*「アリババ」「テンセント」*という名前を聞いたことがない人は少なくなってきました。

しかし、「一体何をしている会社?」なのかはいまだに知らない人も多いのではないでしょうか。地理的に言えばアメリカよりも中国の方が近いですが、意外と中国企業については知られていないことが多いようです。

しかし、中国で展開されているサービスを覗けば、日本でも真似できそうなポイントがたくさん見つかります。

今回は、2018年も要注目の中国の巨大テック企業8選をご紹介します。さまざまなテック企業がありますが、どれくらい知っているか、確かめてみてはいかがでしょうか。

2018年も要注目!中国の巨大テック企業8選

1. アリババ (阿里巴巴)

1.jpg
Inc.com

現在では日本人でも知らない人の方が少なくなった中国の大企業グループが、*アリババ(阿里巴巴)*です。「阿里巴巴集団」という表記の場合は、Googleに対するAlphabetと同様に持株(グループ)会社としての性格が強い表記となります。

アリババはジャック・マー(馬雲)氏が設立したインターネットグループです。もともと、創始者であるジャックは英語教師をしていましたが、通訳の仕事で渡米したことがきっかけでインターネットに触れ、紆余曲折を経て1999年にアリババを創業します。

会社の名前にもなっている*「アリババ」*は、BtoBの世界貿易ができるマーケットプレイスで、海外のバイヤーと取引を行いたい中国企業がメインターゲットとなっています。登録は無料ですが、有料会員になることでマーケティング支援を受けることができます。

taobao.png
Taobao

また、日本でいうメルカリなどのビジネスモデルに匹敵する、CtoCモデルの*「タオバオワン」(淘宝網)*も有名です。タオバオワンが人気になっている理由は、出品料や取引手数料などがすべて無料であることです。この戦略により、すでに中国に進出していたeBayのマーケットを奪ったと言われています。

2005年には、ペイパルのような仕組みで、QRコードを使ったネット決済もできる電子決済サービス*「アリペイ」(支付宝)*も開始しました。

また、2008年には楽天市場のようなB2Cショッピングモールの*「Tモール」(天猫)も開始し、毎年11月11日は「独身の日」*としてTモール主導の目玉セールを行うのが恒例となっています。

さらに、2009年にはAWSに似たビジネスモデルの*「アリババクラウドコンピューティング」(阿里雲)*もスタートしています。

2. テンセント (騰訊)

2.jpg
Branding China

テンセント(騰訊)はアリババと並んで中国の巨大企業として日本でもよく知られている企業です。Forbes紙によるアジアの富豪ランキングで現在1位のポニー・マー(馬化騰)氏が創業し、QQやWeChatといったアプリケーションが人気です。

2017年にはFacebookを超えて、Apple・Google・Amazon・Microsoftといった世界の五大企業の仲間入りもしています。

テンセントが創業されたのはインターネット黎明期の1998年で、翌年の1999年2月にリリースされたのが、IM(インターネットメッセージング)サービスの
「QQ」です。中国人口の60%以上の人がこのサービスを使っています。

wechat.jpg
Periphery Digital

また、モバイルへのシフトも初期段階で終えており、2011年には*「WeChat」(微信)*をリリースしました。同社の発表では2015年2月の時点で登録ユーザー数は11億2000万人を突破し、20の言語版、200の国と地域をカバーし、70以上の国や地域でトップを走るソーシャルアプリと言われています。

2013年8月には、アリペイに対抗する形で*「WeChat Pay」(微信支付)*もリリースし、簡単に買い物ができるインフラを整備しました。2015年以降、日本の一部百貨店でも利用できます。

3. バイドゥ (百度)

3.jpg
Fortune.com

バイドゥ(百度)は北京大学・ニューヨーク州立大学を卒業し、ダウやInfoseek、Go.comの検索エンジン開発などを経て中国へ帰国したロビン・リー(李彦宏)氏が創業した、中国における検索サイトの大手です。他国と比べると「漢字」を使った検索に強みを持ちます。

日本におけるYahoo! JapanやGoogleと同様、Baiduでも検索エンジンだけではなく、さまざまなサービスを展開してきました。

例えば、掲示板やいわゆる「Yahoo! 知恵袋」にあたる*「Baidu Knows」(百度知道)、いわゆる「Googleストリートビュー」に当たる「Baidu Streetview」(百度全景)*などがそれに当たります。

日本では2008年1月から日本版の「Baidu.jp」が本格始動していましたが、あまりに利用者が少なかったために2015年3月にはクローズ。

日本では検索サービスはあまり人気が出ませんでしたが、iOS 8以降サポートされたキーボードカスタマイズ用アプリSimejiは若い世代を中心に人気を博しており、累計2900万ダウンロードを突破しています。

4. レノボ (聯想)

4.jpg
The Verge

*レノボ(聯想)*は日本でも多く流通しているPCメーカーですが、その歴史は古く、1984年にまで遡ります。

当時は「Legend」と呼ばれていましたが、2004年には商標紛争の恐れがあることから、「Legend」と新しいを意味するラテン語「nova」から、*「Lenovo」*と名付けられました。

もともとは外国ブランドのコンピュータの販売をしていたレノボが大きく舵を切ったのは、ブランドの名前を変えた2004年のことです。採算性が悪かったIBMのPC部門を買収し、世界市場シェアをDellやHPに次ぐ3位にまで押し上げました。

2011年には日本のNECのPC部門・ドイツのPCメーカーであるメディオンも買収し、日本・ドイツの各市場でもNo.1のシェアを獲得しました。2017年には富士通のPC部門も買収しています。

