営業とは何かと問われた際、多くの方が「テレアポを実施し、訪問して商談して、成約につなげる」という一連の流れを想像するはずです。

現在30代、40代以上の営業担当者であれば、社会人としてのキャリアをスタートさせて現在に至るまでは「営業がアポイント獲得から成約まで一貫して担う」ことが当然だと感じた方もいるのではないでしょうか。

ただし、こうした当然ともいえる概念が大きく変わろうとしています。

近年は、営業がアポイント獲得から最終的な案件の受注までを担うのではなく、その役割を分業化する流れが広がってきています。それが、「インサイドセールス」「フィールドセールス」という営業手法です。

インサイドセールスはテレアポや顧客との関係構築を担い、フィールドセールスは現場で商談を行い成約までを担います。特に、インサイドセールスは、マーケティング担当者とフィールドセールス担当者の境界線に位置する業務であるため、企業の戦略により柔軟な対応が必要とされています。

一体、セールスの分業化には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

今回は、マーケティングソリューションを提供するマルケトが主催した「THE MARKETING NATION SUMMIT 2017」の中から「営業とマーケティングの連携~組織のあり方からインサイドセールス、ABMまで」というテーマのパネルディスカッションの内容をご紹介します。

インサイドセールスの導入と実施を行う担当者が語る、そのメリットと活用方法を、ぜひ一読ください。

登壇者プロフィール

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株式会社HDE
インサイドセールス&デジタルマーケティング部 部長
水谷 博明 氏

株式会社i-plug
Co-Founder 取締役 CMO
田中 伸明 氏

KDDI株式会社
ソリューションマーケティング部 
部長
中東 孝夫 氏

日経BP社
ITproマーケティング担当
松本 敏明 氏
※ファシリテーター

引用:
SPEAKERS | THE MARKETING NATION SUMMIT 2017

「インサイドセールスはマーケティングとセールスの境界線」

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松本氏:
インサイドセールスとはまさにマーケティングとセールスの境界線だと思います。実際に取り入れている企業も増えてきていると聞きます。今回はインサイドセールスを取り入れている3社にお話をうかがえればと考えています。

まず、クラウドセキュリティサービスを提供する株式会社HDE(以下、HDE)の水谷さんにうかがいます。HDEではインサイドセールスはどのような位置付けとして取り組まれているのでしょうか?

水谷氏:
弊社ではインバウンドマーケティングから得られるリードが少なかったので、テレアポなどアウトバウンドを中心とした組織体系でした。

新規獲得には有効だったのですが、すぐに案件化しないリードを捨ててしまっていたことが課題でした。

インサイドセールスを導入するにあたり、仕組みとリソースが必要です。マルケトのようなMAツールと人材を確保し、3年前にインサイドセールスを立ち上げました。

インサイドセールスではナーチャリングのテレアポをミッションとして掲げています。そして、獲得したアポイントをフィールドセールスに引き継ぎます。

基本的に、インサイドセールスとフィールドセールスが1対1のペアになるような仕組み作りを行っています。またフィールドセールスへステップアップするための教育機関としての役割も担っています。

松本氏:
では、次に新卒のダイレクトリクルーティング事業を行う株式会社i-plug(以下、i-plug)の田中さんお願いします。

田中氏:
インサイドセールスはもともとセールスの傘下にあったのですが、マーケティングの傘下に移りました。ナーチャリングの最後のプロセスを担っていて、お客様の状態に合わせて対応しています。

デジタルチームがリードジェネレーションを行い、一部のアウトソーサーに架電してもらったりしています。

コンテンツマーケティングやMAツールでナーチャリングを行うのですが、デジタルだけだとお客様の本当の状態がわからなかったり、ナーチャリングしきれていないお客様が出てきます。

そこでインサイドセールスがスコアを確認しながらコミュニケーションを行うという役割を担っています。

マーケティングの基本思想として、お客様に「また会いたい」と思ってもらうことを重視していますので、基本的にはアウトバウンドな取り組みは行っていません。

松本氏:
それでは次に、KDDI株式会社(以下、KDDI)の中東さんお願いします。

中東氏:
弊社がというより、ABMに取り組む全ての企業様に言えることかなと思うのですが、BtoB向けの顧客って非常に少ないんですよね。非常に狭い世界であれば、全ての顧客にリーチすることが前提となります。

到達率というのが大切になってくるのですが、訪問営業やデジタルのアプローチなど様々ありますが、その到達率が最も良かったのがインサイドセールスでした。

もちろん訪問営業やデジタル活用も大切ですが、その中心軸としてインサイドセールスを設けることが大切だと感じています。

インサイドセールスは内製化と外注どちらのメリットが大きい?

