WebメディアからSNS、動画やマンガ、インターネット上には様々なコンテンツが溢れています。コンテンツ制作に携わる方の中には、如何にユーザーを惹き付けられるかという点に苦労している方もいるのではないでしょうか。

「良いコンテンツとは何か」「バズらせるにはどうすればいいのか」PV数やSNSでの反応を確認しながら日々試行錯誤している方もいるはずです。

「ワンチャンワンドキ!最新 JK用語でJKな1日を再現してみた」や「大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた!」など、数々のヒットコンテンツを手がける LINE株式会社(以下、LINE)コンテンツマーケティングチーム チーフプロデューサー 谷口マサト 氏によれば、「面白い企画」は非常にシンプルで、実はパターン化できるのだそうです。

今回は、谷口マサト 氏に企画の源泉や、コンテンツ制作におけるストーリーの描き方について、ferret 創刊編集長 飯髙悠太がうかがいました。
  

参考:
ワンチャンワンドキ!最新 JK用語でJKな1日を再現してみた
大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた!

谷口マサト 氏 プロフィール

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谷口マサト

滋賀出身。大学を卒業後、空手修行のため渡米しヌンチャクを学ぶ。帰国後にネット業界に入り、現在はLINE株式会社でコンテンツを企画している。個人の企画では運営するサイト「chakuwiki/借力」が月間300万PVでベストブログ・オブ・イヤー賞(エンタメ部門)など受賞多数。サイトから発展した「バカ日本地図」や「広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門」などの書籍を7冊出版している。

  

企画は「同じものが別のものに見える」ことで生まれる

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飯髙:
谷口さんは、かなりコンテンツを手がけられていると思うのですけど、企画の源泉とか、1つのコンテンツを作るまでにどういったストーリーを描かれているんですか?

谷口氏:
企画の源泉というのは、非常にシンプルだと思います。それは、同じものが別のものに見えるということです。

例えば、「JK用語」というのがありますが、「おはよう」を「ボーン」と言ったり、クリエイティブ表現というのは、特定のものが別のものに見えるっていうのを繰り返しやっているだけだと思うんですよ。

飯髙:
「同じものが別のものに見える」ことなんですね。

谷口氏:
なぜか言うと、クリエイティブはまず相手を驚かさないといけない。ユーザーは意識でガードしているので、そのガードを解かないといけないんです。意識には「同時作業ができない」という弱点がありますから、「同じものが別のものに見える」と意識が驚いてガードが下がるんです。センスじゃなくて単なる原理なんですよ。

このあたりの考え方は、小学校から教えてあげるべきだと思っています。クリエイティブっていうのは別に属人的なセンスじゃなくて、「別のように見えますよ」ってことを繰り返しいろいろな表現でやっているってだけだと伝えたいです。

例えば、スエヒロさんっていうLINEの名物社員がいるんです。「戦国時代に○○があったら」というネタをTwitterで投稿されているのですが、それも「戦国時代なのに現代風」とずらしています。

みんな得意なフォーマットがあって、表現をずらしているだけで個性的な企画になります。私は、それを面白いなと思うんです。人ってやっぱり固定概念をずらされるのが好きなんですよね。それによって、リラックスする。意識をマッサージするような効用があると思っています。そういう効用が企画の目的ですね。

私が手がけた「バカ日本地図」という初期のコンテンツで、ユーザーさんから「落ち込んでいたのが、安らげました」という話を聞いて、本当に嬉しかったですね。それだけなんですけど、笑ってくれるのは嬉しい。

飯髙:
「小学校から教えてあげるべき」だとおっしゃってましたが、どう学べば企画力は身に着くものなのですかね。

谷口氏:
原理からやるべきですね。同じものが別のものに見えるというのは「A≠A」ですよね。そこを起点にパターン化を行っていくんです。媒体も問わず、漫才でも広告ポスターでも何でもその原理に沿っています。使っているパターンが違うだけで原理は同じです。

建築学には「パターン・ランゲージ」という理論があります。これは「建築あるある」のようなもので、建築様式などを複数人で共有しあってパターンを見い出し、都市計画を行うものです。企画もパターン・ランゲージと同様にパターンを見付けて共有し合うのが良いのではと思っています。

飯髙:
Webという視点から「企画」を生むためには、やはりパターン化することが大事でしょうか?

