オウンドメディアを運営している方々は、「何のためにオウンドメディアを運営しているのか」という質問に対し、どのように回答されるでしょうか。

多くの方は「自社の売り上げを上げるため」「見込み顧客を獲得するため」と答えるかと思います。
では、オウンドメディアからどのように見込み顧客を獲得し、どうすれば売り上げに貢献できるのか、明確に答えられるでしょうか。

潜在層向けの施策としてオウンドメディアが注目されて以降、多数の企業が着手してきましたが、成功しているのはほんの一部なのが現状です。

今回は、D2Cソリューションズ主催のメディアイベントの一環として開かれた、MOLTS代表の寺倉そめひこ氏とferret飯髙による「オウンドメディアとマーケティング」をテーマにしたトークセッションの様子をお送りします。

登壇者紹介

MOLTS inc 代表 寺倉 そめひこ氏

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経営コンサルティングファーム、広告代理店、藍染師を経て株式会社LIGに入社。入社1ヶ月半でマネージャーに就任、その後新規事業・新規メディアの立ち上げ、企画・メディア運用・Webドラマなどのディレクション、数値管理、人事採用など幅広く行う。2015年3月より人事部長として人事部を立上げ、9月より執行役員に就任し、人事領域、メディア領域を主に担当。

2016年3月に株式会社MOLTSを立ち上げ、5月に独立。Webメディア、人事領域にて複数のパートナーとプロジェクトベースで活動する他、自社メディア・サービスの立上げを進行中。

ferret 編集長 飯髙 悠太

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Webマーケティング事業部 部長。ferret 編集長 / マーケター。
5社を経て、2014年株式会社ベーシック入社。ferretメディア化にあたり参画。
これまでに複数のサービスやメディアを立ち上げる。

そもそも、オウンドメディアとマーケティングとは一体何なのか?

寺倉氏:
オウンドメディアとマーケティングは、「鶏と卵」のような関係だと思っています。
SEOとか、インバウンドとか、企業のWebマーケティングに関する課題を解決するための1つの手段としてオウンドメディアを利用するというのが一般的だと思います。

でも、オウンドメディアってやっていくと面白くて。
僕も2年ぐらいオウンドメディアを運用したんですが、続けていると採用やブランディングに繋がるんですよね。
オウンドメディアから新しい価値が次々生まれてきて、新しいマーケティング課題が出てきた時に逆にオウンドメディアが先行して解決していくというパターンも往々にしてあるので、オウンドメディアとマーケティングって「鶏と卵」みたいな関係だなと。

飯髙:
マーケティングの1つの要素にオウンドメディアが含まれます。
マーケティングは多く分けてマーケットインとプロダクトアウトの2種類の入り方があります。マーケットインはニーズありき、プロダクトアウトは自分が作りたいものを作る。

僕からしたらどちらも自己満足なんですよね。こことどれだけ向き合えるかが重要です。
そして、サービスは最終的には衰退しますが、どのタイミングでピボットするか、継続するか、それも自己満足だと思います。

寺倉氏:
今、「オウンドメディアで失敗している」というお問い合わせがすごく多いんですよね。
オウンドメディアって外部に委託して運営するとなるとかなりコストがかかるんですが、効果自体は1年ぐらいは見ないとわからない。

オウンドメディアが流行りだしたタイミングで目的もなく始めたから、正解や失敗がわからないまま走り出してしまった。
マーケティングの課題を解決するための手段としてオウンドメディアを捉えているところは少なかったんじゃないかなと思います。

飯髙:
僕らもオウンドメディアの支援はやっているんですよね。
やっぱり一番多いのは、やっているけどうまくいかないという話。
というのは、まずマーケティングを根本から理解しておらず、手段が目的化しているからです。

例えば5年前くらいはFacebook、3年前くらいからオウンドメディア、今はマーケティングオートメーションば使えば儲かるでしょうっていう風に考えている方はとても多い。
すべてはマーケティングという大枠にぶら下がる一手法でしかないんですよね。
その点を履き違えている企業は多いなと思います。

オウンドメディアは儲かるのか?

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飯高:
そもそもオウンドメディアって、儲けを考えるものではないですね。
これは僕の中の答えです。結果的には儲かります。オウンドメディアとして確固たる地位を築けばいくらでもマネタイズする方法はあります。
例えばferretってかなりニッチな業界のメディアではありますが、立ち上げ1年半で営業利益黒字出してるんで、そういう意味では儲かります。

ただ、メディアをやるのであれば、誰の何をどのように解決したいか、これが全てだと思っています。
その先に儲けは後からついてくるものです。

どれだけユーザーと向き合って、彼らが求めるものを提供できるのかを考えるのが最初だと思っています。
なので、儲けを考えてオウンドメディアやるのは正直ちょっと違うかなと思います。

寺倉氏:
普通のWebメディアではなく、企業のマーケティング課題を解決するためのオウンドメディアであれば、どんなに頑張っても10億円ぐらいの規模にしかならないんじゃないかなと思います。
100億や1,000億まではいかないから、オウンドメディアだけではそこまでは儲からないかなと。

基本的には儲けは考えない方がいい。
ただ、メディアをやっていればユーザーはそこそこ集まってくるんですよね。

新しいサービスを立ち上げる時って、いかに認知を広げるかというところに苦心する方が多いと思うんですが、そのような新しいサービスに転用するためにオウンドメディアを使うというならアリかなと思います。

オウンドメディアを使うという選択肢は、ひと昔前まではなかった

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寺倉氏:
ferretってマーケティングツールへの送客として役割もありますよね?リードは結構獲得できているんでしょうか?

