CRMやMA・SFAなどITツール導入を検討しているものの、上司を説得することにハードルを感じている人は多いのではないでしょうか。この記事では、社内稟議をスムーズに通すためのコツや、伝わる提案書の書き方、聞き手の関心を引くためのポイントを解説します。

目次

  1. ITツール導入の社内稟議書作成 5つのポイント
  2. 提案書作成前に「現状の課題」と「ゴール」を明確に
  3. 採用される提案書の作り方
  4. 伝わるデザインのコツ
  5. テンプレート活用で、素早くきれいに
  6. 聞き手の興味関心や利害を先回りして汲む
  7. 「伝わるポイント」を押さえて準備することが大切

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“上長も納得”の社内稟議の進め方5つのポイント

“上長も納得”の社内稟議の進め方5つのポイント

社内稟議をスムーズに進めるための5つのポイントを説明しています。

ITツール導入の社内稟議書作成 5つのポイント

ITツール導入の稟議書を作成する際には、以下5つのポイントを明確にすることで、スムーズな決裁・承認が期待できます。

①現状の問題

はじめに、社内(部内)に生じている問題を記載し、読み手である上長・関係者との間に共通認識を醸成しましょう。

●例:CRMツール導入企業によくある課題

  • 顧客情報の更新・管理に時間がかかっている
  • 既存顧客の継続購入率が悪化しており、それを解消するために効果的な施策を検討している

問題は、できるだけ具体的に記載しましょう。

特に、既に発生している問題については、数値データを活用して誰が見ても分かるような状態にすることで、決裁者は意思決定しやすくなります。

記載例

・「現状、顧客情報をExcel上で管理しており、その更新作業に〇〇時間/月かかっています。他の業務の進行にも影響が出ていることから、更新作業にかかる時間の削減が急務です」


・「既存顧客の継続購入率が、前月比で〇%悪化しています。この数字を改善するためには、悪化要因を早急に特定する必要があります」

②ITツール導入で解決すること

①で示した現状の問題に対して、ツールがいかに貢献するのかを記載します。

●例:CRMツール導入による効果の一例

  • 顧客情報の更新・管理にかかる工数を削減できる
  • 顧客情報を精緻に分析できる
  • 顧客とスピーディーにコミュニケーションが取れる

①と同様に、数値データを活用しつつ具体的な表現を用いて記載することで、決裁者が導入後の状態をイメージしやすくなり、スムーズな承認・決裁につながります。

記載例

「CRMツールを導入し、顧客情報の更新・管理作業の一部を自動化することで、〇〇時間/月の工数を削減できます。これは、人件費に換算すると〇〇円/月のコスト削減です」


「CRMツールを導入し、顧客情報を精緻に分析することで、悪化要因を特定して適切な施策を講じることができます。トライアル期間に試用したところ、〇回目購入から約1か月で購入継続率が悪化していることが判明。このタイミングで既存顧客に購買促進のメールを送信することで、継続購入率が〇%改善しました。 これは、売上高に換算すると〇〇円の向上です」

③導入予定のITツールの選定理由

例えば、CRMツールと一口に言っても、今日ではさまざまなベンダーが、特徴の異なる製品を取り扱っています。その中で、なぜ導入を希望する製品を選定したのか、理由を記載しましょう。その際には、特に以下のような項目に気をつけながら進めてください。

  • 必要機能がそろっているか
  • 価格は妥当か
  • 最低契約期間は長過ぎないか
  • 使いやすく運用ができそうか
  • サポート体制は充実しているか
  • セキュリティ対策は万全か

少なくとも2社以上のベンダーの営業担当者から話を聞き、その比較情報を掲載することが効果的です。複数社との比較が難しい場合は、比較表やカオスマップなどを添付し、選定ツールの特徴や業界でのポジションを明示することで、導入を希望するツールの選定理由に説得力が生まれます。

