マーケティング3.0・4.0に必要とされる「3i」とは

ここで、マーケティング3.0、4.0を実践するうえで必要とされる「3i」という概念について解説しておきます。3iとは、「ポジショニング」「ブランド」「差別化」の要素で構成される以下の3つの企業イメージです。

ブランド・アイデンティティ

ブランド・アイデンティティは「ポジショニング」「ブランド」の要素からなる概念で、消費者から見て企業がどのような位置付けにあるかを指します。要は企業がどのような取り組みをしているか、どういった商品を出しているのかで消費者からの見方が変わってくるということです。

ブランド・インテグリティ

ブランド・インテグリティは「ポジショニング」「差別化」の要素からなる概念で、消費者から見た企業の誠実さを表しています。社会をよくするために、ほかの企業にはない取り組みをしているかどうかということです。

ブランド・イメージ

ブランド・イメージは「ブランド」「差別化」の要素からなる概念で、いかに消費者の感情に訴えかけるような、独自の商品を出しているかということです。

マーケティング3.0・4.0を実践するには、これら3つの要素をバランスよく取り入れることが重要です。そのために「ポジショニング」「ブランド」「差別化」という面でそれぞれ自社がどういった施策を取っていくのか、それらが3iにどのような影響を及ぼすのかをよく考えていく必要があります。

マーケティング4.0時代の先行事例

レッドブル(Red Bull)

オーストリアのRed Bull GmbH社が販売する清涼飲料水「レッドブル」は、押し売りの形でマーケティングを行わず、スポーツイベントやミュージックフェスなどのスポンサードを積極的に行い、アクティビティをサポートする存在として商品をPRしています。

また、既存のイベントのみをサポートするだけでなく、自分たちで新たにプロジェクトを立ち上げ、個々人の夢や野望を叶えるプロセスも積極的に支援しています。

例として、2016年4月には50カ国以上から165の学生チームが集まり、レッドブルを通貨としてヨーロッパ中を冒険する『Red Bull Can You Make It?』*(※2020年1月24日時点でページが存在しないためリンクを削除しました)*というイベントを行いました。
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このイベントには日本から3チームが参加し、個々人の想いを胸に旅を繰り広げながら、ひいてはレッドブルが世界に通用することを世界的に知らしめました。オンラインとオフラインの狭間を取っ払い、「参加者と商品が共に世界にインパクトを与えていく過程」が多くの共感を呼びました。

このように、レッドブルは「ファン」という枠を超えた熱狂的な推奨者「アンバサダー」を積極的に巻き込み、「共創」のカギとなるメンバーが商品の認知拡大に大きく貢献しているのです。

イギリスにおける医師の給料のポイント制

マーケティング4.0は、企業と消費者のあいだだけでなく、従業員の待遇を考える面でも通用する概念です。イギリスでは、兼ねてから医療費の増大が問題視されており、その解決のために近年、「医師の自己実現」に焦点を当てた給料制度が導入されています。

医師の給料は病院の収入によって保証されているもので、たとえば診察でいかに的確なアドバイスをしようとも、患者さんが支払うのはいつも決まった料金です。そのため、医師がいくら献身的な取り組みをしようとも、従来の仕組みでは給料になかなか反映されない問題がありました。

この点を踏まえて導入されたのが、健康を維持する患者、病気が改善した患者の数に応じて、医師にポイントを与えるという制度です。ポイントは給料に反映され、医師の取り組みが献身的であればあるほど、給料も増える仕組みになっています。

医師の自己実現とは本来、病院に勤めて給料を貰うことではなく、患者の健康を維持すること。ポイントが付くことでその自己実現が可視化され、医師のモチベーションに繋がっているのです。