博報堂DYメディアパートナーズが2016年6月に発表した「メディア定点調査2016」によると、現在スマホの普及率は70%を超え、タブレットの所有率も4割にのぼる勢いです。

参考:
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査2016」時系列分析より|ニュースリリース|博報堂DYメディアパートナーズ

所有率が初めて7割を超え、いよいよスマホが主要デバイスになりつつありますが、スマホ向けのプロモーションをやり切れていない企業はまだまだ多いようです。

企業は、スマホ上でどうユーザーにリーチしていけばいいのでしょうか。
今回は、FeedTech2016内で行われたLINE上級執行役員の田端氏による「ダイレクトレスポンスにおける、LINEの最新活用シーンと今後の可能性」をテーマにしたセッションの様子をお届けします。

登壇者紹介

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田端 信太郎(LINE株式会社/上級執行役員 コーポレートビジネス担当)

株式会社リクルートにて、フリーマガジン「R25」の立上げを行い、創刊後は、広告責任者を務める。
その後、株式会社ライブドアにて、ライブドアニュースの責任者を経て、執行役員メディア事業部長に。
ポータル、ニュース、ブログなど広告を主な収入源にするメディア事業部を統括し、ライブドアのメディア事業の再生をリードした。
2010年5月には、コンデネット・ジェーピーにて、カントリーマネージャーに就任。ウェブ部門を統括。
2012年6月 NHN Japan株式会社(2013年4月LINE株式会社に商号変更) 執行役員に就任。広告事業部門を統括。
2014年4月、LINE株式会社 上級執行役員 法人ビジネス担当に就任。法人ビジネス全般を統括。現職。(引用:https://feedtech.net/#timetable)

スマホの重要性に気づけない日本企業

会場にいる人でスマホを持っていないない人いますか?
このようなイベントに来られている方の中にはおそらくいないでしょう。

広告マーケティング的な分野でいくと、テレビCMの広告主は、テレビの普及率を気にしないんですよね。
ある意味おかしいです。デジタルの場合は普及率を気にするのに。

首都圏の交通広告も電車にのることを前提としている。
スマートフォンについても2013年からほとんど持っていることが当たり前になってきています。
地方もお年寄り含めてそうなるでしょう。

テレビ局の方は、スマホを「セカンドスクリーン」と呼びます。

もし、無人島にテレビ・スマホどっちか持っていけるとなった場合、皆さんはどちらを選ぶでしょうか。
ほとんどの人はスマホでしょう。

「セカンドスクリーン」という言葉は「テレビが王様だった時代の」古い考えを無意識に引きずっています。

マーケットの現実としては、スマホこそがファーストスクリーンじゃないかと思っています。

博報堂メディアパートナーズの調査によると、20代30代くらいから接触時間は実際にテレビを超えています。

40,50代もテレビの接触時間は減少しています。
今やスマホはテレビを超えています。

私はスマホの有効性を口を酸っぱくして言っていますが、実社会ではなかなか受け入れられないですね。

たとえばビール会社や自動車会社は、若者の○○離れという言葉をよく使いますよね。
じゃあ、若者に向けて、プロモーション費用をスマホに費やしているか。
ビール会社がスマホに広告費を割いているか?3%もないでしょう。0.3%ぐらいじゃないですか。

予算を決める立場になると「テレビを少し減らして、スマホを増やして」みたいに、道路工事とか役所のことをバカにできない予算編成を引きづる会社がまだまだ多い。

自社でスマホアプリを作っても、「ゾンビ化」する可能性が高い

企業がスマホ関連のビジネスをやるとき、おそらくアプリをローンチするという考え方をするところが多いと思います。

ニールセンの調査によると、平均的なスマホユーザーは72%アプリ、28%をWebブラウザの閲覧に割いています。

PCからスマホにシフトした結果、Webの役割が減っていっているんですね。

SEOの重要性もスマホ時代を迎えるにあたって相対的に減っていくでしょう。
スマホ上のコンテンツアプリ内で消費されます。
コンテンツを指し示す任意のURLすらいりません。

最近面白いのは、LINE上でコンテンツを共有するとき、画面ごとにキャプチャして送りつけるんです。
20年くらいインターネットを使ってる世代はネットでシェアするときはURLを送るのんが当たり前でした。
それはもう古いやり方になってきています。

アプリ中心の文化に慣れ親しんだ世代からしたら、キャプチャでの共有が当たり前です。
インターネット的な、グーグル的な、オープンな世界ではなくなってきています。

皆さん、先週一週間で使ったアプリっていくつあります?
せいぜい10個くらいじゃないでしょうか。マニアじゃない限り。

普段使われるアプリは、わずか9個程度なんです。

でもスマホには40個ほどのアプリが入っています。
着ない服のことを「タンスの肥やし」というが使わないアプリは「メモリの肥やし」と言えますね。

デジタルマーケティングを考えるとき、必ず**「アクティブユーザー」**を見なければいけません。
累計ユーザー数、インストール数を発表するのは(アクティブユーザー数を)言えないような状況だからでしょうね。

スタメンの座をめぐって色んなアプリがしのぎを削っています。
この9個のなかに例えばコンビニチェーンが入れるか、入れませんね。
大手の銀行がバンキングアプリを出したから入れるか、まず無理でしょう。