記載例

「顧客情報の更新・管理作業の工数削減にあたっては、運用担当者がスムーズに操作を習熟できることが重要です。その点、A社のCRMツールは、B社・C社の製品と比較して誰でも簡単に扱えるUIを採用しており、トライアル期間でも運用担当者から操作についての質問が出ることはありませんでした。さらに、コスト面でもB社・C社よりも優れている(約〇万円/月程度の差がある)ことから、A社のCRMツールを選定しました」

④導入リスクと対処

決裁者は、承認した案件に対して責任を負うことから、導入リスクについて特に敏感になるケースが珍しくありません。そこで、あらかじめ想定されるリスクを洗い出し、その対処法についても記載しておくことが重要です。

●リスクの一例

  • 導入後、運用担当者が使いこなせない
  • 運用が回らない
  • 施策にツールを活用しても効果が出ない

導入前にリスクを洗い出す方法としては、「ベンダーに確認する」「導入事例の記事を読む」といった方法があります。導入事例記事は、例えばCRMツールの他にMAやSFAなど、関連性の高いさまざまな製品のものを読んでおきましょう。こうすることで、ツール導入に共通するリスクが浮かび上がってきます。

記載例

「今回導入するCRMツールについては、トライアル期間を通じて想定する運用が全て回ることを確認しています。また、ベンダーには詳細なマニュアルや充実したカスタマー体制があり、運用上に生じる不明点は速やかに解消することが可能です」


「CRMツールを長期的に運用した際の効果については不透明な部分もあるため、まずはAサービスに限定してスモールスタートし、効果を確認しつつ運用範囲を広げていきます」

⑤社内への事前共有

前項までで解説してきたポイント①〜④を押さえることで、稟議書の説得力を上げることができます。

その一方で、社内にはITツールについて知見が豊富でない方や、そもそも新たなツールを導入することに対して懐疑的な方がいることも想定されます。

このような方が決裁者であった場合、稟議書提出による“急な申し出”だけでは理解が得られず、承認が得られないケースがあります。

こうしたケースを未然に防ぎ、現状の問題やそれらを解消する優先度について、認識のズレを解消するためにも、稟議書の準備と同時に、関係者に対して事前の情報共有を行っておきましょう。

●事前共有したい情報の一例

  • ベンダーのサービス資料
  • 費用対効果のシミュレーション
  • ツールのデモ画面
  • ライバル企業の導入事例記事
  • オンボーディングのプログラム内容

上記のような情報について、導入担当者が全て個人で集めようとすると、非常に時間がかかってしまいます。そこで、ベンダーの営業担当者を通じて情報提供を受けるなど、積極的にベンダーを活用することをおすすめします。

▼社内稟議の具体的な進め方がわかる資料はこちら

“上長も納得”の社内稟議の進め方5つのポイント

“上長も納得”の社内稟議の進め方5つのポイント

社内稟議をスムーズに進めるための5つのポイントを説明しています。

提案書作成前に「現状の課題」と「ゴール」を明確に

上長・関係者を説得するために、そのツールを導入する必然性を明確に伝える必要があります。そこで、「現状の社内(部内)課題」および「目指したいゴール」を精査しましょう。

例:CRMツールを導入したい場合

【現状の課題】:獲得したリードを、効率的に成約へと引き上げられていない

【目指したいゴール】:リードナーチャリング強化で、成約率を上げる

良い例・悪い例

どれだけ高性能で最新のITツールを導入しても、「現状の課題」および「目指したいゴール」を明確に把握できていなければ、目的地にたどり着くことはできません。

  • 社内(部内)で今抱えている課題とは
  • その課題を確実に解決できる手段(ツール)とは
  • そのツールを使って到達したいゴールとは

これら、3点を提案書に明快に記し、上司に強くアピールすることが大事です。

●良い例

【課題】自社ECサイトで、リピート顧客を増やしたい
【手段】CRMツールを導入する
【ゴール】顧客行動のデータ化・可視化でデジタルマーケティング施策の精度を高め、収益をアップさせる    

