マーケティングオートメーションについて調べていると、「シナリオ」という単語が頻繁に出てきます。

シナリオは、「筋書き」「脚本」といった意味で一般的に使用されている単語ですが、マーケティングにおいてはどういった意味で用いられているのでしょうか。 

またシナリオを設計する際は、どういった点に気を付けるべきなのでしょう。

今回は、マーケティングにおけるシナリオの概要や作り方について解説します。マーケティングオートメーションツールの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. シナリオとは
    1. 顧客のとのコミュニケーションの“筋書き”
    2. シナリオの例
    3. シナリオはなぜ必要なのか?
  2. シナリオの4大要素
    1. 「誰に」
    2. 「いつ」
    3. 「何を」
    4. 「どのように」
  3. シナリオ設計の手順
    1. 「誰に」を決める
    2. 「何を」を決める
    3. 「いつ」を決める
    4. 「どのように」を決める
  4. シナリオ設計で効果を出すためのポイント
    1. コスト効率がよいセグメントを検討する
    2. ターゲティングの軸にするのは行動か属性かライフタイムか
  5. まずは「データ取得のためのシナリオ」を
  6. まとめ

シナリオとは

映画や舞台などで役者が演技をするうえで求められるシナリオ。マーケティングにおいては、どういった意味で用いられるのでしょうか。

マーケティングにおけるシナリオの定義や一般的な例、必要性について説明します。

顧客のとのコミュニケーションの“筋書き”

「行動の筋書き」というというシナリオの意味は、マーケティングでも同じです。ただし、マーケティングのシナリオは演技ではなく顧客に対してとるべきアクションが定められています。

具体的に言えば、「どのような顧客に対して、どのようにアプローチするのかを定めたルールブックのようなもの」ということです。

マーケティングオートメーションを用いた顧客へのアプローチとして代表的な手法のひとつがメール配信です。しかし、やみくもにメールを配信したとしても期待する効果は望めません。

そこであらかじめ設計しておいたシナリオに基づいてメール配信が行われます。シナリオは「誰に」「何を」「いつ」「どのように」という4つの要素で構成されています。マーケティングオートメーションツールによるコンテンツ配信の自動化のメリットを生かすためには、必要不可欠なものです。

シナリオの例

具体的にイメージを膨らませていただくために、シナリオの例を紹介します。

メールを開封したユーザーに対し、資料やサイトのURLを送る。
メールを開かなかったユーザーには、前回送ったメールとは違うアプローチのメールを送る。
特定の商品を購入したユーザーに、後日関連商品の案内メールを送る。
オフラインイベントの開催地から近いエリアに住んでいる顧客にのみ案内のメールを送る。
一定期間アクションがないユーザーに対し、Webサイトに誘導するメールを送る。

これらはシンプルなシナリオの例です。実際には、より複雑なシナリオが設計されます。

上述した例では顧客のアクションが起点になっていることがわかります。これは、顧客がとったWeb上での行動をトラッキングできるマーケティングオートメーションだからこそ可能な自動化と言えるでしょう。

シナリオはなぜ必要なのか?

マーケティングオートメーションを運用するうえで、シナリオはなぜ必要なのでしょうか? シナリオの必要性を考えるために、まずシナリオがないケースを想定してみましょう。

例えば、顧客があるサービスのWebページを閲覧したとします。この顧客はサービスに興味があると考えられるため、すぐにサービス資料のメールを送ると効果的かもしれません。しかし、配信するコンテンツやタイミングを計っているうちに、顧客の興味が薄れてしまいました。

このように、シナリオがない場合はアプローチすべきベストなタイミングを逃してしまう事態が考えられます。インターネットが普及し情報が簡単に手に入るようになった現在、顧客の興味の変遷もスピーディーです。一度顧客が興味を持ったとしても、興味をさらに強めるための施策を連続して打たなければすぐに忘れられてしまいます。