いろんな企業がスマホ時代に対応するために独自のアプリを出しました。
しかし、散々な結果に終わっている場合がほとんどです。

・ほとんどの企業がまずインストールしてもらえない
・インストールさせるのにコストがかかる(数百円のコスト)
・その上でアクティブで使ってもらえない、インストールでおしまい。
・しまいにはスマホの引っ越しでおいてかれる。

しかも、iOSやgoogleplayのカテゴリでそれぞれ上位300位より落ちると、アプリ名を正確に検索しない限り見つけることができません。techcrunchの表現で言えば**「ソンビアプリ」**と化します。

世の中のほとんどのアプリが普通にディレクトリを探して出会えるようなアプリになっていない。
関係者が探す必要がある。そうじゃないと出てこないんです。

世の中で提供されているアプリの83%はもはやそういう状況にあります。
企業が社員に向けて配るアプリならそれでもいいですが、コンシューマー向けにオーガニックな出会いが期待できないアプリは、自己満足に近いものがある。

かなり大手の企業でもLINEやTwitterなどプラットフォームのサービスではない限り、自分のアプリのアクティブ率に自信があるところはほとんどないでしょう。

なので、LINEようなプラットフォームOSのように捉えてもらって、プラットフォームと競合するのではなく、プラットフォームを利用してサービスを提供するのはどうか、というのが我々の考え方です。

独自でアプリを出すのではなく、インフラと化したLINEを利用するのが合理的

我々としてはLINEは様々なサービスやブランド、企業、公的な機関を結ぶコミュニケーションのインフラになっていけるものだと考えています。

LINEは国内の利用者数7000万人にのぼります。しかも7割以上の人が毎日利用しています。

全体では7割ですが、若ければ若いほどアクティブ率は高くなっています。
たとえば10代後半女性の9割以上が毎日LINEを使っています。

意外かもしれませんが、女性の50、60代以上でも毎日使っている人が半数近くいます。
一番低いのは男性の高齢層ですね。

若い女性が使えば男も使います。
若い女性が使えばお父さんお母さんも使います。
若い層は友だちとやりとりするから頻繁だけど、中高年の女性は、頻度はもう少し下がる。
60代以上は孫とやりとりしています。

普及率でみると、スマホの分布と変わらないくらい全国隅々まで広がっていますね。

公式アカウントでお友達になると、(ブロックされない限り)メッセージを読んだという比率が56.5%にのぼります。
メールだと、開封率は10%程度ですがLINEは圧倒的に開かれやすい。
読むだけじゃなくて、クーポン利用やサイト訪問につながる比率も高くなります。

ユーザーと1to1のコミュニケーションを実現する「LINEビジネスコネクト」

公式アカウント単独だと、電子メールマガジンのように全員に対して同じものを送る一方通行な施策しかできません。
電子メールのようなAll or nothingにしかなりません。

ところが、LINEビジネスコネクトを利用すると一方通行ではなく双方向な、1to1でのやりとりが可能になります。

ちなみに、「LINEに顧客情報を上げてくれ」という話ではありません。
APIは土管のように機能するのでLINEは情報を保持ません。

ターゲティング配信は企業側がお持ちの情報を元にします。
ビジネスコネクトはファーストパーティーのデータを前提として利用します。

例えばLINE上で、ユーザーに帰宅時間を聞きます。帰宅時間が18:30なら、18:45にビールの情報を送ることができます。
雪が降っている時に、その地域だけスノータイヤのプロモーションをすることも可能です。

LINEの長所は、やはり送信後すぐに読んでもらえるところにあります。

メールはそうはいきません。半数の人が読むまでに平均6時間のタイムラグがあります。
LINEの場合、数分で読んでもらえます。

このように、ビジネスコネクトを基盤にしながらbot的なサービス拡充を予定していますし、これからも強化していきます。

LINEが保持するデータを活用できる運用型広告「LINE Ad Platform」

今年の6月から開始しているLINE Ad Platformは、平たく言えば、いわゆる運用パフォーマンス型広告です。

これまでのLINEサービスは、企業が顧客データを持っていないとターゲティング、セグメント配信ができなくて正直なところ限界としてあったんですが、 LINE Ad Platformの場合、LINEが持っている情報でターゲティング配信できます。

LINEしか使わない人は、ネットユーザーのいわゆるサイレントマジョリティ層でかなり多い。
特にそういう層は若者が多くて、テレビ離れしています。
今までのLINEのスタイルだと公式アカウントで自ら友だちになってもらう必要があり、スタンプという強力なフックが付いているとはいえ、やっぱり自分の意思でなってもらうしかなかった。

対してLINE Ad Platformは受け身な人に対しても広告を見てもらえるので、サイレントマジョリティにもアプローチできます。

今後はもっと周辺サービスを拡大していく予定です。
既に始まっているんですが、LINE NEWSと同じ形式で「LINEアカウントメディア」というプラットフォームを使ってもらうことも想定しています。

その面に対して横串で入れさせていただく支援ツールとしてプッシュさせてもらっていますね。

LINE Ad Platformはまだまだ始まったばかりの黎明期なので、広告主様にはこれからにご期待いただきながら、マーケティングをサポートできればと考えています。
テクノロジー企業は連携しながら価値形成していければと思います。