9月7日、株式会社ロックオン主催のネットショップ事業者向けイベント「EC-CUBE DAY 2015」が開催されました。
本イベントではPARCOやヤフー株式会社のEC事業を手がけている方々が登壇し、成功事例や今後EC事業者が取り組むべき課題についての講演を行いました。

今回は、弊社代表の秋山の講演「本邦初公開!ネットショップ「phocase(フォケース)」が広告費を0にしても、流入数を倍増できた理由とは?初めてのECでも実現できるシンプルマーケティング」の様子をお届けします。

登壇者紹介

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秋山 勝 氏 株式会社ベーシック 代表取締役
高校卒業後、商社での営業職、ITソリューション受託会社の物流センター立ち上げ、一部上場企業での新規事業立ち上げを経て、2004年株式会社ベーシックを設立。設立10年で50以上の事業を立ち上げる。上場企業に3件のバイアウトを行い、アプリ、ASEAN、Webマーケティングの成長市場に対して展開中。強みは新規事業企画、立案。現在5カ年、年商100億企業達成に向けて鋭意進行中。

成功する事業と失敗する事業の違い

僕らが考えている基本的な理念は、*「FOCUS ON THE CUSTOMER」*とにかくユーザーを見ていこうということです。

うまくいったものは必ずユーザーが定義されている、ないしはユーザーの問題解決している、うまくいってないものは我々自身の都合でやっているというものですね。

たとえば余ってしまったものを売ろうというのは、当然うまくいかない。
自分たちのサービスを押し付けるようなことはうまくいかないなというのは経験のなかであります。

phocaseというECサイトをやらせていただいてるんですが、ここでは「日常使いできるおしゃれなデザインケース」を提供しています。

ベーシック流マーケティング

ベーシック流のマーケティングの方法論があります。

「誰の何をどのように」

お客様は誰なんだ、そのお客様が抱えている問題をどのように解決するのか。ここが当てはまらない場合はほぼ売れていないはずです。

逆に、なんで売れているんだろうなというものに対してもしっかり整理してみれば、「こういう部分がお客様の心に引っかかってるんだな」というところが見つかるはずです。

お客様が定義されたら次は、

「誰に何をどう伝えるか」

です。

この会場で「皆さん」と呼びかけてるんですが、たとえば、

「田中さん!」「鈴木さん!」

というふうに自分の名前が呼ばれたら、ぼうっとしてても気付くんですよね。「誰に何をどう伝えるか」ってこういうことです。
「田中さんに向けた商品なんですよ」ということをどれだけ訴えられるかが重要です。

次のところは割愛しますが、みなさんが持たれている商品そのものが問題解決する手段なんですよというとこです。
「問題を抱えている人」がいて、その人に伝える「メッセージ」があって、問題解決できる「モノ」がある。

この3つが基本系です。
ここから外れたものは売れないし、きっちりハマっているものは売れる。
自社でも他社でも分析してみて欲しいんですが、売れているものに関しては「誰に」向けたものなのかが明確になっているはずです。

この3つがしっかり決まっていなければ、改善施策などはやっても無駄です。

phocaseの事例

我々はferretというサイトを持っていて、今会員が30万人弱います。
このサイトを通じて色々な方とお会いしてきたんですが、総じて困っているんですよね。

  • 情報過多で取捨選択ができない
  • 施策の優先順位がわからない
  • 効果のあげ方がわからない。
  • リソースが足りない。

こういう声が多いので、今日はこの辺りを整理しています。

広告費をほぼ0に

実際我々がどうなっているかというところですが、phocaseの直近の数字は以下のとおりです。

フォケース月間のアクセス状況

・50万セッション
・30万UU
・300万PV
(2015年8月時点)

ここまでくるのに色々ありましたが、結果的に一定の収益があがるようになってきています。

次、おなじみのEC-CUBEの画面で年度の比較を見てみます。
現在、去年の8月から昨対比124%で、着地の見込みが年商で3億2000万円までいきそうです。

広告費を削って、というところなんですけども、1年前はペイドサーチが一番大きく、コスト圧迫要因になってました。
現状は、オーガニックSearchが全体の75%を占めるようになってきています。ペイドはなくなりましたね。
そして、ペイドなしで全体の集客286%上昇しています。

広告費を0にすることに成功し、セッションは増加しました。

王道を実践。ウルトラCな施策はない

我々が行っている施策はこちらです。

  • 検索
     SEOコンテンツSEOコンテンツマーケ
  • ソーシャル
     LINE@、Facebook、Twitter、instagram
  • リファラル
     メディア問い合わせ、プレスリリース
  • メール
     リマインド、ステップメール
  • ツール
     データフィードツール
  • サイト内施策
     週末クーポン

これって、全て当たり前の施策ですよね。
当たり前の施策でも、しっかり行えば数字は伸ばすことができます。
ウルトラCな施策はありません。

ここで大事なことは、2つあります。

1.顧客にフォーカスすること。
2.KPIを1つに絞ること。

1.顧客にフォーカスすること

皆様が運営されているサービスは誰のためのサービスか?をきくと、結構答えられないんですよね。
よくあるのは「20代の女性だよ」とか言われるんですが、それじゃ全然甘いです。
届けるメッセージがないです。
それで街を歩く女性が振り向くかというと振り向かないですよね。
ではなくて「田中さん」「佐藤さん」と呼びかけることができるために何をするべきか。
繰り返しになるんですが、

誰の
何を
どのように

をしっかり決めることです。

皆さんイメージしてほしいんですが、ご自身の一番親しい人にプレゼントを送るとき、その人の顔が浮かびますよね?
eコマースをやるうえで重要なことってそういうことなんです。