シナリオが必要な理由は、「アプローチをすべきタイミングを逃さず、顧客を取りこぼさないため」です。「誰に」「何を」「いつ」「どのように」さえ決めておけば、実際に配信する業務はマーケティングオートメーションが行ってくれます。

シナリオの4大要素

マーケティングにおけるシナリオは「誰に」「いつ」「何を」「どのように」という4つの要素で構成されています。それぞれの要素について、詳しく説明します。

1.「誰に」

マーケティングでは、アプローチする対象を明確にします。シナリオにおける「誰に」の設計は、このマーケティング対象を明らかにする作業です。「ターゲティング」とも呼ばれるこの作業は、シナリオ設計で最も基本的な部分と言えます。

ターゲットとする顧客を決める際には、顧客をいくつかの軸に基づいて分類します。分類の軸としては以下のようなものが代表的です。

ライフサイクル

マーケティングでは、顧客と企業の関係をライフサイクルで分ける分類方法が一般的に用いられています。

明確な決まりがあるわけではありませんが、以下のようなライフサイクルがあります。

1.見込み顧客
商品・サービスを購入する見込みのある顧客。
2.新規顧客
新しく商品・サービスを購入した顧客。
3.一般顧客
継続的に商品・サービスを購入している顧客。
4.優良顧客
頻繁に商品・サービスを購入している顧客。
5.休眠顧客・離反顧客
かつて商品・サービスを購入していたが、離れてしまった顧客。

一般顧客と優良顧客の違いや、休眠顧客・離反顧客に分類する条件は企業によって異なります。

また、顧客は新規顧客から一般顧客へ、優良顧客から休眠顧客へといったようにライフサイクルを移動していきます。

行動

顧客がとった行動を軸にすることもあります。「展示会への参加」や「来店相談」などオフラインの行動が軸になることもありますが、マーケティングオートメーションツールを運用している場合は、通常Web上の行動が軸として考えられます。

例として以下のような行動が挙げられます。

・メールを開封した。
・メールに記載されているURLをクリックした。
・商品をカートに入れた。
・商品ページを閲覧した。

マーケティングオートメーションツールを利用すれば、管理している顧客情報(リード情報)とこうしたWeb上の行動を紐づけてトラッキング可能です。

属性

属性は、顧客そのもの持つ情報によって分類する軸です。主に以下のようなものが属性に該当します。

・性別
・年齢
・職業
・居住エリア
・結婚の有無
・子供の有無

こうした情報による分類から何らかの共通点があると仮定し、施策を打ち出します。

属性には顧客が生まれた時点で決まっているものと、変化するものがあります。例えば、年齢は生まれた時点で決まり、変えられません。職業や居住エリアは顧客が能動的に変えられます。

2.「いつ」

どのタイミングでアプローチを実施するかを決める必要があります。

一口に「いつ」といっても、その軸の考え方は様々です。「何時にメールを送ると開封されやすいか」といった軸で時間帯を考えることもあれば、Webサイト訪問といった起点行動からの期間を考えることもあります。

また、連続して配信を行う場合は、「頻度(フリークエンシー)」も検討すべき要素です。

アプローチのタイミングは「早ければよい」「多ければよい」といった単純なものではありません。マーケティングオートメーションによって配信の自動化ができるとはいっても、配信を受け取るかどうかの選択権は顧客が握っています。

顧客が望まないタイミングや頻度での配信は、メール拒否やアプリの削除など起業からコンタクトできない状態につながりかねません。なにより、企業の印象を悪くしてしまう可能性があります。アプローチのタイミングはシナリオ設計の中でもとりわけシビアな要素です。

3.「何を」

シナリオ設計の「何を」は、配信コンテンツの内容を意味しています。

「誰に」アプローチするかが決まっていれば、「何を」伝えるべきかは見えてくるでしょう。伝えるコンテンツの基本は「顧客が興味を持ちそうな内容を伝える」ことです。一方的な売り込みのようなコンテンツでは、顧客につながりを絶たれてしまいます。

