ABMアカウントベースドマーケティング)とは、BtoBで売り上げを最大化するために効果的なマーケティング手法です。ただし、ABMが向いているかは企業によって異なるため、特徴を理解した上で取り組む必要があります。

この記事ではABMの概要や成果が出やすい企業の特徴実施のステップABM導入に役立つツールなどについて解説します。企業の営業マネージャーや営業部長、アライアンス担当者の方はぜひ参考にしてください。

この記事で分かること

・ABMの基礎知識と導入のメリット
・ABMを実践するための7つのステップ
・ABMに必要なマーケティング支援ツール

目次

  1. ABMとは
  2. ABMが注目されている背景
  3. ABMのメリット
  4. ABMの注意点
  5. ABMで成果が出やすい企業の特徴
  6. ABMを実施する7つのステップ
  7. ABM導入に役立つツール
    1. Marketo(マルケト)
    2. uSonar(ユーソナー)
    3. FORCAS(フォーカス)
    4. SPEEDA(スピーダ)
  8. ABMの活用事例
  9. ABMで売り上げの最大化を目指そう

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ABMとは

ABMとは、自社に利益をもたらす企業(=アカウント)を選定し、組織全体でリソースを集中させてアプローチするBtoBマーケティング手法のことです。

「大企業」や「上場企業」のような一般的なターゲティングではなく、「A社」や「B社」のように企業単位でアカウントを絞り込み、各アカウントに最適な施策を実施することで、売上を最大化します。

LBM(リードベースドマーケティング)との違い

ABMとLBMの違い.png

● LBM

【対象】売れそうな企業の担当者
【アプローチ数】多い(数百人~数万人)
【メッセージ】標準化されたメッセージ
【主な施策】メールマーケティング、オウンドメディア、広告運用、展示会、セミナー
【獲得できるリードの質】質の低いリード~質の高いリード

● ABM

【対象】利益をもたらすA社、A社の担当者
【アプローチ数】少ない(数人~数十人)
【メッセージ】A社にカスタマイズしたメッセージ
【主な施策】One to Oneマーケティング(マイクロサイトの作成、A社専用のセミナーなど)
【獲得できるリードの質】質の高いリード

LBMは、自社の商品やサービスが「売れそうな企業の担当者」を見つけてアプローチするマーケティング手法です。

ABMとの最大の違いは、個々のリードに投下する時間とエネルギーであり、ABMは質LBMは量を重視していると言えます。

ABMは、アカウントに最適化したマーケティング戦略を実施して、リードと中長期的な関係を構築し、長ステージに合わせたソリューションを提供します。

一方、LBMはセッション数やPV数、UU数、クリック数などの数値を重視します。目標はあくまでより多くのリードを獲得することであり、必ずしも収益性の高いリードをターゲットにしているわけではありません。

デマンドジェネレーションとの違い

デマンドジェネレーションとは、多くのリードを集めて育成し、案件化する手法のことです。スコアリングに基づいて段階的にリードを絞り込み確度の高いリードを営業に引き渡すことを目指します。

ABMとの違いを魚の捕獲に例えると、最初から対象企業を絞り込むABMは狙いを定める「モリ(魚突き)」、広範囲にリーチするデマンドジェネレーションは、多くの魚を獲得する「投網」のようなイメージです。

ただし、ABMとデマンドジェネレーション、LBMは相反するものではなく、それぞれが補完し合いながら同時に実施されるのが一般的です。

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ABMが注目されている背景

ABMが注目されている背景には、以下の2つの理由があります。

  • ビジネスの主戦場がオンラインに移行
  • ABMの導入に必要な基盤が整ってきた

ビジネスの主戦場がオンラインに移行

デジタルマーケティングが普及した現在、従来の方法だけでは成果を出すことが難しくなってきました。営業担当者が商談を行う前に、大部分の勝負はオンライン上で決着してしまいます。

このような状況下で、利益をもたらす企業だけを対象にし、オンライン上での顧客接点を最大化するABMが注目されています。

データを分析・活用できる環境が整ってきた

ABMを実践するには、既存のCMSやMAで収集・蓄積したデータが必要です。また、効率的な運用を実現するには、大規模なパーソナライゼーションを実現できるCMSや、ABMの戦略設計が組み込まれたMAツールと*¥自社のデータを連携・統合化しなければなりません。

近年、ABMの基盤となるCMSやMAを導入・運用する企業が増えてきたため、日本でもABMを導入する環境が整い、注目が集まってきています。

ABMのメリット

企業がABMを導入する主なメリットは以下の4つです。

  • リードタイムの短縮
  • 顧客エンゲージメントの強化
  • 高いROI(投資利益率)の実現
  • マーケティングと営業部門の連携強化

ABMは大口顧客となりうるアカウントに焦点を当てることでリードタイムを短縮し、各アカウントに最適化されたOne to Oneマーケティングを通じて顧客エンゲージメントを強化します。これにより、高いROIを達成できます。

