2020年2月12日、戦略PRの提唱者である本田哲也氏が、自身が所属する株式会社本田事務所とベクトルグループで3月から業界初の成長型PR人材データベース「SCALE Powered by PR」を運営することを発表しました。この取り組みは、フリーランスまたは副業でPRに従事する人の成長をサポートするアカデミーの開講と、PR人材と企業とをマッチングさせるサービスです。

新たなプロジェクトを始動した本田氏に、日本のPR業界が抱えている課題、「SCALE Powered by PR」を通して見つめる大きなビジョンとは何なのか? そして「SCALE Powered by PR」の取り組みを始めるに至った経緯をお聞きしました。

日本におけるPR業界の課題とは?

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ferret:今回、フリーランスの広報を教育し企業とマッチングするプラットフォームを立ち上げられた理由を教えてください。

本田氏:うれしいことに、日本のPR業界の市場は伸びています。しかし、PRの求人の需要とPRができる人の数のバランスが取れていません。圧倒的に人手不足なんです。また、質の課題もあります。企業が欲している人材とPRパーソンのミスマッチが起こっている。これはPRの考え方が欧米ほど日本では浸透していないために起こるんですが、採用担当者もどういう人を採用していいか分からない場合が多いんです。

現在、働き方改革に伴いフリーランスで働くPRパーソンは多くなっています。フリーランスになって活躍するのはすごくいいことなんですが、フリーランスの人が受注できる仕事には限界があります。それに加えて、教育機会の喪失という問題も孕んでいます。

PRのニーズと需要が広まり業界自体が活気付いてきているにも関わらず、マッチングがうまくいっていないのが非常にもどかしい……。そういう課題を解決するために、今回この取り組みを始めるに至りました。

プロジェクトの名は「SCALE Powered by PR」。そこに込めた想い

ferret:プロジェクトに込めた想いを教えてください。

本田氏:今回、このプロジェクトは株式会社本田事務所と株式会社ベクトルと共同で行います。プロジェクト名は、「SCALE Powered by PR」。そこに込めた意味というのが「PRの力で事業や企業をスケールさせる」「PRパーソンのキャリアをスケールさせる」そして、スケールは物差しという意味もあるので「評価の物差しをつくる」という3つです。

プロジェクトの柱は2つ。フリーランスの方や副業でPRの仕事を行っている人たちに登録していただいて、企業とのマッチングを行います。そして、独自のカリキュラムでアカデミーも開講し、PRの仕事に従事する人たちの成長をサポートします。アカデミーの方は、仕事に取り組みながら成長してもらうことを目的としているので、登録者には無償で提供していきます。講師には私の他、株式会社博報堂ケトル クリエイティブディレクター 嶋 浩一郎氏や株式会社ナイアンティック シニアディレクター 足立光氏、クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部大輔氏など、PRやマーケティング、メディアの領域で著名な方々が指導します。

まずはSCALEの取り組みを、さまざまな企業の方にぜひ知っていただきたい。3月25日(水)に虎ノ門ヒルズで「SCALE Conference 2020―事業をスケールするPRのチカラ―」という企業向けの説明会を開催し、講師として活躍していただく方などを招いて、SCALEの概要についてお話をさせていただきます。

コンピテンシーの独自開発。5つの力でスーパーPRパーソンになれる

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ferret:アカデミーではどのようなことが学べるのでしょうか?

本田氏:先ほど「評価の物差しをつくる」と言いましたが、日本はPR後進国のため、「コンピテンシー」が確立されていないんです。コンピテンシーというのは、高い業績や成果をあげられる人に共通している特性のことを言います。今回このプロジェクトを実施するにあたり、コンピテンシーは絶対につくらなければいけないと思いました。そこで、日本のPRの第一線で活躍されている方とディスカッションさせていただき、さらに、パブリック・リレーションズやメディアなどを研究されている、広島市立大学の准教授・河炅珍(ハキョンジン)氏にも監修・協力をしていただいて、「SCALEコンピテンシー」をつくったんです。

