アドフラウドとは、広告詐欺・広告不正の総称で、ボットや人的に不正な手法で広告の表示・クリックを作り出し、水増しして広告報酬を搾取する不正行為を指します。

2022年のグローバルでのデジタル広告費59.7兆円のうち、約15.5%にあたる9.3兆円がアドフラウド被害に遭うと予想され、日本もおおよそ8,000億円以上の被害を受けると推測されています。(※イギリスの調査会社・Juniper Research社の調査)

この記事では、そうした不正広告の被害にあわないために、アドフラウドの基礎知識と対策方法を解説します。

目次

  1. アドフラウドとは
  2. アドフラウドの仕組み・手法
  3. アドフラウドの種類
  4. アドフラウド被害にあってしまったときの対処法
  5. アドフラウド対策方法

アドフラウドとは

アドフラウドの代表的な例として、競合企業からの意図的な広告クリック広告予算を消化させられたり、広告配信面を持っている悪意ある事業者が自社の広告配信面をクリックし広告収入を不正に得たりするケースがあります。

アドフラウドを放置すると、実際は見られていないインプレッションや広告クリックに対して無駄な広告費を払い続けることになり、広告機会の損失につながります。さらに、本当の広告効果が計測できず、施策の誤った評価・判断にもつながるため、アドフラウドへの対策は広告主にとって必須だと言えます。

また、2021年4月に内閣官房デジタル市場競争本部が公表した「デジタル広告市場の競争評価」でも「アドフラウド」をデジタル広告における課題として取り上げており、日本政府としても対策を進めるよう進言しています。

アドフラウドの仕組み・手法

アドフラウドの仕組みを理解するために、まずはインターネット広告広告費が発生する仕組みを理解しましょう。インターネット広告は、次のような流れをたどります。

  1. 広告が表示・クリックされる度に広告費が発生し、広告主が広告費を支払う
  2. 広告費は、広告代理店とGoogle・Yahooなどの広告配信サービスを経由
  3. 最終的に、実際に広告が表示・クリックされたサイトの運営者に支払われる

アドフラウドを実行する事業者は、このインターネット広告の仕組みを悪用し、サイトを自ら構築して広告枠を設置し、広告を自動でクリックするプログラム(bot)などを利用して大量に広告の表示・クリックを作り出すことで、サイト運営者として広告収益を得ているのです。

Botを利用した広告不正の流れ.png
出典:アドフラウドの仕組みを解説!アドフラウドが発生する原因と対策

アドフラウド被害の事例

アドフラウド被害の事例.png
上記は、実際にあった事例を抽象化したものです。

アドフラウド事業者は、各種オンラインゲームを紹介するWebサイトを自ら構築し、広告配信面を設置。同様のページを100近く複製し、ボットを使って広告を不正にクリック、コンバージョンを引き起こしていました。その結果、この配信面に広告を掲載されていた企業は、月100万円以上の被害にあっています。

アドフラウドの種類

アドフラウドには様々な種類・手法があり、複雑かつ巧妙化しています。どのような種類があるのか、紹介します。

1.隠し広告(Hidden Ads)
ユーザーには見えない表示領域の外側に広告を表示させたり、別の広告に重ねて表示させたりしてインプレッションを稼ぐ方法

2.自動リロード(Auto Refresh)
高頻度で広告を自動的に更新することで、インプレッション数を稼ぐ方法

3.ドメインのなりすまし(Domain Spoofing)
正規のWebサイトになりすまして、広告主から広告料を詐取する方法

4.ブラウザの自動操作(Imp/ClickBot)
プログラムにより操作したブラウザが、インプレッションや不正クリックを生み出す方法

5.不正な広告挿入(Ad Injection)
「インジェクタ」と呼ばれるプログラムによって、ウェブ広告の差し替えを行う方法

6.ファーム(Farm)
ボットやオペレーターが大量に広告の表示やクリックを繰り返す方法

7.データセンタートラフィック(Data Center)
データセンターやレンタルサーバーからの不正にアクセスをする方法

8.クリックフローディング(Click Flooding)
実際のクリックがないのに、クリックがあったと偽装する方法

9.インストールハイジャック(Install Hijack)
ユーザーの端末をマルウェアに感染させ、アプリストア内でのアクティビティを監視する方法

10.クッキースタッフィング(Cookie Stuffing)
ブラウザーのCookieを上書きして、広告の貢献を偽装する方法

11.ジオマスキング(Geo Masking)
位置情報を偽装し、特定の場所でしか表示されない広告を不正に表示する方法

出典:アドフラウドの種類・手法9つを全て解説!アドフラウド対策方法なども

アドフラウド被害にあってしまったときの対処法

上記のようにアドフラウドは巧妙なやり方が多く、そもそも被害にあっていることに広告主自身が気づいていないことが大半です。セルフチェックとして、下記のような現象があった場合はアドフラウド被害を疑ってみた方がいいでしょう。

・ボットや悪戯のようなクリック・コンバージョン(CV)が急増した
広告経由のCVに営業が電話しても、つながらないリードが多い
・特定の広告掲載ページCVR(コンバージョン率)が平均値より異常に高い
・特定の広告掲載ページのCPC(クリック単価)が異常に高騰している

被害に気づいたら、その根拠となるデータとともに、各配信事業者へ不正な広告配信として返金申請を行うことをおすすめします。

アドフラウド対策方法

被害にあわずにすむために、広告主はどのような対策を講じればよいのでしょうか。自社でできる対策方法を紹介します。

ユーザーの挙動をモニタリング

広告にアクセス解析用のタグを設定してリアルタイムでユーザーの挙動をモニタリングすることで、不審な動きを察知します。Google広告の場合は、アドフラウドと思われるユーザーをIP単位でブラックリスト化を行い、配信除外設定ができます。

広告配信後の実績データの確認

広告配信後の実績データから不正な広告CVがあったサイトを人力で見つけ出し、出稿を止めることが可能です。ただし、対象サイトが大量にあった場合は、対応が追いつかないこともあります。

ホワイトリストの作成

安全性が確認された優良サイトを集めたホワイトリストを作成し、その範囲で広告を運用するやり方です。ホワイトリストの常時アップデートには、ある程度の人的リソースが必要です。

その他

その他、アドフラウド対策を行っているDSP事業者を利用する、「PMP(プライベート・マーケット・プレイス)」と呼ばれる、掲載媒体と広告主を限定した広告出稿の仕組みを利用する、有償でアドフラウド対策ツールを導入する、などの手段もあります。

広告主自身でも対策を

広告代理店に運用を依頼している場合、広告代理店側が不正対策を行ってくれていると期待しがちですが、広告代理店は配信事業者が不正対策を行ってくれている前提で運用しています。一方、配信事業者は独自にアドフラウド対策を行っているものの、その対策基準の詳細は外部には明らかにされていません。

以上のことを踏まえると、広告主自身がしっかりデータを精査することや、アドフラウド対策ツールを活用することが重要になります。不正広告の被害に合わないために、できる対策から進めていきましょう。

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