長期化するコロナ禍で、政府は「在宅勤務7割」の再要請の考えを示しています。また、IT最大手のGoogle社は「在宅勤務を2021年6月まで延長」と発表。引き続きテレワークに注目が集まり、ビジネスパーソンの「オフィス離れ」が加速していくことが考えられます。その一方で、テレワーカーは同僚や上司の顔が見えない分、コミュニケーションのもどかしさなど様々な不安やストレスを抱えていることも明らかになっています。

*そんな課題を解決するために今、注目を集めているのが「仮想オフィス(バーチャルオフィス)ツール」です。*今回の記事では、長期化するテレワーク環境に対応するビジネスパーソンに向けて「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」とはどんなものなのか、その導入によりどんな課題解決をできるかなど、具体的なツールも挙げながらお伝えします。

参考:
西村経財相「在宅勤務を7割に」 経済界に再要請へ

グーグル、新型コロナ対策でオフィス再開を2021年7月まで先送り

テレワーカーは様々な不安を抱えている

パーソル総合研究所は2020年6月、「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」というインターネット調査の結果を発表しました。
次に掲げる[図1]は、その調査結果から抜粋したものです。

[図1]テレワーカーが抱える不安
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画像引用:パーソル総合研究所、テレワークに関する不安感や孤独感について調査結果を公表|パーソル総合研究所

テレワーカー本人が抱く不安1位「相手の気持ちが察しにくい」

この調査では、「テレワーカーの不安」に関する設問として12項目を用意。調査の結果、いずれの項目についても30~40%程度の人が不安を抱えていることが明らかになりました。

その中でも特に不安スコアが高かった項目は

  • 1位「相手の気持ちが察しにくい」39.5%
  • 2位「仕事をさぼっていると思われないか」38.4%

でした。

テレワークではSlackやChatworkといったビジネスチャットツールや、メールを通して、文字ベースでコミュニケーションを取る場面が多いものです。しかし、対面ではないため、オフィスで席を並べている時と比べてコミュニケーションにいくつかの障壁が生じます。まず、相手の姿が見えないので、急ぎの要件を話しかけたくてもチャット画面の向こうで在席しているかどうか分からない。もしかしたら、別の人とのミーティングに入っている最中かもしれず、すぐにはレスポンスをもらえない状況かもしれません。もし、たまたま在席していてチャットで速くレスポンスを得られたとしても、表情も見えず、声のトーンも分からない。このような背景から、「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくい」という不安やストレスが生まれるのです。

そして、対上司のコミュニケーション、自身の日頃の勤務態度の評価という面でも同様に障壁が生まれます。勤務時間中にきちんとパソコンの前に在席して、作業にコミットしていても、非対面ではその姿を同僚や上司に確認してもらうことができません。裏を返せば、勤務時間中にパソコンから離れて作業を頻繁にさぼっていたとしても、アウトプットさえきちんとしていれば同僚・上司の高評価を得るケースも出てくると考えられます。ただし、これをどのように評価するかは社内の評価制度にもよります。

しかし、テレワークに移行し始めたばかりの今、社内でテレワークに対応した評価制度の整備が追いついていない企業も多いのではないでしょうか。そんな中で、*真面目にコツコツと仕事を進めようとする人ほど「姿が見えない分、上司から、さぼっていると思われないだろうか?」「在宅勤務でも、毎日の働きぶりを正当に評価してもらえるだろうか?」という不安・ストレスに繋がっていくのです。*これは、テレワーカーだけでなく上司の側も「在宅勤務でも公正に評価するためには、どうしたらいいか?」ともどかしさを感じている部分でもあります。

テレワーカーの孤独感

[図2]テレワーカーの孤独感

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[図3]テレワークの頻度と孤独感
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画像引用:パーソル総合研究所、テレワークに関する不安感や孤独感について調査結果を公表|パーソル総合研究所

同じ調査の中で「テレワーカーは孤独感を抱えている」という実態も明らかになっています。テレワーカーで「孤立していると思う」と回答した人は28.8%で、テレワークの頻度が高いほど孤独感は高くなるという比例関係が認められました。

