2017年4月に突然現れ、新しいタイプのソーシャルメディアとして話題になったMastodon(マストドン)。まだ開始されて1年も経過していないサービスですが、徐々にユーザー数を増やしています。

マーケティング活用のために導入している企業の数はまだそれほど多いわけではありませんが、新しいソーシャルメディアマーケティングの可能性として注目されています。

今回は、Mastodonをマーケティングに活用できる可能性について考えてみましょう。

Mastodonは新しいミニブログのソフトウェア

Mastodonとはドイツの若手エンジニアが開発した、ミニブログサービスが利用できるフリーソフトウェアです。開発のスキルがあれば誰でも利用できるオープンソースのソフトウェアであり、他のSNSのようにソーシャルメディア企業が一社で管理するサービスではありません。

巨大なサーバーを持った一社にユーザー全員が登録するのではなく、個々でサーバーを用意しその上でMastodonを動かし、別サーバー同士とも緩い繋がりを作ることで大きくなって行くという仕組みです。

また、Mastodonは会社ではなくソフトウェアそのものであり、誰でも利用が許可されているため、開発するエンジニアがいなくならない限り使い続けられる可能性があります。それに対し、TwitterであればTwitter社が倒産してしまえばサービスは無くなってしまいます。

Mastodonの特徴

短文投稿型のソーシャルメディアとして、しばしばTwitterと比較されます。Twitterの140字に対し、Mastodonは500字まで投稿することが可能です。また、Twitterでは投稿することを「ツイート」というのに対して、Mastodonでは「トゥート」と呼びます。

Twitterの「リツイート」に当たる機能は、Mastodonでは「ブースト」と呼ばれます。
ここまでだと、機能的にはTwitterとほぼ変わらないようにみえますが、決定的な違いはどこにあるのでしょうか?

インスタンス

Twitterとの最大の違いは*「インスタンス」*の存在です。Mastodonはそれぞれにサーバーを用意する必要があり、一つひとつのサーバーのことを「インスタンス」と呼びます。インスタンスはサーバーを用意すれば誰でも作成することができます。

ユーザーがMastodonに登録する際には、まずインスタンス選びから始まります。インスタンスでは、趣味趣向などで分かれたコミュニティが形成され、音楽好きが集まるインスタンスや、地域の人を集めたインスタンスなどさまざまです。

気に入ったインスタンスがあれば、そのインスタンス上に自分のアカウントを作成します。
Mastodonというサービス自体に登録するのではなく、あくまで各インスタンスに登録することになります。

タイムライン

Mastodonで見ることのできるタイムラインは複数あり、自分がフォローしているユーザーの投稿が見られるホームに加え、「ローカルタイムライン」と「連合タイムライン」が存在します。

ローカルタイムラインは、自分の登録しているインスタンス内の人のトゥートが表示されます。連合タイムラインでは、インスタンス内にいるユーザーのトゥートに加え、インスタンス内のユーザーがフォローしている別のインスタンスのユーザーのトゥートも表示されます。またブーストされたトゥートも表示され、外部のインスタンスとの緩い繋がりが形成されます。

Mastodonの利用状況

Mastodonが日本で話題になったのは4月中旬ですが、その後もインスタンスは増え続けています。8/20時点で1800以上のインスタンスが開設されており、日本だけで900以上のインスタンスが存在します。(※1)

また、アカウント数は77万人以上(※2)とされており、TwitterやFacebook、インスタグラムにはまだまだ追いつかない数字となってはいます。しかし登録者数上位のインスタンスは、1位、2位、4位を日本のインスタンスが占めており、日本でのMastodonへの期待感の高さが感じられます。

pawwo.png
https://pawoo.net/about
画像共有サイトpixivは一早くインスタンスを開設し、Pawooというインスタンスに登録者19万人を集めています。2017年8月現在で全世界1位の登録者数となっています。

mstdn.jp.png
https://mstdn.jp/about
mstdn.jpは日本のローカルアカウントとして、多くの登録者を抱えています。22歳の大学院生が自宅で用意したサーバーで始めたインスタンスですが、Mastodonが話題になると同時に登録者が急激に増え、個人が世界最大のユーザー数を集めたことでも話題になりました。

自宅のサーバーでは負荷が集中するためさくらインターネットにサーバーを移したためリセットされてしまいましたが、現在でも14万人以上が登録し世界2位のユーザー数となっています。

friends.nico.png
https://friends.nico/about
ドワンゴが運営しているfriends.nicoというインスタンスも5万人と世界4位の登録者数となっています。同社が運営しているniconico動画のアカウントと紐付けることができるなど、オープンソースだからこそできる試みがされています。

参考:
(※1) http://k52.org/mastodon/
(※2)https://lou.lt/@mastodonusercount

Mastodonのマーケティング活用への可能性

ソーシャルメディアマーケティングの次の一手として、Mastodonを活用しようと検討し始めた場合、どのような可能性が考えられるでしょうか?

クローズドなコミュニティを作る

Mastodonの最大の特徴であるインスタンスを活用すれば、ニッチでクローズドなコミュニティを作ることができます。これにより、ユーザーグループなどを作ることで、自社商品やブランドのファンのコミュニティを形成し、ロイヤリティの向上が望めます。

従来通りの企業アカウント

Mastodonでも企業が投稿するアカウントを持つことは可能ですので、従来のソーシャルメディアと同じようにフォロワーに向けて情報を発信することができます。自社のインスタンスに登録してくれている人であれば、すでに興味関心が高いとも考えられるため、コアなファン向けのコンテンツを出してリピーターの心掴むといった使い方を検討してみてもいいでしょう。

独自開発

Mastodonはオープンソースなソフトウェアであることから、独自のカスタマイズが可能です。「Pawoo」「friends.nico」では、それぞれpixivやniconicoという既存サービスとID連携が可能になっています。また、pixivはPawooのインスタンス用ビューアーアプリを開発し提供しています。アプリでは画像がサムネイルなどで見やすく表示されるようになっており、画像共有サイトのインスタンスだからこその機能が用意されています。

このようにブランドの特性に合わせたカスタマイズをしていくことで、よりユーザーにとって価値の高いコミュニティを形成できる可能性を秘めています。

マーケティング活用にあたり出てくる課題

Mastodonのマーケティング活用には、当然ではありますが課題も多数あります。
まず、既存のソーシャルメディアとの特徴的な違いとして、情報の拡散性は比較的低いと考えられます。
ブーストという機能はあるものの、ユーザーは基本的にインスタンスを跨いで独立しているため、大規模なバズは起きづらいでしょう。

また、広告のメニューがないため、情報のプッシュをする場としてはあまり適していません。
情報発信よりも、どちらかというとブランディングやユーザーのファン化の施策に利用すると良いでしょう。

まとめ

Mastodonは必ずしもどの企業にも有効というわけではありません。またまだまだユーザー数が十分ではなく、導入をためらう方も多いでしょう。
しかし、アイデア次第では、ロイヤルなユーザーを育てる大きな武器になる可能性もあります。今後もぜひ注目して見てはいかがでしょうか。