ABMアカウントベースドマーケティング)とは、BtoBで売り上げを最大化するために効果的なマーケティング手法です。ただし、ABMが向いているかは企業によって異なるため、特徴を理解した上で取り組む必要があります。

この記事ではABMの概要や成果が出やすい企業の特徴、実施する方法、ABMの導入で役立つツールなどについて解説します。企業の営業マネージャーや営業部長、アライアンス担当者の方はぜひ参考にしてください。

目次

  1. ABM(アカウントベースドマーケティング)とは
  2. ABMで成果が出やすい企業の特徴
  3. ABMに取り組むメリット
  4. ABMに取り組む際の注意点
  5. ABMを実施する方法
  6. ABM導入で役立つツール
  7. ABMの成功事例
  8. ABMで売り上げの最大化を目指そう
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ABM(アカウントベースドマーケティング)とは

ABMは、特定の企業アカウント)を対象に、リソースを集中させて営業を行うマーケティング手法です。ABMと一般的なマーケティング手法には、次のような違いがあります。

一般的なマーケティング手法 ABM
ターゲット 不特定多数のリード 特定の企業
手法 インバウンド アウトバウンド
施策の流れ リード獲得→育成→営業→成約 ターゲット特定→営業→成約


一般的なマーケティング手法では、不特定多数のリードを獲得しナーチャリングを行った上で、興味度の高まったリードにアプローチし商談・受注を獲得します。

一方、ABMは初めからターゲットとなる企業を絞り込み、アウトバウンドの営業によって売り上げの最大化を目指す手法です。

ABMで成果が出やすい企業の特徴

ABMは、ターゲット企業に対して営業のリソースを集中させる手法のため、次のような条件を満たすBtoB企業が取り組むと、高い成果が期待できます。

規模の大きな法人顧客を対象としている

規模の大きな法人顧客を対象としたビジネスなら、ABMでターゲットとしたアカウントから十分な売り上げを得ることが可能です。

反対に、自社のターゲットが中小企業など小規模なビジネスの場合、アカウントを絞り込んでもメリットが得られません。また、中小企業は大企業と比べて数が多いため、アカウントの絞り込みに労力がかかってしまいます。

販売する商品・サービスの単価が高い

販売する商品やサービスの単価が高いほど、ABMで受注を獲得した際に大きな売り上げを得ることが可能です。また、同じターゲット企業に対してアップセルクロスセルできる商品・サービスがある企業も、ABMに向いています。

一方、商品やサービスの単価の低い場合や、同じ企業に対して売れる商品・サービスの数が少ない企業は、ABMによる売り上げアップが困難です。

ABMに取り組むメリット

BtoB企業がABMに取り組むと、売り上げだけでなくマーケティング投資対効果なども向上します。ABMに取り組むことで得られる主なメリットは次の通りです。

売り上げの最大化につながる

ABMでは、選定したターゲット企業に対して最適化されたアプローチを行うため、対象となる企業からの売り上げを最大化できます。営業時のメッセージや商品・サービスの構成などをアカウントごとに調整し、単価や成約率を向上させることが可能です。

マーケティングの投資対効果が高まる

ABMでは見込み度の高いアカウントにリソースを集中させるため、無駄なコストや労力を削減できます。大量のリード獲得するための広告費や、成約につながる見込みが低いリードへの営業コストなどをカットし、マーケティングの投資対効果を高められることがメリットです。

PDCAを効率よく回せる

ABMはターゲット企業に対して行ったアプローチの成否が明確なため、PDCAを効率よく回せます。一つのアカウントに対する施策の成功要因・失敗要因を分析し、次のアカウントへのアプローチに反映できることがABMのメリットです。

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ABMに取り組む際の注意点

ABMにはメリットだけでなく、注意すべきポイントもあります。特に、自社にとっての有効性や取り組み方、ABM実施にかかるコストなどを確認しておくことが重要です。

ここでは、ABMに取り組む前に押さえておきたい注意点を紹介します。

自社にとってABMが有効か吟味する必要がある

ABMはターゲットアカウントに対して自社のリソースを集中させる手法のため、現在進行中のマーケティング施策や営業プロセスを中断してABMに移行するかどうかの判断が必要です。現状の施策と、ABMで見込まれる売り上げや収益を比較した上で、自社にとってABMが有効か吟味しましょう。

営業とマーケティングの連携が必須

一般的なマーケティング手法ではマーケティング部門が主体となり、リード獲得の最大化を目的として施策を行います。

一方、ABMでは営業とマーケティングが連携し、売り上げの最大化を共通目的として活動することが重要です。そのため、営業部門とマーケティング部門で、ターゲットアカウントに関する情報や目的意識を共有する必要があります。

ツールを導入する場合コストがかかる

営業とマーケティングで情報共有する仕組みが社内に無い場合、データを一元管理できるツールが必要です。また、ターゲットアカウントに対する施策を自動化するためのツールも、ABMに役立ちます。