ここで言う「孤立」「孤独感」とは具体的に言うと、前述したように「非対面コミュニケーションのもどかしさ」が背景にあると考えられます。オフィスで同僚・上司と席を並べていない分、自分は疎外されていないか。文字ベースで表情や声のトーンも分からないコミュニケーションの中で、自分とは仕事がやりにくい、頼みにくいと思われていないか。そういった不安・ストレスが「孤立」「孤独感」に繋がっていくのです。

テレワークのコミュニケーションをアシストする「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」に注目

テレワークによる社員間のコミュニケーション不足が危惧される中、今、注目が集まっているのが「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」というものです。

「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」とは?

「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」とは、離ればなれで仕事をする社員間のコミュニケーションをアシストするツールです。

*ブラウザを開いてバーチャルオフィスにログイン。まるでゲーム画面のように、各人のデスク、ミーティングスペース、会議室など仮想オフィスのレイアウトがビジュアルで表示されます。*各デスクや部屋に在席している社員は、名前とアバターで表示。「今あそこの会議室にいる◯◯さんに話しかけてちょっと相談したいなぁ」という、まるでオフィスで席を並べているようなコミュニケーションをバーチャルで実現。テレワーカーの疎外感や孤独感、コミュニケーションのもどかしさを解消し、社員間のチームワークを高めるためのデジタルツールです。

「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」のメリット

勤務中は常時ログインしておくことで、話しかけたいときには同僚の在席状況や、今、会議中か? 話しかけても良い状況か? というステータスを可視化でき、リモートワークのコミュニケーションの障壁を取り払ってくれることが最大のメリットです。オンライン会議もこのツール上で完結し、資料共有・画面共有もできるため、別途ZoomやMicrosoftTeamsといった会議ツールを立ち上げることが不要になります。

昨今、会社によっては「話しかけたい時に、同僚にいつでも話しかけられるように」という目的で例えばZoomを繋ぎっぱなしにしているところもあることでしょう。

しかしZoomには次のような弱点もあります。

  • 「ブレイクアウトルーム」といって、会議に参加していたメンバーをそれぞれ別々のグループに小分けにする機能がある。しかし、「ブレイクアウトルーム」の開始や、参加者の新規追加・新規振り分けなどは、元の会議のホスト(管理者)しかできず、管理者の負担が大きい。
  • 「ブレイクアウトルーム」はグループごとに完全に分割されるため、その会議外の状況がまったくわからなくなる。
  • 全館放送のように、全グループへの一括アナウンスができない。
  • Zoomでミーティングを用意すると、IDを指定するなどしていちいち出入りしなければいけない。
  • Zoomのセキュリティ脆弱性も指摘されており、Zoomの利用を禁止する企業も増えてきている。

こういった、一般のビデオ会議システムの弱点をもカバーし、*「勤務時間中にはチーム全体で常時ゆるくつながっておき、話しかけたいときには気軽に目的の相手とコンタクトを取れる。自分の作業に没頭したいときには、干渉されない」*といった仮想オフィス環境を実現できるものが「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」なのです。

「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」のデメリット

現状、各社が提供する「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」は、10人〜20人程度の規模のチームに対応したものが多く見られます。100人以上の規模のチームとなると、キャパシティが足りないところがデメリットだと言えます。

参考:RemoバーチャルオフィスをZoomの代わりに試用してみた #creationline #リモートワーク #テレワーク #在宅勤務 #バーチャルオフィス #stayconnected|CREATIONLINE,INC

「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」おすすめ3選

ここからは、現状、日本国内で利用できる「バーチャルオフィス(仮想オフィス)」ツールの中から、おすすめのプロダクトを3つご紹介します。

「Sococo」

「Sococo」は、都内に拠点を構え、テレワーク・在宅勤務のコンサルティングを手掛ける「株式会社テレワークマネジメント」が提供する「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」です。

[図4]Sococoの利用イメージ
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画像出典:Sococo|オフィスでも在宅勤務でも『一緒に仕事』ができる