以下のようなコンテンツが顧客に応じて使い分けられています。

ブランド紹介コンテンツ

自己紹介のようなコンテンツです。顧客に愛着を抱いてもらうことや、ファンになってもらうことを目的としています。

商品・サービス紹介コンテンツ

顧客と企業との関係を維持するため、継続的に配信するコンテンツです。

ベネフィット系コンテンツ

「あなただけ」「今だけ」といった他者との差別化・時間の差別化をして届ける、顧客にとって利益をもたらすコンテンツです。

4.「どのように」

シナリオ設計における「どのように」は、顧客にアプローチする手段を意味します。

ほとんどの場合は、「チャネル」と理解して問題ありません。

以下のようなチャネルがあります。

Eメール

コンテンツ配信のチャネルとしては最も一般的です。

顧客には迷惑メールと混同されやすく開封率は高くありませんが、低コストで配信できます。

メッセージアプリ・SMS

顧客に親近感を与えやすいチャネルです。

一部のメッセージアプリは実店舗に近づくとメッセージが送信されるような、オンライン・オフラインを連携させる配信を実現しています。

ダイレクトメール

メールやメッセージアプリよりはコストがかかりますが、個人や法人が直接手に取れる形で配信できるチャネルです。

一部のセグメントには、現在も有効なチャネルです。

アウトバウンドコール

「アプローチできる時間が限られている」「コストが高い」といった問題がありますが、そのまま成約に結び付けられる点が強みです。

店頭・営業

アウトバウンドコールと同様にコストの高さがネックですが、条件次第ではそのまま成約に持ち込めます。

シナリオ設計の手順

実際にマーケティングオートメーションのシナリオを設計する際には、どのようなプロセスで進めていけばよいのでしょうか? 

シナリオ設計の手順について説明します。

「誰に」を決める

まず、アプローチの対象となる顧客セグメントを決めましょう。

マーケティングオートメーションを導入している場合、膨大なリード情報が管理されているはずです。このリード情報の中には、顧客の属性やWebでの行動履歴が記録されています。

ライフタイム軸で顧客を分類してターゲティングしたい場合は、マーケティングオートメーションツールのスコアリングが役立ちます。スコアリングは顧客の行動に応じてポイントを加点・減点し、合計点で顧客の見込み度を測る機能です。主観に頼らず顧客の見込み度を“見える化”する機能として役立てられています。

分類軸の選び方やターゲティングは自由です。ただし、すべてのセグメントに対してシナリオを設計しなければならないわけではありません。

セグメント分けの結果、シナリオを設計すべき層なのかはよく検討しましょう。あまりにも小さいボリュームのセグメントであれば、無視しても問題ありません。

「何を」を決める

続いて、アプローチの内容を検討します。上述したとおり、基本的な考え方は「顧客が今、何に興味を持つか」です。

顧客をライフサイクル軸で分類したケースで、それぞれに最適なコンテンツを考えてみましょう。

  • 新規顧客にはブランド紹介でコミュニケーションをとり、親近感を根付かせる。あるいは、新規ならではのインセンティブ情報で特別感を演出する。
  • 一般・優良顧客には活動更新の案内を配信し、関係性を維持する。
  • 休眠・離反顧客にはインセンティブ情報を配信し、取り戻しを測る。

これらはあくまで組み合わせの例であり、成果が出るとは限りません。アプローチの内容を決める際には、顧客の心理を分析し仮説を立てます。

シナリオ設計をして実施するアプローチは成果を期待する施策であると同時に、仮説の検証でもあるのです。

「いつ」を決める

アプローチのタイミングを決める際にも、リード管理している情報が役立ちます。

過去の顧客行動に注目し、「起点行動」から「目標行動」へと自然に移ったタイミングを分析してください。

以下は、起点行動と目標行動の組み合わせ例です。

購入→次回購入
資料請求→購入
Web閲覧→資料請求

起点行動から目標行動に遷移したタイミングからは、顧客が決断するタイミングが見えてきます。過去に多くの顧客が決断しているタイミングの少し前でアプローチをかけるとよいでしょう。