さらに、ABMに役立つマーケティング支援ツールを導入することで、部門間での共有が容易になり、商談まで効率的に進めることができます。

ABMの注意点

ABMを実施するにあたり確度の高いアカウントを見つけるためには、蓄積したデータ事業部間の連携が欠かせません。

また、個別的な営業から組織的な営業に移行するため、営業プロセスだけでなく、組織編制や人事考課制度の再構築も行う必要があります。

これらはいずれも短期間で行えることではなく、効果的に機能するまでにはある程度時間がかかるという点に注意が必要です。

ABMで成果が出やすい企業の特徴

ABMは、ターゲット企業に対して営業のリソースを集中させる手法であるため、次のような条件を満たすBtoB企業が取り組むと、高い成果が期待できます。

  • 規模の大きな法人顧客を対象としている
  • 販売する商品・サービスの単価が高い

規模の大きな法人顧客を対象としている

規模の大きな法人顧客を対象としたビジネスなら、ABMでターゲットとしたアカウントから十分な売り上げを得ることが可能です。

反対に、自社のターゲットが中小企業など小規模なビジネスの場合、アカウントを絞り込んでもメリットが得られません。また、中小企業は大企業と比べて数が多いため、アカウントの絞り込みに労力がかかってしまいます。

販売する商品・サービスの単価が高い

販売する商品やサービスの単価が高いほど、ABMで受注を獲得した際に大きな売り上げを得ることが可能です。また、同じターゲット企業に対してアップセルクロスセルできる商品・サービスがある企業も、ABMに向いています。

一方、商品やサービスの単価の低い場合や、同じ企業に対して売れる商品・サービスの数が少ない企業は、ABMによる売り上げアップが困難です。

ABMを実施する7つのステップ

ここでは、ABMを実施する流れを7ステップで紹介します。

1. 事業目標からABMの導入を判断する
2. プロジェクトチームを作る
3. ターゲットアカウントを抽出
4. 意思決定者やキーパーソンを特定
5. パーソナライズしたシナリオを作成
6. チャネルを選定して施策を実施
7. 施策に対する効果測定を行う

1. 事業目標からABMの導入を判断する

ABMの導入効果があるのは、「大規模な法人顧客を対象としている」や「販売する商品・サービスの単価が高い」などの特徴を持つ企業です。

また、ABMの実施にはツール導入や組織再編が必要であり、コストの試算やリソース配分も考慮する必要があります。自社にとってABMが必要な戦略なのか、事業目標と照らし合わせて判断しましょう。

2. プロジェクトチームを作る

デマンドセンターの役割を持つプロジェクトチームを立ち上げましょう。

ABMではアカウントの「誰に、何を、いつ、どのようなタイミングで、どのようなアクションを取るか」を社内でコントロールする必要があります。

部門単位で場当たり的な施策を展開してしまうと、集中的にアプローチするというABMの効果が薄れてしまいます。

3. ターゲットアカウントを抽出

CRMやMAで蓄積したデータを参照し、顧客に優先順位をつけてターゲットアカウントを選定します。

アカウントの規模、業績、事業展開、概算取引額、アップセル・クロスセルの可能性、リピート率、市場での影響度などの戦略的要因を考慮しましょう。

4. キーパーソンを特定

アカウント選定後は、アプローチすべき意思決定者などのキーパーソンを特定します。

社内にキーパーソンと接点のある人物はいないか、競合他社の商品やサービスの利用状況など、営業部門を中心にリサーチを開始しましょう。

5. パーソナライズしたシナリオを作成

アカウントの課題を解決するためのシナリオを作成します。これには、アカウントが抱える課題やその原因、現状を深く理解する必要があります。

そして、自社の商品やサービスがどのようにその課題を解決するのかを示すコンテンツを制作しましょう。

6. チャネルを選定して施策を実施

シナリオを作成したら、キーパーソンごとに最も効果を発揮するチャネルを選定し、パーソナライズコンテンツやメッセージを届けます。

一貫したメッセージが伝わるように、すべてのコンテンツを連動させましょう。

7. 施策に対する効果測定を行う

ツールを活用して各施策の貢献度を分析します。目標に対する貢献度が低い施策は予算を縮小するか、停止します。

成果が出ない場合、アカウント選定やシナリオ作成など、初期段階に戻って仮説検証を行うこともあります。

ABM導入で役立つツール

ABMを実施する際は、情報収集や施策の実行を効率化するためのツールが役立ちます。ABM導入で役立つ主なツールは次の通りです。

Marketo(マルケト)

