ferretをご覧の皆さまこんにちは。沖縄を拠点とするデジタルマーケティングエージェンシーokinawa.io(オキナワアイオー)の金城です。Webマーケティングの戦略立案をはじめとして、各社へチャットボットの導入・運用支援を行っております。

今回の寄稿記事では2016年10月に出版した書籍「チャットボット AIとロボットの進化が変革する未来」をアップデートする意味を込めて、「会話」を新たなOSまたはインターフェイスとして確立していこうとする企業の動向をみていきながら、最終的にチャットボットはどこに行き着こうとしているのかを考察していきたいと思います。

チャットボットのみならず、今後のテクノロジーの進化やSNSとの関連性等に関心をお持ちの方、ぜひ一読ください。
  

チャットボットブームの現在について

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画像引用元:[開発者カンファレンス「F8」2017:1日目発表内容まとめ|Facebook Japan](https://ja.newsroom.fb.com/news/2017/04/f8-2017-day-1/):blank

  
2016年4月に行われたFacebookの開発者会議であるF8。そこでマーク・ザッカーバーグ氏(Facebook CEO)は「もはや電話をかける必要がなくなってしまう」というコメントと共にメッセンジャープラットフォーム上におけるチャットボット機能をリリースしました。

このプレゼンテーションによって、世界中にチャットボットブームが訪れたと言っても過言ではないでしょう。

様々な企業やブランドがボットを導入しはじめ、また簡単にボット開発ができるサービスも多く登場するなど、2016年はその関連ニュースを聞かない日はないほどの盛り上がりだったのではないでしょうか。

あれから1年以上が経過。チャットボットの熱は落ち着いてきているように見えますが、一歩俯瞰してみると、現在、Facebook、Slack、LINE、Amazonなど大手プラットフォーマーたちは、多くのサードパーティ企業が提供するボットを通じて会話データを着々と溜め込んでいる状態です。

チャットボットという言葉の適用範囲について

これまでチャットボットというと、主にテキストによる会話を想定としたテクノロジーを指していましたが、今ではAmazonの音声アシスタントAlexaの興隆によりボイスにおけるボットとのコミュニケーションも一般的なものになりつつあります。そこでこのエントリーにおけるチャットボットとは音声による会話も含んだ概念として進めさせて頂きます。

  

会話に投資をしているプラットフォーマーたち

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テキストや音声等を用いて会話を自動化するプログラム」とも言い換えれるチャットボットですが、その多くはまだ人工無能の領域をでないものであり、AIが人と同じように会話を行なえる状態とは程遠いものです。そんな中、自然言語会話の獲得を目指して、人々との会話の中心に立とうとするプラットフォーマーたちの動向をまずはみていきましょう。
  

2つの巨大メッセージングアプリを持つFacebook

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昨年から続くチャットボットのトレンドを作り上げたとも言えるFacebookは、ご存知のとおりFacebookメッセンジャーとWhatsAppという他を圧倒するユーザー数を持つアプリを2つも有しています。それぞれ12億、10億という月間ユーザーを持ち、同じグループ内で競合させ進化を促しているようにも感じます。

チャットボットにおいて先行してるのは元Paypalの責任者であったデビット・マーカス率いるFacebookメッセンジャーであり、ボットプラットフォームの公開から約1年で既に3.5万ものボットがリリースされています。

Facebookページをもつビジネスアカウントがメッセンジャー上でもスムーズにボット展開を行えるよう、メッセンジャープラットフォームの開発を急いでいる一方、WhatsAppに関してはまだ静観といえる状況でしょう。チャットボットで会話できるFacebookページ、増えていると感じませんか? ちなみにFacebookは「M」というコンシェルジュボットを自社で運用しています。
  

家庭内からIoTプラットフォームの座へ王手をかけるAmazon

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Amazon EchoというスピーカーとAlexaという音声アシスタントで、急遽「会話」領域における中心プレイヤーとして注目を集めているのがAmazonです。今や米国の音声認識スピーカー市場で7割のシェアを持つAmazonですが、音声アシスタントAlexaが潜むスピーカーは2年で800万台を販売。その機能(スキル)は1万を超え、そして700以上の他社プロダクト(主に家電製品)にそのAlexaが導入されるなど、サードパーティを巻き込み進化を続けています。

耳となるスピーカーだけではなく、目となるカメラや情報をよりリッチに伝えるディスプレイも持ちはじめたAmazon Echo、それらの中に入るAlexaはスマートホームの市場から、IoTを制御するソフトウェアのデファクトスタンダードに最も近い存在として注目を浴びています。

最近ではAlexaのノウハウでテキストのボットも作れるAmazon Lexも公開しており、その隙きのなさがうかがえます。
  

人工知能の分野でリードするAIファーストのGoogle

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今回ご紹介するプラットフォーマーで最も人工知能の研究開発が進んでいるのがGoogleでしょう。しかし、メッセージングなどコミュニケーション分野においてはほかに遅れをとっている同社はそれを挽回しようと、2016年から独自のメッセージングアプリ(Allo)とスピーカー(Google Home)をリリースし、テキストと音声どちらの領域でも文脈を読み回答をするAIのGoogle Assistantを稼働させはじめています。

