動画を活用した商品やサービスのプロモーションは多くの企業が取り組んでいる分野と言えますが、単にお金や時間をかければ効果が得られるわけではないことは課題の一つです。お金や時間によるコスト面での導入ハードルが高い動画制作の中で、プロではなくても簡単に動画が作れるカジュアル動画に注目が高まっています。

そこで『ferret』の運営元、株式会社ベーシック代表の秋山が、伸び続ける動画市場に対してマーケティング支援を行っているアライドアーキテクツ株式会社、プロダクトカンパニー SaaS本部 本部長の藤田佳佑氏にインタビューいたしました。

今回はインターネット広告に動画を活用したい方に向けて、初心者の方でもクオリティの高い動画が作れる動画制作支援ツール『LetroStudio』について語っていただきました。動画広告の成果最大化を目指すカジュアル動画の取り組みにも注目です。

プロフィール

藤田佳佑(ふじた けいすけ)氏
アライドアーキテクツ株式会社 プロダクトカンパニー SaaS本部 本部長
2013年アライドアーキテクツに入社。自社サービスやソリューション営業に3年ほど従事し、2016年にSMB営業部門の部長に就任。2019年よりSaaS営業部の部長として、SaaSプロダクト『Letro(レトロ)』『モニプラファンブログ』を扱う営業部門の統括を担い、2020年以降新たにリリースされた『LetroStudio』を含め、3プロダクトを扱うSaaS本部 本部長としてビジネスサイドの責任者を担う。
秋山 勝(あきやま まさる)
株式会社ベーシック 代表取締役社長
「問題解決の集団として、情熱を妨げる世の中のあらゆる問題解決をやり抜き、多種多様な企業が強みに集中できる世界を創造する」をミッションに、オールインワン型BtoBマーケティングツール「ferret One」、フォーム作成管理ツール「formrun」のSaaS事業と国内最大級のWebマーケティングメディア「ferret」のメディア事業を展開。

アライドアーキテクツのプロダクト思想とは

aride_3.jpg

秋山:
本日は現在の動画市場における御社サービスのポジションや動画制作についてお話を伺います。最初に事業活動についてお聞かせください。

藤田氏:
アライドアーキテクツ株式会社はマーケティングDXを支援している会社です。具体的にはマーケティングDXを加速するためのSaaSツール、デジタル人材によるソリューションを提供するなかで、*作りたい動画を誰でも15分で作れる『LetroStudio』*のサービス展開を行っています。

秋山:
御社はこれまで様々な事業をやられていますが、『LetroStudio』はどのような思想でプロダクトを作られたのでしょうか?

藤田氏:
動画クリエイティブ制作業務の過度な負担を解消することで、お客様の事業成長を実現したいと考えて『LetroStudio』を作りました。

弊社は、2018年頃までSNS運用コンサルティング事業や広告代理事業を主力の事業とし、これらの事業の中で、デジタル施策やSNS施策で発生している膨大なクリエイティブ制作業務を経験しました。特に広告代理事業で、広告クリエイティブ制作業務の労働集約度合いを知っていましたし、せっかく作ったクリエイティブが摩耗して数週間で不要になってしまうことも体験しています。

また、お客様と会話をする中で「本当は自分たちでも動画を作りたい」「でも動画を制作できるスキルとノウハウが無い」「動画クリエイティブを都度外部に発注すると費用が高くなってしまう」というお声を聞いていました。

広告代理事業を経験して実務を理解している我々が、お客様が自身で動画クリエイティブを制作できるようにすることで、お客様の事業成長を支援できると考え、1年前にリリースしたのが動画制作支援ツールの『LetroStudio』になります。

秋山:
なるほど、SNS運用コンサルティング会社のイメージが強かったのですがそれだけではないのですね。背景として受託ビジネスをやってきたからこそ『LetroStudio』にそのノウハウが活かされてると感じました。

藤田氏:
そうですね。プロダクトは実際に私たちが広告代理店としてSNSアカウントの運用、広告クリエイティブの制作を行う中で、手作業部分や非効率的だと感じたことをきっかけとして作り始めました。

弊社のサービスの思想として、使いやすいツールと、ツールを活用できる支援サービスの2つが必要だと考えています。当たり前ですが、企業のマーケティング活動にはビジネスゴールがあります。お客様は動画クリエイティブが欲しいのではなく、ビジネスゴールの達成を求めています。どんなに使いやすいツールがあったとしても、ゴールが達成できければツールを継続して利用することはありません。

お客様のビジネスゴールの達成を支援するために、弊社ではご導入企業様に対して動画施策のコンサルティングをしております。お客様にはそれぞれ独自のKPIがあるため、最初にKPIのヒアリングを行い、それを達成させる施策のサポートを弊社が行っています。

秋山:
動画を作ったけど成果が出ないといったケースはよくありそうですね。成果を出すための施策までサポートいただけるのは心強いです。他社との差別化として『LetroStudio』はどのような位置付けでしょうか?