「誰でもいいからプレゼントあげよう」ってあまりないですよね。
「誰々が誕生日だからあのひとが喜びそうなものってなんだろうな」

と、試行錯誤してあげるということが、eコマースをやるうえでとても重要なことなんです。

耳にタコができるほど聞かれてると思うんですが、結局はペルソナを作りましょうということです。
ちなみにターゲットとペルソナって違います。

ターゲットは「20代女性」のように大枠を指すもの。その中にいる「誰か」を整理するのがペルソナです。
なので、ペルソナを定義する過程で彼らが抱えてる不満や悩みを考えるのは、親しい人にプレゼントをあげるのとなんら変わらないんです。

phocaseの「だれの なにを どのように」

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phocaseの場合をお話しします。

iPhoneに存在して、Androidにないものがあったんです。まだdocomoでiPhoneが出る前の時期ですね。
docomoユーザーが「スマホを持つ=Android」しか選択肢がなかった時代。
その時に無かったのは、「デザインケース」なんです。
Androidってモデルサイクルが凄く短いんです、早くて半年ほどで変わってしまう。そうなると、スマホケースメーカーは在庫を持ちたくないから無難なものしか作れなくなります。
じゃあdocomoの女性ユーザーは白黒透明のスマホケースで不満を持っていないのか?
そんなことあるわけないと思って始めたのがフォケースです

誰の docomoユーザーでAndroidを購入した女性の
何を 自分のスマホをおしゃれにできない状況を
どのように フォケースで解決

というのが僕らがやったeコマースの戦略です。

ペルソナ設定は面倒でも絶対にやるべき

ペルソナを作るのは面倒だと思いませんか?
でもやりましょう。確実に結果が違います。

気が遠くなりそうな作業ではあるんですが、ぼんやりしていたターゲットが1人の人間として明確に見えてきます。
名前とかつけてみると、どんどんイメージが出来上がってきます。

ペルソナを決めると何が起こるかというと、これ、とある検索結果なんですが、他社とくらべて明確に違うのが「誰に」が明確になっているということです。
「大人女子に向けたサイト」なんですよということを明確に示しています。

こういうちょっとしたテキスト1つとってもペルソナ設定によって結果が大きく変わってきます。

2.KPIを1つに

スマートニュースとかグノシーとか皆さん見られると思うんですけど、一週間前に見た記事を覚えてる方っています?
多分いないですよね。僕も覚えてないです。
これって冒頭にお伝えした「情報過多で取捨選択ができない」というところにかかってくるんですが、施策の進め方として、手順を変えるだけで劇的に効果を上げることが一番です。

情報過多で取捨選択ができない場合は、余計なものは見ないのが一番です。優先順位がわからない場合は、ギャップの大きなところから手を付けましょう。
効果があがらない場合は、ひとつ、もしくは最小単位で集中的に取り組むことです。

受験勉強をする時って集中的に何かの教科に一生懸命取り組んだ時って成績があがりやすかったと思うんですけど、マーケティングも同じです。
LINE@やって、メールやって、リスティングやって、SEOやって、コンテンツマーケティングもやってって、無理なんですよ。
できるはずがない。

じゃあそれを整理するために何をしたらいいかというとゴールから考えることです。ゴールを設定されてないことも多いです。
なんとなく売上あげたいとか今より高いというのはゴールではないですからね。
皆さんが成し遂げたいことってなんだということです。

とはいえ施策っていろいろあるんですが、大事なことは絞ることです
「やらないことを決めること」が「フォーカスする」ということ。これはやらない、あれもやらない、なぜならば、がしっかりあるか。

ゴールに辿り着くためにどのような道筋を踏めばいいのかを明確にしたうえで、中間の指標となるものが出てくるんです。
でもこれが逆になっている場合が非常に多いです。
にわかにどこかで聞いて「直帰率を下げなきゃいけない」「流入数をふやさなきゃいけない」となってることが多いんですが、もちろん直帰率は低いほうがいいし流入数は多いほうがいいんですが、それはなぜか、ということに答えられないんだとすれば、ゴールが明確になってないですよ、ということです。

ここも見て、あっちも見てというのは、思考が分散して意味がないです。

繰り返しますが、大事なのは、

・顧客にフォーカス
・KPIも1つ

この2点です。

社名通りになっちゃうんですが、基本を疎かにせずにしないということですね。
弊社では「決着をつける」と言っているんですが、やろうと決めた施策はいいか悪いかの決着をつけてから次に進むと、成長のしかたが圧倒的に違います。
それがあれもこれもそれもやって目標も明確に決めていないと、良いのか悪いのかわからなくていつの間にかただ忙しい、でも結果はでていないという状況になってしまうんです。

僕らも2年間やってきた過程のなかで見つかったことなんですが、そこを疎かにせずに決めたことをシンプルにやりきりましょうということです。

まとめ

短期間の間で急激に売上を伸ばしているスマホケース販売サイト「phocase(フォケース)」の成長の秘訣は、王道の施策を地道にやり切るというところにありました。
全てのサービスはお客様がいてこそ成り立つものですが、運営していくうちに顧客視点を失いがちです。
冒頭の話にある通り、成功している事業には、「ユーザーが明確で、何かしらの問題解決をしている」という共通部分があります。

サービスの運営方針に迷われている方は、一度「誰の何をどのように」(自社のサービスは誰のどのような問題をどうやって解決しているのか)のフレームワークに自社サービスを当てはめて考えることをオススメします。

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