※この記事はAdjustゼネラルマネージャー佐々 直紀様からの寄稿記事となります。

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筆者プロフィール

佐々 直紀(さっさ・なおき)
1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり、オンラインモールのキュリオシティ、Yahoo!ショッピング、ショッピングサーチビカム、リターゲティング・DMPのVizuryにてAE、AM、マーケティング業務を経験。2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入、2016年11月よりAdjustに参画。数々のスタートアップの立ち上げから軌道に乗せた経験を生かし、ゼネラルマネージャーとしてAdjustの日本オフィスを統括している。

「オーディエンスが思うように広告に反応しなくなった」と感じていませんか?そんな時こそ、新しいことを試してみるべきかもしれません。モバイル広告では常にイノベーションの精神が求められるため、「オーディエンスは獲得できて当たり前」と考えるようになった途端、広告戦略は失敗に終わってしまいます。

優れたモバイル広告戦略を展開するには、価値のあるコンテンツを通して消費者との信頼関係を築くことに重点を置かなければなりません。見込み顧客が楽しめる何かを提供し、ブランド認知度とエンゲージメントを高めるのです。この一例が「アドバゲーム」です。

アドバゲームとは

Advertising(アドバタイジング、広告)とゲームを融合させた造語ならびに広告手法で、広告を目的として提供されるゲームのことを指します。

Social Petaの調査によると、2020年のiOSアプリ合計ダウンロード数の1/4がモバイルゲームだったことが明らかになりました。新型コロナウイルス感染症の世界的流行によるロックダウン期間中、ダウンロード数とゲームプレイ時間は急激に増加し、一部では62%増という数字も出ています。

参考:Mobile gaming industry statistics and trends for 2021

Adjustの「パートナーベンチマーク」レポートでも、ゲームは2021年最大のモバイルカテゴリーであり、iOSの全ダウンロード数の1/4、さらにAndroidの全ダウンロード数の21%を占めることがわかりました。

アプリセッション数、インストール数、アプリ内滞在時間、1日あたりのセッション数は2021年にどれも大幅な伸びを記録し、2030年の終わりまでに、モバイルゲーム市場の価値は2,720億ドルまでに達すると予測されています。2020年時点ですでに980億ドルを突破していることからも、これが決して非現実的な数字でないことがわかります。

参考:モバイルゲーム業界は2030年までに2,720億ドル規模になると予測

カジュアルゲーム市場は非常に高い売上高を誇る巨大マーケットです。これは、ユーザー体験の邪魔にならない広告をゲームの形で表示する、すなわち「アドバゲーム」を活用するチャンスがたくさんあることを意味します。

アドバゲームを使用したマーケティングでは、製品やサービスのプロモーションを行うために、デジタルゲームまたはモバイルゲームを制作します。多くの場合、アドバゲームの主人公やテーマにはブランドや販売される製品に関連したものが採用されます。

例えば、スバルが提供するレーシングゲームでは最新のWRXシリーズを運転でき、ユーザーにゲームを楽しんでもらいながらブランド認知度を向上させる仕組みになっています。

モバイルゲームを習慣的にプレイする人の数は、これからどんどん増えていくと予想されます。おもしろくてプレイしやすいゲームを制作して、新たなユーザーにブランドを知ってもらうきっかけを作り出しましょう。

アドバゲームのメリット

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モバイルゲームの制作には、巨額の投資が必要になる場合がありますが、最新技術を取り入れれば思いのほか簡単にゲームを開発することができます。ノーコード(またはローコード)アプリの開発プラットフォームが登場したことで、ブランドにとってアプリ制作のハードルが以前よりも低くなりました。

モバイルゲームももちろん例外ではありません。ノーコードソリューションを使用すれば、アドバゲームの開発にかかる時間と費用を大幅に削減でき、一部のツールでは無料でシンプルなゲームを作ることも可能です。