藤田氏:
動画市場で私たちは後発です。しかし、受託業務をやっていたからこそわかる*「かゆいところに手が届く」*ような機能面での細かい差分がありますし、成果がでるためのノウハウは他社より多いと言えます。選んでいただいたお客様に継続いただくために何よりも成果を重視し、日々アップデートを重ねています。

秋山:
成果にコミットするという点が大きな違いということですね。現在の動画市場に対して御社の見立てやマクロ的な視点からどのようにお考えですか?

藤田氏:
動画市場は今後非常に拡大していくと思っています。その理由は二つあります。一つは環境の変化インターネットのインフラ整備が進んだことでより快適にテキストや動画のコンテンツを楽しめるようになりました。5Gの普及により、さらにコンテンツもリッチになっていくと思います。

二つ目は、SNSを含む各種プラットフォームの動画化の加速です。「YouTube」は動画のSNSですし、「Instagram」などのSNSでも動画化の動きが進み、SNSユーザーにとっても動画は馴染みのあるクリエイティブとして浸透しているのです。従って、動画化については企業より生活者の方が先に進んでると言えます。さらにはコロナの影響で自宅にいる時間が増えたことにより、SNSで動画に接する時間が増加傾向にあることも要因の一つと捉えています。

秋山:
まさに時代が後押ししている印象ですね。SNSというコミュニティの中で企業から発信するコンテンツは宣伝色が強くユーザーにとってはノイズと感じられると思いますが、企業の発信がユーザーに受けて入れてもうためのコツなどありますか?

藤田氏:
そうですね、なによりも動画を掲載する媒体に合わせることが大切です。そこにいる人たちがどういう気持ちでいるかに尽きると言えます。例えば、企業のWebサイト内に、企業が言いたいことを言う商品PR動画が入っていても違和感はありませんが、生活者が主体となるSNSの場合、企業が言いたいことを言う動画は違和感(ノイズ)が出ますね。いかにその場に馴染ませるかを考えることがコツです。

SNSごとに動画を作り分けるのは大変な負担になりますが、簡単に作れるカジュアル動画は制作負担も少ないので、カジュアル動画は一つの突破口と考えています。

※『LetroStudio』で作成したカジュアル動画テンプレートの一例。十数秒ほどの短い動画でも商品・サービスの魅力を十分に訴求できる。

秋山:
馴染む動画を定義するのは難しそうですが、カジュアル動画はユーザーからするとどのような面で受け入れられやすい動画なのでしょうか?

藤田氏:
プロが1ヶ月かけた動画であろうと、動画制作の素人が数時間で作ったカジュアル動画であろうと、受け入れられやすさには関係は無いと思います。1,000万円かけて作ったものでも生活者から受け入れられなくて成果が出なければ意味がないですし、逆に安く短時間で作った動画が生活者に受け入れられて成果が出ればそちらの方が結果が良いことになります。

そして、カジュアル動画でも十分受け入れられて成果が出るということがわかってきたので、企業としてはプロに時間とお金をかけた動画制作を依頼しなくても一定の成果を出せるカジュアル動画が有効な選択肢になってきています。

これまでの動画とカジュアル動画の違い

秋山:
これまでの動画はプロが時間をかけて作るイメージでしたが、カジュアル動画はどのような点が違うのでしょうか?

藤田氏:
カジュアル動画の一番の特徴はこれまでのように時間やコストがかからないため、何回でもトライ&エラーができることです。また、動画制作において何も知見がない人の場合、どうやって作るのかを悩む時間もかかります。これはカジュアル動画でも変わりません。

『LetroStudio』ではテンプレートを用意しており、そのお手本通り順番に作っていくことで業務時間の圧縮や各メディアに馴染むものが作れるようになっています。その点は大きな違いだと言えます。

秋山:
トライ&エラーを何回も繰り返すことができるのは強みですね。作る側の目線で見たとき、テンプレートが多いと逆に選べないといった悩みもありそうですが、その場合のサポートはありますか?

