前回は、マーケターが鍛えたいKPIKGI設計の考え方をご紹介しました。

▼前回記事▼
【黒澤友貴のマーケティングトレース】マーケターが鍛えたいKPI・KGIと向き合う力

今回は、マーケターが、もう一歩組織に踏み込むための視点をお伝えしていきます。

マーケターがぶつかる組織課題

マーケターの皆さんは、以下のような組織課題にぶつかる方が多いのではないでしょうか?

マーケティング組織をつくったものの機能しない
・代理店やコンサルティング会社に外注しているが成果が出ない

理想とするマーケティング戦略を実践しようとしても、組織体制が整っていなかったり文化への適応がネックとなり実現しない......という悩みを抱える方が多いのではないかと考えています。

USJをV字回復させた株式会社刀の森岡毅CEOは、著書「マーケティングとは『組織革命』である。」の中で優秀な人材と組織の関係性について下記のように書かれています。

どれだけ優秀な人材も部門も、 組織コミュニケーションが「ボトルネック」になって、 その能力を限定されてしまう。
部品交換よりも急いでやらねばならないのは、 何が神経伝達回路を破断させているのかという原因特定と、社内コミュニケーションを活性化させる組織改革です。

引用元:森岡毅著(2018)「マーケティングとは「組織革命」である。」日経bp社

森岡氏の言葉からも、マーケターは組織の体制や文化を変革する役割が求められていることがわかります。

マーケティングトレースで身に付けたい組織構造を想像する力

著者が実践しているマーケティングトレースでは、分析のための6のステップがあります。マーケターが組織を改善するために、このうちの4番目に当たる「企業の成功の背景にある組織構造を想像する」という視点を説明します。
マーケティングトレース
参考:
【黒澤友貴のマーケティングトレース】マーケティング思考力を鍛えるためのトレーニングとは?

成功しているマーケティング組織には、組織のビジョンを示し、組織をリードしているマーケターが存在しています。

そのマーケターが、組織をどのように動かしているのかを想像することで、自分が仕事ではどんなリーダーシップを発揮するべきかを理解することができます。

ぜひ、マーケターが組織文化を想像する力を磨くためにもマーケティングトレースを活用してください。

組織資源を正しく理解する

マーケティングトレースでは組織構造を把握・理解するためにVRIO分析を推奨しています。

ポイントは、「組織の独自資源を理解する」ことです。

その組織独自の資源を理解しないで、一般論を当て込んだマーケティング戦略では成果は出ません。マーケターにとって、資源と戦略の連動性を読み解く力は、必ず身につけるべきです。

VRIOとは?

VRIOとは、企業の経営資源を分析するためのフレームワークです。
VRIO

①V=Value(経済価値)
組織の経営資源が社会や顧客から価値があるものとみなされているか検討する

②R=Rareness(希少性)
企業の経営資源が市場において希少性の高いものであるかどうかを検討する

③I=Imitability(模倣困難性)
企業の経営資源が模倣されにくいものであるかを検討する

④O=Organization(組織)
組織体制、規模、方針、文化などが優位性を確立するために整っているかを検討する

分析プロセスを整理すると下記の通りとなります。
仮にコンサルティングサービスを展開する組織でVRIO分析するケースを考えていきます。

⑴縦軸に経営資源の要素を並べて、一つひとつ評価
VRIO2

⑵どの組織資源が優位性につながっているのかを確認
VRIO3

⑶戦略成功要因を高める組織資源を特定し、マーケティング領域のターゲットの再定義、コンテンツ設計などに活かす
VRIO4

VRIO分析はあくまでフレームワークの一つですが、使い方を習得しておくと、組織視点と戦略視点を繋げやすくなるはずです。VRIO分析を使い、企業のマーケティングトレースを実施してみましょう。

参考:
【マーケティングトレース】一澤信三郎帆布の愛されるブランド価値を分析してみる