自社のビジネスデータを活用する際、シェアの高いBIツールを導入したいと考えた方も多いのではないでしょうか。

すでに多くの企業で導入されているBIツールなら、使いやすさやセキュリティなどの面で信頼できます。ただし、シェアが高いBIツールが必ずしも自社に合うとは限らないため、各ツールの特徴を把握したうえで検討することが大切です。

この記事では、BIツールのシェアや市場動向、導入実績数の多いBIツール7選、BIツールを選ぶ際の注意点について解説します。企業のビジネスデータを分析し、業務に役立てたい方はぜひ参考にしてください。

BIツールとは

BIツールの「BI」とは、「Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)」の略語で、ビジネスに関するデータを分析して経営に活かすことを表します。そして、BIを効率よく実行するために役立つシステムがBIツールです。

BIで分析対象となるデータには、顧客情報や会計情報、商品・サービスに関する情報など、数多くの種類が含まれます。各種データは保存されている場所や形式が異なり、情報量も膨大なため、そのままの状態では活用が難しい状態です。

BIツールを使えば、複数のデータを一元管理し、分析結果を経営に活かせます。BIツールには、レポートやグラフを簡単に作成できる機能もあるため、必要なデータを効率良く把握することが可能です。

経理部門やマーケティング部門、営業部門、企画部門などさまざまな場面でBIツールが活用できます。

BIツールのシェアと市場動向

ビッグデータの活用が普及してきた最近では、BIツールを導入する企業が増えている傾向です。BIツールは国内外のさまざまなメーカーによって開発・販売されていて、全体的な市場規模が拡大しています。

BIツールのシェアや市場動向に関する情報は以下の通りです。

BIツールを含むBA市場は拡大傾向

BAとは「Business Analytics(ビジネスアナリティクス)」の略語で、ビジネス情報の分析を表します。IT業界専門の調査会社であるIDCジャパンによれば、BIツールを含むBA市場は、2019年時点で前年比10.0%増、1兆799億5,100万円と推定されました。

また、BA市場の2019年から2024年までの年間平均成長率は11.7%で、2024年時点の市場規模は1兆8,765億7,400万円になると予測されています。

参考:国内BDAテクノロジー/サービス市場予測を発表

現在のシェアではオンプレミス型が主流

BIツールは、ビジネスデータを保存しておく場所の違いによって、「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類に分けることが可能です。

データの保存やソフトウェアのインストールを自社のサーバー上で行うタイプのBIツールは、オンプレミス型と呼ばれます。一方、クラウド型のBIツールではデータが外部のサーバーに保存され、ツールの利用時にログインが必要です。

IDCジャパンの発表によれば、2019年におけるBA市場では、オンプレミス型BIツールの需要が伸びています。

参考:国内BDAテクノロジー/サービス市場予測を発表

今後はクラウド型BIツールのシェアが伸びる見込み

BIツールにおける現在の主流はオンプレミス型であるものの、今後はクラウド型もシェアが伸びる見込みです。情報・通信分野の市場調査を行うデロイトトーマツミック経済研究所によれば、2024年にはクラウド型のシェアがオンプレミス型のシェアを追い抜くことが予測されています。

参考:ビジネスアナリティクス市場展望2020年度版

BIツールは社内のデータを扱う都合上、自社サーバー内で完結できるオンプレミス型が最初にシェアを伸ばしました。しかし、その後にクラウド型でもセキュリティ性が高く使いやすいBIツールが登場したことで、クラウド型のシェアが年々増えています。

シェアの高いBIツール7選

BIツールにはさまざまな製品がありますが、ツール別のシェアが分かる調査データは公表されていません。しかし、BIツールを提供する各社のWebサイトでは、これまでの導入実績数を確認することが可能です。

そこで、以下ではWebサイトに記載されている導入実績数が多い7つのBIツールについて、特徴を紹介します。

Zoho Analytics(導入実績500,000社以上)

Zoho Analytics(ゾーホーアナリティクス)は、ゾーホージャパン株式会社が提供するBIツールです。オンプレミス型とクラウド型の両方が用意されています。

Zoho Analyticsの特徴は、GoogleドライブやDropboxなどのクラウドサービスや、複数のデータベースと連携して使える点です。また、分析データを簡単にグラフ化できる機能や、質問するだけで適切なレポートを出力してくれるアシスタント機能もついています。

