こんにちは、株式会社ブレインパッドでソーシャルメディア分析を担当している福江です。前回の記事ではナイトプールの事例をもとにソーシャルリスニングの基本的な見方をご紹介しました。

今回はもう一歩踏み込んで、ソーシャルメディアデータとほかのデータを掛け合わせて「SNSとビジネスの相関性」についてご説明します。

参考:
2017年話題の#ナイトプールで学ぶ!ソーシャルリスニングでできること|ferret
  

ハロウィンとバレンタインの比較からSNS投稿数と市場規模の相関性をみる

2017年も10月に入り、ハロウィンの季節がやってきました。日本でもすっかり定着したハロウィンですが、数年前までは日本でハロウィンをイベントとして楽しむ文化は一般的ではありませんでした。

では、ハロウィンがどのような盛り上がりの推移を辿ったのか、過去のソーシャルデータから見ていきましょう。
  

2012年まで遡ってSNS投稿を分析

まずハロウィン関連のSNS投稿数を、2012年まで遡ります。また、比較対象としてバレンタイン関連のSNS投稿数も併せて分析します。

ハロウィンとバレンタインは、どちらも日本由来のイベントではなく、企業の販促キャンペーンとして盛り上がったイベントです。実は定着した経緯が類似しており、わかりやすい比較対象として分析します。

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※対象メディア :Twitter、Instagram(インスタグラム)
※対象キーワード:ハロウィン、バレンタインのキーワードやハッシュタグ
※対象範囲   :イベント月の投稿数(ハロウィンは10月、バレンタインは2月)
         Twitterは2012年以降の全量データ、インスタグラムは2014年以降
※除外投稿   :リツイート、リンク付き投稿

図1を見てわかるとおり、2014年まではバレンタインの投稿数が伸びていたのに対し、2015年からはハロウィンがバレンタインを大きく上回り、2016年にはさらにその差が広がっています。

また、ハロウィンの投稿数は常に右肩上がりなのに対し、バレンタインは2014年から横ばいとなっています。

Twitter、インスタグラムともに日本でのMAU(月間アクティブ ユーザー数)が増加し続けているのに鑑みると、投稿数が横ばいということは投稿に占める割合では減少しているとも言えます。
  

ハロウィンとバレンタインの市場規模の推移

次に、ハロウィンとバレンタインの市場規模の推移を見ていきましょう。市場規模は関連業界や商品などの総売上を元に推計された金額です。

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※日本記念日協会調べのデータを元に筆者がグラフを作成

両イベントの市場規模を比較すると、2016年に初めてハロウィンの市場規模がバレンタインを上回りました。なお、2014年はハロウィンがわずかに上回っていますが、バレンタインの当週に大雪によって物流や交通がマヒし、イベント中止などが相次いたため、イレギュラーとしてカウントします。

先程のSNS投稿数推移のグラフと並べてみると、市場規模はSNSの投稿数の1年遅れでハロウィンがバレンタインを逆転したのがわかります。

余談ですが、2016年ハロウィンの1,345億円という金額は日本記念日協会が推計を行っている記念日の中で「クリスマス」に次いで2番目に大きい金額です。

ソーシャルメディアデータと、そのほかの定量・定性データを組み合わせることにより、市場の「傾向」を見極めることにつながります。
  

ソーシャルデータも取り入れた統合プラットフォームの構築

もちろん、市場動向は単純なものではなくSNSの投稿数の推移だけで簡単に把握できるものではありません。

ソーシャルデータに絞ってみても、投稿の数(定量データ)のほか、投稿の中身(定性データ)も見る必要があります。

例として、単純にポジティブ、ネガティブといった感情の分類以外に、さらに踏み込んだ要因の部分まで見ることによってその精度は高まります。

ソーシャルデータのような外部データだけではなく、自社で抱えている内部データなどを掛け合わせることによって、今後の”施策”に活用することができます。

以下はデータの掛け合わせのイメージ図です。

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※統合プラットフォームの一例

小売系企業なら購買データや顧客データ、スマートフォンアプリをリリースしている企業なら自社アプリのトラッキングデータなど保有しているはずです。過去にイベントやキャンペーンを行ったことがある企業なら、来場者数の記録やアンケートで収集したデータがあるのではないでしょうか。

データ収集を積極的に行っていない企業でも、自社のコーポレートサイトがあれば、Google Analyticsの収集データはあるはずです。

プラットフォームの構築と聞くと敷居が高く感じるかもしれませんが、自社が抱えている内部データとSNSのような外部データを掛け合わせて可視化するだけでも、市場や施策について新たな視点を持つことができます。

SNSはスマートフォンの普及とともに、一部の偏った人々が使うツールではなく、多くの人が利用し、世の中の声や動きをつぶさに把握できるものになりました。企業のマーケティング活動にとっても、重要なデータソースの1つとして”必須”となってきています。
  

2017年のハロウィンの盛り上がりはどうなる?

最後に2017年のハロウィンの盛り上がりを見てみましょう。(執筆時点では10月初旬のため)9月の投稿数を過去と比較します。

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※図4 Twitter、インスタグラムを対象にハロウィン関連のキーワードやハッシュタグを対象に分析。Twitterは2011年から全量、インスタグラムは2014年からの投稿が対象 リツイート、リンク付き投稿は除外

図4を見るとわかるとおり、9月のハロウィン関連の投稿数は2016年から2017年にかけて最も伸びています。すっかり定着したハロウィンの文化ですが、その盛り上がりは留まるどころか、さらに勢いを増しているようです。
  

まとめ

近年、多くの企業が顧客データの分析やメール配信の最適化など、ビッグデータの活用に力を入れています。

メール配信に比べSNSは歴史が浅く、ソーシャルメディア分析はビッグデータ分析の中でも新しい分野です。そのため、活用事例も少なくどのように自社のビジネスに活かせば良いのかイメージが湧きにくいかもしれません。しかし、SNSは人々の生活に密着した情報をリアルタイムで把握できる貴重な情報源です。

誰もが知りたい市場のトレンドは、ソーシャルリスニングによって捉えることができます。