オフィスにいるメンバーと在宅勤務中のメンバー、さらに他の事務所や店舗、営業先など、同じ空間にいないメンバー同士が、声を掛けあったり、会議に呼び出したりと、自分のアバターを操作しながら文字や声、映像で、簡単にコミュニケーションを取ることができます。タブレット端末やスマートフォンなどを持って外出している営業パーソンも、外出先からつながることができます。

バーチャルオフィスのレイアウトは、用途や人数に合わせて30種類以上の中から選ぶことが可能。また、アプリケーションのインストールは不要で、対応ブラウザであるGoogle Chromeがあればすぐに利用できます。ゲストの招待も、URLを渡すだけでWEB会議に招待でき、ユーザー登録は必要ありません。

参考:Sococo|オフィスでも在宅勤務でも『一緒に仕事』ができる

「Remo Virtual Office」

「Remo Virtual Office」は、「Remo.co」社が提供する「バーチャルオフィス(仮想オフィス)」ツールです。公式Webサイトは英語ですが、日本語のチュートリアルビデオも複数公開されており、7日間の無料体験期間があります。

[図5]「Remo Virtual Office」の画面イメージ
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引用:RemoバーチャルオフィスをZoomの代わりに試用してみた #creationline #リモートワーク #テレワーク #在宅勤務 #バーチャルオフィス #stayconnected

勤務時間開始とともに、自分のチームのワークスペースにログインすると、[図5]のイメージのように、いくつかの部屋が表示されます。これらの部屋の表示名は、日本語で自社の好きなものに変更可能。また、同僚に話しかけられても良いかどうか自分のステータスを切り替えることができます。そのステータスを見て、目当ての同僚を見つけて部屋に入り、相談やミーティングを簡単に開始することができる、というものです。

部屋は、使用状況に応じて鍵を掛けておいたり、ワンクッション挟みたいときには「ノックしてから入室してもらう」というステータスに設定しておくことも可能。ビデオや音声のオン、オフも切り替えることができ、ビデオ会議ツールと同じような機能も備えています。

参考:
Remo Virtual Office - Remote collaboration has never been so simple.

RemoバーチャルオフィスをZoomの代わりに試用してみた #creationline #リモートワーク #テレワーク #在宅勤務 #バーチャルオフィス #stayconnected

「クラウドオフィスRISA」

「クラウドオフィスRISA」は、大阪に拠点を構える「株式会社OPSION」社が提供している「バーチャルオフィス(仮想オフィス)ツール」です。

[図6]「クラウドオフィスRISA」の利用イメージ
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引用:RISA | リアルでの不都合を、オンラインで理想に。

[図6]で見られるように、あらかじめ用意された3Dアバターの中から自分を示すアバターを選んで、勤務時間になったらブラウザを開いて「バーチャル出勤」をします。アプリのインストールは不要で、ブラウザはGoogle ChromeとFireFoxに対応。音声通話をしたいときにはボイスチャット、そして、音声通話ができない環境のときにはテキストチャットができ、テキストチャットの内容についてはアーカイブで残すことができます。

また、画面共有もでき、オンライン会議のときは互いの手元のPC画面を見せ合いながらミーティングができます。さらに、今後さまざまな機能を追加予定とのこと。タスク管理機能、タイムカード機能、アバターのカスタマイズ、モバイル通話、ゲスト招待、イベント主催機能といったものが公式Webサイト上で予告されており、ますますの機能充実に期待できそうです。

参考:RISA | リアルでの不都合を、オンラインで理想に。

毎日の働き方を「ニューノーマル」にアップデートする時

長期化するコロナ禍の中で、在宅勤務はもはや「新常態(ニューノーマル)」のひとつだと言えるでしょう。企業側も、そこで日々働くビジネスパーソン側も、毎日の働き方そのものをニューノーマルに適応させるべくアップデートしていく必要がありそうです。

今回の記事では、在宅勤務のコミュニケーションのストレス・不安を解決する新たなツール「バーチャルオフィス(仮想オフィス)」ツールについてご紹介しました。もし、自社の在宅勤務対応の中で、毎日のコミュニケーションに問題を抱えているのであれば、こういったツールの導入を検討してみるのも良いかもしれません。

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