スマートフォンアプリのダウンロード数は年々伸び、消費者のアプリ利用時間も長くなっています。
一方、これからアプリを発表しようという企業にとってアプリの供給数の多さは注視すべき点です。

Googleが2016年6月に公表した限りだと、AppStoreだけでもアプリ数は200万本を越えています。
参照:AppleのApp Store、アプリ数200万本、総ダウンロード数1300億回、デベロッパーへの支払い総額は500億ドルに
その多くの競合アプリの中からユーザーに選んでもらうには、戦略を立てるのは必須と言えるでしょう。

今回は、戦略を立てる上で必要となる目標設定と効果測定の仕組みについて解説します。
「これからアプリに取り組みたいけど、どうやって計画を立てたらいいのかわからない」という方は必読です。

アプリ市場の現状

自社でアプリを開発する前に、アプリの市場がどのようなものか押さえておきましょう。

スマートフォン向けアプリの市場規模は、2016年11月現在全世界で約7.8兆円(AppAnnieマネタイズ調査レポートより)にのぼると言われています。

全体の収益の中で最もシェアを占めているのはゲーム系のアプリですが、アプリの利用時間の長さではFacebookやTwitterなどのSNSの利用も目立ちます。

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AppAnnie
※レポートの全文を開くには無料登録が必要になります。

その反面、ゲームとSNSを除いたアプリはユーザーにとって優先度があまり高くないようです。

加えて先ほど紹介したとおり、AppStoreで公開されている200万本の中から選ばれるのは至難の技で、端末あたりのダウンロード数は2014年時点で53.7。単純計算でユーザーにダウンロードされる確率を計算すると、わずか0.0027%しかありません。

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総務省平成27年版情報通信白書

大量に商品が供給されている市場の中で、ユーザーにとってゲームやSNSより優先度の低い企業アプリがターゲットに選ばれるのは、極めて難しい状況です。目標を立て、計画をしっかり練り込まなくてはダウンロード数は伸び悩んでしまうでしょう。

アプリのKPIにはどのようなものがある?

そこで、アプリの運用を成功させるための計画で欠かすことができないのが「KPIの設定」です。
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、目標達成の進捗具合を見るための指標のことを言います。

例えば、魚屋さんが売上月間100万円を達成しようとする時に「土用丑の日に合わせてうなぎを200匹売ろう」と目標を立てた時、うなぎの販売数がKPIとなります。このKPIは目標達成にかかわり、計測できる内容であることが重要です。
魚屋さんでKPIとして「笑顔で接客する」と設定しても、それは売上に関係ないかもしれませんし、笑顔は数値化できません。このようなKPIは設定しないようにしましょう。

アプリ運用の良し悪しを判断する上で重要なKPI
果たして、それを確かめるにはどのようなKPIを設定すればいいか、ここからは説明をしていきます。

アプリの種類

業種によってもそうですが、アプリの内容によってKPIは異なり、主にスマートフォン向けに展開されるアプリは以下の5種類になります。
すでに自社でアプリを提供している、もしくは今後提供したいと検討している方は、"提供するアプリがどれに該当するか"を考えてみてください。

1. ソーシャルゲーム型アプリ
無料でゲームを提供し、ゲーム内のアイテムへのアプリ内課金で収益を得るアプリです。
ネットショップを展開するECアプリも無料でアプリを提供し、アプリ内の商品を購入して収益を出すモデルなので、ソーシャルゲーム型アプリの部類となります。

例:パズル&ドラゴンズ、モンスターストライク、GRANBLUE FANTASYなど

2. SNS型アプリ
この型は、ユーザーが交流する場(環境)のみを提供し、ユーザー自身がコメントや写真を共有するアプリを指します。主な収入源はアプリ内に設置した広告になります。

例:Facebook、Twitter、LINE、Ameba Piggなど

3. メディア型アプリ
こちらは生活に役立つ情報など大量のコンテンツを提供するアプリです。コンテンツの中に広告記事を入れ、広告収入を得ます。

例:グノシー、スマートニュース、

4. 企業アプリ
企業が提供するアプリは、アプリ自体で収益を得るタイプのものだけではなく、企業の認知度上昇や実店舗への誘導に利用することもあります。
その用途は大きくわけて2種類です。
(1)店舗検索、クーポン、商品情報など、自社の製品・サービスを拡張するアプリ
(2)自社の製品・サービスを、ユーザーにもっと楽しく使ってもらうためのアプリ

例:マクドナルドクーポンアプリ、スシローアプリなど

5. 売り切り型アプリ
カメラ、ビジネス効率化のツール、電子書籍など、有料無料問わずダウンロードの時点で売り切るタイプのアプリです。
AppStoreに並ぶ99%がこのタイプのアプリだと言われています。

例:目覚まし時計アプリ、カメラアプリ、タスク管理アプリなど

売上を出す仕組みを分解してKPIを考える

KPIを設定する際には大きなKPIにどのような小さなKPIが連なっているのかを分解するとわかりやすくなります。
大きな指標のままだと具体性に欠け、何に取り組んだらいいのかわからなくなってしまいます。大きな指標にはどのような指標が関わっているのか見ていきましょう。

その際にはKPIロジックツリーという手法を利用すると便利です。

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KPIロジックツリーは、計画全体の目標であるKGIに連なる形で作ります。
KGIとはKey Goal Indicatorの略で、目標を達成できたか測る指標のことを言います。

例えば、町内会で祭りを開催する時に来客数の目標を3000人と設定し、そのために盆踊りで500人集客するとした時、KGIは祭り全体の来客数のことを言います。その際、盆踊りの参加者数はKPIとなります。

