今回は、人気女性旅行ガイドブック『ことりっぷ』のWeb版・アプリ版を立ち上げた平山氏にWeb媒体へ展開した経緯とコンテンツマーケティングにも通ずるコンテンツ制作におけるお話を伺いしました。

平山氏のプロフィール

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平山 高敏
インターネット広告代理店の企画営業を経て、2011年に昭文社へ入社。2013年のことりっぷWEBの開設時からコンテンツ企画、マーケティング戦略、SNS戦略、2B案件支援などWeb事業全般を統括。2015年にはユーザー参加型のアプリの立ち上げに携わり、メディアの枠を越えたコミュニティ戦略全般 を担う。

累計1200万部の大ヒットセラー『ことりっぷ』の作る世界観とは

ferret 飯髙
本日は、よろしくお願い致します。早速ですが、『ことりっぷ』についてお伺いしてもよろしいですか?

平山氏
よろしくお願いします。ことりっぷは2008年に創刊された女性向けの旅行ガイドブックです。メインの読者層は20代~30代の働く女性。創刊から8年が経ち、1200万部を売り上げるヒット商品になりました。

最近ではユーザーがInstagramの投稿で「#ことりっぷ」とハッシュタグを付けて投稿するケースもよく目にするようになりました。
「ことりっぷ」というワードがただの書籍名ではなく、「雰囲気」を表す言葉として定着してきています。つまりはブランド化してきた、ということになると思います。

ことりっぷは、旅先での観光情報として、日本各地の人気観光スポットをはじめ、ご当地のグルメやオシャレなカフェ・スイーツといった女性目線での切り口が人気を呼んでいます。最近では、“ことりっぷらしさ”というブランドを活かして旅行とは異なる業界の企業ともタイアップを組んで新たなアプローチも行っているとのことです。

ferret 飯髙
ことりっぷ創刊のキッカケはなんだったのでしょうか?

平山氏
元々は社内の女性社員の声から生まれたものです。その声を落とし込んで具現化したものがことりっぷで、「小冊子のようなサイズ感で持ち運びやすい」「表紙もシンプルで可愛らしい」「誌面にはホワイトスペースを多く設けて読者自身が書き込んだりできる」など徹底的に女性目線での工夫を凝らしました。

書店に並んだ時にも書店員さんが、「こういうのが欲しかったんです!」とおっしゃってくれました。つまり、今まであったガイドブックにない新たな市場を開拓したということです。

『ことりっぷWEB』 立ち上げ当初は問題だらけ

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ferret 飯髙
Web版・アプリ版をはじめた理由は何だったのでしょうか?やはりユーザー行動の変化とかでしょうか?

平山氏
いくつか理由はあります。ひとつは仰られたように、ユーザーの行動の変化はあると思います。創刊から5年も経てばターゲットとしているユーザー自身のマインドの変化もありますし、そもそもメディア界隈もがらっと変わっていました。Twitterが流行り始めたのは創刊時の2008年以降ですから、その後5年でSNSが当たり前になってきたこと、まとめサイトの勃興で情報の取得の仕方も変わってきたことなどユーザーを取り巻く環境も変わったと思います。

そういった変化に対してガイドブックとしてどうしていくべきか、というひとつの解の中に必然的にWebの戦略が出てきました。ただ、そういう外的な要因よりも他の要因の方が強かったですね。それは、先ほどお話しした“らしさ”です。2013年当時、ことりっぷは創刊から5年が経っていて、発行部数も1000万部に届くガイドブックに成長していました。「ことりっぷ」の認知が上がるにつれ、広告案件、コラボ案件などが増えてきていた状況だったんです。

つまり、ことりっぷ“らしさ”を活かすようなブランドビジネスの案件が増えてきた時期でもあったんですね。この“らしさ”というのはブランド化する上ではチャンスではあるのですが、一方で危惧もしていました。

そもそも“らしさ”って何だろうと。
話を聞いていると編集部員や営業、更には代理店まで、それぞれにことりっぷ“らしさ”があり、創刊時より幅が広がっていたんです。

理由としては簡単で、創刊から5年が経った当時は、ユーザーの声を聞くことをほとんどしていなかったんですね。だからまずはWebメディアを立ち上げ、ことりっぷが発信し、ユーザーの反響を見る中で本当に求められるものは何かを再検証していくことと、日常的に発信することで潜在層へのアプローチも行っていこうと思ったんです。

さらに、実際にユーザーとコミュニケーションを図る手段として、2015年3月にユーザー投稿型のアプリも立ち上げました。その中で投稿していただいているユーザーさんに直接お会いして定期的にインタビューすることが“らしさ”を見定めるヒントになっています。

2015年3月にリリースしたことりっぷアプリ版は、ことりっぷ編集部が日々発信する旅の魅力を伝える記事に加え、ユーザー自身が旅先の写真を投稿するCGM機能も備えた旅メディア。ことりっぷ内でのインフルエンサーであるスターユーザーや、地域に特化したローカル情報を発信するローカルメディアと連携することでガイドブックには載っていないコアな情報も発信しています。

ferret 飯髙
これまで紙だったところから、Web版・アプリ版を開始するにあたって問題はありましたか?

平山氏
正直、問題だらけでした(笑)。編集部もWebメディアを運営するのは初めてでしたから。どうしても書き方がガイドブックの延長線上になってしまうんです。ガイドブックはスポットの情報などを不足なく説明することがまず第一なのですが、Webメディアは追体験ができないと読んでもらえません。そのあたりの違いを説明するところから始めました。

また開設当初は編集スタッフも紙の編集とかけもちをしていましたので、とにかく1日2本記事を出すことだけで精いっぱいだった気がします。営業の方々に対しても、そもそもWebメディアの広告にはどういうものがあるのか、というところから説明をする必要がありました。

ferret 飯髙
ferretと一緒ですね(笑)。弊社も私が入るまではメディアを立ち上げられる人がいなく、経験ある人間は私一人だったので色々と苦労はありました。
そんな状況からどうやってここまでWeb版を作り上げたのでしょうか?

平山氏
とにかく、いろんな人を巻き込みましたね。編集部員の旅のコンテンツを発信していくことへの熱量はほんとにすごいんですね。僕の知らないことやアイデアなんかもどんどん出てくる。私としてはその熱量をインターネット広告代理店でメディアを見てきた知見から、どういうコンテンツがWebで読んでもらえるのか、それを踏まえてことりっぷではどういう構成にすべきかを一緒に考えていきました。

記事がヒットすればそれを数字とともに共有してましたね。コンテンツがユーザーに届いている実感をもってもらえるようにするためです。そういう積み重ねがあって、Webでもできるのではないか、という意識にも繋がっていったような気がします。営業に関しては定期的な勉強会を重ねていって組織全体のリテラシー向上に努めました。

ferret 飯髙
個人的にも共感するところが多いお話ですね(笑)。