11月10日ヒカリエで開催された『CODE CONFERENCE TOKYO 2015』。
オープニングセッションでは、前LINE社長のC Channel森川氏をはじめ豪華登壇者が目白押しであった本カンファレンスで行われた、Web・ライブ動画・マスメディアを通じて情報を発信する3名によるトークセッション「次世代のコンテンツ発信メディアが語る『メディアの未来』」の模様をご紹介します。

参考リンクCODE CONFERENCE TOKYO 2015の詳細はこちら

本セッションの登壇者

モデレーター

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スピーカー

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未来のメディアはどうなるか

セッションでは、ガジェットや仕事術などのライフハック情報を伝える日本版『ライフハッカー』の編集長を務める株式会社メディアジーンの米田氏、これまで人気テレビ番組『さんまのからくりTV、中居正広の金曜日のスマたちへ、EXILE魂』を手がけてきたTBSのバラエティプロデューサーの角田氏、今話題のライブ動画配信サービス『SHOWROOM』を提供するSHOWROOM株式会社の前田氏、そして、創造的魅力のある人材「QREATOR」の総合営業代理店であるQREATOR AGENT代表の佐藤氏をモデレーターに迎え、今後のメディアについて話し合うというものです。

マスメディア、ライブ動画配信、Webメディアの各視点から”未来のメディアのありかた”について最初に話すのは、ライブ動画配信サービスSHOWROOMを提供する前田氏。実際にSHOWROOMを使ってライブ動画を配信している一般利用ユーザーをモニターに映し、サービス説明を行いました。

SHOWROOMは、一般利用者がリアルタイムにライブ動画を配信し、それを見ている観客(観客も一般ユーザー)がコメントや、いわゆる投げ銭のような形でコミュニケーションを図ることができるサービスです。

角田氏:
これ今ライブなんですか? へ〜、こんな時間にやってるんだ。おもしろい。

実際に、前田氏が投げ銭などのアクションを行う。

米田氏:
生々しいですねぇ。

まるでバーチャル上のライブハウスのようになっている空間では、演者に対して観客がコメントや投げ銭をすることで、ランキングが上がったり観客のアバターが前にせり出すシステムになっていて、これが承認欲求を満たすことに繋がっていると語る前田氏。
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米田氏:
この演者の人をライブで見ている人だけで何人ぐらいいるんですか?

前田氏:
200人くらいで、画面上に出ている観客は上位100位の人達ですね。

角田氏:
さっき話ししてたけど、可愛いから人気になるというわけではないんですよね?

前田氏:
そうです。人気の要素として重要なのがストーリーで、必ずしもパフォーマンスや見た目の良し悪しではありません。感情移入ができるかどうかです。

米田氏:
そうですよね、プロセスがやっぱりコンテンツになると思うんですよね。

角田氏:
そういえば、特殊な事例もあるんですよね?

SHOROOMの演者として40代後半ぐらいの女性が人気となっている事例を紹介。

前田氏:
僕は、たまたま彼女がアマチュアの演者としてデビューする時を見ていて、「昔、アイドルに憧れていた時代があったにも関わらず諦めていた。しかし、SHOWROOMなどの自己発信ができるサービスが増えたことがキッカケで改めて自分を表現するために使っている」という一言で彼女の夢を叶えたいと応援したくなりました。

角田氏:
彼女自身も夢を叶えようとしているし、応援している人も”応援する”という欲望を叶えているということですよね。テレビだと、例えば『学校へ行こう!』で人気となった一般出演者のように、我々で演出して面白い番組に出てもらう流れですが、SHOWROOMさんの場合は、自分で自分を演出できる場を提供しているんですね。

前田氏:
そうですね。今後のコンテンツの未来を語る上でキーワードとなるのは、「予定調和を壊す、偶発性、リアリティ」の3つが重要だと思っています。
例えば、テレビだとリアリティを出すのは難しいと思っていて、面白い番組もどこまで編集を行っているのか、と疑問に思ってしまうことがあります。
だからこそ、演者さんのリアリティが面白さになっていると思っています。

