ディスカバリー体験を重視したUIへ

以上、今回のアップデートの主要部分を中心に解説していきました。
全体的に言えるのは、こうしたUIの大幅な刷新は、ディスカバリー体験をより重視した結果だということもできます。

Instagramの写真やビデオ、Twitterのツイートのように、App Storeも同じく膨大な量のコンテンツを所有しています。
ユーザーとしては、これらの膨大な量のコンテンツの海の中を飛び込んで、あまり自分とは関係のないアプリを探すよりも、専門家によって評判を得ているアプリを探したほうが時間も短縮されると思っています。
実際のところ、App Storeでも、トップページで紹介されているアプリは非常に質の高いものが多いですが、一方で検索をかけて見てみると「ひどい」アプリも多く存在しています。

そうした意味では、できるだけAppleサイドでオススメを提示できるような仕様にして、動画のアップロード数を上げたりレビューを新たにしたりできるようになれば、ユーザーは公正な判断でアプリをダウンロードするかを決めることができるようになります。
今回の刷新は単なるデザイン上の刷新ではなく、そうしたエコシステム全体を変える工夫だとも取ることができます。

また、ゲームとアプリを大きく分けたのも、思い切った判断です。
というのも、iPhoneやiPadでゲームを楽しむユーザーもいれば、主にビジネスシーンでApple製品を使っているのでゲームに全く関心のないユーザーもいるからです。

従来のホーム画面では、ゲームもアプリも、あるいはキッズも含めてさまざまな「おすすめ」が混在していました。
しかし、今回のリニューアルに伴い、「ゲーム」の情報は欲しい時に欲しい人だけが手に入れられるという「住み分け」ができるようになりました。

デベロッパーにとっては、今回の刷新によって身構えてしまうひとも出てくるかもしれません。
というのも、ある程度評価が高くないと生き残れないようなエコシステムになってしまうと、一定の完成度を持ってリリースしなければいけなくなってしまうからです。
ただし、ユーザーにとってみれば、質の高いアプリが増えてくるので、これが一概に悪いこととは言い切れないでしょう。

まとめ

iOS11が大きく変化していくので、App Storeの今回の変更は影にかくれがちですが、iPhoneやiPadのプラットフォーム上で動くアプリはサードパーティー製のもののほうが多いので、これは大きな変化です。

一方、こうした大きな変更を加えるシーンを目撃することは、デベロッパーにとっても貴重な体験です。
一度作り上げたプラットフォームを思い切って取り崩して再構築するのは勇気のいることです。
アプリの大幅なリニューアルを検討している場合は、ぜひ今回のケースを参考にしてみるのはいかがでしょうか。