昨年のコンテンツマーケティングやオウンドメディアのブームに続き、“分散型メディア”なるものがにわかに注目を浴びつつあります。

今回は、その分散型メディアについて、そもそもの定義や代表的な分散型メディアについて解説しています。

分散型メディアとは

まだ新しく出てきた言葉からなのか、正式定義は今のところ存在しません。
ただ、以下に記載されている通り、著名な方やサービスの言及から、分散型メディアの共通点を見出すことができます。

「分散型メディア」というのは、要はトップページや、自社サイトを持たなくてもいい、という形です。(古川 健介氏)
引用元:The First Penguin

共通点としては、以下が挙げられます。

・必ずしも自社のメディアサイトを持たない
・他社のプラットフォームコンテンツを掲載する
・複数のコンテンツ流通チャネルを持つ

つまり、これらの特性を持ったメディアが「分散型メディア」であるということが言えます。

参考:http://thestartup.jp/?p=14376
参考:http://netpr.jp/trend/19185/
参考:http://mediadisruption.net/2015/08/23/visionofvoxmedia/

分散型メディア生誕の歴史

藤村厚夫氏の「分散型メディアは未来か?/Vox.com が主張するメディアの選択」には、以下の記載があります。

“分散型メディア”とは、当時参照した記事「The Next Big Media Company Might Have No Website Or App At All(きたるべきビッグなメディアは、Web サイトもアプリも、何も持たないかもしれない)」中にあった”BuzzFeed Distributed(Distributed=分散型の)”というプロジェクト仮称に訳を与えたものでした。
引用元:藤村厚夫 Media Disruption

※The Next Big Media Company Might Have No Website Or App At Allの記事リリース日は、2014年8月11日

米BuzzFeedのプロジェクトにおける仮名称が、分散型メディア(Distributed conent、Distributed publishers)の語源と推測できますが、実はBuzzFeedよりも先に分散型メディアに取り組んでいたメディアがありました。

それが「NowThis News」。
Now this Newsは、1分程度の動画を配信するメディアで、2012年にリリースされたサービスです。

自社サイトは、トップページしかなく、そのトップページには分散型メディアを象徴する一文が掲載されています。

NowThis_hp.png

「HOMEPAGE.EVEN THE WORD SOUNDS OLD.TODAY THE NEWS IVES WHERE YOU LIVE.(ホームページはもう古い。今日、ニュースはあなたのいる場所にある。)

その一文が示す通り、コンテンツの流通チャネルにおいては、いわゆるWeb検索はなく、FacebookやTwitter、Youtube、Instagramなどのチャネルが主流です。

分散型メディアにおける代表的な3メディア

以下では、分散型メディアの代表的なメディア・サービスをSimilarWebのデータ(調査時点)を踏まえご紹介します。

Now This News

元ハフィントンポストのCEOが立ち上げた動画配信メディア。 1日20〜25本のオリジナル動画ニュースを配信し、CNNやABC News、Washington Postなどの元大手メディアに携わっていた30名ほどの編集&技術チームによって運営されています。

・主要チャネル:Tumbler/Twitter/Facebook/kik/Snapchat/Vine/Instagram/Youtube
・主要ソーシャルアカウントの定量数値
 ∟ Facebookページのいいね数:4,402,151
 ∟ Twitterのフォロワー数:387,110
 ∟ Instagramのフォロワー数:281,000

BuzzFeed

BuzzFeed.png
「来てもらうのではなく読者がいるところに届ける」を念頭に、グローバル展開を積極的に進めているメディア。現在世界中に12のエディションと18のオフィスがあります。
記事のクオリティに関していうと、いわゆるバズる(バズらせる)記事だけでなく、オバマ大統領の独占インタビューやプロテニス界の八百長疑惑などのスクープも多数連発。

他のメディアの追随を許さぬ状況と言えます。

・主要チャネル:Tumbler/Twitter/Facebook/Snapchat/Vine/Instagram/Youtube
・主要ソーシャルアカウントの定量数値
 ∟ Facebookページのいいね数:6,875,810
 ∟ Twitterのフォロワー数:2,946,003
 ∟ Instagramのフォロワー数:1,600,000

Upworthy

Upworthy__Things_that_matter._Pass__em_on..png
「Lots of media companies have a mission. But Upworthy is on a mission to change what the world pays attention to.(メディア企業の多くはミッションを持っています。しかしUpworthyは、世界が注意を払うことに対して変化を促すことがミッションです。)」というミッションが示す通り、Upworthyは環境・医療問題、世界の貧困問題、セクシャルマイノリティやなど、いわゆる社会的な問題を主に取り扱い、現在、急速にグロースしているメディアになります。

・主要チャネル:Twitter/Facebook/Pinterest/Instagram/Youtube
・主要ソーシャルアカウントの定量数値
 ∟ Facebookページのいいね数:8,880,520
 ∟ Twitterのフォロワー数:517,930
 ∟ Instagramのフォロワー数:177,000

分散型メディアにおける効果測定指標

サイトを持たないことからも従来のPVを元とした「効果測定指標」から別なものへと変化が起きつつあります。
こちらの資料によると、BuzzFeedでは、「Content View」という独自の指標で効果測定をしているとのことです。

Content Viewは、自社のサイトでのコンテンツ視聴に限らず、他のプラットフォームを通して視聴されたコンテンツのビュー数を意味します。以下が一例です。

動画:YouTubeやFacebook、InstagramやTwitter、Snapchatでの再生回数
画像:FacebookやInstagram、Twitter、Snapchatでのクリック回数

こちらの指標は、Now This Newsにおいても、近しい指標で効果測定をしているとのことです。

恐らく、これから生まれてくるであろう分散型メディアに関しても、多様なコンテンツの流通チャネルの効果を測定するべく、先駆者であるBuzzFeedやNow This Newsを習って、同様の効果測定指標を採用するということも十分考えられそうです。

まとめ

メディアの在り方について、大きな転換期を迎えつつあります。その一つに分散型メディアがあり、従来のメディア(サイトありき)と比べて読者に届ける方法が多様化し、これまでのような検索エンジン主流からソーシャルを筆頭とした各プラットフォームへの流通が可能となったというのが背景にあります。

つまり、今後メディアとして*“どこにいる読者”“どんな情報”*を発信するのかを定める必要性が増してきたということでもあると言えるのではないでしょうか。

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