春といえばプロ野球の開幕シーズン。すでに日本でも米国でも新シーズンがスタートしました。

近年は米国メジャーリーグの動向も高い頻度で伝えられるようになっています。国内からも有力選手が数多く参入していますが、その中でも一番の注目選手は、やはりイチロー選手ではないでしょうか。そのイチロー選手ですが、一部のネットユーザーから、野球選手としての動向とは別の点で注目を集めているのを皆さんはご存知でしょうか。

それがシーズン前に行われる各チームのキャンプ(トレーニング合宿)中に、多くのメディアで報道されていた「イチローの日替わりTシャツ」です。

ネット上では「こんなTシャツ、どこで買っているんだ?」という反応が見られましたが、実際にはどのように入手しているのでしょうか。

答えは、ドロップシッピング型のマーケットサイトです。
  
そこで今回は、このドロップショッピング型のマーケットサイトについて事例を交えてご紹介します。イチローの日替わりTシャツに興味をお持ちの方も、ドロップシッピングマーケットそのものに関心のある方も、ぜひ一読ください。
  
参照:
【2017年版】日替わりイチローTシャツ全て見せます!
  

今や恒例行事となったイチロー選手のおもしろTシャツ

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すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、「ドロップシッピング」とは販売者が在庫を持たず、注文が入った商品を、製造者が直接購入者に納入する取引方式です。この場合は、ネットで注文したTシャツを、その都度プリントして発送しているのですが、面白いのは、Tシャツのデザインを一般ユーザーが投稿している点にあります。

イチロー選手の報道でもユーザーの注目を集めていた日替わりTシャツですが、実はあのTシャツ、1枚からでも作ることが可能なのです。類似のサイトは日本国内でも幾つか稼働していますが、ここではイチロー選手が購入したとされるサイトを例に説明します。
  

あのTシャツを1枚から作ります!

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https://www.ttrinity.jp/

グラフィック・オン・デマンド株式会社(所在地・大阪)が運営するこのサイトは、Tシャツを購入するだけではなく、自分の欲しいTシャツのデザインをアップロードして作成、さらにはほかの会員に販売する事もできるサービスを行っています。

会員登録したユーザーは、所定の方法で作成した画像をサイトに送信して、簡単な操作でTシャツのデザインを作成・登録します。登録されたTシャツには、自分で好きな額の「報酬」を設定できるようになっています。サイト運営により承認を受けたTシャツのデザインはサイト内に公開され、ほかの登録ユーザーも購入できるようになります。

サイトから発注されたTシャツはその都度1枚単位で製造(この場合は無地のTシャツにプリント処理)され、発注者のもとに配送されます。デザインしたユーザーには、製造や決済の手間は一切必要ありません。

投稿するユーザーの商品一覧ページは「ショップ」と呼ばれ、さらにその中に「ブランド」と呼ばれるカテゴリーを作る事もできます。面倒な手続きやサイト構築を経ずに、仮想のTシャツ屋を開業できるという訳です。
  

知っておこう!ドロップシッピングのメリット/デメリット

この方式のメリットは何でしょう。
ユーザーと運営、それぞれの立場から考えてみましょう。
  

1. ユーザーから見た場合

自分の考えたデザインを投稿・公開しているユーザー(以下、デザイナー)にとっては、まず、材料や製品の在庫管理を一切考えずに済むのが大きなメリットです。

今までも、少量生産のオリジナルTシャツを販売する場は存在していましたが、最低限の数量は製造して在庫していなければなりませんでした。当然、売れなければ単なる負債になってしまいます。しかし、このサイトでは注文の都度に工場で製造、出荷まで肩代わりしてくれる仕組みになっているので、その負担は限りなくゼロになっています。また、取引の決済も全て代行されるので、デザイナーは商品の開発だけに専念できます。
  

2. 運営サイト側から見た場合

商品企画(この場合はTシャツのデザインやブランディング)は登録デザイナーが自主的に行うため、その分野のコストは基本的に掛かりません。また、商品の宣伝はデザイナー自らSNSやブログなどのメディアで行うため、こちらも最低限度に収める事ができます。
※ここに関しては、後ほど別途詳しくご説明します

また、商品在庫の管理も、印刷加工前の半完成品状態で確保しておけば良いので、完成品状態の在庫に比べて臨機応変に対応する事が可能です。
  

3. ユーザーならびに運営サイト側の共通したメリット

こちらのサイトに限らず、ドロップシッピング型サイトの多くは「お気に入り」登録やコメント投稿などのSNS的な機能と、ほかのSNS(Twitter、Facebook、インスタグラム等)との連携機能を持っています。

デザイナーが登録した商品はデザイナー自らが簡単な操作で自身のSNSアカウントに投稿する事ができますから、スマートフォンなどで出先からでも広報活動が可能です。また、商品にはデザインのテーマや雰囲気を示す「タグ」を付加する事ができる為、「クール」「猫」「かわいい」などのキーワードで検索するのも容易です。

購入した会員には、商品を撮影した画像を投稿するとサイト内で利用できるポイントが付与される仕組みがあります。投稿された画像は、その商品のページに掲載されるので、商品の印象をより華やかにする効果があります。購入のみの会員でも、商品の広報活動に加担する事ができるため、幾ばくかの体験共有の効果もある訳です。