コンピテンシーは5つの要素からなります。「マルチ憑依力」「背負い力」「見立て力」「ナラティブ力」「変動実行力」です。「マルチ憑依力」というのは、PRの仕事では、ステークホルダーをはじめさまざまな立場の人の気持ちを考えないといけません。メディアは何を考え何を求めているのか、また、有識者やインフルエンサーなど、一緒に仕事をする人も多岐にわたります。優れたPRパーソンはそれぞれの立場に「憑依」できるんです。次の「背負い力」は、いわばスポークスパーソンとしての素養です。広報担当者やPRパーソンは常に何かを背負う代弁者です。それは、企業であったりクライアントであったり、ブランドであったりいろいろです。優秀な人になると、PR主体の「分身」のようになります。今企業が発信したいことはこういうことだろうとか、社長ならこう回答するだろうとか分かるようになってくる。

その次の「見立て力」は、社会的なトレンドや時流を見抜く力を指します。経営者が世の中に何かを発信する際、それが最適なタイミングなのか否かをPRパーソンは判断できないとダメです。4つ目の「ナラティブ力」というのは語る力のことを言います。どうやって情報を発信するかというストーリーテリング力が必要になってくると同時に、編集力も必要ですね。ただ単に情報発信するだけでは意味がありませんから。最後に「変動実行力」。PRの仕事というのは変化が付きまとうため、変化の中でいかに物事を実行していけるかということです。この5つの力を身につけられると、スーパーPRパーソンになることができます。

フレキシブルチーミングの理想形。本田氏の新たなる挑戦

ferret:「SCALE Powered by PR」を通じて本田さんが描くビジョンとはどのようなものなのでしょうか?

本田氏:日本では本来のPRがまだまだ活用できていません。PRを通して解決する問題や成功する事例がまだまだあると確信しています。それは企業のIPOであったり、国家的なイベントであったり、さまざまなことに通用します。だからPowered by PRと称しているんです。

また独立したときの想いにもつながるのですが、私はクライアントごとに最適なチームを組むフレキシブルチーミングを実行していくことを考えていました。そして今後このフレキシブルチーミングは企業にとっても重要になると思うんです。企業が案件ごとにフリーランスのPRパーソンを起用して一定期間仕事を一緒に行うと、双方がインスパイアされる状態になります。私としては、SCALEは独立したときの想いの一つの具現化ですね。フレキシブルチーミングを一つの事業としてやり始めるということです。

さらに、今まで日本にはPRのスクールやリクルーティングのためのエージェンシーは個々にありました。しかし、コンピテンシーの作成を含めて総合的に行っているところはありませんでした。日本で初めてとなるプロジェクトなので、新たなチャレンジとして活動していきたいですね。

ferret:ありがとうございました。

プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000043585.html

イベント情報

イベント名:SCALE Conference 2020 ―事業をスケールするPRのチカラ―

日時:3月25日(水)17:00〜
場所:虎ノ門ヒルズ
登壇者:
メインスピーカー
株式会社メルカリ 取締役(会長)小泉 文明
株式会社本田事務所 代表取締役 本田 哲也

トークセッション
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 アンバサダー/ブロガー 徳力 基彦
Business Insider Japan 統括編集長/AERA元編集長 浜田 敬子
株式会社マテリアル 執行役員兼Executive Storyteller 関 航
株式会社メルカリ PRチーム マネージャー 矢嶋 聡
申し込みサイト:https://scale-pr.com/

本田 哲也氏プロフィール

株式会社本田事務所 代表取締役/PRストラテジスト
「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出された日本を代表するPR専門家。世界的なアワード『PRWeek Awards2015』にて「PR Professional of the Year」を受賞。セガの海外事業部を経て、1999年に世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年、スピンオフとしてブルーカレント・ジャパンを設立、代表に就任。2009年に「戦略PR」(アスキー新書)を上梓し、マーケティング業界にPRブームを巻き起こす。P&G、花王、ユニリーバ、アディダス、サントリー、トヨタ、資生堂など国内外の企業との実績多数。2019年より、株式会社本田事務所としての活動を開始。著書に「その1人が30万人を動かす!」(東洋経済新報社)、「ソーシャルインフルエンス」(アスキーメディアワークス)、「最新 戦略PR 入門編、実践編」(KADOKAWA)、「広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。」、「戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。外務省のアドバイザーやJリーグのマーケティング委員などを歴任。海外での活動も多岐にわたり、世界最大の広告祭カンヌライオンズでは、公式スピーカーや審査員を務める。

Twitter@hondatetsuya70

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