Zoho Analyticsで利用できる各プランの料金や主な機能は以下の通りです。

プラン 料金(税別) ユーザー数 主な機能
ベーシック(クラウド型) 月額2,700円(年間払い) 2人 ・50万行までのデータ処理、レポートとダッシュボード、100以上のデータコネクター など
スタンダード(クラウド型) 月額5,400円(年間払い) 5人 ・100万行までのデータ処理、ベーシックプランまでの全機能、1時間ごとの同期処理、データバックアップ など
プレミアム(クラウド型) 月額13,500円(年間払い) 15人 ・500万行までのデータ処理、スタンダードプランまでの全機能、ロゴのリブランディング、非公開リンク
エンタープライズ(クラウド型) 月額53,460円(年間払い) 1人 ・2万5,000行までのデータ処理、10個までのデータテーブル、5個までのワークスペース
個人(オンプレミス型) 無料 1人 ・2万5,000行までのデータ処理、10個までのデータテーブル、5個までのワークスペース
プロフェッショナル(オンプレミス型) 1ユーザーにつき月額3,600円(年間払い) 5人~ ・無制限のデータテーブル、レコード、ワークスペース、データ共有 など

参考:BIツール各種利用料金プラン|Zoho Analytics

利用ユーザーを追加する場合、1人につき月額960円(税別)がかかります。クラウド型では15日間、オンプレミス型では30日間の無料お試しが可能なため、機能や操作性を確認したい場合は無料お試しを活用しましょう。

Tableau(導入実績70,000社以上)

Tableau(タブロー)は、タブローソフトウェア社が提供するBIツールです。オンプレミス型とクラウド型の両方が用意されています。

Tableauの特徴は、直感的な操作でデータ分析ができる点です。また、さまざまな形式のデータを読み込みでき、分析データを簡単に共有する機能も充実しています。

Tableauで利用できる各プランの料金や主な機能は以下の通りです。

プラン 料金(税別) ユーザー数 主な機能
Tableau Creatorライセンス(クラウド型、オンプレミス型) 1ユーザーにつき年額102,000円 1人~ ・データの分析やレポートの作成(Tableau Desktop、Tableau Server)、ダッシュボードの保存、データ自動更新(Tableau Server)、データの形式変換などの処理(Tableau Prep Builder)
Tableau Explorerライセンス(クラウド型、オンプレミス型) 1ユーザーにつき年額51,000円 5人~ ・レポートの作成(Tableau Server)、レポートの編集
Tableau Viewerライセンス(クラウド型、オンプレミス型) 1ユーザーにつき年額18,000円 100人~ ・作成されたレポートの閲覧

参考:データ活用を支援する価格体系

Tableauを利用する際は、Creatorライセンスが最低1つ必要となります。ExplorerライセンスやViewerライセンス単体での購入はできないためご注意ください。

Fine Report(導入実績15,000社以上)

Fine Report(ファインレポート)は、帆軟ソフトウェア株式会社が提供するBIツールです。オンプレミス型のソフトウェアとなっています。

Fine Reportの特徴は、地図を含むさまざまな形式のデータをグラフ化して分析できる点や帳票作成・IoTなど独自のダッシュボードが用意されている点です。また、スケジューラなど業務を効率化するための機能もついています。

Fine Reportで利用できる各プランの料金や主な機能は以下の通りです。

プラン 料金(税別) ユーザー数 主な機能
Fine Report(オンプレミス型) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) ・多様な形式のデータ入力および分析、独自のダッシュボードを用いたレポート作成、モバイル端末でのデータ閲覧 など

参考:Fine Report

Yellowfin(導入実績10,000社以上)

Yellowfin(イエローフィン)は、Yellowfin Japanが提供するBIツールです。オンプレミス型とクラウド型の両方が用意されています。

Yellowfinの特徴は、データの入力から分析、共有までがスムーズに行える点です。また、課題に対する原因分析を自動で行ってくれる「自動インサイト機能」もついています。

Yellowfinで利用できる各プランの料金や主な機能は下記の通りです。

プラン 料金(税別) ユーザー数 主な機能
エンタープライズ向け(クラウド型、オンプレミス型) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) ・データの入力、変換、分析、ダッシュボードによるデータの可視化、自動インサイト機能 など
組み込みビジネス向け(クラウド型、オンプレミス型) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) ・データの入力、変換、分析、ダッシュボードによるデータの可視化、自動インサイト機能、開発者向けのAPIおよび拡張機能 など

参考:Yellowfin 価格

Dr.SUM(導入実績6,400社以上)

Dr.SUM(ドクター・サム)は、ウイングアーク1st株式会社が提供するBIツールです。オンプレミス型とクラウド型の両方が用意されています。

Dr.SUMの特徴はインメモリエンジンによる超高速集計で、提供会社の計測データによれば10億件ものデータを1秒台で集計することが可能です。また、ユーザー数によらずライセンス料金が一定であることもDr.SUMのメリットとなっています。