 →何を、どんな手段で、どのような状態へ持っていきたいか、が明確

●悪い例

【課題】社内(部内)のDX化を進めたい
【手段】CRMツールを導入する
【ゴール】データドリブンな意思決定をできる組織を目指す

 →課題もゴールも曖昧で、具体性に欠けている

分かりやすく表で見てみましょう。手段は同じでも、課題とゴールの深度が異なります。

  課題 手段 ゴール
良い例 自社ECサイトで、リピート顧客を増やしたい CRMツールを導入する 顧客行動のデータ化・可視化でデジタルマーケティング施策の精度を高め、収益をアップさせる
悪い例 社内(部内)のDX化を進めたい CRMツールを導入する データドリブンな意思決定をできる組織を目指す

採用される提案書の作り方

社内プレゼンで上司に見せる提案書は、以下の3ステップに分けて、段階的に作り込むのがおすすめです。

STEP①まずは文字ベースで伝えたいことを書き出す

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出典:無駄な努力とお別れ。「採用される」提案書のつくり方|ferret

STEP②体裁にこだわらず、PowerPoint上に要素を置いていく

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出典:無駄な努力とお別れ。「採用される」提案書のつくり方|ferret

提案書をつくる際に、いきなり考えをパワーポイントに書いていくのは、無駄が多い作業になります。まずは文字ベースで、伝えるべき要点の項目立てをして、自分の考えを整理しましょう。

あまり深く考え込まず、「こんな項目が必要」「伝えるべき要点はこれ」といった内容をテキストベースで書き出してみます。

文字ベースでストーリーを整理できたら、PowerPointに要素を置いていってみましょう。

仮でも良いのでページタイトルを置きながら、ページネーションを作ってみます。

フォントや配色、レイアウトといった見栄えは後で装飾・整理をすればいいので、あくまでラフのつもりで作ります。

提案の流れが確認でき、自分の頭の中で把握できるようになっていれば、このステップは完成です。

STEP③伝わるプレゼンテーションに整える

相手に伝えるためには以下のことにフォーカスしましょう。

  • 真意がちゃんと伝わること
  • 「この提案に乗りたい!」とワクワクしてもらえること

その上で最終ステップである、仕上げを進めます。

  • 伝わる文章量
  • 読みやすい文字の大きさ
  • 印象に残りやすい画像やグラフの見せ方

を考慮しましょう。

つまり、今、上司にアピールしたい!と考えている提案内容を、いかに魅力的に見せられるかに注力して、PowerPoint上で文字・配色・図表やレイアウトを整えていきます。

提案書の作り方はこちらの記事でも解説しています。

無駄な努力とお別れ。「採用される」提案書のつくり方

無駄な努力とお別れ。「採用される」提案書のつくり方

一生懸命、時間と労力をかけてつくった提案書が「一瞬で不採用になった」「全く相手にされなかった」「コンペで負けてしまった」という経験をされているビジネスパーソンは非常に多いのでは。この記事では「頑張ったけど報われなかった提案書問題」とさよならするべく、「採用される提案書」の進め方・書き方の手順を解説していきます。解説するのは、長年広告代理店でプランナーとして活躍し、数々の競合コンペを獲得してきた久利洋生氏。

伝わるデザインのコツ

続いては、見やすいプレゼン資料を作るコツを紹介します。

①フォントはメイリオ18pt~24pt以上

フォント1つをとっても作成者の好みで選んでしまいがちですが、それが聞き手にとって見やすいかどうかは別です。

一般的には、メイリオ 18pt〜24pt以上が見やすいとされているため、よほどのこだわりが無い限りは一般的なルールを適用しましょう。

②配色は4色以内

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色を多用した資料は、聞き手の視点が散って、結果的に伝わりにくい資料になってしまいます。できるだけ、使用する色の数は絞りましょう。

