「どのように集客するか?」

これはイベントを開催する上で、常に主催者・関係者を悩ませる頭痛の種の一つです。
ここ数年はインターネットを絡めたプロモーションを積極的に行うイベントが増えてきており、特に、その手法への注目が集まっています。

そこで今回は、人気音楽イベントが仕掛けているWebマーケティングの手法について、日本最大級のEDMイベント『ULTRA JAPAN』を例にご紹介します。
イベントを主催・運営する立場の方、大小規模問わず、セミナーなどの企画・運用に関わる皆様に必見の内容ですので、ぜひ一読ください。きっと実践で活かせるノウハウが見つかるはずです。

日本最大級のEDMイベント『ULTRA JAPAN』

日本最大級のエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)のイベント『Ultra Japan』のWebマーケティングは、入念な準備の上で成り立っています。

もともと『ULTRA MUSIC FESTIVAL』は、3月にアメリカ・マイアミで開催されている世界最大級の音楽イベントで、2014年に日本初上陸を果たしました。その後2016年までに計3回実施されており、日本におけるクラブイベントとしては最大級の規模を誇っています。

イベント開催日程のアナウンスに始まり、アーティストのラインナップの発表、イベント当日までのカウントダウン、イベント中のダイジェスト中継、アフタームービーの配信など、それぞれの期間ごとに『ULTRA JAPAN』では様々な施策を仕掛けています。

以下より、2016年9月に行われたイベントの開催概要を、日を追いながら分析していきます。

http://ultrajapan.jp/news_detail/1

イベント開催・出演アーティストの発表

イベント開催のアナウンス

日本最大級のEDMイベント『ULTRA JAPAN』は開催決定と同時に、大規模な認知拡大を促しているのが特徴です。
第3回イベントは2015年12月18日に公式ホームページにてアナウンスを行い、2日後の20日17:00には早速第1弾早割チケットの申し込みを開始しました。12月時点では出演アーティストの発表は全くなかったものの、SNSを始めとしたインターネット上の口コミが発生し、第一弾チケットは即日完売しました。
販売方法としては、GAチケット(一般席)におけるイベント3日間の通し券のみではあったものの、稀少な枚数に設定されていたことから2月の第2弾販売も24時間掛からず完売に至りました。

その後も定期的に先行チケットを小刻みに販売し、「ULTRA JAPANのチケットはすぐに売り切れる」という認識が広まりました。

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また、チケットのカテゴリーにはセレブリティ向けのVIP席を用意し、一般席に比べて高めの価格設定で販売しました。さらに「VVIP席」というVIP席よりも高価格な席を用意してあり、イベントに参加したいけれども一般の人とは距離を置きたい著名人などの参加も可能としました。

出演アーティストの発表

ULTRA JAPANの特徴の1つとして、チケットの販売が開始してもアーティストの発表がなかなか発表されないという点が挙げられます。
出演アーティストによってイベントへの参加を決める層もいるため、そうした需要に応えるために、アーティスト情報の解禁後にチケット販売日程を設ける施策も行いました。

2016年の場合、5月7日に第1弾のアーティストの発表を行うと同時に、チケット販売が開始されました。このように、イベントコンテンツの発表に合わせてチケット購入を促す仕掛けを作るのは有用な方法です。

また、超一流のDJともなれば数百万人単位フォロワーを抱えるインフルエンサーである場合が多いため、彼らの告知が集客に拍車をかけ、より一層口コミが生まれやすくなります。

イベントにおいては主催者のみならず、出演者へ告知を催促するのも重要です。

イベント開催までのカウントダウン

ULTRA JAPANは、チケット販売日程を小まめに設定し、アーティストの発表も数回に分けて発表してました。

また、イベント開催のカウントダウンも100日前から行い、「イベントに対する期待感」の醸成を徹底して行いました。

Facebook、LINE、Twitter、インスタグラムといったSNSを駆使し、ユーザーとのコミュニケーションを長期的に行っている点も特徴的でした。

Ultra Japan | Facebook

Ultra Japan アカウントページ | LINE

Twitter

インスタグラムInstagram

イベント期間中の積極的な情報発信

ライブストリーミング配信

ULTRA JAPANのイベント期間中は、ライブ会場での様子をリアルタイムに発信しています。

イベントに参加できない人向けにも、ライブストリーミング放送を生中継を行っていました。

日本ですとニコニコ生放送やYouTubeライブストリーミングのパターンが多いストリーミングサービスですが、今回は韓国のネイバー社のサービス・V LIVEでの配信でした。このようにターゲットやクライアントが世界各国に散らばっているのも、配信形式から確認することができます。

こうした配慮により、イベント3日間のうち1日しか参加できなかった人、チケットを入手できなかった人に対してもアプローチを行うことを徹底していました。開催期間を通してユーザーを飽きさせることなく、コンテンツを楽しんでもらえるように工夫しているのです。

また、スマートフォンへの配信にも対応し、Android・iOSともに専用のアプリをリリースしていました。

イベントでのファッションスナップ

当日来場したお客さんを撮影し、《ULTRA JAPAN 2016 FASHION SNAP》と銘打って一般の方のファッションなども積極的に紹介していました。
DJや会場風景のみならず、参加者自身が主体となれる仕掛け作りに余念がありません。

アフタームービー

ULTRA JAPANの特徴として、イベントが終了した後にも期間中の映像を編集し、YouTubeにてアップロードを行っています。

ムービーの特徴としては、開催地である日本の寺院や伝統芸能などを取り入れ、必ずしもライブの振り返りのみに収まらないことが確認できます。
また、参加者のイベント前のチャットのやり取りや、新幹線に乗り込む様子、イベント会場で自撮りを行う姿なども盛り込み、イベントにまつわる一連の行動に即した映像となっています。

こうした作りからも、イベント参加者の行動に焦点を当てていることが伺えます。

SNSでのリアクション・シェアを前提としたイベント作り

イベントを通して確認できるとおり、イベント運営においてSNSを活用することを前提としています。

細かなスキルとしても、日系アカウントでは少ないGIF画像の投稿を使用しているなど、先行事例が詰まっているUltra Music FestivaのTwitterのアカウントのノウハウを日本式にカスタマイズしていることが見て取れます。

また、こうしたイベントに関する企業とのコラボレーション、内容の記事化を行うため、今回は株式会社ネットネイティブの『モデルプレス』と特設サイトを立ち上げました。

ULTRA JAPAN 2016 × モデルプレス

Facebookで100万フォロワー、Twitterで約16万フォロワーを抱えているモデルプレスのPR力を借り、イベントの情報が回るように設計がなされています。

カスタマージャーニーマップに落としてみる

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ユーザーへのイベントに関するマインドの変化としては、以上のように捉えることができます。

①認知・興味関心
②比較検討
③購入
④参加
⑤継続的接触
⑥共有・拡散

上記の流れの中で、今の自分たちのイベントはどの部分を満たせていて、逆にどの部分は満たせていないのかを抽出する必要があります。
それぞれの段階において、施策をはめ込み、ユーザーが一連の流れを辿れる仕組み作りが大切となります。

まとめ

ULTRA JAPAN自体は非常に大きなイベントですが、Web上での情報発信を意識する際には、カスタマーのユーザー体験をプロデュースする必要性が生じます。

カスタマーが「良いものには反応してくれる」と受動的なマインドを持つのではなく、企業側からアプローチを仕掛け、参加者にとって最高の体験を生み出すことが求められているのです。

SNSの発信の仕方・チケットの発券タイミングなどの例を応用し、イベント運営の際に取り入れてみてはいかがでしょうか?