アドバゲームのメリットは、インタースティシャル広告とは違い、ユーザー体験の妨げにならないことです。なぜなら、アドバゲーム自体がユーザー体験だからです。

製品を利用している人はブランドを認知し、そのアドバゲームを自ら探し求め、場合によっては、スマホにダウンロードまでした人かもしれません。こういった人々は非常に価値の高いユーザーです。

ブランドのモバイルゲームを制作する際、そのプレイヤーは基本的に、すでにその製品への関心を示している既存のオーディエンスになります。そのため、アプリ内特典をプレゼントしたり、その他特典のリターゲティング広告を表示したりするのに最適なターゲットと言えます。

また、アドバゲームの効果は簡単に計測できます。アプリと同様に、アドバゲームもユーザーに関する膨大なファーストパーティデータを生成するからです。

プライバシー規制により、サードパーティデータは取得しにくいと同時に信頼性に欠けるため、ユーザー自身から直接データを得ることが今後ますます重要になります。

アドバゲームは自社ブランドに適しているか

どの広告フォーマットにも言えることですが、アドバゲームが自社のブランドと成長目標にとって適したものかどうかを判断する必要があります。アドバゲームは、B2BやSaaSブランドよりも消費者向けブランドに適しているのは明らかでしょう。

とは言え、アドバゲームは各種広告タイプのメリットを持ち合わせており、ユーザーとの信頼関係を築きつつ、目障りになるような広告表示や計測をすることなく貴重なユーザーデータを収集できます。

ゲーム開発のハードルが下がり制作しやすくなる中、個性的でユーザーの注目を引きやすいこの新しい広告フォーマットを採用するブランドが、今後増えていくでしょう。

この広告手法を有効活用してブランド認知度をアップさせた成功事例をご覧ください。

Chipotle Scarecrow

米国を中心に展開するメキシコ料理のレストランチェーンの「Chipotle」は、Moonboots Studioと共同で無料のモバイルゲームを制作し、「Food with Integrity(誠実な食品)」キャンペーンを展開しました。

「Scarecrow(カカシ)」と題されたこのゲームは米国iOSアプリストアの無料アプリランキングで一気に急上昇し、15位にランクインするという結果になりました。

ブランド認知度向上を目標に掲げているアプリにとって、ブランドをできる限り多くの人の目に留まるようにすることが重要です。アプリの無料提供がその目標を達成する上での鍵となります。

参考:[カンヌ速報]<PR Lions>「THE SCARECROW」CHIPTLE MEXICAN の作品について

Doritos VR Battle

超没入型体験が味わえるこのゲームでは、プレイヤーはVRヘッドセットを装着してモンスターがひしめき合う幾何学的な宇宙空間でバトルを繰り広げ、できる限り多くのドリトスを集めます。

プレイするにはユーザーがゲームとVRヘッドセットを購入しなければなりませんが、対象をある程度絞り込むことで投資対効果(ROI)をより確実にすることができます。

参考:Doritos VR Battle | YouTube動画

Magnum Pleasure Hunt

世界中で人気を誇るアイスクリームブランドの「Magnum」は、複数のブランドとのコラボにより、Web上でバーチャルトレジャーハントが楽しめるゲームを制作しました。

プレイヤーが参加ブランドのWebサイト上を冒険しながらチョコレートを探すこのゲームでは、ユーザーが友だちにチャレンジを挑んだり、ソーシャルメディアで結果をシェアできる機能が設けられ、ネット上で一気に話題になりました。

ゲーム発表後、サイト訪問者数はわずか7ヶ月で600万人以上を記録し、世界中の人々が合計何万時間にもおよぶゲームプレイを行ないました。ソーシャルメディアゲームはモバイルゲームの未来を担っています。

ユーザーが友だちとゲームの記録を競い、製品をシェアできるようにすることで、新規ユーザーを獲得するだけでなく、他の広告フォーマットに比べてアドバゲームがネット上で話題になる可能性がはるかに高くなります。

参考:Magnum Pleasure Hunt | YouTube動画