検索、地図、カレンダー、メールなど圧倒的な個人情報を持つGoogleは、Google Nowという行動に先立って必要な情報を提供してくれるサービスをもっていますが、この技術を活かしさらに有益な情報を提供してくれるようGoogle Assistantを改善していくことでしょう。

競合でもあるiOS上でもリリースをしてまでも、その会話データを獲得しようとしています。
  

Siriをどう活用していくかが期待できるApple

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Googleと並び、スマホ時代のプラットフォーマーとして君臨しているAppleもこの会話領域をだまってみているわけはありません。他社の動向をみつつ、やっと2016年からiMesseage(SMS)とSiriをオープン化しました。

しかし、まだサードパーティによる機能提供が活性化している印象はありませんが、評判のいいAirpodsを介してSiriによる音声アシスタントをより強化していくものと思われます。

2017年6月5日に開催されるWWDC2017では、Amazon EchoやGoogleHomeに競合する製品も出してくると噂されております。これまでも競合の動向をみつつ圧倒的に作り込まれたプロダクトを出して市場を一変させるのがAppleでした。その洗練されたUXと、ソフト&ハードの強固なエコシステムを武器にiOSを今後どのように会話をベースとしたOSに進化させていくのか注目に値します。
  

ボットプラットフォームとAIアシスタントの開発を急ぐLINE

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今回ご紹介する中で唯一の国産メッセージングアプリがご存知LINEです。"りんな"や"パン田一郎"に代表されるように他社よりも早い段階から公式アカウントをとおしてチャットボットの仕組みを提供しておりましたが、2016年10月に満を持してLINE上でもチャットボットを提供できるMessage APIが公開されました。

日本では圧倒的に使われているLINEですが、そのボットプラットフォームはまだFacebookほど整っているとはいえないでしょう。決済をとおして急成長しているWeChatに習い、今はLINEpayに注力しているように感じます。

一方それと平行しながら今夏にはAmazon Echoのようなスマートスピーカー「WAVE」と、その中で稼働するというClovaというAIアシスタントをリリースする予定とのことです。そして、もちろんスピーカーにとどまらず、このClovaがLINEアプリの中で私たちのサポートを行ってくれるのは間違いないでしょう。
  

多方面から会話システムへのアプローチを行なうMicrosoft

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Microsoftこそが、どの企業よりも人工知能をベースとした会話システムの包囲網を構築できていると感じます。

AIを伴う音声アシスタントのCortana、3億人以上が使うMessagingのSkype、日本でのりんな、中国でのシャオアイスなどのチャットボット、ボット開発を容易にするbot framworkの提供、音声や画像認識のAPI郡であるCognitive Services、そしてボットを駆動させるクラウドであるMicrosoft Azureなど、あらゆる側面から人工知能をさらに身近なものにしようと動いています。

先日行われた開発者会議「BUILD 2017」ではCortanaが搭載されたスマートスピーカーも公開しています。これら多数のピースをMicrosoftはどう組み立てて、AI戦争を勝ち抜いていくのでしょうか。
  

ビジネスアシスタントとしての活躍するSlack

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ビジネスチャットサービスのSlackこそ、ボットの有用性を知らしめたサービスと言えるでしょう。

リリース当初からオープンなエコシステムの思想を持つサービスでエンジニアの心を掴み、今では500万人のアクティブユーザーと600万もの外部連係アプリを持つ、世界中で活用されているコミュニケーションツールです。

「ビジネスマンのためのバーチャルアシスタント」を目指しているサービスであり、IT企業やスタートアップを中心に愛用されています。実際私も活用しているのですが、仲間とのスムーズなやりとりはもちろん、簡単なコマンドでサーバー情報、アクセス情報、勤怠、メール、ファイル情報などを呼び出すことができ、もはやこれなしでは仕事ができない人も多いことでしょう。

中国での生活、そしてビジネス展開に必須なWeChat

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ご存知、約9億人が使う中国のコミュニケーション、及び決済のインフラであるWeChat。中国でビジネスを行う際、WeChatアカウントの開設は必須ともいえ、webサイトの公開数を超える勢いでビジネスアカウントが作られているともいいます。

Alipayと並ぶ決済インフラとして確立しており、日本からは想像ができないレベルで現金利用が置き換えられてきています。WeChatではショッピングはもちろん、税金や公共料金の支払い、配車、チケット購入、送金、投資、ニュース閲覧など、もはやこのアプリ自体であらゆるオンライン活動が完結してしまうほどインフラ化していると言えるでしょう。

人間同士だけではなく、企業とコミュニケーションをする際の最初の入口として機能している最もわかりやすい事例です。