レノボの攻勢はPC部門だけでなく、スマートフォン・タブレット市場でも見られます。レノボはAndroidを搭載したスマートフォンを開発・販売していますが、2013年のITmediaの報道によれば、中国国内では韓国サムスンに次ぐ販売シェアとして、No.2の座に君臨しています。

5. シートリップ (携程)

5.jpg
中国IT情報局

シートリップ(携程)は、1999年に当時オラクルのエンジニアだったジェームズ・リアン(梁建章)氏を中心とした4名のメンバーを中心に設立された、オンライン旅行会社です。子会社に飛行機チケットサイト「スカイスキャナー」や、カリフォルニアに拠点を置く海外向けの旅行サイト「Trip.com」があります。

宿泊施設だけでなく、フライトや列車、パッケージツアーといった、旅行に関する手配はまるまる一式扱っており、中国最大規模を誇っています。観光経済新聞での日本法人社長のインタビューによれば、訪日中国人観光客のおよそ半分がシートリップを使って日本旅行を手配しているようです。2015年からは、「一休.com」と提携し、シートリップから一休提供のプランも予約可能になっています。

2012年には日本版Ctripもスタートしているので、使ったことがある人は少なくないのではないでしょうか。「シーマネー」と呼ばれるポイントサービスも実施しており、シートリップを使うことで次回の旅行の予約が割引になる制度を実施しています。

カスタマーサポートは外注ではなくすべて自社で行なっており、日本語カスタマーサービスがあるため、日本人でも安心して利用することができます。

6. シンランウェイボー (新浪微博)

6.jpg
Qdaily

*シンランウェイボー(新浪微博)*は中国版Twitterとも称されるサービスで、実際にはTwitterとFacebookの両面の要素を併せ持つ中国のマイクロブログサービスです。

ウェイボー(微博)自体は「マイクロブログ」サービスのことを言いますが、中国国内ではウェイボー(微博)といえば*「シンランウェイボー」*のことを指すことがほとんどです。

微博には他にテンセントの運営する*「テンセントウェイボー」(騰訊微博)*が有名で、中国Webマーケティングラボによれば、新浪微博は都市部、騰訊微博は農村部でよく利用されているようです。

中国ではTwitterやFacebook、YouTubeなどの海外のソーシャルメディアは政府によって規制されていますが、それを機に多くの中国企業が類似サービスをローンチしています。シンランウェイボーもそのひとつで、たったの1年半で1億人の登録ユーザー数を獲得しました。

ウェイボージャパンによれば、2018年1月現在、個人アカウント数は7.1億、公式アカウント数は274万件、企業公式アカウント数は130万件、そのうち日本企業の公式アカウント数は1050件に上るといいます。

日本国内でも、中国人観光客の集客や、中国人消費者の「口コミ」を的確に捉えるために、ウェイボーを利用する事業者も増えてきています。また、芸能人を中心にウェイボーの公式アカウントを開設し、中国人へのリーチを広げていく動きも見られています。

7. MOMO (陌陌)

7.jpg
MOMO

*MOMO(陌陌)*は、2011年にスタートしたインスタントメッセージングアプリです。もともとTinderのように身近な人と出会うことができるアプリとして有名でしたが、近年では日本で若い世代を中心に流行しているアプリTik Tokのように、ビデオブログやビデオチャットのようなコミュニケーションに重点を置いたアプリとなっています。

電話番号のほか、WeChatのIDやQQのIDを利用することもできるので、気軽に利用できるライブコミュニケーションツールとして、急速にユーザーを伸ばしています。

知らないひとといきなりチャットやビデオ通話をするというのに抵抗を感じるひとがいるかもしれませんが、中国の人口規模だからこそこうしたアプリが流行るのかもしれません。

また、最近では「小时榜播主」と呼ばれるライブストリーミング機能が人気です。ライブストリーミングを行なっている人は「播主」と呼ばれ、歌を熱唱したり、ラジオのトークのようなことをしたり、ダンスをしたりします。

閲覧ユーザーは「播主」にコメントや投げ銭を行うこともでき、これだけで生計を立てているひともいるようです。

8. BYTON (バイトン)

8.jpg
AUTOCAR UK

*BYTON(バイトン)は、これまで紹介した企業とは一線を画す、注目の中国系EVベンチャーです。業界では「第2のテスラ・モーターズ」*とも言われており、CEOも中国人ではなくドイツ人のカーステン・ブライトフェルド氏です。

BYTONは2016年に香港で設立されたフューチャー・モビリティー・コーポレーションのEVカーブランドとして誕生しました。BMWや日産のエグゼクティブが共同設立したこの会社は、他にもテスラやアップル、グーグルなどのシニアスタッフを引き抜くなどして、急速に開発体制を固めています。

*「なぜ中国?」*と憶測を深める方も多いかもしれませんが、東洋経済によれば、中国に拠点を置くことで、ドイツ・アメリカ・中国をまたぐ水平分業体制が確立されるといいます。

車体のデザインはミュンヘン、スマートカーソフトウェアの開発拠点はシリコンバレーにして、量産を中国で行うというのです。

その意味では中国国内というよりもはじめからグローバルな規模で展開を行なっている企業ですが、中国国内に根を生やした企業として、今後の動静に注目が集まります。

まとめ

最近ではアメリカを牽引するIT企業FANGの中に、アリババやテンセントも入り込んでくるほど、存在感を増してきた中国企業。次に世界の勢力図を塗り替えるのは、どの企業でしょうか。

私たち日本人にとっては、アメリカよりも中国のほうが地理的に近いですが、意外と中国企業のことをよく知らないかもしれません。2020年までにさらに多くの訪日客がやってきますから、今伸びている中国企業の概要を押さえておくのがよいでしょう。

参考:
“GAFA” “FANG”とは?必ず押さえておきたい6種類の呼称と関連企業について