ちなみに、SNSとの連携にはもう一つの効用があります。冒頭にご紹介したイチロー選手の事例では、元の写真を撮影・公開したのは新聞等の報道機関ですが、Tシャツのデザインに言及して情報を拡散したのはSNSのユーザーです。最近の報道各社もSNSでトレンドになった事例については敏感になっていますから、それを逆輸入の形で記事化、さらにその記事がSNSで拡散されるサイクルが生まれています。
  
参照:
イチロー 黄色の地に「肉の日」Tシャツで球場入り、2日連続の肉関連|出典:スポニチアネックス2017年2月23日配信
  

そのほかトレンド入りした事例

TVドラマやバラエティ番組などで出演俳優・タレントが身に着ける服は、一般的には担当スタイリストが用意しています。

今まではデザイナーズブランド等の商品が採用されていましたが、Tシャツやアクセサリについては個人ブランド(もしくはそれに近い小規模ブランド)の商品が採用される場面が増えてきました。Tシャツについては特に顕著になっています。今やTシャツの図柄はある種のメディアの側面を備えていて、着用する本人のキャラクターや、今の気分を象徴するメッセージを発する場としても捉えられています。タレント本人、あるいは役柄の人物の性格や置かれている立場を示すメッセージをTシャツの図柄で代弁させる手法は、カジュアルファッションの分野では既に定番です。

そのようなニーズに対して、このようなドロップシッピング型のマーケットは非常に親和性の高いものとなっています。

スタイリストやタレントにとっては、従来のように店舗や通販カタログなどで探すよりも、先述の「タグ」で検索すれば効率も良いですし、本来の目的とは違う別の関連商品を見つける事も期待できます。イチロー選手の事例以外にも、TVドラマ「重版出来!」(TBS系)や「視覚探偵 日暮旅人」(日本テレビ系)などのタイアップの実績もあり、放映時にはTwitterを中心に話題になっていました。
  

イチロー選手のTシャツ以外の代表的な事例

・ メディア紹介Tシャツ特集
・ メディア情報|TBS様ドラマ「重版出来!」の第10話にて荒川良々さんにTシャツを着用していただきました!
  

もちろん、ポジティブな話題だけではありません。気軽に投稿できる反面、著作権や人権侵害の事案が発生する可能性もあります。

「Tシャツトリニティ」の場合はデザイン画像が投稿されると簡易的な承認プロセスを経て登録されますが、サービス利用に関するヘルプを読む限りは飽くまで簡易的なチェックであり、運営側で侵害する恐れのないレベルのチェックを保証するものではありません。また利用規約にも、トラブルが発生した場合は運営は関知しない旨が宣言されています。

原則としては、権利関係の管理やトラブルへの対応はデザイナーに任されている事になっているので、運営には法的に責務は無いとされていますが、サイトのイメージを棄損しないように商品を管理する工夫はある程度怠らずにおく必要があるかもしれません。

そのほかのオリジナルデザインのTシャツ通販専門サイト

Tシャツトリニティのほかにも、類似のサービスを行っているサイトを下記にご紹介します。

CLUB-T

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https://clubt.jp/

アマチュアによる投稿だけではなく、アーティストや出版社とのコラボレーションも積極的に行っているのが特徴です。また、取扱アイテムもTシャツのほか、スマートフォンケースやマグカップなど、多ジャンルにわたっています。
  

SKIYAKI GOODS

https://ferret.akamaized.net/images/58ebf12d7f58a8084800007d/original.jpg?1491857708
https://goods.skiyaki.tokyo/

以前「UPSOLD】の名称で運営されていた、国内ドロップシッピングサービスの先駆的サイトで、取扱アイテムも豊富です。
  

UTme!

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http://utme.uniqlo.com/

アパレル大手・ユニクロの運営するサービス。取扱アイテムはシャツ類とトートバッグに特化しています。このサービス専用のアプリを用意しているのも特徴です。
  

pixiv FACTORY

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https://factory.pixiv.net/

イラストや漫画の投稿・交流サイトで有名な「pixiv」が運営しています。本来は自作イラストを使ったTシャツやグッズのオンデマンド製作サービスですが、オンライン・マーケットサイト「BOOTH」との連携で、ほかのユーザーも注文できるようになっています。
  

まとめ

Tシャツ市場は単価が低く、きっと多くの方が一見して大きなマーケットではないような印象をもっているのかもしれません。ただ、多種多様なサプライヤーが参加する事によって裾野が広がり、他分野への良い影響を与える可能性をこの市場は秘めています。

特に、製造に関する知識やスキルが無くとも参入できるため、元手の掛からない副業感覚でアパレルやグラフィックデザイン業界の人々やアマチュアの方々も参加する事ができるプラットフォームとして今後の動向が期待されています。

サイト運営の立場からも、ファッションやカルチャー、時には時事のトレンドをリサーチできる貴重な場としても機能しています。「たかがTシャツ」と思わず、そのような側面から見直してみるのも面白いかもしれません。

また、展示会等だけではなく、企業によっては"制服"のように普段着としてでも使える会社や組織オリジナルのTシャツを制作して、会社のブランディングに活用しているシーンをよく目にします。ぜひ、その際は、こうしたサイトを活用して見るのもよいのではないでしょうか。