藤田氏:
はい、現在830本ほどテンプレートがあるため、多すぎて選べないケースはもちろんあります。我々の支援は二つで、一つ目はテンプレートをお客様の業種や施策の目的で検索できるようにしています。二つ目は、目的に合わせてコンサルティング支援をしています。動画を作る目的やゴール(KPI)、お客様の商品やサービスを理解したうえで、どのテンプレートがお客様の目的に近いのかを判断してサポートしています。

秋山:
受託業務を行なった御社ならではのノウハウが活きてますね。サポート体制としては利用者と一緒に経験値を溜めて伴走されるイメージでしょうか。

藤田氏:
そうですね。『LetroStudio』を始めて1年経ちましたが、何も知見のないお客様が動画を初めて作ったり、その動画の成果が出たりしたときの喜びをたくさん見てきました。私たちにとっても嬉しいことですので、一方的なコミュニケーションではなくお客様と一緒に歩いていくことを意識して支援をしています。

秋山:
動画広告はやってないけど、今からやりたい人に向けてカジュアル動画を運用するポイントはありますか?

藤田氏:
動画広告でいうと、カジュアル動画はじっくり観てもらうようなブランド広告には向いていません。実際に、カジュアル動画の長さは10秒程度が多いです。ユーザーもよほど興味あるものではない限り、動画広告をじっくり観ることはありません。弊社アンケートでも知らない会社の動画広告を観るのは30秒以内が多い結果となりました。

私自身は30秒でも長いと感じますが、1分の動画を配信している企業も見かけます。配信する媒体を選ぶことが重要と先ほどもお伝えしましたが、自社のコーポレートサイトの中で1〜3分の動画があるのは問題ありません。ただ、それをそのままSNS広告でも観て欲しいというのは企業のエゴになってしまうのです。

そのため動画広告を運用する場合、視聴時間は追いかける指標になりません。従来のテキストや静止画と同じくクリック、CVなどが基本的な指標になります。

運用のポイントとしては、手段を動画広告のみに絞らないことです。動画広告を1本出稿したけど成果が出なかった、なので動画を止めるとなると、せっかく取り組んだことが活かされないからです。動画と静止画のどちもやるというのが最も効果的な施策になります。

秋山:
なるほど、一つの手段における成果に捉われがちですが、トータル的に見てそれぞれを組み合わせて成果の最大化を目指すことが大切ということですね。

藤田氏:
はい、動画によるプロモーションはまだ新しいため動画を作れば広告成果も倍にできると考えてしまう企業様もいらっしゃいます。しかし、弊社はテキスト、静止画、動画は並列するクリエイティブと捉えています。テキストで刺さる人もいれば、静止画・動画で刺さる人もいる。これらをポートフォリオとして捉え、手段を1つに絞らず全体で成果の最大化を目指すことが大切だと考えています。

カジュアル動画を後押しする動画制作支援について

aride_2.jpg

秋山:
カジュアル動画のように短い動画を簡単に作るための支援として『LetroStudio』がありますが、動画制作の工程において、具体的にどの部分を効率化できるのでしょうか?

藤田氏:
動画制作の工程を分けると企画、構成、素材集め、制作と大きく四つに分けられます。企画や構成は経験がないと考えるのに時間がかかりますが、『LetroStudio』は企画や構成をテンプレートベースから考えることができるため、ゼロから考える時間的コストが減ります。

動画の元になる撮影データや画像、テキストなどの素材集めはどうしても短縮できない部分ではありますが、素材が揃った後の制作ではデザインテンプレートがあるため工数を格段に減らすことができます。

例えば、キングジム様では動画作りのプロではない社員様が無料アプリを駆使して動画を作る取り組みをしていました。それが*『LetroStudio』導入後、8時間かけて作成していた動画が2時間で制作できるようになった*のです。それにより余った6時間を本来取り組むべき業務に充てることができたという事例があります。

秋山:
なるほど、テンプレートを基にすることでゼロからではなく穴埋め感覚でできる点は魅力的ですね。

藤田氏
そうですね、ゼロから全体を作るのは慣れていないと困難ですが、テンプレートを見本にすることで考えるポイントが絞られるので適切な支援ができていると言えます。

動画制作におけるアイデアの壁とデザインの壁

aride_4.jpg

秋山:
これまでの話から動画を活用して成果を出すためのステップが丁寧に設計され、それがプロダクトにも反映されている印象を受けました。

藤田氏:
そうですね、ステップごとに困ることをふまえて設計できるのは、やはり受託業務での経験が活かされていると言えます。特に動画制作においてよくある困り事として、二つの壁があると思ってます。一つはアイデアの壁、もう一つはデザインの壁です。

アイデアの壁とはどのような企画・構成にするか悩んでしまいアイデアが枯渇してしまうこと。デザインの壁はプロじゃない人が作るため質が担保されないことです。この二つの壁は多くの企業に当てはまることなのでサポートを徹底しています。

アイデアの壁を越えるためにテンプレートの準備とコンサルタントからのアドバイスを。デザインの壁を越えるためにデザイナーとコンサルタントによるデザイン勉強会を開催しています。例えば勉強会では、シンプルなデザインや高級感があるデザインをする場合、どういう配色やフォントが良いのかをお伝えしています。

上記のようなテンプレートが豊富に用意されているため、プロじゃなくても簡単にカジュアル動画を作ることが可能。

秋山:
アイディアの壁とデザインの壁は動画制作においてよくある課題ですね。御社が全ての会社をサポートするのは大変じゃないですか?