米田氏:
それは記事も同じで、狙っていくと逆にいいねが集まらなかったりする。そういうのってネットの世界では顕著にあって、作為が出過ぎると見抜くんですよね。

角田氏:
テレビも同じです。番組の中で、紹介してほしいこと・してほしくないことを言いたいけど、それを抜きにして、例えば、芸能人が何気なくつけていた腕時計が大量に売れるということとか。

米田氏:
ライフハッカーのネイティブアドでは、通常の記事と同じように自然に読めるよう、通常より10倍くらいの労力をかけて作っています。ネイティブアドは、クライアント、読者もいるが、どちらか一方に偏らず両方を見つつもライフハッカーのブランドを守るように洗練させています。

ここで米田氏がSHOWROOMのマネタイズについて質問する場面も。
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米田氏:
SHOWROOMでは、マネタイズをどのように考えていますか?

前田氏:
ユーザーの数が増えてきていて、B向けのビジネスも始めようと思っていますが、それがなくてもユーザーからの課金モデルで補えてる部分があるので、ユーザー体験を損なわないためにも広告に頼らない方向性を現状は考えています。

角田氏:
それは要するにAKB48のように劇場があって、そこにお客さんが来るような仕組みをSHOWROOMさんはやってるということですよね。

前田氏:
そうですね。

角田氏:
そうですよね、そこで人気だったらセンターに行けるとか応援して育てていこうといった感じですよね。

前田氏:
最近では、台湾の演者も増えてきていて、マネタイズも成り立っています。

米田氏:
今後、演者の中からエキスパートが生まれるといったことも考えられるんじゃないでしょうか?

前田氏:
実際に意図して我々がマネージメントもやっていて、昨年CXさんと番組オーディションを行って、そこから選ばれた演者さんがCDデビューをしました。その結果、CDが売れたりオリコン上位にランクインもしました。

ここで角田氏がWebを通じて情報を発信するお二人に質問をぶつける。
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角田氏:
テレビ側として質問してもいいですか?

米田氏:
どうぞ。

角田氏:
これまでお二人のお話を聞いていて、「Webで人気になった結果、テレビに出演できれば認知の権威となる」といった流れに聞こえたのですが、テレビ側である僕的にはテレビはそんなものなのか?と思います。
ようするに、SHOWROOM、テレビ、ライフハッカーに人気になるということは並列だと考えていて、その中で面白いものだけが、テレビやWeb、小説など、どこでも人気になってもいいと思える未来があるべき姿かなと。

米田氏:
最近では、デバイスの変化も大きいですよね。今はスマホの登場で情報に触れるライフスタイルが変わってきて、ライフハッカーでも8:2でスマホの割合になっています。
昔に比べるとツイキャスをやってても回線の問題で途切れちゃったりしてましたけど、今はiPhoneで一発ですよね。さっきの40代の女性のように。その辺は、表現の幅が広がってコンテンツにも違いが出てくるのかと思います。

前田氏:
元々、視聴者側だったのが発信側になるように、ハードルがすごく下がっていてコンテンツが広がりやすくなっていますね。

先ほどのお話の中で現状と未来という観点から思うことがあります。
現状で言えば、まだテレビの影響力は大きいと考えています。ただ、活用次第であって局地的な話題作りはWebの方が向いていて、それを増幅させる存在がテレビであり、Webとテレビの掛け合わせが重要だと思います。

角田氏:
テレビも、Webとテレビを組み合わせるような、ビジネスモデルの確立された面白い番組ができればと考えています。これまでスポンサーからCMを流す代わりに費用をいただいて番組を作る流れでしたが、番組で全て完結するようにすれば、もっといい番組が作れますよね。番組制作者は演出原理主義で、面白ければ良いという風潮が強いのですが、もう違う気がします。

前田氏:
そうですね。僕らもうまくブリッジになってくれるプロデューサーがいてほしいと思っています。先ほどのようにWebの得意とする局地的な話題作りもマスだとどのように受け取られるかが分からないので、そこをプロデューサーの方の力を借りたいです。

例えば、SHOWROOMの演者をテレビ番組を通じて、新たにヒューチャーしていくとか。

メディアとして持つべき指標について疑問を呈す角田氏。

角田氏:
でもそれって、本当にテレビを見るたくさんの人が見るべきなのでしょうか。
アクセス数が多い方がいいといった話にもなり兼ねなくて、番組を見て人生が変わった、と思えるような人がいればそれだけでいいんじゃないかと思います。人々の心に刻まれたかを図る影響力指数みたいなものがあればいいんじゃないかな。

