どうすればCMOを日本に根付かせられるか-Kaizen Growth Drive 2015-(オイシックス CMO 西井敏恭氏)
7月23日(木)、KAIZEN PLATFORM主催のマーケティングイベント「Kaizen Growth Drive 2015」が開催されました。
企業のマーケティング責任者を対象に開催された本イベントでは、企業のマーケティングを促進するためにはどのような組織づくりをすればいいのか、
という部分にフォーカスし、各方面のマーケティングのプロによるセッションが行われました。
今回は、オイシックス株式会社のCMO(最高マーケティング責任者)を務める西井氏による「どうすればCMOを日本に根付かせられるか」をテーマとしたプレゼンテーションの様子をお伝えします。
登壇者紹介
株式会社warmth(CMO支援サービス) 代表取締役CEO
オイシックス株式会社 執行役員CMO
西井 敏恭氏
1975年5月福井県生まれ。2年半にわたって世界一周しながらアジア、南米、アフリカ各地で旅行記を更新。WEBサイトが口コミで広がるなど大人気となって「世界一周 私の居場所はどこにある?(幻冬舎)」など、旅行記三冊出版。
帰国後はEC企業や化粧品会社などでデジタルマーケティングに取り組み、マーケティングのプロとしてデジタルマーケティングフォーラムad:techをはじめ、全国で講演や雑誌などのメディア掲載多数。2013年末にドクターシーラボを退社後、2014年にCMOサービスを展開する株式会社warmth設立、さらに食品宅配ECのオイシックス株式会社にてCMOを務める。
傍ら、イエメン、スリランカ、バングラデシュ、パプアニューギニアなどバックパッカーとして世界的に旅行を続け、訪問した国は120ヶ国以上。
1.CMOってなんでしょう?
皆さんこんにちは。Oisixの西井です。
今日のテーマ「どうすればCMOを根付かせられるか」結構難しいテーマだと思います。
こういう話をする時、よく出てくるのは
・社内のデジタルリテラシーが低い
・経営陣のマーケティングの理解がない
というところなんですが、今日はそういう話はしません。
僕自身が考えているのは、マーケティングで成功する人材が増えてくれば根付くんじゃないかなと。
今日はそのあたりのお話をさせていただければと思います。
まず最初に。
CMOってなんでしょうというところからお話しします。
言葉だけでいうと企業のマーケティング最高責任者
私よくマーケティング業界外の方から「マーケティングって何してるんですか」と聞かれることが多いんですね。
これ実はマーケティング部に所属している人に日本語でなんていうかって聞いてみても明確に答えられない人が多いんですよね。
マーケティングを日本語でいうとなんでしょう?
広告とか市場調査とか、色々出てくると思うんですけど。
マーケティングとは?というのを意味を見てみると、
Wikipediaには「売れる仕組みづくり」
前職の社長には「売れ続ける仕組みづくり」
なので、全部含まれるんですよね。
大事なのは「売る」ではなく「売れる」です。
売るっていうのはセールスなんですが、そうではなく「売れる」
Oisixの場合は消費者目線に立って「買いたい」と言ってます。
日本でマーケティングを語る際、広告が中心になっているというイメージが強いんですよね。
SEMとかCRMとかDMPとかマーケティングオートメーションとか。これらがマーケティングなのかと言うと、
確かに一部ではあるんですが、マーケティング全体の話で言うと一部ですね。
マーケティング=広告とします。
Amazonのディスプレイ広告を見たことはあります?あまりないと思います。
日本に上陸して以来ほとんど広告は打ってないんですよね。
ではAmazonはマーケティングカンパニーではないかというと、そんなわけないですよね。
ゴリゴリのマーケティングカンパニーだと思います。
僕自身が思ってるのは。
配送が早い・探しているものがすぐ見つかる
こういう顧客体験を徹底して投資開発して伸びてきた会社だなと思います。
企業におけるマーケティング最高責任者はCMOなら、
CMOは自社にとってのマーケティングを再定義出来る人だと思ってます。
Amazonの例にもあったように、自社のマーケティングには何が必要なのかがわかる人がCMOなんだと思います。
2.Oisixの事例
Oisixは、全国の無農薬、もしくは農薬を使っていても自分の子供に食べさせても大丈夫なくらい安全性を確保した美味しい野菜を届ける、食品宅配サービスです。強みとしては全国の一流の生産者と提携しているところです。
現在は利用者数 120万人年間売上180億円の規模の会社になります。
社会貢献も積極的に行っています。
凄く良い会社で昨年、日本の食品小売で初めてスティービー国際賞 カンパニーオブザイヤー ブロンズ賞を受賞。
ビジネスモデルとして素晴らしいと評価していただいて受賞しました。
日本だとユニクロさんとか本当に数社しか受賞してないですね。
私自身前職化粧品会社で、食品宅配ECという世界に来て改めて感じたのは、
食品ECってめちゃくちゃ難しいなあと。色んな面で難易度が高いと感じてます。
世界有数の難易度の高い事業
まず鮮度が命ですし、大量生産できるものでもありません。
さらに季節にも影響されやすく流動性が高いんですよね。
これらの困難を乗り越えるために社内で何をしているかというとですね。
社内には100以上のKPIがあってあらゆる部分にKPIを設定して細かく管理しています。
Oisixが素晴らしいのは、かなりデータをかなり活用しているところですね。
データを元に実行できるすごく左脳な会社ですね。
私がOisixにCMOとして就任してちょうど1年ですが、2つ大きな取り組みをしています。
1つはお客様ファーストです。
お客様を大事にしましょうというのはどの企業も絶対に言っていますが、それを実行に移すのは難しいと思います。
