事例

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顧客視点を意識することで、競争の激しい通信販売市場で成功している事例があります。それは、先に「勢いを失いつつある」と紹介した、カタログ通販です。

以前のような勢いを取り戻せず低迷しているカタログ通販専業会社が多く存在します。しかし、その中において、顧客視点を重要視したマーケティングに徹することで、今も堅調な売上を保ち、さらに成長を続けている企業があります。その1つが、ディノス・セシールです。

ディノス・セシールは、2000年に老舗・大手通販会社の2社が合併して生まれた、カタログ・TV通販をメインにする企業で、マーケティングに力を入れている企業としても知られています。
しかし、ここで注目したいのはディノス・セシールの社内体制についてです。実はマーケティングに注力しているディノス・セシールですが、専門のマーケターあるいはリサーチャーはおりません。社内で一元管理されている顧客データを社員全員が共有して、ニーズを分析して仮説検証していて、その理由は施策を一人ひとりが考える「全員がマーケター」という姿勢を重視しているためです。

ディノス・セシールが発行しているカタログは、年間で現在10冊超。顧客の年代や嗜好などを分析し、それに合わせたものを編集した上で発行しています。近年では60~70代の「アクティブシニア」と呼ばれる年代層の購入者が増えていることを踏まえて、この年代層をターゲットにしたカタログの発行を開始しました。

年2回の発行で、商品構成は、掲載点数を170点に抑えて、アクティブシニア世代にとって「悩みを解消したり、生活を向上させたりするような商品」をセレクト。具体的には、「健康食材」として人気の「発芽玄米」を生成してご飯を炊ける炊飯器や、様々な仕様とサイズのあるリーディンググラス(老眼鏡)、電動昇降チェアなど、身体機能の衰えと、健康志向の強さというアクティブシニア世代の「顧客視点」を十分に反映させた品揃えにしています。

また、視力が低下しても読み取りやすい「ユニバーサルフォント」を採用。1ページ1商品という構成にして、「その商品がどのように生活を向上させたり、悩みを解消したりできるか」を意識した商品説明を多すぎない文字数で作成して、「見やすさ、読みやすさ、分かりやすさ」を強調した誌面にしています。

これらは全て「顧客の立場に立った時にどうであるか」という顧客視点を採り入れた施策で、結果、初回の掲載商品売上額が予想を上回る好調な発進状況を見せています。ディノス・セシール全体でも、さらに顧客視点の姿勢を深めるためにカタログ通販の見直しを行ったことで、カタログ通販会社が売上を軒並み落とす中、前期2%増の1,196億円(2016年3月期)という好成績を収めました。
  

まとめ

4C」の概念は、1960年代に作られた「4P」を「時代遅れ」と批判して誕生しました。企業が売りたい物を、売りたい価格と流通させたい流通経路で売り、大々的にプロモーションをする「4P」の概念が通用していた時代は去り、現在は「より顧客の目で」と考える企業が成長する時代になっているということです。

顧客視点は、ターゲットに判断基準を置いたマーケティングと言い換えられます。しかし、現在はまだまだその視点を重要視していない企業が、成長市場である通信販売市場でも未だ存在しております。マーケティングの面でも「売る側」主体である旧来のままにとどまっているために停滞していると見て取れます。

そのようなポイントに気付き、顧客視点の重要性を認識して実行に移せる企業は、成長企業へと移行できるチャンスがあるのです。いつか、もしかすると、カタログ通販が「Amazon」に肩を並べる日が来るかもしれません。