一貫したストーリー性にこだわる谷口マサト氏自身の個性のルーツ

飯髙:
ユーザーが主役の時代、オリジナリティとか個性の出し方で悩む方もいますよね。谷口さんは個性の出し方って工夫とかされていますか。

谷口氏:
実験系や妄想系など様々な媒体が個性を持っていますが、私の場合はストーリー性に一貫しています。

Webのコンテンツでストーリーやってる人ってほぼいないと思っているんですよ。領域的に空いてるところを考えてしまいます。

お笑い芸人もそうじゃないですか。ここ空いているなっていうところに入ってくるので、そこはみんな考えていると思うんですよね。

あと「泣き」ですね。手塚治虫さんの本をたまたま読んだんですけど、彼自身、自分がマンガで作ったのは「悲劇」だったと語っています。それまで「マンガというのは馬鹿馬鹿しいもの。ほっとするものや笑いを生むものであって悲劇なんてとんでもない」と先輩から言われていて……でもいれたほうがいいと少年の手塚治虫は思ったそうです。もっと深いものだと。悲劇だけは自分が創造したものだといっていて、それが面白いなと感じました。

*今の企業広告も、明るいものが中心で、感動はOKだけど悲劇はタブーです。ただ今後はそこに切り込んでいくものも創ってみたいですね。*企業のオリジナリティという意味では、企業の社会メッセージっていうのがあるはずなので、それに沿ったコンテンツ作りっていうのは自ずと個性が出てくると思いますね。
  

「アイデアを試しやすい」マンガコンテンツの強み

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飯髙:
谷口さんといえば、マンガ原作者としても活躍されていますが、マンガの強みってどこだと感じていますか?

谷口氏:
マンガの強みは、何でもありなところですね。テキスト記事って一番問題なのが茶番になることなんですよね。

例えば、テキスト記事で写真とテキストだけでドラマ風のもの作って「今、宇宙にいる」とかやっても、茶番にしか見えないじゃないですか。リアリティがないというか。マンガだったら別に「宇宙です」と言われても「宇宙にいるな」って感じられますから。

飯髙:
原作を作る上で、どうやって考えて土台を作っていくんですか?

谷口氏:
それは如何に主人公を応援してくれる状況に持って行くかですね。

"子連れ狼"ってマンガがありますけど、主人公が無敵の剣士だったらだれも同情してくれないんですよ。「どうせ勝つんだろう」って。でも、子どもがいるから、「もし逆転されたらどうしよう」と、読者はハラハラする。頑張れって応援したくなる設定をしているんですね。

*マンガっていうのは如何に主人公を応援してくれるかっていうために色々な設定をするんですよ。*マンガの主人公が「俺は◯◯になる!」って宣言しがちなのは、目標設定すると応援しやすいからです。応援という意味では、マンガはかなり研究し尽くされている分野だと思っています。

マンガが最もアイデアを試しやすいというか、レバレッジを効かせやすいんですよね。テキスト記事は大変ですよ。文章と撮影があるから。マンガの場合原作を書いておけばマンガ家が描いてくれますからね。マンガ家が一番大変なので感謝しています。企画に対してのアウトプットのレバレッジが一番効くのがマンガだと思っています。