松本氏:
インサイドセールスには人的リソースも必要ですよね。中東さんは自身の組織を内製化されていますか?外注で運用されていますか?

中東氏:
弊社の場合は、外注一択ですね。企業の環境によっても変わってくると思うのですが、インサイドセールスを導入するにあたり、モニタリングをどうするのか、SFAのインスタンスはどうするのか、キャンペーンの増減、人材の教育や雇用など様々な課題があります。いきなり内製化するには難しいので外注に依頼しています。

松本氏:
一方で水谷さんは、会社のキャリアパスとしてインサイドセールスを実施しているとおっしゃっていました。内製化されている理由を改めて聞かせていただけますか。

水谷氏:
インサイドセールスを内製で3年間取り組んできたのですが、インサイドセールスの人材はいずれフィールドセールスにデリバリーしなければならない。ただ必ずしも人材を採用できるわけではないので、内製だけで完結できるのかという点が課題になっています。実際、今期からは、内製と外注のハイブリッド型で取り組もうと考えています。

内製でリカバリーできないところを外注に依頼しています。内製と外注の二軸体制で進められればと考えています。

松本氏:
内製と外注に関して、田中さんはいかがでしょうか?

田中氏:
実は、弊社はもともと水谷さんのように内製と外注のハイブリッド型で取り組んでいたのですが、今は全て内製化しています。お客様とのコミュニケーションを大切にしているので、アウトソーシングの質では求めるレベルに到達できなかったためです。

外注と連携することは想定しつつも、社内で外注を教育できるくらいのナレッジを持とうと思っています。学生さんのアルバイトを採用し、彼らに教育する上で、ナレッジを積み上げていくという取り組みです。

マーケティング or セールスどちらに属すべきか。3社が語る組織作りとは

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松本氏:
3社それぞれ考え方も違いますし、積み上げや経験があってこそだと思います。次に、インサイドセールスはマーケティング部門、セールス部門どちらに属すべきなのかについて、「組織」という視点でお聞きできればと思います。

まず、田中さんからお願いします。

田中氏:
組織作りは永遠の課題だと思っています。

優秀なメンバーが支えてくれているのですが、これはある意味「組織」になり切れていない証だと理解しています。弊社のサービスの特性(新卒採用のダイレクトリクルーティング事業)を考えると、「また会いたい」が非常に大切な指標になるのですが、大手の人材系サービスと比べると成功報酬が少なく、利益を出しづらいんですよね。

生産性の高い組織が前提になるのですが、そこで全てを定量的に判断できる組織作りを心がけています。全部の指標を数字で語ることができれば、改善することができます。SalesforceのようなCRMツールを活用しながら、全てをデータ化し、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスがデータをもとにコミュニケーションを行える仕組みを作っています。

中東氏:
弊社では組織のミッションの定義付けをしっかり行った上で、コミュニケーションの取り方に気を付けました。

まずは購買プロセスの中にある業務の漏れを無くすことを第一に行い、それを「弊社のマーケティング」と定義。KDDIは大きな会社なので、法人マーケティング担当者だけでも30人ちかく在籍しています。この中で何をやるのかという定義付けは非常に重要な要素です。

また、定義付けだけでは「絵に描いたような餅」になってしまいます。それをどのように実現させるのか、というのが重要です。

その結果、コミュニケーションが大切というところに行き着きました。信頼関係を構築することで、意思疎通が円滑に生まれるので、組織において理解や共感を得られやすくなります。

