SNSフォロワー数から売り上げが予測できる

川部さん:
売上が予測できるというのはすごいですね。具体的にどのような手法なのでしょうか。
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中村氏

中村氏:
タカラトミーでは主力のキャラクタービジネスがあります。過去の例で恐縮ですが、Twitterなどで反響が大きいキャラクター、例えば、「猫のぽんた」のぬいぐるみを販売しました。ぽんたはTwitterやWebコミックなどで現在も人気で、作者の鴻池剛さんのTwitterではフォロワーが100万人を超えています。(※2019年1月29日時点)

そんな「猫のぽんた」をはじめとして、SNSで人気の高い複数のキャラクターのぬいぐるみを販売してきましたが、最近は、売上予測がある程度見込めるようになりました。一つの目安をお話すると、Twitterのフォロワー数の5%は売上が見込めるのです。

遠藤氏:
Twitterというのはコアなファン層が一定数必ずいます。コアなファンは購入がある程度見込めるので、計画がとても立てやすくなりますね。キャラクター商品というものは、売上予測がかなり難しいカテゴリーです。これまでの売上予測では、傾向が近い商品やシリーズが過去にどれだけ売れたか、というデータを参照するしかありませんでした。それが、SNSを通して、具体的な数値として精度が見込めるようになったということは弊社として大きな成果として捉えています。

中村氏:
現在では、弊社の社員が「商品化したい」と考えたキャラクターがあった場合に「フォロワーは何人いるの」と聞くようにしています。そこで予測が立てられますからね。ただ、判断が難しいのは、当初はそれほどフォロワーがおらず、売上が見込めないと判断した場合も、いざ実際にキャラクター商品を作ってみると、フォロワー数が急激に伸びてくる、という場合もあります。

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以前に「タヌキとキツネ」というぬいぐるみを作りました。作者でイラストレーターのアタモトさん(@atamotonu)のフォロワーは製品化当時、20万人ほどだったのですが、現在は60万人を超えるほどに成長しています。そうすると、作者の方々もTwitterで宣伝していただけるので、売上もさらに伸ばしていくことができます。こうしたキャラクター商品は、開発担当が「商品化したい」という情熱を持って、漫画家だったり、作者だったりに交渉するのですが、そうした情熱を信じることで、フォロワーがより伸びてくるということもありますね。

川部さん:
マーケティングでフォロワーを狙ったSNS施策というのはもともと、注力されていたのですか。

中村氏:
今までは注目していませんでした。Twitterを見てる人は商売っ気を嫌がるのではないかと思っていたので。実際、当初はTwitterで商品PRをしても、あまり反応がよくなかったんですね。それが、ここ数年で弊社のTwitter運用担当者もコツを掴んできたのか、当初はタカラトミーモールへの流入がほとんどなかったのですが、現在はペイドサーチに匹敵するほどまで増えてきています。

川部さん:
流入が順調に増えているというのは、目に見えて十分な成果ですね。SNSの活用では、Twitter以外での勝ち筋というのは他にもあるのでしょうか。

中村氏:
Twitter以外のメディアで効果が出ているのはYouTubeです。YouTubeを使う理由は、子どもがテレビを見なくなっているからです。

今では会社全体でYouTubeを使ったプロモーションに力を入れています。極端なことをいうと、今後はテレビとYouTubeを使い分けて、テレビでのCMは打たずにYouTubeだけでヒットさせるなど、チャンネルで使い分けることも大切になってくると思っています。

テレビCMはマスメディアであり、多くの視聴者が見込めますが、一つひとつは15秒や30秒の接触で終わってしまいます。それがYouTubeだと、30分ぐらいは平気で子どもたちは見てくれます。しかも何回も同じ物を見てくれる。特にキッズYouTuber(ユーチューバー)の作品だと、子どものユーザーが繰り返し見ることがわかっています。

難しいのは自分たちで動画の質をあげようと工夫してもなかなか上手くいかないということです。以前に社内でユーチューバーを作って育てるという企画をやろうとしたのですが、再生回数は思うように伸びていきませんでした。ユーチューバーはやはりユーチューバー自身が自分で企画して、自分で撮って、自分で編集して公開するというのが一番ユーザーにウケるんですよね。