米田氏:
Webでも同じことを思っていて、ページビュー数の指標が釣りタイトルや中身がない記事を作る原因な気がしている。だから、僕らが見ているのは滞在時間で、ライフハッカーの中では5分以上見ている記事は読者深度が違うと考えていて、プラスSNSのアクションも一つの指標としてみています。

というのも、今は時間の奪い合いのようになっていて、接触面の競争なわけですが、今後はライフハッカーのようなミドルメディアからテレビを繋ぐ出世魚のような流れができていけばいいと思っています。

角田氏:
その中で、天才が生まれるといいですよね。

角田氏:
先ほどの40代の女性のように、今後は若くて可愛い子だけがアイドルになれる時代ではなくなると思います。
良いものは良い、コンテンツの良し悪しで年齢や人種などを超えるような未来になって欲しいですね。

米田氏:
あとは、国境や言語を超えるというのは面白いですよね。例えば、群馬県はブラジル人の移住が多くいのですが、群馬のサンバを踊るご当地アイドルがブラジルで話題になった、なんてことも今の時代だなと思いますよね。

角田氏:
もう今は、国が違えどSNSや動画サービスの登場で同じ意志を持てるんですよね。

米田氏:
ただ、前々から動画の表現に移行すると言われてきてんですが、改めて最近思ったのがテキストと画像は必要だと思ってます。

角田氏:
動画ってやっぱり時間を奪っちゃうんですよね。ある意味、時間を奪う価値としてはいいんですけど、文章の方が好きなときに読める。

米田氏:
本当ですよ。普段からどれだけの文字を消費しているか考えるとLINEとかもすごいですよね。
前田さん、テキストコミュニケーションってどう思いますか?

前田氏:
ターゲットに応じて必要だと思ってます。
SHOWROOMにもテキストベースでやりとりする場所を設けていて、演者とファンがチャットでコミュニケーションをとることができます。

角田氏:
この話を聞いていると、芸能界の未来のように思いますね。

前田氏:
先ほどの話で、現状と未来についてですが、これからの未来に向けてSHOWROOMが一つの市場として捉えられるようにしていきたいと思っています。
例えば、先ほどの40代の女性も月に100万円ほど稼いでいるという事実があり、下手したらメジャーになるよりいいかもしれませんよね。これまで歌手を目指ている子の夢がメジャーデビューとなっていたけど、それ以外の新しい憧れにSHOWROOMはしたいです。

モデレーター佐藤氏から3名に対してコンプライアンスに関する質問をなげかける。
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佐藤氏:
みなさんはコンプライアンスについてどう思いますか? コンプライアンスが厳しくなるにつれコンテンツの幅にも制限が生まれそうだと思うのですが。

角田氏:
テレビで言えば、今も昔も厳しいです。昔やってた「寝起きドッキリバズーカ」なんかすごく厳しかった。理想は、ある程度許せる未来になって欲しいですよね笑。

佐藤氏:
その点で、SHOWROOMではどうでしょうか?

前田氏:
SHOWROOMでも大手の企業との取り組みで課題となる事が多いのがコンプライアンスです。基本的に全てを統制しきれない部分があると思っていて、ユーザーもそこを求めているのではないでしょうか。全てを統制していない空間だからこそ、結果を出していけば、いずれ付いてくることなのかと思います。

米田氏:
最近話題のステマ問題みたいなこともあるのですが、ライフハッカーでは読者に分かるようPRと必ず明記しています。コンプライアンスとはいっても、元々のインターネットってカオスな部分もあったじゃないですか。それが面白い部分でもあって、最低限のコンプライアンスは守りつつも何が飛び出すか分からないようなカオスな部分を残したいですよね。コンプライアンスに縛られすぎればコンテンツを作るのも大変ですし、とても難しい問題です。

各メディアでの実情に触れ、コンプライアンスは守るべきではあるものの、情報を発信するうえでのジレンマがあることは共通であること分かったところで本セッションは終了の時間となりました。