KPIKGIについては、こちらに詳しい記事があるので参考にしてみてください。

参考:
目標設定に必須!KGIとKPIの違いを徹底解説

企業の運営するアプリで言えば、ECアプリアプリでの商品販売の売上をKGIに設定し、クーポンアプリはクーポンの利用によって発生した売上がKGIとなるでしょう。

KGIに連なるKPIは、アプリの内容になって異なります。
その中でもECアプリやゲームアプリで覚えておきたいアクティブユーザーと平均単価について解説します。

参照:
【決定版】アプリ事業のKPIツリー

アクティブユーザーに関わるKPI

アクティブユーザーとは、ある期間の間に1回以上の利用がある顧客を言います。アプリの場合、ダウンロードしたまま一度も起動しない可能性もあります。そのようなユーザーとわけて、アクティブユーザーと表現します。

アクティブユーザーには大きくわけて3つの種類があります。

DAU(デイリーアクティブユーザー)
1日にサービスを利用したユーザーの数

WAU(ウィークリーアクティブユーザー)
1週間あたりでサービスを利用したユーザーの数

MAU(月間アクティブユーザー)
1ヶ月あたりでサービスを利用したユーザーの数

アプリの内容によって、どの範囲からアクティブユーザーと定義づけるのかは変わります。ニュースアプリでは毎日ログインされることが望ましいですが、ECアプリで毎日購入してもらうのは現実的ではありません。アプリに合わせた指標を注視するようにしましょう。

アクティブユーザーを構成するKPIには以下のようなものがあります。

新規流入数
新しくユーザーになった数です。

継続率
新規流入のうち、アクティブユーザーとして継続している割合で、リテンション率とも言います。
例えば、11/1~7までにインストールされた数が100で、その後1週間のうち(11/8~14)に再度アプリを利用した数が100人中50人いたとしたら、継続率は50%となります。この時の時間軸の設定はアクティブユーザーの基準同様、アプリの内容によって変える必要があります。

ストア流入
AppStoreやGoogle Play ストア‎を経由して獲得した新規ユーザーの数です。

広告流入
広告などの活用によって新規で獲得したユーザーの数です。

口コミ流入
他のユーザーからの口コミにより、獲得したユーザー数です。

平均単価に関わるKPI

売上を伸ばすにはアクティブユーザー=客数だけでなく、一人当たりの単価を見ることが大切です。以下はその平均単価に関わるKPIです。

課金ユーザーの割合
ゲームアプリで重要になる割合ですが、ECアプリでも関わる項目です。
ユーザーの中にはカタログ感覚で見るだけで購入に至らない顧客もいます。顧客全体のうち、実際に商品を購入している割合をKPIに設定するのもいいでしょう。

商品単価
販売する商品の単価です。単価を上げれば、その分平均購入単価は上がりますが、顧客が購入しなくなるリスクもあります。

一度あたりの購入点数
一回あたりの商品購入数の平均です。

購入頻度
商品をユーザーが購入する頻度の平均です。

クーポンサイトにおけるKPI

Web上で集客した顧客を実店舗へと誘導する手法をO2Oマーケティングと言い、このようなタイプのアプリKPIの設定に工夫が必要です。
飲食店や家電量販店で多く運用されているクーポンアプリがこれに該当します。

クーポンアプリKPIには以下のようなものが想定されます。

リーチに対するコスト効率
どれだけの人にどの程度のコストで情報を届けられたかの数値です。
広告やシステムにかかる費用アプリの運用にかかったコストを、アプリの利用者数で割ることで算出することができます。
1人あたりのコストが、実店舗で1人あたりが購入する金額を超えているようであれば見直しが必要です。

クーポン利用数
提供したクーポンの利用数です。
クーポンの利用数を計測するには、実店舗での計測が必要です。POSレジであらかじめクーポン利用の際に記録できるよう設定するなどの工夫するようにしましょう。

各KPIを測定するには?

KPIを設定した後は、そのKPIが満たせているのかをチェックしましょう。
Googleからアクティブユーザー数や新規流入数を測定するアクセス解析ツールが無料で提供されています。

Firebase Analytics を利用する

Firebase_Analytics_ _ _Firebase.png
https://firebase.google.com/docs/analytics/?hl=ja

Googleによって2014年に買収され、現在では無料で公開されているツールです。
アクセス解析だけではなく、特定のユーザーに通知を送る機能など内容の充実したツールです。

Googleアナリティクス モバイルアクセス解析の機能を利用する

Google_アナリティクスのモバイル分析およびレポート機能_–_Google_アナリティクス.png
https://www.google.co.jp/intl/ja_ALL/analytics/features/mobile.html

同じくGoogleが提供しているツールですが、こちらは元々Webサイト用に作られたものです。
レポートのカスタマイズ機能は優れていますが、GoogleはFirebace Analyticsを推奨していることを念頭に置いておきましょう。

実店舗で計測する

クーポンアプリなどでは、アクセス解析だけでなく実店舗での計測も忘れないようにしましょう。クーポンを利用した場合はPOSレジで計測できるようにしたり、店頭アンケートでアプリを見て来店した顧客を把握する手法などがあります。
アプリ限定クーポンを設定すれば、他のクーポンと混ざることなく計測が可能でしょう。

まとめ

アプリを運用する際には自社のアプリが何を目的としているのかに立ち返り、目標を設定しましょう。
アプリには様々なKPIがあるので、自社がこれから取り組むアプリに合わせた指標を設定します。立てた目標値を計測する仕組みもあらかじめ決めておきましょう。

企業がアプリを開発して成果を出していくには、その他の多くのアプリの中からユーザーに選ばれなくてはいけません。

企業の収益を伸ばす最高のツールになれるよう、自社のアプリKPIを考えてみましょう。