ファンは“神様”ではない

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飯髙:
今のファンを大事にして発信をしていくということはわかりました。ただ、現状のファンの思いを重要視すると、商品変更や思い切った改革ができなくなる気がするといった声も聞きます。

佐藤 氏:
それはよく受ける質問です。そして、多くの人が誤解しているところでもあります。

たとえば、ある音楽アーティストが好きだとして、みんな「今のアーティストのまま成長してほしくない」なんて思ってませんよね。そのアーティストにいい成長をしてもらって、しかも自分たちが支持している方向で成長してもらって、全然違う世界を自分たちに見せてほしいわけです。

つまり、今のファンを大事にするということは、ファンと一緒に未来に向かって成長していくことに等しいわけです。ファンミーティングで継続的に傾聴できていれば、「ファンに愛される理由」が時代とともに変わっていくのがわかるはずです。その変化を見ながらファンとともに価値を作り上げていくのが大事なんです。

飯髙:
あくまでファンと共通の価値観を作っていくのであって、ファンの言いなりになるわけではないということですね。

佐藤 氏:
そう。ファンベース施策で間違いがちなのは、ファンを大切にするあまり神様扱いすることです。ファンを特別扱いして贔屓すると、ファンは増長してしまいます。たとえば、いつもファンを優待していると「あのときはあんなに安くしてくれたのに、今は正規料金かよ、けしからん!」みたいなことになる。

そうではなくて、ファンとはあくまで企業が提供した価値を支持している人たちなので、もともと対等な関係なのです。企業が開発した商品やサービスが、自分の人生を豊かにしてくれると感じて、感謝すらしてくれる人たちがファンです。だから、優遇する相手ではなく、むしろ仲間や身内であると考えて接するべきです。価値観が近いんですから。

レストランでいうと、混んでいるときに「俺の料理を先に出せ」という人は、いくら常連であってもファンではなく、言うなればただのクレーマーです。そうではなく、むしろ「お皿くらい運ぶよ」と手伝ってくれる人がファン。そのお店の価値をわかっていて、もっとよくしたいと考えている「身内」がファンなのです。

飯髙:
コミュニティに関しては、どう考えていらっしゃいますか? ファン=強い絆と考えるからか、「ファンベース」と「ファンコミュニティ」を混同している人が多いように感じます。

佐藤 氏:
おっしゃる通り、ファンベース施策というと、コミュニティを作ることだと思っている人が多いのですが、これも違います。

ファンベースは、ファンをベース(土台や支持母体)に売り上げや価値をあげていく考え方です。ファンコミュニティはその中のひとつの手法ではありますが、コミュニティを作っていく前に、やることはいっぱいあります。

レストランで言ったら、お客さんとお付き合いする前に、お店の内装やメニューをもっと改善したり、お店のストーリーをきちんと用意したり、味を良くして信頼を作ったりと、やることはたくさんあります。そういうのがちゃんとできた上でようやく直接的なお付き合いが始まる。コミュニティを作るとはそういうことです。安易に始めてはいけないし、始める前にやることがたくさんあります。