水谷氏:
弊社では、インサイドセールスやデジタルマーケティングが組織として評価されたことによってデータの質と量が担保できるようになりました。

データは、会社の資産として残ります。顧客のデータだけでなく社内でのナレッジや教育ノウハウ、体制などです。

ここでいうデータというのはインサイドセールス部門だけではなく、全社的に関わってくることです。データが蓄積されることで全社的に強い組織となり結果的に売上げにつながるからで、今後はインサイドセールスはフィールドセールスに寄せていこうと検討しています。

フィールドセールスはデータに弱いこともあるので、データを重要視する風土を作ることで、全社的にデータが蓄積される仕組みを作れればと考えています。

インサイドセールスが担う「データマネジメント」の役割とは?

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松本氏:
それでは、最後にインサイドセールスにおいて重要なデータマネジメントについてうかがいます。

組織を作る上でもそうですが、結局は裏付けとなるデータがないとビジネスとして成り立ちません。最も重要な要素になってくるのではないかなと思っています。この点に関して、中東さんの考えを教えてください。

中東氏:
顧客データという視点からお話ししますと、デマンドセッターとオムニチャネルキーワードになります。リードを作る仕掛けとして、デジタル活用や電話、フェイス トゥ フェイスのコミュニケーションがありますが、この3つはチャネルが違います。

お客様からすればオムニチャネルですが、我々からみるとシングルカスタマービューでなければならない。どのチャネルにいても1人のお客様と識別できないといけないのです。購買力のある企業を識別できるデータをマネージすることが大切です。

シングルカスタマービューとして見えていない企業があるのも事実です。デジタルはクッキー情報、電話は電話番号、フェイス トゥ フェイスはアカウントリスト、横串で全部つながっていないんですよね。オムニチャネルだとしてもシングルカスタマービューでない場合があります。なので、シングルカスタマービューは非常に重視しています。

水谷氏:
弊社の中でどんなデータを貯めるいるのかというお話をさせていただきます。

マーケティングで利用するデータというのは、一般的には企業の情報やMAツールに蓄積するクリック率などですよね。その中でも特に我々が大切にしているのは、セールス活動のデータ化です。

セールス担当者がお客様の訪問先でどういう話をして、どういうリアルな情報を得たのか。それをデータベース化することに注力しました。現状蓄積されたデータベースは、エンゲージメントやナーチャリングの精度の高さを実現しています。

先ほども申し上げたように、インサイドセールスはデータと密接な業務ですが、フィールドセールスはデータに苦手意識を持っている方もいます。これを解決するために密なコミュニケーションを図りました。

田中氏:
弊社は、やはり「また会いたい」と思ってもらうことを重視しているため、お客様のペルソナを具体的に描けるかが大切です。データにおいてもお客様の状態の正しさを特定できるかという点を重視しています。属性情報だけではなく、ニーズや懸念点をデータ化して管理しています。

そのデータをプラットフォームを1つにまとめ、全員がお客様の状態がわかる状態にしています。

インサイドセールスはフィールドセールスに対して商談のパイプラインを作れるかが大切です。お客様の詳細なデータをインサイドセールスとフィールドセールスの共通言語として活用しています。

すると、フィールドセールスがフォローし切れないお客様に対してMAツールでアプローチしたり、フィールドセールスの担当者の名前でアポイントメールを送るという施策が行えます。

まとめ

今回登壇した3社もそれぞれ全く異なる取り組み方をしていることからわかるように、企業のミッションによってマーケティング、セールスどちらの部門に寄せるのか異なります。また、それに応じて組織作りも変化していることがわかりました。

このことからも、まずはBtoB向けなのか、BtoC向けなのか、自社の事業に合わせてインサイドセールスの組織を検討することが重要だと考えられます。

一方で、3社に共通していたのはデータマネジメントです。インサイドセールスは単なる顧客情報だけではなく、より深いインサイトを蓄積することでフィールドセールへ成果につながる商談を引き継ぐことができます。また、データを用いることで、自社の弱点を可視化できるため、結果として全社的な改善へとつながるでしょう。

実際に営業チームを分業化している企業の方も、今後こうした組織作りを目指している方にとっても参考にできるイベントです。ぜひとも普段の業務にお役立てください。