谷口氏:
Webコンテンツは、マンガや従来の広告と比べて始まったばかりですよね。できる限りパターン化してしまって共有していくべきですね。Webコンテンツはその点が特に弱いので、クリエイティブの底上げをするために、みんなで、パターン化に取り組むのが良いと思っています。

Web以外の既存メディアっていうのは古いメディアなので、同じパターンばかり使っている番組をみているとイライラしてくることがありますが(笑)

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ユーザーがリアクションできる「余白」のあるコンテンツ

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飯髙:
なるほど。では、「良いコンテンツ」とは何かお聞きしてもいいですか。定義はかなり幅広いと思っていまして、「問題解決」なのか「バズ」なのか人によって違いますよね。谷口さんならではの定義をお聞きしたいです。

谷口氏:
ユーザーが言及できるスペースのあるコンテンツですかね。Webコンテンツでは塗り絵感といいますが、記事内で完結させずに余白を作る。そして、ボケに対してどうツッコミを貰うか、またはツッコミだけで作られている。要は会話ベースで作られているかどうかです。

例えば、LINEスタンプも基本的に「どうリアクションするか」で作ります。相手の発言に対するツッコミだけで作られていますよね。従来のコンテンツならボケとツッコミはセットで配信するんですが、Webコンテンツは会話のネタや共感する要素だけを提供しているんです。

でもそれには、罠があると思っています。余白が「共感」に寄り過ぎてしまうことで、結局何が伝えたいのかわからないコンテンツに仕上がってしまう。これは、Webマーケティング施策でよく起こるんですよね。Webの根本的な問題なんですがリーチが弱いんですよね。Webで「そうだ、京都へ行こう」ってやっても、「勝手に行けー!」ってなりますもんね(笑)

これは、世間的な影響力が低いことが問題なんです。だから、SNSでバズらせてなんぼな世界になっています。メッセージを伝え切れないわけですよね。
  

広告は「機械的な広告」と「社会的なメッセージを持った広告」の二極化が起こる

飯髙:
では、これからWebコンテンツはどう変化して行くと思いますか?

谷口氏:
おそらく今から起こって来るのは、広告枠の二極化だと思います。1つはアドネットワークで分散型のコンテンツをマッチングさせて配信していくっていう、AIを活用した「機械的な広告」。

もう1つは、ブランド広告枠として「社会的なメッセージ性を持った広告」です。
AIはクライアントに仕えて、ブランド広告枠はあくまで社会のためですと。世間に影響を与えますよという枠をメディアが作っていくことだと思っているんですよ。

アドネットワークのような広告枠と、世間に対してメディアとスポンサーがタッグを組んで「一緒にやりましょう」というブランド広告枠にわかれてくると思うんです。AIに仕事を奪われることはなくて、むしろ苦手なクライアントはAIに任せられるという(笑)

私はアドネックワークを歓迎しています。獲得型の刈り取り広告はAIとアドネットワークに任せてしまえば良いんです。メディアとしては稼ぎ頭ですから、それはそれで良いんです。

8割はそれで稼いで、残り2割で社会的に意味のあるコンテンツをどう作っていくのが今後の課題だと思っています。それはオリジナルコンテンツの勝負でもあります。

それはもう必然的な歴史であって、テレビだって昔は何もなかったのに、映画の紹介とかスポンサーと組んで連続ドラマを作り出したり、コンテンツを作り出したので。今のWebにはないですけど、これから作られていくんだろうなというのは感じています。

最近だとYouTuberの勢いが凄いですが、テレビに出演されているお笑い芸人の中には、YouTuberの制作費の無さ、芸の無さをバカにする人もいます。

でも、テレビのようにWebに制作費が回るプロセスを作ることで、Webもオリジナルコンテンツが次々に登場する流れになると思います。これは、歴史的に繰り返しているので必然です。私はその方向に行くために色々試行錯誤をしますし、みんなでやっていきましょうと思っています。
  

PVではなく態度変容が重要な理由

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飯髙:
SNSやWebのリーチの弱さという点で「コンテンツをどう流通させるか」がすごく重要だと思うのですが、そこで意識されていることはありますか?

