世界的に見ると、今やTwitterを凌ぐ勢いで急成長を遂げている、中国発の短編動画共有アプリTikTok(ティックトック)。多くのユーザーにリーチできる可能性があることから、最近企業や地方自治体によるプロモーション利用も増えています。

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ところがこのTikTokアプリの使用を巡っては、アメリカを中心に世界各国で「禁止」の動きが広がりつつあります。そこで今回の記事ではビジネスパーソン、マーケター、SNS担当者に向け、日本のユーザーにとって、TikTokはこれからどうなっていくのか世界各国の動向、中国の反応も交えながら読み解いていきます。

TikTok(ティックトック)の世界的な人気

まずは、TikTokの世界的な人気を他のSNSプラットフォームと比較しつつ、数字で見てみましょう。

全世界の月間ユーザー数は8億人

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[図1]SNSの月間利用ユーザー数(全世界)

出典:【最新Excelデータ配布中】日本・世界のSNSユーザー数まとめ(Facebook,Twitter,Instagram,YouTube,LINE)|インスタラボ

世界におけるTikTokのユーザー数は2020年1月時点で8億人(月間)。Twitterの2.5倍以上、LINEの8倍近くに上ります。TikTokは「新興SNS」というイメージもありますが、今やFacebook、Twitter、Instagram、You Tubeと肩を並べる巨大プラットフォームに成長しているのです。

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日本のTikTok(ティックトック)ユーザー数

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[図2]SNSの月間利用ユーザー数(日本国内)
出典:【最新Excelデータ配布中】日本・世界のSNSユーザー数まとめ(Facebook,Twitter,Instagram,YouTube,LINE)|インスタラボ

日本国内におけるTikTokのユーザー数は2019年2月時点で950万人(月間)。既に浸透しているTwitter、Facebook、Instagram、LINE、You Tubeと比較すると少ないですが、それでも着実にユーザー数を獲得している状況が見て取れます。

日本の企業・自治体によるTikTok利用状況

このようにユーザー数が急伸する中、そこへリーチしようとする企業利用も増えています。

日本の企業ではユニクロ、サントリー、J:COMといった有名企業がTikTok向けの短編動画を制作して配信し、プロモーションに活用。

そのほか、埼玉県、神戸市、神奈川県、大阪府など地方自治体によるPR動画配信なども見られました。

参考:
企業は「TikTok」をこう使っている! ユーザーも盛り上がったキャンペーン事例4選|Web担当者Forum
【2020年版】海外SNSランキング | 世界と日本のSNSユーザー数と普及率の違いを分析|Digima

TikTok(ティックトック)と「抖音(ドウイン)」の関係

TikTokは中国発祥のアプリであることは、既にご存知の方も多いと思います。

しかし、中国内で利用されているアプリ「抖音(ドウイン)」と、グローバルに利用されているアプリ「TikTok」はプラットフォームとしては「別立て」されているものです。

「抖音(ドウイン)」の海外版アプリが「TikTok」という立ち位置で、アプリを示すアイコンは全く同じものですが、そもそも登録の入り口・方法から違います。「抖音(ドウイン)」は自分の電話番号を入力してユーザー登録をします。

一方、「TikTok」は「Twitterアカウントで利用する」など他のSNSアカウントと連携できるようになっていて、「抖音(ドウイン)」よりユーザー登録の入り口が簡単、かつ、さまざまな規制がある中国国内のインターネット事情と切り離され、グローバル市場に対応した仕様になっています。

参考:日本人が中国版TikTok「抖音」を利用する方法|中華ライフハック

誰でも分かるTikTokの登録方法・始め方【写真で解説】|STORES MAGAZINE

諸外国の動向

さて、このように世界的な人気を誇り、プラットフォームとして巨大化しつつあるTikTokですが、世界的に見ると「アプリの利用規制・禁止」の逆風に揉まれつつあります。

アメリカ

アメリカのトランプ政権は2020年7月より「TikTok禁止」を主張しはじめ、現在も米国内ではその議論が続いています。

その理由は、「TikTokはユーザーの個人情報に不正にアクセスし、それを中国共産党に流している。アメリカ国民の安全保障上、懸念がある」という主張に基づくものです。

参考:
アメリカ政府がTikTokなどの使用禁止を検討…中国ではIT系企業のデータも政府のもの?|Yahoo!ニュース
※このWebサイトは現在公開されていません