顧客の背中をこちらからのアプローチで少し押してやるようなイメージです。

「どのように」を決める

チャネルを決める際は、顧客の趣向とコストを検討してください。主力はメールですが、購買意向が高い顧客に対しては高コストなアウトバウンドコールや、訪問営業が有効な場合があります。

シナリオ設計で効果を出すためのポイント

シナリオ設計にはじめて取り組もうとしても、何を意識すればよいのか見当がつかないかもしれません。

以下では、シナリオ設計で効果を出すためのポイントを紹介します。

コスト効率がよいセグメントを検討する

通常、複数のセグメントに対してシナリオを用意しておく必要があります。しかし、すべてのセグメントに対してシナリオが必要なのでしょうか。

シナリオ設計にはコストと時間がかかります。また、シナリオを設計したとしても成果が出るとは限りません。可能な限り、無駄なシナリオ設計は避けたいところです。

効果が期待できるセグメントかどうかは、シナリオ設計をする前の段階である程度わかります。例えば、「メールを開封していない顧客」や「商談に興味を示していない顧客」に対するシナリオはどの程度の成果が期待できるでしょうか。

シナリオを設計する対象のセグメントとしてボリュームの点では申し分ありませんが、顧客のよい反応はあまり期待できません。一般的に、新規顧客の獲得や離反顧客の取り戻しは高コストだと考えられています。

コストに対して期待できる効果を考えれば、優先的にシナリオを設計すべきセグメントは自然と決まってきます。成果とはコストに対する相対的なものでもあるため、コスト効率がよいセグメントを最初に考えることは大切です。

ターゲティングの軸にするのは行動か属性かライフタイムか

ターゲティングはいずれかの軸をチョイスし、顧客をセグメント分けしたのちに行います。

一般的にライフタイム、行動、属性という3つの軸があることは、説明したとおりです。効果が期待できるシナリオを設計したい場合、どの軸を採用すべきなのでしょうか。

商品やサービス、業界によって重視するものは異なりますが、まずは「行動」を軸として考えることがおすすめです。ライフタイムや属性で分類したとしても、実際の顧客の興味はわかりません。対して顧客の行動には、顧客の興味・関心がダイレクトに反映されています。

何か特別な理由がない限り、行動軸でターゲティングしてシナリオ設計をしてみましょう。

また、アプローチする内容が決めやすいのも行動軸です。他の軸では、ある程度仮説が必要とされます。

まずは「データ取得のためのシナリオ」を

シナリオ設計のためには、豊富な顧客の行動データが求められます。企業にマーケティングオートメーションツールに顧客の行動データが十分に蓄積されているとは限りません。

そのようなケースでは、まず「顧客に行動させるシナリオ」を設計し、行動データを取得することをおすすめします。売上には直結しないシナリオかもしれませんが、豊富な顧客データが取得できればそれだけで有益です。

マーケティングオートメーションツールの力は、管理されているリードの数によって大きく変化します。その後のシナリオ設計に役立つデータが得られると考えれば、コストと手間をかけて「データ取得のためのシナリオ」を設計する価値は十分にあると言えるでしょう。

また、マーケティングオートメーションの導入を成功させるためには、ある程度のスパンで運用する必要があります。シナリオ設計もデータ取得や分析を経て少しずつ洗練されていくものです。

最初から大きな成果を期待し、成果が出ないからといてマーケティングオートメーションを手放してしまうのはもったいないかもしれません。

まとめ

シナリオは、顧客に対してどのようにアプローチするのかを定めたルールブックです。

マーケティングオートメーションによってマーケティング業務の多くは自動化されますが、シナリオがなければ意味のない自動化になってしまいます。

マーケティングオートメーションツールによってはシナリオが作りやすいUI設計になっているものもあります。けれどもあくまでシナリオ自体は人間が作るものです。

シナリオはマーケティンオートメーションツールの価値を大きく左右することを理解し、慎重に設計してください。