Dr.SUMで利用できる各プランの料金や主な機能は下記の通りです。

プラン 料金(税別) ユーザー数 主な機能
Dr.SUM(オンプレミス型) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) 無制限 ・データの蓄積、分析、超高速集計、データのメンテナンス など
Dr.SUM Cloud(クラウド型) Smallライセンス 初期費用50万円、月額25万円 無制限 ・1テーブルにつき2,000万件までのデータ蓄積、分析、超高速集計、データのメンテナンス など
Dr.SUM Cloud(クラウド型) Mediumライセンス 初期費用50万円、月額50万円 無制限 1テーブルにつき1億件までのデータ蓄積、分析、超高速集計、データのメンテナンス など
Dr.SUM Cloud(クラウド型) Largeライセンス 初期費用50万円、月額200万円~ 無制限 ・データの蓄積、分析、超高速集計、データのメンテナンス、個別のニーズに合わせた機能

参考:Dr.SUM Cloud

Pentaho(導入実績2,000社以上)

Pentaho(ペンタホ)は、ペンタホ社が提供するBIツールです。オンプレミス型とクラウド型の両方が用意されています。

Pentahoの特徴は、プログラミング不要で各種データの取り込みや加工処理を定義できる点です。また、さまざまなデータを抽出・統合する機能、対話的な処理でデータを分析するためのOLAP機能もついています。

Pentahoで利用できる各プランの料金や主な機能は以下の通りです。

プラン 料金(税別) ユーザー数 主な機能
Pentahoサブスクリプションライセンス(オンプレミス型・クラウド型) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) ・データの入力、加工、統合、ダッシュボードによるデータの可視化、データのOLAP分析、分析結果のレポート出力 など

参考:Pentaho製品情報

DOMO(導入実績1,000社以上)

DOMO(ドーモ)は、Domo社が提供するBIツールです。クラウド型のサービスとなっています。

DOMOの特徴は、蓄積したデータに基づく分析結果やレポートを、モバイル環境からでもリアルタイムに確認できる点です。また、操作が簡単なことや、クラウド型のためサーバーメンテナンスが不要な点もメリットとなっています。

DOMOで利用できる各プランの料金や主な機能は下記の通りです。

プラン 料金(税別) ユーザー数 主な機能
DOMO(クラウド型) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) 公式サイト上に記載なし(要問合せ) ・・データの入力、分析、・ダッシュボードによるデータの可視化、自動レポート機能、500種類以上のデータコネクター、モバイルアプリによる閲覧、ユーザー同士での情報共有 など

参考:製品|Domo

DOMOのライセンスにはトライアル版があり、基本的な機能を無償で試すことができます。

BIツールを選ぶ際の注意点

BIツールには数多くの種類があるため、自社に合うものを見つけることが大切です。BIツールを選ぶ際の注意点として、次の3つに気を付けましょう。

シェアの高いBIツールが自社に合うとは限らない

シェアの高いBIツールは信頼性が高いものの、自社にとって最適であるとは限りません。機能が多すぎたり、高度な知識が求められたりするBIツールは、導入しても使いこなせないリスクがあります。

また、導入実績数が少なくても、自社の業種向けに特化して開発されたBIツールなら、便利である可能性が高いです。シェアの高さだけでなく、機能面も含めてBIツールを選びましょう。

導入目的に合わせてBIツールを選ぶ

BIツールを選ぶ際は、導入する目的を明確にすることが重要です。「営業効率を高めるたい」や「店舗ビジネスにおける売上予測を立てたい」など、何のためにBIツールを導入するかをはっきりさせましょう。

たとえば、店舗ビジネスにおけるデータ分析が目的の場合、各店舗に設置されたPOSレジと連携しやすいBIツールが適しています。また、営業部門の社員が自力でデータを活用できるようにしたい場合は、レポート機能が使いやすいBIツールが適切です。

導入目的に合わせてBIツールを選び、データ分析を日々の業務に役立てましょう。

コストパフォーマンスを考慮する

BIツールの費用は、利用するユーザー数に応じて課金されるタイプと、ユーザー数の制限がないタイプがあります。そのため、多人数でBIツールを使用する場合には、ユーザー数の制限がないタイプのほうがコストパフォーマンスは高くなる傾向です。

また、BIツールの導入にかかるコストと、導入によって得られる経済的なメリットのバランスも考慮する必要があります。BIツールの活用で収益性がどの程度高まるかシミュレーションしたうえで、適切な費用感のツールを選びましょう。

まとめ

BIツールを導入すれば、自社のさまざまなデータを分析し、経営に活かすことが可能です。BIツールの市場は拡大傾向で、現在はオンプレミス型のシェアが高くなっています。今後は、クラウド型のシェアも伸びていく見込みです。

導入実績数の多いBIツールとして、Zoho AnalyticsやTableauなどが挙げられます。ただし、BIツールを選ぶ際は、シェアの高さだけでなく、導入目的やコストパフォーマンスも考慮することが重要です。

自社のビジネスデータを活用したい方は、この記事でご紹介した内容を参考に、BIツールを選んでみてはいかがでしょうか。

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