一般的には1枚のスライドに対して2色、全体で4色以内がよいとされています。

メインカラー・サブカラー・背景色・強調色の4つで構成し、強調色は本当に重要なポイントだけに絞って使うのが効果的です。

③要素の配置は左揃え

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見やすい提案書にするには、各要素の配置を揃えることも重要です。

ページ内の要素(グラフや表、テキスト、画像など)の並びがバラバラでは、非常に見づらい資料になってしまいます。

人の視線は画面の左上から右下に向かって進むため、中央揃えよりも左揃えの方が理解しやすくなります。

中央揃えは、文章の改行位置が変化して読みにくくなる側面もあるので、基本は左揃えで統一することがおすすめです。

▼一手間で驚くほど見やすい資料に変わるコツを紹介!

【パワーポイント作成】伝わるデザインのコツ

【パワーポイント作成】伝わるデザインのコツ

テンプレート活用で、素早くきれいに

見やすいポイントを押えた資料をスピーディーに作成したいなら、テンプレート活用がおすすめです。

既成のテンプレートをダウンロードして、あらかじめ整えられたスタイルや配色を流用しつつ、自分の伝えたいテキストや図表に置き換えていくだけで、見やすい資料が完成します。

以下の記事で、デザイン性に優れたPowerPointのテンプレートを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

デザイン性の高いパワーポイント(PowerPoint)テンプレートの無料配布サイト19選!プレゼンやレポート資料に活用しよう!

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パワーポイント(PowerPoint)は、プレゼンに使うPDF資料やレポート資料を作成する際に便利なツールです。しかし、イチから全て作成するのはなかなか難しいでしょう。そこで、資料作成をする際に使えるデザインテンプレートを紹介します。すべて無料で使えますので、上手く取り入れて業務を少しでも効率化させましょう。

聞き手の興味関心や利害を先回りして汲む

提案書を、どんなにキレイに、かっこよく磨き上げても、説得したい相手にその内容が刺さらなくては、意味がありません。

説得したい上司・関係者との情報格差を埋めるために、事前共有(いわゆる、社内の“根回し”)も欠かせません。

まず、「相手がITツールの導入価値を、どの程度理解しているか」といったレベルを把握しましょう。

そのうえで、「どうすれば、自分の主張に対する理解を得られるだろうか?」と考え、説明レベルを合わせる配慮も大切です。

要は、聞き手の興味関心や利害と一致する切り口でプレゼンテーションを行うことが、スムーズに承認・決裁を得るためのポイントです。

プレゼンに勝つ秘訣はこちらの記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。

プレゼンテーションで勝ち抜く資料を作るための基礎知識を解説

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目的に沿ったフレームワークを利用することで、聞き手が納得して理解を得られるようになります。 また、話す側も話すべきポイントを絞り、漏れがなく情報を伝えやすくなるメリットもあります。 今回は、プレゼンテーションの構成要素、効果的なプレゼンの要件、資料作成のコツ、話し方のコツ、そして有効な話法のフレームワーク6選をご紹介します。

伝わるポイントを押さえて準備することが大切

ITツール導入を検討しているものの、上司の説得・社内プレゼンテーションに苦手意識を持っている方は多いのではないでしょうか?しかし、伝わるポイントを押えて準備を進めれば、情報を理路整然と整理して伝えることができるようになります。

本記事で紹介したノウハウや、テンプレートを参考に、ぜひ提案資料に取り入れてみてください。また、資料作りに過分な時間を掛けすぎるのは避けましょう。資料作りがゴールではないからです。

「上司・関係者を説得するには?」というゴールを常に見据えながら、効率的に準備を進めていきましょう。

▼ Webマーケティングの重要性について社内を説得したいときに読む資料

「社内を説得したい」ときに読む!Webマーケティングの重要性について

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Webマーケティングを強化するに当たって、必要なツールの導入やリソースの確保など、社内の理解を得ることは重要です。当資料では、Webマーケティングの重要性を改めて認識できるデータなどを掲載しています。