オーストラリア

「TikTokアプリは、安保上の懸念がある」と主張しているのは、米トランプ政権だけに限りません。

現在、中国との関係が冷え込みつつあるオーストラリアの政府高官は、同国内の新聞社のインタビューに対して以下のように回答したと報じられています。

「オーストラリア政府はSNSが情報操作のツールとして使われる危険性を認識しており、国内外の機関と連携して、SNS上でのデマなど、第三国からの内政干渉への対応力を強化している」”
引用元:オーストラリア政府がTikTokを念頭にSNSの危険性に言及|iPhoneMania

これは、TikTokを念頭に置いた発言だと伝えられており、今後オーストラリアがTikTokに対してどのような動向を見せるかも注目されているところです。

EU

そして、EU諸国では現時点では明確に「TikTok禁止」に向けた動きは見られないものの、米・豪の考えに共通するように「個人情報が適切に取り扱われているか調査に乗り出す」と警戒姿勢を示しています。

参考:TikTok、EU当局も調査に向けた動き-個人情報保護巡り|Bloomberg

インド

一方、インドは欧・米・豪と比べ、さらに強硬な姿勢を見せています。
TikTokをはじめ、59ものアプリを使用禁止に。
その中には「微博」「WeChat」「Baidu」なども含まれ、この禁止リストはすべて中国製アプリです。

インドと中国の間では、現在、国境地帯において紛争・衝突が起きています。
これに対する強硬な対抗措置として中国のテクノロジー企業を標的にすることで、インドが中国に対し経済的に制裁をもたらす目的があるのでは、とも報じられています。

参考:インドが中国製アプリ「TikTok」を禁止した本当の理由|NewsWeek日本版

パキスタン

同じく南アジアのパキスタンでは「不道徳で下品な動画の流通」を理由に、TikTokの利用を禁止した、と報じられています。

パキスタン国内では、TikTokアプリにはすでにアクセスできない状態になっており、パキスタン通信局は

TikTokが違法なコンテンツを緩和するための十分なメカニズムに従うことを条件に決定を見直す
引用元:パキスタンが「不道徳で卑猥な」ビデオとしてTikTokを禁止に|Techcrunch Japan

と述べています。

運営企業である中国・バイトダンス社の反応

このように、欧・米・豪、そして周辺アジア諸国による危険視の姿勢が強まりつつあるTikTokですが、運営元である中国のバイトダンス社は次のような要旨を回答しています。

  • 中国政府とは距離を置いている。
  • 反政府活動を取り締まる「国家安全維持法」が施行された香港市場からは撤退した。
  • 日本法人はアメリカ人CEOが率いていて、安全、セキュリティ、製品、公共政策の各分野の主要なリーダーがアメリカで活動している。
  • 中国政府にユーザーデータを提供したことはない。要請されたとしてもそうするつもりはない。

参考:アメリカ政府がTikTokなどの使用禁止を検討…中国ではIT系企業のデータも政府のもの?
|Yahoo!ニュース
※このWebサイトは現在公開されていません

「中国産」アプリと「中国系」アプリの違い

そもそも、中国企業が配信する「中国産」アプリと、TikTokのように海外版はグローバル法人が配信する「中国系」アプリとで、ユーザー登録のステップやその情報の取り扱いには微妙な違いがあります。

例えば「微博」や「WeChat」は中国企業が配信しているもので、日本国内からユーザー登録する場合でも最初に自分の電話番号入力を求められます。このようなタイプのアプリは、中国国内の法律に準じて、ユーザーのデータを監視したり中国の政府機関にデータを送信する機能があらかじめ搭載されており、日本から利用している場合でも、通信の内容は中国政府に共有される可能性があると言われています。

一方、前述したようにグローバルアプリである「TikTok」は最初のユーザー登録時に自分の電話番号入力は求められません。中国発祥ではあるが、あくまでグローバル法人が、中国国内のインターネット事情とは切り離して、グローバル市場において配信しているアプリ、という立ち位置であることが事実です。

そのため、「TikTok禁止」を打ち出す諸国が懸念する「個人情報への不正なアクセス・流出」はいまだ「疑惑」に留まったまま、というのが正確なところだと言えるでしょう。

参考:中国アプリは使って大丈夫?情報流出するの?どんな情報が抜かれるの?|中華ライフハック

日本国内における反応

それでは、日本国内での反応はどうなのでしょうか。

日本政府・各自治体はトランプ政権に同調の方向

7月28日、与党である自民党内の「ルール形成戦略議員連盟」という会が、「TikTokの使用制限を求める提言」をまとめる方針である、と報じられました。

また、この流れを受け、埼玉県や神戸市などTikTokをプロモーションに活用していた自治体も利用停止を表明しました。日本国内でも、同盟国であるアメリカに同調しつつ、TikTok利用への懸念が表出してきている状況にある、という訳です。