谷口氏:
コンテンツの流通には、制作費と誘導費という条件があります。とはいえ、Webでは予算の問題もあり、制作費はおろか誘導費を十分に使えないのが現状です。誘導されないのでバズしか無いとなったらゲリラ戦ですよね。奇襲的クリエイティブをしかけるしかない(笑)

バズ系やお笑い系、感動系の長尺コンテンツなど様々ですが、結局良いマーケティングというのは、その人の考えを変えて、感情を起こさせて行動を変えるものです。それは、ある意味反発を生むものでもある。完全にバズを狙ってしまうとユーザーに迎合することになってしまいます。

現状、「ユーザーに感情を起こさせて行動を変える」というのは、アドネットワークを用いた分散型コンテンツには限界があると思っているんです。その商品がどう使われているかといった実用的なコンテンツが主流ですよね。

それも良いのですが、スマートフォンでコンテンツを観る時代に、どうコンテンツ作りを行っていくべきなのかも考えなければなりません。現在は、バズに頼り過ぎていて、ソーシャルのその先の表現というのは無いと思っています。

分散型コンテンツってそもそもシリーズ化できないんですよ。CDのアルバムみたいなこともできないし、連載もできない。パーツでしか観られないんです。

それは、永遠に貧乏だということなんです。ちゃんとコンテンツでお金を生むためには、Webコンテンツでも世間の空気が作れるということをガツンとやっていかなければなりません。枠の問題でもあり、コンテンツの問題でもあります。

バズ系のコンテンツばかりやっていると力を失っていくんです。メッセージ性の強いブランド枠に対するコンテンツはわけて考えないといけない。Webっていうのはプラットフォーム文化であり、プラットフォームで勝とうという世界だったのですが、今後はどういうコンテンツを創っていくか、という文化の勝負が新たに始まっています。

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飯髙:
ユーザーに感情を起こさせる……。谷口さんは様々なメディアで「態度変容」を起こすことが重要だとおっしゃっていましたね。

谷口氏:
PVで判断されがちなんですよね……。それならアドネットワークでいいじゃんってなりますよね。

態度変容は疑心暗鬼で分析してみたんですけど、予想以上にコンテンツ系ってすごく変容を起こすんですよね。マンガを読めばそりゃユーザーの行動も変わるなって。

これまでちゃんとそれにレスポンスできてなかった。PVしか見ていなかったと反省になっていて。今後はコンテンツとアンケートをセットにしていかないといけないなと思いました。

飯髙:
ferretでも定期的にアンケートを取るようにしています。僕らのコンテンツが良いのか悪いのか。編集における課題になっていて、そこが僕らの企画の源泉になっています。

谷口氏:
よく言うんですけどバズったコンテンツと、その満足度が高いコンテンツは違いますよね。じゃあ何が違うんだっていう話で、広がりと深さで違うので、その軸を混ぜていかないと思っていますね。

飯髙:
僕らferretでは、バズるコンテンツと、自社ツールへ誘導するコンテンツって全然違うと感じています。Tips系のコンテンツはバズるんですけど、離脱率が高い。一方で事例系のコンテンツPVが伸びないのですが、CVRが高い。

でも、頻繁にアンケートを取ろうと思うとそれなりに予算が必要ですよね。

谷口氏:
だから仕組みを作るのが優先だと思うんですよね。元々コンテンツとアンケートが別になっているのではなく、コンテンツを見た後にクイズを出すのも良いですし。仕組みが無ければ根本的な解決になりませんからね。

飯髙:
コストをかけずに導入できる仕組みもありますもんね。そういえば、態度変容を重視されている中で、今でも「バズ」の依頼を受けたりするのでしょうか?

谷口氏:
ありますね。誘導費まで予算が下りないことが多いんですよ。Webの施策っていうのは実験的じゃないですか。どの企業も半信半疑でやっているから莫大な予算は出ないんです。態度変容を起こすコンテンツも、まずは結果を出さないと先がないなと感じています。

飯髙:
目先の結果に寄ってしまう……。

谷口氏:
予算が無いのはしょうがないので、それを繰り返し成功させていくしかないんですよね。

でも、動画は変わってきましたよね。動画って結構長くジワジワ観られるんです。昔に比べてスマートフォンで見られているなという実感がすごいあって。スマートフォンで動画を見るのが普通になっているんだなとユーザーの声を観ているとわかりますね。

飯髙:
インスタグラムの「ストーリー」など勢いがありますよね。

谷口氏:
現在注目しているのが、実店舗などインスタ映えする場所を広告用にガンガン作っちゃえっていう。
それで、ようやく建築学科の意味が出てくるわけです。強引に結び付けてみました(笑)

ただ問題は、実店舗の実績としては過去にワコールさんの男性パンツのPRをした時に、パンツに合うワインをソムリエが出してくれる店を開いたんですけど。その実績しかないんですよ……。