飯髙
その質問に答えるには、マーケティングの前段からお話しした方が良さそうですね。

ひと昔前までは、SEOリスティング広告を駆使して顕在層にアプローチすればどんどん顧客を獲得できました。
でも今はプラットフォームの多様化や、日本国内で問題となっている少子高齢化の影響で検索ボリュームは減少、よくても横ばいになっています。つまり青天井ではなくなってしまったんです。
ただ前提としてですが、これまでもこれからもリスティング広告のように顕在層向けのアプローチ手段は有効であり、それは変わらないです。

今は世の中の考えが顕在層だけではなく、潜在層にもアプローチしようという方向シフトしてきています。
その一環としてオウンドメディアに注目が集まりました。

(潜在層向けの)手法って、昔は今ほどできなかったんですよ。
なぜかというと、以前まではユーザーとのタッチポイントはGoogleやYahoo!などの検索エンジンがメインだったからです。

今はソーシャルメディアの登場によってユーザーと出会える場が多様化しました。
加えてテクノロジーの進化によって、多様なプラットフォームでユーザーとコミュニケーションをとりながら、顧客へと育成できる環境が整ってきました。その一つがマーケティングオートメーションです。

そしてやっとそめひこ氏の質問の答えに戻るんですけど、ferretはメディアとしてユーザーとコミュニケーションをとる一方で、自社サービスへの送客数をKPIに設定しています。
今あるテクノロジーを使えば使うほど、育成も送客もうまく回っていくかなと考えています。
結論6月は1500件以上のリードを創出しています。

ferret編集長が語る、月1,500件のリードを創出するオウンドメディアの作り方

メディアを運営するなら、PVやセッションに惑わされてはいけない

寺倉氏:
メディアとしてマネタイズする場合、記事広告バナーPVでお金とると思うんですけど、そういう目線で見るとPVを追いかけるようになるかなと思うんですが、ferretはどうなんでしょう?

飯髙:
ferretはPVは見ていないです。一番重要なのは新規ユーザー数です。
PVってごまかせるところがあるんですよ。ページ分割したり無限スクロールを入れればいくらでも水増しできます。
じゃあセッション数を追えばいいのかというとそれも違います。

メディア運営を続けていればドメインパワーがついてくるし、SEOも上がっていきます。
ドメインパワーやSEOのおかげで、メディアが成長している「風」に見えるのはかなり危ないですね。

オウンドメディアは、いかに新規の潜在層を獲得できるかが鍵になります。
なので僕らは新規ユーザー数を見ています。

伸びているオウンドメディアの共通項とは?

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寺倉氏:
立派な編集長がいるっていうところですね。
立派って、すごく優秀とかそういう意味ではなくて。

ある人事向けのメディアのコンサル入ってるんですが、そのメディアの編集長が、わからないなりに毎日どういうコンテンツが良いか悩んでいるんですよ。
こういうコンテンツが良いとか、こういうのはやりたくないとか、自分の意志を持っているんですよね。
メディアを愛している人が編集長がいれば伸びていくと思います。

あと、実は編集長がいない場合も多いんですよ。
外部にメディアを委託している場合、業者とクライアントで責任をなすりつけあってしまうケースがとても多いんです。

両方でなすりつけあいになちゃったら、ほぼ確実に失敗してしまうと思います。
メディアに限らずどんなプロジェクトでも同じですよね。

飯髙:
僕は、失敗ができていることだと思います。
なんとなくやっているところはすごく多いです。目標設定がなければKPIもない。
多くのオウンドメディアは失敗すらできていないです。

失敗すらできていないのに辞めているというのはすごく問題だと思います。
目標があって、単純にどれだけやれるか。人の人生も同じだと思いますね。

伸びているオウンドメディアって多くの失敗を経験しています。
いろんなコンテンツを潰しながら成長しているんです。

必要以上に失敗する必要はないですが、失敗って目的があるから自覚できることです。そういった意味での失敗をしたほうがいってことです。

Webの良さは「失敗できるところ」で、オウンドメディアは失敗の原因をいろんな側面から解剖できる

寺倉氏:
最近、紙とWebの違いってなに?というテーマで話す機会が多いんですが、Webは失敗してもいいからどんどん進めようというのが特性がありますよね。

飯髙:
そういう意味でいうと、僕はWebがすごく好きですね。
紙の指標って、発行部数と購入部数しか追えなくて、どのページが見られているかを可視化することができないんです。
紙の編集者さんをすごく尊敬しています。コンテンツを作るプロですし、ミスが一切許されない。

一方でWebだと、記事一つ一つの効果をしっかり解剖できるんですよね。
特にオウンドメディアの場合、検証できる指標が多数あるので、いろんなテストをダイナミックに実施できます。

とにかく、失敗した方が学びは大きい。
1回成功したら、3回負けたったいい。それを繰り返しできることがWebの良さです。