このような動向に対し一般のユーザーからは、「もし、TikTokがなくなったら困る」「楽しみを奪わないで」といった声も上がっているようです。

参考:
日本でもTikTokが禁止に?本当に“中華製スパイアプリ”なのか|Yahoo!ニュース
※このWebサイトは現在公開されていません

ByteDance、自治体のTikTok利用停止に「心配をかけて大変申し訳ない」|Yahoo!ニュース
※このWebサイトは現在公開されていません

中国アプリ、日本で禁止されると何が起きるか|東洋経済オンライン

TikTok(ティックトック)は今後どうなるのか?

結局アメリカでは今後どうなるのか

結局、アメリカにおけるTikTok事業はオラクル社とウォルマート社が買収することをトランプ大統領が承認し、「TikTokグローバル」という新会社として米証券取引所へ上場しようとしています。

トランプ政権によるTikTokアプリ配信禁止は、連邦地裁が一旦差し止めました。ところが、ホワイトハウスはこれを「不服」としてさらに上訴。この議論は11月4日の大統領選以降にもなお、持ち越されるとしていて、アメリカにおける今後のTikTokアプリ利用可否に関する結論はまだまだ、先行き不透明なままです。

なお、アメリカでの中国テックジャイアント企業に対する締め付けは、このTikTokだけに限りません。

まず「ファーフェイ禁輸」からはじまり、この記事で述べてきた「TikTok」、そして、「WeChat」利用禁止に関する大統領署名を行うなど次々に禁止施策を打ち出し、さらに次なる標的は「アリババ」だとも囁かれています。

参考:
オラクルとウォルマートのTikTok事業買収をトランプ大統領が容認、TikTok Globalとして米証券取引所上場へ|TechCrunch Japan

TikTok禁止めぐり上訴 米政権|JIJI.COM
※このWebサイトは現在公開されていません

米国政府の次なる中国テック標的はAlibabaか、海外メディアが予想|Yahoo!ニュース
※このWebサイトは現在公開されていません

日本ではどうなっていくのか

日本はアメリカの同盟国であることから、「安全保障上の懸念」と言われたら今後も米政府の動向に同調する可能性が高いと言えるでしょう。特にトランプ政権は、日・豪・印と「対中包囲網」を構築し、将来の公式機構化に意欲を見せているとも報じられています。

なお現在、アメリカでは、トランプ氏とバイデン氏が争う次期大統領選の選挙運動が繰り広げられている真っ最中です。その結果次第で、米中テクノロジー冷戦の動向も変わっていくのでしょうか?

トランプ氏の対抗馬であるバイデン氏は、対中強硬姿勢を見せるものの、TikTok禁止に関しては明言していないようです。しかし、連邦議会の対中姿勢は、ホワイトハウス以上に強硬なものであり、議会側が中国問題に費やす予算は増大する一方なのだとか。

そのため、大統領選の結果次第で仮に政権交代が起こったとしても、米中摩擦が簡単に解消するとは言えないでしょう。今後もアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア周辺諸国をはじめとする対中姿勢を冷静に見ていく必要があると言えそうです。

参考:
ワシントンUPDATE 米中対立は大統領選挙後に解消するのか?|東京財団政策研究所

米、日豪印と「対中包囲網」 将来の公式機構化に意欲|JIJI.COM
※このWebサイトは現在公開されていません

TikTok禁止は「トランプ再選を脅かす」、最新世論調査で判明|Yahoo!ニュース
※このWebサイトは現在公開されていません

グローバルアプリを企業プロモに活用するなら、世界の動向も日々、要チェック

国際政治においても、世界各国の企業による経済活動においても、「グローバリズム」が叫ばれる時代が長く続いてきました。ところがいま、世界の動向は日々刻々と、急速に変わりつつあります。「自国民の安全第一主義」の主張が諸国で声高になり、必ずしも「グローバリズム」という主張だけでは通らないような局面を迎えようとしています。

そんな中で、TikTokのようなグローバルアプリを企業のプロモーションに活用するうえでは、世界情勢に関するニュースも細かくチェックしつつ、長期的なプラットフォーム利用・広告出稿など冷静に検討していくべき時代に差し掛かりつつあるとも言えるでしょう。

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