企業がICOを行うことによるメリット

メリットとして第一に挙げられるのが、資金調達に期間を要しないという点です。
株式発行による資金調達は、事業のステージごとに「ラウンド」とよばれる段階的な資金調達を行います。そのため、長期的な視点で資金調達をするのが一般的です。

ICOでは、事業のアイデアや計画をまとめたホワイトペーパーを発行することで、一般投資家から出資を受けることができます。そのため、たった数日で多額の出資を集めることも可能です。既存の資金調達と比べて手間がかからず素早く行えるというメリットがあります。

ICOが現在抱えるリスク

ICOには、リスクがあるのも事実です。*仮想通貨そのものが黎明期であることから、法整備とサービス運用のルール整備が十分に行われていません。*例えば、企業のトークンの発行に制限を設けていないプラットフォームも存在します。

そのため悪用される恐れがあり、詐欺やサイバー攻撃の対象となる可能性があります。また、株式取引と比べて非常に投機的な側面を持っています。短期間で資金調達が行える反面、ハイリスクな資金調達方法ということを認識しておきましょう。

現在ICOに関して実施されている取組事例

次に、現時点で公になっているICOに関する取組事例を紹介します。国内向けのプラットフォームのやICOに特化したコンサル事業の登場など、様々なサービスが生まれつつあります。

ICOプラットフォームの登場

まず、ICOによる資金調達を行うための“場”であるプラットフォームの登場です。今まで、ICOはその企業のホワイトペーパーなどを自分の目で精査して信頼できるかどうかを見極めなければいけませんでした。ICOプラットフォームは、独自に信頼できるかどうかを調査したICOのみを掲載するため、信頼というお墨付きを得られているICOに投資することが出来るようになります。

COMSA

comsa.png
実ビジネスのブロックチェーン導入を支援するICOソリューション|COMSA

仮想通貨の取引所を運営するテックビューロ株式会社が、ICOの支援と「COMSA(コムサ)」というプラットフォームを2017年10月より開始しました。すでに80億円以上の資金調達を達成しており、非常に注目を浴びているICOになります。

参考:
仮想通貨で資金調達、上場企業が初利用へ テックビューロが支援サービス :日本経済新聞

KICKICO

kickico.png
KICKICO - 暗号通貨革命の始まりです!

ロシアに本社を構えるICOプラットフォーム「KICKICO」は、2017年8月に日本での展開を発表しました。また、自社のプラットフォームを通じて、ICO開始から19時間で日本円にして総額21億円相当の出資を募っています。

参考:
日本上陸の次世代クラウドファンディング2.0『 KICKICO 』が、ICO開始から19時間で「総額21億円の資金調達に成功」。 - THE BRIDGE
(2020年8月3日時点でページが存在しないためリンクを削除しました)

ICOを使った実際の資金調達例

カナダのメッセージアプリ「Kik」は、現地時間2017年9月12日に約138億円を調達することが発表されました。

また、国内においても「COMSA」を通じて、メタップスの時間市場タイムバンクがICOによる資金調達を行うことを検討しています。今後も国内での資金調達事例は増加していくことが考えられるでしょう。

参考:
メッセージ・アプリKikが138億円を「ICO」で調達、独自の仮想通貨発行へ | BUSINESS INSIDER JAPAN

北欧エストニア 政府主導でICOを実施

北欧のエストニアでは、政府手動のICOと仮想通貨発行(エストコイン)の実現にむけて検討しています。これが実現すると、国家による仮想通貨の発行やICOは世界初の事例になります。

エストニアは政府主導による「電子化」を積極的に推進しており、既に「e-Estonia」という電子政府システムを提供しています。選挙や行政機関への手続きをオンライン上で簡潔できるというものです。電子化先進国による初のICO事例は実現するのでしょうか。

参考:
国が新規仮想通貨公開 エストニア検討  :日本経済新聞

ICOコンサル事業の展開

ICOは、法整備やサービス自体のルール整備が曖昧なことから非常にリスクの大きい取引と考えられます。

そこで、電子決済サービスを各種手がけるAnyPay株式会社は、ICOを健全に実施するためのコンサルタント事業に参入しました。日本のスタートアップ企業や中小企業に向けて、現行の法律に則り資金調達ができるような支援を行うことを目的としています。

参考:
エニーペイ、ICOコンサル事業に参入  :日本経済新聞