとテクノロジーを融合させて新たな価値を創出した好事例ですが、こうした発想を生み出すには「商品・サービスありき」のCXではなく、「CXのための商品・サービスである」という考え方が重要です。
USJで「ゾンビ・ハンティング」 アプリを使ってゾンビを捕獲する初の試み

本質的なCXデザインによって企業の価値を高める

CXは非常に奥が深く、何をどこまで取り組めばよいのか分からなくなってしまいがちです。しかし、いま一度自社のMVVに立ち戻ることで、どんなユーザーにどんな価値を提供したかったのかが明確になります。そこから改めてCXのデザインを行いましょう。

本質的なCXの向上が果たせれば、集客や業績のアップに加えて、リピーター獲得、ブランディングにも繋がります。ぜひこの機会に、自社のCXデザインを見直してみましょう。