ABMの実施にあたってこれらのツールを導入する場合、初期費用運用費用などのコストを確認しておくことが大切です。

ABMを実施する方法

ABMを実施する方法を4つのステップに分けて解説します。

1. ターゲットとなるアカウントを選定する

まずは、ABMでターゲットとなるアカウントをリストアップしましょう。

自社の商品・サービスを販売できる見込みがある企業を洗い出し、事業規模や成約の見込み度などで優先順位をつけます。また、リピートによる長期的な取引の可能性も、アカウントを選定する際に考慮するべきポイントです。

2. コンタクトポイントを探る

対象のアカウントが決まったら、次にその企業とのコンタクトポイントを探ります。企業における意思決定者を調査し、在籍している部門や役職、連絡先などの情報を集めます。

意思決定者へアプローチする主な方法は、メールや電話、展示会、セミナーでの交流などです。

3. 施策を策定する

アプローチするべき意思決定者が明確になった段階で、どのような施策を行うかを計画します。意思決定者への接触から商談、リピート獲得など各フェーズで行う主な施策は次の通りです。

最初の接触~顧客育成>
・メールや電話によるアプローチ
・展示会やセミナーへの招待
・サービス資料の提供

<商談>
・ターゲット企業が抱える課題のヒアリング
・BANT条件の確認
・ニーズに合わせた商品、サービスのカスタマイズ

<顧客継続>
・サポート、アフターサービスの提供
・オプションや関連商品の紹介
・プランのアップグレードの促進

4. 施策の実行と効果検証を繰り返す

計画をもとに、ターゲットリストで優先順位の高い順に施策を実行します。

各施策の進捗状況や成否は営業部門とマーケティング部門で共有し、効果検証をしながらアプローチ方法を最適化していくことが重要です。施策の実行と効果検証を繰り返し、アプローチの精度を高めましょう。

ABM導入で役立つツール

ABMを実施する際は、情報収集や施策の実行を効率化するためのツールが役立ちます。ABM導入で役立つ主なツールは次の通りです。

Marketo(マルケト)

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出典:Marketo

●ターゲットごとのアプローチを最適化できるMAツール

Marketoは、ターゲットアカウントに合わせて、メールやWebサイトなどの施策を最適化できるMAツールです。また、リード管理機能効果測定機能など、ABMを進めるために必要な機能が備わっています。営業部門とマーケティング部門の情報共有も可能です。

FORCAS(フォーカス)

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出典:FORCAS

●150万社以上のBtoB企業データベースを持つ顧客戦略プラットフォーム

FORCASは、ABMのターゲットアカウントを効率的に選定できるツールです。BtoBに特化した150万社以上の企業データベースをもとに、業界区分や売上高、従業員数などの条件で企業リストを作成できます。また、名寄せ機能MAツールとの連携機能も利用可能です。

SPEEDA(スピーダ)

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出典:FORCAS

●業界動向やトレンドも把握できる経済情報プラットフォーム

SPEEDAは、ABMの戦略策定やターゲット選定に役立つツールです。560業界市場環境競争環境、各企業の技術投資動向などが把握できます。また、国内企業のデータベースから条件を指定し、ABMのターゲットアカウントをリストアップすることも可能です。

ABMの成功事例

他社の成功事例を知ることは、ABMに取り組む際の参考になります。国内企業におけるABMの主な成功事例は次の通りです。

NEC|部門間の連係でABMを実現

電機メーカーのNECではデジタルマーケティング、インサイドセールス、営業の各部門が個別に顧客情報を保持していることが課題でした。

ABMの実施にあたり、CRMとSFAを導入し、顧客情報の共有に取り組んでいます。確度の高い案件について対象企業の課題感を社内共有した上で営業を行い、商談の精度を向上。また、これまで取引のなかった企業や部署を「ホワイトスペース」としてリスト化し、新規の取引も獲得しています。

参考:NECのABM自社実践事例

PayPay株式会社|法人DBの活用で営業を効率化

電子決済サービスを提供するPayPay株式会社では、ターゲット企業の選定を手作業で行っていて、工数がかかっていたことが課題でした。

すでに社内に導入していたSFAツールに、法人情報データベースを連携し、ターゲット企業選定を自動化しています。ターゲット企業の業種や売上高などの情報も分析できるようになり、営業効率が向上。加盟店の開拓の促進に成功しました。

参考:日本最大の法人マスタデータ「LBC」をPayPayに導入

SAPジャパン株式会社|ターゲットの絞り込みで稼働率を向上

ソフトウェア開発や販売、コンサルティング事業などを展開するSAPジャパン株式会社では、属人的な勘や経験に頼ってターゲティングを行っていたことが課題でした。

ABMツールのFORCASを導入し、自社に合う属性の企業リストをデータに基づいて抽出。約4万社あった企業リストから優先度の高い2,000社を絞り込み、セールス業務の効率化に成功しています。

参考:約4万社のターゲット企業リストを約2,000社に絞り込み、成果が大幅に向上。

ABMで売り上げの最大化を目指そう

ABMを実施すると、ターゲット企業に最適化したアプローチにより、売り上げの最大化を目指すことが可能です。大企業を対象として、単価の高い商品やサービスを販売している企業に、ABMが適しています。

情報収集プラットフォームやMAなど、各種ツールを活用しながら、ABMを成功させましょう。

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