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出典:Marketo

● ターゲットごとのアプローチを最適化できるMAツール

Marketoは、ターゲットアカウントに合わせて、メールやWebサイトなどの施策を最適化できるMAツールです。また、リード管理機能や効果測定機能など、ABMを進めるために必要な機能が備わっています。営業部門とマーケティング部門の情報共有も可能です。

uSonar(ユーソナー)

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出典:uSonar

● 国内拠点網羅率99.7%の企業データLBCを搭載

uSonarは、820万件の法人企業データベースLBCを活用し、受注につながるABMリストを作成できる顧客データ統合ツールです。既存の顧客データやリードデータをLBCと統合し、優先すべきアカウントを可視化。AIによる需要測定により、受注見込みの高い企業を判定できます。

FORCAS(フォーカス)

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出典:FORCAS

● BtoBに特化した150万社以上のBtoB企業データベース

FORCASは、ABMのターゲットアカウントを効率的に選定できるツールです。BtoBに特化した150万社以上の企業データベースをもとに、業界区分や売上高、従業員数などの条件で企業リストを作成できます。また、名寄せ機能やMAツールとの連携機能も利用可能です。

SPEEDA(スピーダ)

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出典:SPEEDA

● 業界動向やトレンドも把握できる経済情報プラットフォーム

SPEEDAは、ABMの戦略策定やターゲット選定に役立つツールです。560業界市場環境競争環境、各企業の技術投資動向などが把握できます。また、国内企業のデータベースから条件を指定し、ABMのターゲットアカウントをリストアップすることも可能です。

以下の記事では、ABMに役立つ数多くのマーケティング支援ツールを紹介しています。機能や料金などを比較検討するのに役立つ情報が満載ですので、ぜひチェックしてみてください!

関連記事:ABMツールとは?機能やメリット、BtoBマーケティングで必要な理由

ABMの活用事例

他社の活用事例を知ることは、ABMに取り組む際の参考になります。国内企業におけるABMの主な事例は次の通りです。

NEC|オファーCTAが1.5倍に増加

NECは、サイト来訪者のダークファネル(アノニマス)を把握し、ターゲット企業がサイトを訪れた際にパーソナライズされたイベント情報の提供をしました。

その結果、オファーCTAの反応が従来の約1.5倍に増加しました。さらに、エンゲージメントデータを利用したFacebook広告配信を行い、エンゲージメントユーザー来訪率が約2倍に増加しました。

参考:NECが注目する「ダークファネル」上でのABMとは?ターゲット企業のエンゲージメント最大化への挑戦 :nofollow

PayPay株式会社|法人DBの活用で営業を効率化

電子決済サービスを提供するPayPay株式会社では、ターゲット企業の選定を手作業で行っていて、工数がかかっていたことが課題でした。

すでに社内に導入していたSFAツールに、法人情報データベースを連携し、ターゲット企業選定を自動化しています。ターゲット企業の業種や売上高などの情報も分析できるようになり、営業効率が向上。加盟店の開拓の促進に成功しました。

参考:日本最大の法人マスタデータ「LBC」をPayPayに導入

SAPジャパン株式会社|ターゲットの絞り込みで稼働率を向上

ソフトウェア開発や販売、コンサルティング事業などを展開するSAPジャパン株式会社では、属人的な勘や経験に頼ってターゲティングを行っていたことが課題でした。

ABMツールのFORCASを導入し、自社に合う属性の企業リストをデータに基づいて抽出。約4万社あった企業リストから優先度の高い2,000社を絞り込み、セールス業務の効率化に成功しています。

参考:約4万社のターゲット企業リストを約2,000社に絞り込み、成果が大幅に向上。

ABMで売り上げの最大化を目指そう

ABMを導入するメリットは以下の4つです。

リードタイムの短縮
顧客エンゲージメントの強化
高いROI(投資利益率)の実現
マーケティングと営業部門の連携強化

また、ABMを実施する7つのステップは以下の通りです。

  1. 事業目標からABMの導入を判断する
  2. プロジェクトチームを作る
  3. ターゲットアカウントを抽出
  4. 意思決定者やキーパーソンを特定
  5. パーソナライズしたシナリオを作成
  6. チャネルを選定して施策を実施
  7. 施策に対する効果測定を行う

ABMはデータドリブンであることが求められます。ABMの手法が自社にマッチする場合は、企業単位でアカウント管理できるMAや、アカウントリストの作成に適した顧客データ統合ツールなどの導入を検討してみましょう。

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