ただインスタ映えっていうのは、何か結局ユーザーがどのように主役になるのかっていうのを盛り付けていくだけなので、あれは面白いなって思っています。

これからも増えていくのでしょう。今までのコンテンツっていうのは、キャラクターやスーパーヒーローがいたんですけれども、それがユーザーになっていくのをどう支援をしていくのか。

チームラボの猪子さんともそういう話をするんですけど、彼の舞台ってキャラクターを出さないんですよね。ユーザーを主役にしている。猪子さん自身もキャラクターを作ったほうが楽なのはわかっているんですけれども、それだと今までと変わらないからっていう話をしていて、あえてやめていると言ってました。
  

一貫したストーリー性にこだわる谷口マサト氏自身の個性のルーツ

飯髙:
ユーザーが主役の時代、オリジナリティとか個性の出し方で悩む方もいますよね。谷口さんは個性の出し方って工夫とかされていますか。

谷口氏:
実験系や妄想系など様々な媒体が個性を持っていますが、私の場合はストーリー性に一貫しています。

Webのコンテンツでストーリーやってる人ってほぼいないと思っているんですよ。領域的に空いてるところを考えてしまいます。

お笑い芸人もそうじゃないですか。ここ空いているなっていうところに入ってくるので、そこはみんな考えていると思うんですよね。

あと「泣き」ですね。手塚治虫さんの本をたまたま読んだんですけど、彼自身、自分がマンガで作ったのは「悲劇」だったと語っています。それまで「マンガというのは馬鹿馬鹿しいもの。ほっとするものや笑いを生むものであって悲劇なんてとんでもない」と先輩から言われていて……でもいれたほうがいいと少年の手塚治虫は思ったそうです。もっと深いものだと。悲劇だけは自分が創造したものだといっていて、それが面白いなと感じました。

今の企業広告も、明るいものが中心で、感動はOKだけど悲劇はタブーです。ただ今後はそこに切り込んでいくものも創ってみたいですね。企業のオリジナリティという意味では、企業の社会メッセージっていうのがあるはずなので、それに沿ったコンテンツ作りっていうのは自ずと個性が出てくると思いますね。
  

「アイデアを試しやすい」マンガコンテンツの強み

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飯髙:
谷口さんといえば、マンガ原作者としても活躍されていますが、マンガの強みってどこだと感じていますか?

谷口氏:
マンガの強みは、何でもありなところですね。テキスト記事って一番問題なのが茶番になることなんですよね。

例えば、テキスト記事で写真とテキストだけでドラマ風のもの作って「今、宇宙にいる」とかやっても、茶番にしか見えないじゃないですか。リアリティがないというか。マンガだったら別に「宇宙です」と言われても「宇宙にいるな」って感じられますから。

飯髙:
原作を作る上で、どうやって考えて土台を作っていくんですか?

谷口氏:
それは如何に主人公を応援してくれる状況に持って行くかですね。

"子連れ狼"ってマンガがありますけど、主人公が無敵の剣士だったらだれも同情してくれないんですよ。「どうせ勝つんだろう」って。でも、子どもがいるから、「もし逆転されたらどうしよう」と、読者はハラハラする。頑張れって応援したくなる設定をしているんですね。

マンガっていうのは如何に主人公を応援してくれるかっていうために色々な設定をするんですよ。マンガの主人公が「俺は◯◯になる!」って宣言しがちなのは、目標設定すると応援しやすいからです。応援という意味では、マンガはかなり研究し尽くされている分野だと思っています。

マンガが最もアイデアを試しやすいというか、レバレッジを効かせやすいんですよね。テキスト記事は大変ですよ。文章と撮影があるから。マンガの場合原作を書いておけばマンガ家が描いてくれますからね。マンガ家が一番大変なので感謝しています。企画に対してのアウトプットのレバレッジが一番効くのがマンガだと思っています。
  

まとめ

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人を惹き付けるコンテンツを作るには「クリエイティブなセンス」が重要という印象がありますが、実は「同じものが別のものに見える」ことにコンテンツ制作のヒントがあります。

そして、コンテンツの善し悪しの判断基準として、一過性のPVやバズを重視する風潮があります。それは決して悪いものではありませんが、谷口マサト 氏が語ったように、今後は「ユーザーに感情を起こさせ行動を変えられる」という「態度変容」の視点も重要になっていくと考えられます。

数多に広がるインターネット上のコンテンツの中で、自身の制作したコンテンツユーザーに届けるにあたり、谷口マサト 氏の考察は大きな気付きとなるでしょう。