この記事は、2015年12月8日の記事を再編集したものです。

"CMO" という役職があるのをご存知でしょうか?

CMOは日本語に訳すと「最高マーケティング責任者」となり、その名のとおり全社のマーケティング施策を統括する役割を持ちます。

今後、さらにマーケティング戦略がアメリカでは比較的根付いている役職ですが、日本ではまだ馴染みがなく、CMOを設置している会社はほとんどありません。

今回は、CMOが "何のために存在するのか" "具体的にはどのような仕事を行うのか" など、CMOの基本的な情報を解説します。

目次

  1. CMOの役割とは?
    1. CMOとは、経営視点を持ちながらボトムアップをする役職
    2. その他のC◯Oとの役割の違い
      1. CMO
      2. CEO
      3. CFO
      4. COO
      5. CTO
      6. CIO
  2. アメリカでは定着し、日本では定着しない理由
  3. まとめ  

CMOの役割とは?

CMOは「Chief Marketing Officer」の略で、"最高マーケティング責任者" という意味です。

なぜ今、「CMO」が注目されているのでしょうか。

従来、企業内でのマーケティングは専門部署のみで進められていましたが、時代の変化により、徐々に特定の部署のみの業務に留まらなくなってきていることが背景にあります。

人々の生活様式が多様化し、実店舗、テレビ、PC、スマートフォン、タブレットなど、ユーザーとの接触点が無数にある現在、ユーザーにピンポイントで訴求するためには、全社が一体となってマーケティング戦略を練る必要があります。

例えば、メーカーの場合、商品企画、製造開発、集客、物流など、商品を作ってからお客様に届けるまでの全ての工程を考慮した上でマーケティング戦略を立てなければ、ブランドコンセプトにブレが出たり、目指すゴールがバラバラになり、目的達成を遠ざけてしまいます。

そのような状況の中で、全ての部署で横断的にマーケティング施策を行う重要性が高まり、そこを統括する役職として「CMO」が必要とされるようになりました。
  

CMOとは、経営視点を持ちながらボトムアップをする役職

CMOは日本ではまだ根付いているとは言いがたい職種ですが、株式会社シンクロ代表である西井 敏恭 氏は、2014年にオイシックス株式会社(現・オイシックスドット大地株式会社)のCMO(2017年4月よりCMT)に就任されています。

就任当時、同社代表の高島 宏平 氏は、CMOとして就任した西井 氏に対して「マーケティングへの専門性だけではなく、コミュニケーション能力も含めて、お客様と接点をもっている部署に、マーケティングの考え方や姿勢をボトムアップ型で築く」というミッションを掲げました。

CMOは管理職であり、経営に深く関わる役職ではあるものの、実際は現場の声を聞いてそれを全社横断のマーケティング戦略に組み込むというボトムアップ型の動きがメインとなります。

そのミッションを受け、西井 氏はマーケティングを「買いたい気持ち作り」と定義した上で、オイシックス内でのCMO(CMT)の役割を「全社員がマーケティングできるようになること」と捉えているようです。

参考:
結局、イケてるマーケターって増えましたっけ?【オイシックスCMT 西井氏×ferret 創刊編集長 飯髙 対談|前編】|ferret
どうすればCMOを日本に根付かせられるか - Kaizen Growth Drive 2015 -(オイシックス CMO 西井 敏恭 氏)|ferret
  

その他のC◯Oとの役割の違い

CMO

読み:チーフマーケティングオフィサー
意味:最高マーケティング責任者
役割:企業のマーケティング施策全般を統括する役割
  

CEO

読み:チーフエグゼクティブオフィサー
意味:最高経営責任者
役割:経営の方針や戦略の決定を行い、最終責任を負う役割
  

CFO

読み:チーフフィナンシャルオフィサー
意味:最高財務責任者
役割:企業の財務戦略を立案・執行する責任を負う役割
  

COO

読み:チーフオペレーティングオフィサー
意味:最高執行責任者
役割:事業運営に関する業務執行を統括する役割
  

CTO

読み:チーフテクニカルオフィサー
意味:最高技術責任者
役割:企業の技術戦略や研究・開発の方針を立て、統括する役割
  

CIO

読み:チーフインフォメーションオフィサー
意味:最高情報責任者
役割:情報技術を利用して社内の情報を最適化する役割

参考:
【CEO?COO?CFO?】「最高〇〇責任者(CxO)」導入企業が増えている理由と代表的な役職12種を解説|ferret
  

アメリカでは定着し、日本では定着しない理由

アメリカではすでにCMOという役職を設置するのが一般的となっていますが、日本ではオイシックスのような例を除けば、まだまだ導入は進んでいません。

日本でCMOが定着しづらい理由を、西井 氏は「経営視点を持ったマーケターが少ないことに由来している」と分析しています。

マーケティングオートメーションツールを提供する株式会社フロムスクラッチ代表の安部 泰洋 氏は、その理由について以下のように述べています。

アメリカと日本ではCMOの設置率が大きく違うんですが、それは両国のマーケターの定義が違うんだなと。
アメリカでは、市場調査から物流まで全て含めてマーケティングであり、それを統括する役割としてCMOが設置されている。
日本では、マーケティングというと広告に限定されてしまっているから、アメリカのように本来の役割を担うCMOが根付きにくい。

引用:
CMOを目指すマーケティング人材のためのキャリアの磨き方 - CODE CONFERENCE TOKYO 2015 -|ferret

日本でマーケティングが根付かないのは、そもそものマーケティングの定義に問題がありそうです。

マーケティング広告(集客)やリード獲得という枠組みの中で業務を完結させてしまう場合があるため、組織を横断してマーケティングを行う必要性が無いと判断されやすいのではないでしょうか。

オイシックスの西井 氏も、「日本ではマーケティングの定義が限定されていること」を踏まえた上で、CMOが根付かない理由以下のように分析し、そもそも「CMO」になり得る人材が不足している点を指摘しています。

「CMOが必要だ」というのはマーケターが強く訴える話ではなく、経営者が必要性を感じていれば芽生えてくるものかなと思います。
ほとんどの経営者はマーケティングの必要性に気付いているけど、まだまだ人材不足なのが現状です。

引用:
どうすればCMOを日本に根付かせられるか - Kaizen Growth Drive 2015 -(オイシックス CMO 西井 敏恭 氏)|ferret

  

まとめ

「売りたい物が売れない」「マス広告が効かない」といわれるように、時代は激しく変化しています。そこで、今後のマーケティングがますます重要になっていくことは明白であり、経営視点を持ったマーケターである「CMO」はより重要な職種となるでしょう。

しかし、「マーケティング=(企業が)売る仕組み」という枠組みで捉えられている中では、「経営視点を持ったマーケター」は育ちにくいのが現状です。「マーケティング=(ユーザーの)買いたい気持ちを作る」ことならば、本来は経営に深く入り込むべきです。

マーケティングを担当されている方は、まずはマーケティングを再定義し、広告やPRといった枠組みを一度取り払って「売れる仕組みを作るにはどのような戦略が必要なのか」を考えてみましょう。