自社の商品やサービスの集客・販売促進を行う上でよく活用される施策が「値引き」です。

値引きは、顧客にとってわかりやすい付加価値であり、企業にとっても特別な準備がいらないため、すぐに実行でき、効果を感じやすい施策です。しかし、安易に行えてしまうからこそ、企業が陥ってしまいがちな罠が潜んでいることをご存知でしょうか。値引き施策は、計画的に行うことが重要です。

今回は、値引き施策のメリット・デメリットを取り上げた上で、様々な値引き施策についてご紹介します。
  

値引き施策の目的は、利益の総額を増やすこと

得する「値引き」損する「値引き」_003.jpg

当然ですが、値引きをすると1商品あたりの利益率は低下します。ただその分、値引き施策によって顧客の購買意欲を刺激し、より多くの商品を購入してもらうことで利益の総額を増やしていくのが、値引き施策の本来の目的です。

この目的を念頭に置かないまま安易に値引きしてしまうと、歯止めがきかなくなったり、値引きに慣れた顧客が定価の商品を購入しにくくなったりと、悪い循環に陥ってしまう可能性もあります。実施が簡単な分、慎重に行うように気を付けましょう。
  

値引施策のメリット

得する「値引き」損する「値引き」_002.jpg

顧客にとっての利益(ベネフィット)がわかりやすい

商品に付加価値をプラスして提供する施策は、値引き以外にもあります。中でも値引き施策の特徴であり、メリットとなるものが顧客にとっての利益(ベネフィット)がわかりやすいことです。

例えば、商品に何らかの特典を付けたとしても、その特典に価値を感じるかは顧客によって異なります。一方、金額の価値は「高い」「安い」といった捉え方は違う可能性があるものの、価値は固定されているため幅広いターゲットに訴求できます。

参考:
「おまけ」で顧客の心を鷲掴み!5つの顧客インセンティブ施策を解説|ferret
  

新規顧客の獲得

顧客の多くは、新商品など過去に購入したことのない商品に警戒心を抱きます。新しいものを試すことで「得したい」という気持ちより「損をしたくない」という気持ちの方が強いからです。これは「損失回避の傾向」と呼ばれており、行動経済学でも証明されている心理的効果です。

ただ、値引きで購入のハードルを下げることにより、新規顧客にとっても手を伸ばしやすい導線をつくることができます。
  

既存顧客の満足度向上

新規顧客だけではなく、既存顧客に対しても効果が見込めます。「会員限定」など既存顧客限定の値引きや新規顧客の紹介割引を行うことで、継続的に自社商品を購入してくれている顧客の満足度向上につなげることができるでしょう。

顧客に「この企業から特別(大切)に扱われている」と感じてもらうことで、*エンゲージメント(企業や商品への愛着心)*が高まる可能性もあります。
  

割引施策のデメリット

得する「値引き」損する「値引き」_004.jpg

利益率の低下

前述のとおり、値引きを行うことで1商品あたりの利益率は低下します。そのため、安易に値引きするのではなく、利益の総額を増やすことを目的に値引き施策の戦略を立てることが重要です。

事前に値引き後の売上見込を予測し、計画的に実施しましょう。
  

定価で購入されなくなる可能性がある

期間限定セールなどで値引き施策を実施した場合、期間が終了し定価に戻した途端に売上が下がってしまうことがあります。

例えば、定価3,000円の商品を1週間2,000円で販売し、その後定価3,000円に戻したとします。その場合、顧客にとっては「3,000円の商品が2,000円に下がった」ことより、「2,000円の商品が3,000円に上がってしまった」印象の方が強く残ってしまうことがあるのです。

このように、1番最初だったり1番インパクトが強かったりした印象が、今後の判断基準として固定されてしまうことを「アンカリング効果」といいます。

参考:
営業マンなら知っておいて損はなし!「アンカリング効果」の基本と活用方法を解説|ferret
  

値引きによる価値の印象が強くなる

あまり頻繁に値引き施策を繰り返すと、顧客は「あの店はよく値引きしている」という印象を抱くようになります。「サービス精神が旺盛」だとプラスに捉えられればいいですが、「値引きしている店」という印象が根付いてしまうと、値引きしていない時期の売上や来客数が減少してしまう可能性もあります。また、もし近隣の競合店がさらに値引きを行った場合、値引き競争を繰り返さざるを得なくなり、双方が疲弊してしまう事態になりかねません。