藤田氏:
弊社からのサポート以外では、4月から*ユーザーコミュニティ「ムビチャン」*を立ち上げています。弊社とお客様の1対1の関係ではなく、お客様同士でノウハウや経験をシェアできる場所となっております。企画力や制作力、成果が上がるような環境を提供したいという目的のもと運営しております。

秋山:
お客様の成果を出すために動画プロモーションとしてカジュアル動画を推奨。動画制作においては、アイデアとデザインの壁が立ちはだかるが、ツールやサポートでそれらを補うようにプロダクト設計がされているということですね。

藤田氏:
そうですね、今回はアイディアとデザインの壁のことをお話しましたが、お客様ごとにそれぞれ抱える課題は異なりますので、どんな壁が出てきても日々アップデートしてそれを越えられるサポートを行っていくことが大切だと思っています。

秋山:
ここまではプロダクトの思想や設計についてお話を伺いましたが、『LetroStudio』の使い心地や機能などの特徴を教えてください。

藤田氏:
お客様から「なぜ私たちを選んだのか」のアンケートを取りましたが、一番多かったのが*「動画の編集操作が非常に簡単だから」という理由でした。『LetroStudio』は「プロじゃない人が簡単に動画を作れるようになること」*を設計思想としているため、お客様が普段よく使うMicrosoft PowerPointと同じような感覚で作れるようになっていることが要因です。

その他には「自分たちの作りたいものが作れるから『LetroStudio』を選んだ」という回答もいただいています。要因は二つありまして、一つはテンプレートの編集が可能なところです。類似サービスでは、テンプレート編集ができないことが多いため、素材とテキストを当てはめて終わりとなってしまい、お客様の作りたいイメージを実現できないケースがあります。『LetroStudio』はテンプレートを基に編集が可能ですので、利便性が高くなっています。

もう一つはお客様が用意する素材が少なくても動画を作れることです。『LetroStudio』では1,000個以上の中から効果的なスタンプを選択できるようになっており、同じ素材でもスタンプごとに色を変えることも可能です。メイン画像だけ準備いただければ、その画像にアニメーションを入れることができるため、少ない素材でも動画作成が簡単にできます。

秋山:
『LetroStudio』をすでに利用されてる方からの声は説得力ありますね。どのような方に使ってほしいですか?

藤田氏:
お金や時間によって動画の活用を諦めている方に利用いただきたいですね。例えば、従来の動画制作では簡単な動画でも1本作るのに納期が2週間で費用が50万円かかることもありえます。しかし『LetroStudio』では、今その場で作ることができるため必要な期間に必要な本数を作れます。

また、動画制作を外部に依頼する場合「イメージと違うものが出来上がる」「修正回数に制限がある」「メールやチャットでのコミュニケーションコストがかかる」という悩みもあり、お金や時間を考慮すると動画活用を諦めるケースが多いのです。

『LetroStudio』はそれらを解決できるサービスですので、お金や時間によって動画の活用を諦めている方には特にお勧めできます。

プロモーション以外での動画活用事例

秋山:
ここまでは動画を活用したプロモーションのお話が多かったですが、それ以外の活用事例はどんなものがありますか?

藤田氏:
プロモーション以外には営業活動に動画コンテンツを活用していきたいケースも増えています。活用事例としては以下の2つが挙げられます。

動画によるオンライン展示会資料

藤田氏:
コロナの影響によりオンラインでの展示会を開催される企業も多く、紙の資料や口頭で伝えていた情報を動画化することで、より多くの情報量をわかりやすく届けられるようになっています。口頭で伝えていたものを動画にしたことでより視覚的にもわかりやすくなったといえます。

FAXDMでの活用例

藤田氏:
江崎グリコ様ではFAXにQRコードを掲載して、QRコードを読み込むと動画が見られる施策を行っています。DMでも同じような施策を展開することで売り上げの初速向上などの効果を得られています。

秋山:
様々な事例がありますね。動画の活用も従来の常識から外れた場所で活用されるケースが増えてきているのは、インフラや環境が整った今の時代だからこそのように思えます。

動画をもっと身近なものにするためにカジュアル動画という手法をとり、動画制作におけるアイデアとデザインの壁を越えられるようにプロダクト設計をする。受託業務のノウハウが詰まった御社のDNAが深く紐付いているプロダクトだと、お話を伺う中で感じました。今後の展開も楽しみです、本日はありがとうございました。