App Storeが登場してから9年が経過し、今秋大幅にリニューアルされます。
一から作り直されたApp Storeは、これまで私たちが知っているApp Storeとは全く異なるものと考えた方が良さそうでしょう。

参考:
App Store - Apple(日本)

今回は、新App Storeで特に注目したい11の新機能を解説します。

新App Storeが解き放つ11の新機能

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1. ホームスクリーンの刷新

Appleは1日に1つのアプリをフィーチャーして紹介しています。
毎週リリースされる優れたアプリのすべてをチェックするのは大変な作業なので、Appleでは世界中にいる専任のエディターたちが独自の視点で次のトレンドを紹介してくれます。

ホームスクリーンをはじめとして、タブやメニューなどのUIも刷新され、アプリのリストはカード型になり、より大きく、カラフルになります。
ビデオと編集を加えたコンテンツの両方が表示され、SNSへの拡散も簡単にできるようになりました。

2. アプリとゲームの分離

App Storeでは最終的に実用的なアプリとゲームを分離する、という選択を採りました。
結果的に、「今日のゲーム」(Game of the Day)、「今日のアプリ」(App of the day)というコーナーを用意して、日替わりでゲームやアプリを紹介していきます。

3. App内課金

App内課金は、通常対応しているアプリを立ち上げて課金する必要がありましたが、App Store内で直接購入することができるようになりました。
面白いのは、この機能が、対応するアプリやゲームがまだデバイス上になくても使えるということです。

4. 「ヒントとコツ」カード追加

ホーム画面には「ヒントとコツ」(How To)というカードが追加されるようになります。

ここでは、写真のための新しいアプリケーションでフィルターを使う方法や、Pokémon GOに登場するレアキャラを見つけられる場所など、必要なハウツーの記事とヒントの数々をビデオや記事で見られるようになります。

5. ボトムタブの刷新

下に位置する5つのボトムタブも新しくなっています。
いままでは「おすすめ」「カテゴリー」「ランキング」「検索」「アップデート」タブが順に並んでいました。
今回は、複数の「おすすめ」が並んでいます。
「今日のおすすめ」「検索」「更新」「ゲーム」「アプリ」という順で並びますが、実際には「ゲーム」や「アプリ」も同じくおすすめのゲームやアプリにスポットライトが当たっています。

6. ビデオの数

App Storeの各アプリページでは1つの動画をアップロードすることができました。
これからは、3つまでの動画をそれぞれのアプリページで紹介することができます。

ビデオは訴求力が高いので、アプリ事業者にとっては非常に喜ばしい変更でしょう。

7. トップチャートバッジ

マイナーアップデートにも思えますが、大きな影響力を持つであろう変化があります。
それがトップチャートバッジです。

Appleはランキング上位にあるアプリにバッジをつけることによって、独立したサードパーティのアプリであっても正当な評価を示すように工夫しています。

8. 評価のリセット

アプリをリリースしているデベロッパーは、ユーザーが思っている以上に評価を気にしています。
例えば、前のバージョンであまりいい評価をもらえなかった時に、次にいくら素晴らしい機能を搭載してアップデートしたとしても。新しい評価は最初にリリースしてからのすべての評価の合計の平均となっていました。
ユーザーにとっても、新バージョンの評価が高いにもかかわらず、全体として評価が低いアプリに出会う機会が少なくなっていました。

そこで今度からは、新しくバージョンアップしたアプリに関しては、評価がリセットされ、そこから評価を再び積み重ねることができます。

この変化は特筆すべきものです。
なぜなら、評価の星の多さを見てダウンロードするかを決定しているユーザーが多いからです。

9. レビューへの反応

同じくパブリックな場所となっているアプリのコメント欄にも困ったコメントが残ることもあります。
Appleは、コメントを消すという選択肢ではなく、コメントに反応することができるようになるという選択肢を加えました。

10. Apple Payに対応

実は大々的に取り上げられていませんが、App Storeでの有料アプリのダウンロードやApp内課金のアプリは、Apple Payに対応しています。

11. 新しい検索UI

検索タブは2つの大きな変化を遂げました。
まず、「今日のおすすめ」「アプリ」「ゲーム」といったタブのコンテンツも含めて検索ができるようになります。
また、まるでTwitterのタイムラインのように、大きな画像やタイトルのカード上のUIで検索が行えるようになります。

ディスカバリー体験を重視したUIへ

以上、今回のアップデートの主要部分を中心に解説していきました。
全体的に言えるのは、こうしたUIの大幅な刷新は、ディスカバリー体験をより重視した結果だということもできます。

Instagramの写真やビデオ、Twitterのツイートのように、App Storeも同じく膨大な量のコンテンツを所有しています。
ユーザーとしては、これらの膨大な量のコンテンツの海の中を飛び込んで、あまり自分とは関係のないアプリを探すよりも、専門家によって評判を得ているアプリを探したほうが時間も短縮されると思っています。
実際のところ、App Storeでも、トップページで紹介されているアプリは非常に質の高いものが多いですが、一方で検索をかけて見てみると「ひどい」アプリも多く存在しています。

そうした意味では、できるだけAppleサイドでオススメを提示できるような仕様にして、動画のアップロード数を上げたりレビューを新たにしたりできるようになれば、ユーザーは公正な判断でアプリをダウンロードするかを決めることができるようになります。
今回の刷新は単なるデザイン上の刷新ではなく、そうしたエコシステム全体を変える工夫だとも取ることができます。

また、ゲームとアプリを大きく分けたのも、思い切った判断です。
というのも、iPhoneやiPadでゲームを楽しむユーザーもいれば、主にビジネスシーンでApple製品を使っているのでゲームに全く関心のないユーザーもいるからです。

従来のホーム画面では、ゲームもアプリも、あるいはキッズも含めてさまざまな「おすすめ」が混在していました。
しかし、今回のリニューアルに伴い、「ゲーム」の情報は欲しい時に欲しい人だけが手に入れられるという「住み分け」ができるようになりました。

デベロッパーにとっては、今回の刷新によって身構えてしまうひとも出てくるかもしれません。
というのも、ある程度評価が高くないと生き残れないようなエコシステムになってしまうと、一定の完成度を持ってリリースしなければいけなくなってしまうからです。
ただし、ユーザーにとってみれば、質の高いアプリが増えてくるので、これが一概に悪いこととは言い切れないでしょう。

まとめ

iOS11が大きく変化していくので、App Storeの今回の変更は影にかくれがちですが、iPhoneやiPadのプラットフォーム上で動くアプリはサードパーティー製のもののほうが多いので、これは大きな変化です。

一方、こうした大きな変更を加えるシーンを目撃することは、デベロッパーにとっても貴重な体験です。
一度作り上げたプラットフォームを思い切って取り崩して再構築するのは勇気のいることです。
アプリの大幅なリニューアルを検討している場合は、ぜひ今回のケースを参考にしてみるのはいかがでしょうか。