あくまでも施策の一環として値引きを行うようにして、顧客にとってのイメージはより付加価値の高いものに惹き付けるよう心がけましょう。
  

値引きの種類

得する「値引き」損する「値引き」_001.jpg

値引き施策には、状況に応じて様々な方法が考えられます。

今回は、以下7つの施策について解説します。

1. 新発売記念値引き
2. 複数値引き
3. 継続購入値引き
4. 会員値引き
5. 紹介値引き
6. 訳あり値引き
7. 休眠顧客値引き

  

1. 新発売記念値引き

商品を新しく発売した記念として値引きを行う施策です。

前述のとおり、人は「得したい」気持ちより「損したくない」気持ちの方が強いものです。新商品には警戒しがちな顧客心理を和らげ、「試してみよう」と思ってもらうためのフックとして値引き施策を活用してみましょう。
  

2. 複数値引き

1度の購入個数、または購入人数に応じて値引きを行う施策です。
  

個数

「3個購入で15%OFF」「2個購入で1個無料」などと謳って値引きを行います。こうすることで、元々1個しか購入予定のない顧客の購入個数売上単価を引き上げることができます。

アパレルショップなどでは、同じ商品でなくとも、同じ店舗内の商品を同時購入することで値引きする場合もあります。
  

団体

「3人以上のお申込みで20%OFF」「カップル利用で2,000円OFF」などと謳って値引きを行います。この施策は商品を販売する小売店だけではなく、アミューズメント施設やイベントなどのサービスでも活用されています。

この施策により顧客は家族や友人、恋人を誘いやすくなるため、結果的に顧客数の増加といった効果が見込めます。
  

3. 継続購入値引き

「定期購入制度利用で毎回15%OFF」「次回継続申し込みで15%OFF」などと謳って値引きを行う施策です。

主に、既存顧客のリピート購入の増加に影響します。近年は、新規顧客より既存顧客に注力する企業も増えており、既存顧客の満足度をいかに高めて継続的に利用してもらうかが重要な指標になっていることも少なくありません。
  

4. 会員値引き

「会員様限定20%OFF」など、特定の顧客に向けて値引きを行う施策です。

前述した「3. 継続購入割引」と同じで、既存顧客向けの施策だといえるでしょう。新規顧客の初回利用時にこの値引き施策をフックに会員になってもらうことができれば、継続利用促進にも有効な手立てとなります。
  

5. 紹介値引き

「ご友人紹介で紹介者ともに30%OFF」など、既存顧客に身近な新規顧客を紹介してもらうための値引き施策です。

近年は、企業からの直接的な広告より、友人や家族など近しい存在から勧められる形で購買意欲が刺激される傾向にあります。信頼している存在から紹介された場合は、顧客になる可能性も当然高まるため、1人あたりの顧客獲得コストの削減につながります。
  

6. 訳あり値引き

「少し傷が入っている商品」「賞味期限が近い商品」「イベント間近で開いている座席」などを値引いて販売する施策です。

品質や味、機能には全く問題がないものの、商品の形状や状況の問題で通常販売ができない商品を、顧客に了承を得た上で値引きし、購入してもらいます。家庭用で消費する場合など、見栄えが気にならない時は値引きがメリットとなり得るため、不良品ができてしまった時の選択肢の1つとなるでしょう。
  

7. 休眠顧客値引き

休眠顧客とは、1度は自社の商品を購入してもらったものの、その後一定期間以上リピート購入につながっていない顧客のことです。

再度利用してもらうためのきっかけとして、「2年以上購入していない顧客」限定で値引きを行うなどの施策がこれにあたります。
  

まとめ

値引き施策は、準備もそこまで必要ではない上に顧客の反応もわかりやすいため、販売促進施策の中でも導入している企業がほとんどです。しかし、値引きはその商品の価値を自ら下げることにもつながります。

メリットとデメリットを理解し、戦略的に行うことが重要です。

また、顧客のターゲットや状況によっても様々な種類があります。年末商戦に向けて値引き施策を考えている方も、1度見直してみてはいかがでしょうか。