マーケティングや広報の担当者であれば、広告を運用してみたものの思うように効果が出なかったことが一度はあるのではないでしょうか。

インターネット広告が氾濫している今、顧客は様々な広告手法に慣れはじめています。広告に対してシビアになってきており、アドブロックのサービスも台頭してきた今、従来の手法を続けているだけでは成果をあげるのは難しいでしょう。

一方で、従来の広告以外の方法でサービスやブランドの認知を上げ、エンゲージメントを生み出すマーケティング手法も取り入れる企業が増えてきました。その一連の活動のことを「ブランドアクティベーション」といいます。

今回は、ブランドアクティベーションの6つのマーケティング手法について解説します。

ブランドアクティベーションとは

ブランドアクティベーションとは、広告以外の方法でブランドの認知度を上げ、顧客に何らかの行動を起こさせるための一連の活動を指します。特にアメリカでは多くの企業が積極的に取り組んでいます。

全米広告主協会によると、アメリカの企業はマーケティング予算のうち、約60%をブランドアクティベーションに投じています。今後2020年までに、約7,400億ドル(約82兆円)まで増加すると見込まれています。

ブランドアクティベーション拡大の背景

インターネット広告が普及するにつれ、広告慣れした顧客が増えてきました。広告スキップやアドブロック技術も生まれ、既存広告の効果は以前より得にくくなっていることが、新たな手法としてブランドアクティベーションが拡大した要因です。

参考:
「動画広告を見て不快な経験」、視聴者の約6割──マクロミルとデジタルインファクトが共同調査|ITProマーケティング

また、顧客はSNSやイベントなど様々なシーンで企業と接する機会が増えているため、その機会にいかに認知度を上げて好印象をもってもらえるかが重要なポイントとなってきました。

ブランドアクティベーションには、以下のマーケティング手法があります。

【1】リレーションシップマーケティング
【2】コンテンツマーケティング
【3】インフルエンサーマーケティング
【4】プロモーショナルマーケティング
【5】エクスペリエンシャルマーケティング
【6】リテイラーマーケティング

今回は、この6つのマーケティング手法を解説します。

【1】リレーションシップマーケティング

リレーションシップマーケティングとは、顧客と良好な関係を築くことで長期間に渡って継続的に取引を行うためのマーケティング手法です。

このマーケティング手法では、リード(見込み顧客)や潜在的な顧客は対象ではありません。既存顧客の中でも、何度もサービスを購入してくれる可能性のある顧客をターゲットとします。「何人に買ってもらうか」より「1人に何回買ってもらうか」が重要な指標です。

市場が成熟していればいるほど、リードの獲得は難しくなります。リードに投資するよりも、既に自社サービスを利用してくれている顧客に再利用してもらう方が、コスト的にも有利な面があります。アフターサービスを充実させ、顧客にファンになってもらうことで、近年流行しているSNSでの拡散に繋がり、結果的にリードを獲得できることもあります。

【2】コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングとは、有益なコンテンツを制作・配信することでターゲットを獲得し、エンゲージメントを作り出すマーケティング手法です。

前述したとおり、最近の顧客は広告による売り込みに慣れており、あまり頻繁に出稿すると逆効果になってしまいます。また、Googleも「ユーザーにとって有益な方法を発信している有益なホームページ」を評価し上位表示させる流れに変わってきています。

そこで、単なる売り込みだけのコンテンツではなく、顧客にとって有益な情報を提供し、自社の印象を上げてからサービスを購入してもらう手法が広がってきました。広告を配信するよりもコストを抑えて制作できるため、手軽に始められるのもメリットです。

参考:
コンテンツマーケティングとは何か 〜 歴史・事例などから解説 〜|ferret[フェレット]

【3】インフルエンサーマーケティング

インフルエンサーマーケティングとは、インフルエンサーを活用したマーケティング手法です。インフルエンサーとは、情報発信することで多くの人に大きな影響を与える力のある人を指します。

近年では、主にSNSで多くの支持を得ているインフルエンサーに注目が集まっています。顧客は、「広告による売り込み」より「信頼できる人からの紹介」の方に共感して行動を起こしやすくなっています。

代表的な例として、インフルエンサーにSNS上で自社サービスを紹介してもらうことが挙げられます。また、インスタグラムに投稿したくなるようなおしゃれなイベントや商品を展開するなど、一般ユーザーにも拡散してもらいやすい施策を取り入れます。

参考:
【インフルエンサーとは?】基礎から学ぶインフルエンサーマーケティング手法|ferret[フェレット]

【4】プロモーショナルマーケティング

プロモーショナルマーケティングとは、顧客にサービスを購入するための行動を起こしてもらうための直接的なマーケティング手法です。「プロモーション戦略」と同じ意味で使われます。

マーケティングの基本要素でもある「誰に・何を・どのように」を戦略として策定し、そのための手法を決め、メディアやイベントなどのツールとして制作します。ただ制作するだけでなく、それを利用した顧客にその後行動してもらうための仕組みをつくります。

プロモーショナルマーケティングに精通した証として、「プロモーショナル・マーケター」の認証資格を得るための試験も行われています。

参考:
プロモーショナルマーケティングとは|日本プロモーショナル・マーケティング協会

【5】エクスペリエンシャルマーケティング

エクスペリエンシャルマーケティングとは、サービスを実際に体験できるイベントを通して、ブランドに対する認知度・好感度を高めるマーケティング手法です。「経験価値マーケティング」と呼ぶこともあります。

エクスペリエンシャル(経験価値)とは、サービスそのものの価値ではなく、その利用経験から得られる感動、満足感などの感覚的な価値を指します。サービスとしての価値に加え、心理的な満足感による価値を提供することで、顧客のエンゲージメントを生み出し、サービスの好感度を高めてもらうことが狙いです。

心理的な価値を感じてもらうことで、顧客にSNSなどで「共有したい」と思ってもらいやすくなります。インフルエンサーマーケティングと組み合わせたイベントを行うことで、より広く認知度を向上させやすくなります。

【6】リテイラーマーケティング

リテイラーマーケティングとは、店頭で顧客の購買意欲を高めるマーケティング手法です。「リテイラー」は、小売業者を指します。「店頭マーケティング」と呼ばれることもあります。

店頭での売り方によって、顧客から見た商品のイメージは大きく変わります。陳列する商品のターゲット層に応じて戦略を立てることが求められます。顧客の購買意欲を高めるために、陳列方法、POPの書き方や内容、販売員による販売促進活動など、様々な工夫を凝らします。

まとめ

SNSなどの浸透により、自社からの一方的な発信ではなく、顧客とコミュニケーションを交わしながら自社やサービスを好意的に知ってもらうマーケティング手法は今後も広がっていくことが予想されます。

従来の広告手法で手応えを感じられない方は、ブランドアクティベーションを取り入れてみてはいかがでしょうか。