これまでは、目標売上達成のために集客、CVRがあって単価があって、それに基づいた実行プランを立てていました。
目標達成の為にメルマガ打ったりリスティングやったりしてました。
これってすごく当たり前のことだと思うんですね。
その行動自体は当たり前だし、正しいことだと思うんですが、お客様観点を取り入れようと。
先にある売上やリピート率や単価って、目先の行動だけじゃなくて、お客様体験価値を高めることで上がるんですよね。
サービスの満足度が高まると、単価、リピート率も上がるよねということが実証されると、サービスの満足度に対して
の動きができます。
今Oisixの実行プランがどう動いているかというと、リピートしているお客様だけでなく、リピートしていないお客様の声を聞いて、長く使っていただけるためのヒントを探って、そのなかで初めてメルマガやLPやUIなどの企画を行っています。
お客様に実際にヒアリングするんですね。
たとえば、人参が食べられない子供がいる家庭があるとします。
Oisixのある人参を食べたら、にんじん嫌いが直ったとすると、お客様はサービスを使い続けますよね。
そういうところがお客様の体験だと思います。
実際コトとして起こっているので、そこを実行プランに落とし込めると、様々な改善ができるのではないかと思います。
もう1つは業態化への取り組みです。
業態の反対語は業種ですね。
業種というのは、野菜販売とか単一の事業を指します。
業態化はお客様が注文してから体験するまでの
「おいしい食事を届ける」こと自体を行うことを指します。
例えば、今までは商品製造だけを行っていたとしたら、消費製造から広告、注文して配送して商品を体験する。
こういうところを横串でさして、Oisixの強みにしようというところですね。
例えばある部署だけがマーケティングを考えているというわけではなくて、配送からバイヤー、受発注している方まで、
皆マーケティングの視点を持って色々できるような取り組みをしています。
最終的に僕らが目指すのは、「おいしい食事を家庭の食卓に届けること」です。
マーケティングで重要なのは、企業の本質的な価値を理解して実行することです。
Oisixの本質的な価値は「美味しい食事を提供すること」にあります。
おいしい食事を提供するための多様な付加価値を理解したうえでSEOやマーケティングオートメーション
DMPなどを使う必要があります。
マーケティングの話をしていると、DMPだけとか、UIだけとかの話になりがちなんですが、何のためにDMPを
使うのかというところですね。
本質的価値を提供するために。UXを最大化する
データドリブンの企業体質
美味しい野菜を生産する人とのつながり
など、色々なアセットがあるからそこを最大化サせるように
3.CMOの役割
CEO高島からのミッションは
「マーケティングへの専門性だけでなく、コミュニケーション能力も含めて、お客様と接点をもっている部署に、マーケティングの考え方や姿勢をしっかりとボトムアップ型で築いてほしい」ということです。
CMOは経営の中の1つの仕事なんですが、トップダウン型ではなく、実はボトムアップ型なんですよね。
全社員に対して、マーケティングの考えを根付かせていくんですね。
Oisixが目指しているのは、全社員がマーケティングをできるようになることです。
それを行うのがOisixの中でのCMOの役割だと思ってます。
4.CMOを根付かせるために
今回のテーマでもある「CMOを根付かせるために」という部分についてですが。
よく「うちの会社ではCMOは必要ない」という声をマーケターの方から聞きます。
そもそも、「CMOが必要だ」というのはマーケターが強く訴える話ではなく、経営者が必要性を感じていれば芽生えてくるものかなと思います。
ほとんどの経営者はマーケティングの必要性に気づいているけど、まだまだ人材不足なのが現状です。
では、どんな人がCMOになれるんでしょう?
私が考えているのは
「売上の責任をもつこと」
「事業を上から下まで全てみえるか」
マーケティング部門が売上の責任持っていないところもあると思うんですが、
経営そのものがマーケティングとイコールになるのでしっかり売上に責任持ってやらないとですね。
CMOはCEOやCOOがみえていないお客様と一番近い存在になるのはもちろん、経営の部分も考える必要がある。
CMOになるために必要なことは
「圧倒的勉強量」と「実行量」です。
世の中の経営者、起業家と同じような動きがCMOには求められます。
5.まとめ
・マーケティングの必要性はほとんどの経営者はきづいている。特にデジタルの必要性も考えられています。
・根付かないのは経営者視点を持ったマーケターが不足しているから。
・知識と実行をためて会社に献身的に動くことです。
・もし社内でのマーケティングに対する理解が低いのであれば、転職してキャリアアップを
総括
CMO(最高マーケティング責任者)という役職は、特にアメリカではその重要性が広く認知され、CMO職を設置する企業が増えていますが日本ではまだまだ根付いているとは言えない状況です。
その原因として、「経営層の理解が不足している」という議論がたびたび持ち上がりますが、西井氏は、原因はそこではなく「CMOになり得る人材が不足しているから」であり、多くの経営者はマーケティングの重要性を理解していると述べています。
CMOには経営者と同じような考え方や動きが要求されるため、必要なスキルセットは膨大です。
また、経営者と同じ動きができる方は既に起業しているケースも多いため、社外から雇用するのはかなり難しいでしょう。
逆に考えると、CMOという役職への
CMOの必要性を感じた経営者は、Oisixで西井氏が取り組まれているように、社員全員がマーケティングを考えられるような組織作りが重要となってくるでしょう。
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