企業の成長の上で大切なものの1つに、採用のプロセスがあります。

優秀な人材を獲得したい」というのはあらゆる企業の共通認識ではないでしょうか。

リクルートキャリアが行った調査によれば、10月1日時点で18卒の内定辞退率は64.6%であると発表されました。

参考:
【確報版】「2017年10月1日時点内定状況」就職プロセス調査(2018年卒)|プレスリリース|リクルートキャリア - Recruit Career

こうした売り手市場の中で優秀な学生を採用するためには、今までの採用活動に加え、企業側のより主体的な行動が求められています。そんな中、新しい採用活動の形として、「ダイレクトリクルーティング」という手法が注目されているのをご存知でしょうか。

今回はその手法と、導入可能な求人サービスについてご紹介します。
  

企業が充分に採用数を確保できない現状

新卒の採用について考える際にまず最初に思い付くのが、従来の「新卒一括採用」ではないでしょうか。求人広告などを利用して、大学および大学院卒を中心とした人材を大量に募集。そこに応募してきた人材から、自社にマッチした人材を選ぶという形式です。

しかし、現在この新卒一括採用で優秀な人材を獲得できない企業が増えています。

マイナビが2018年に実施した、2018年卒マイナビ企業採用活動調査 によると、採用数確保に向けての感触として、「ほぼ予定数を確保できそう」という回答は26.2%に留まりました。

その理由としては、現在全体的に売り手市場の状況が続いていることがあります。文部科学省が行った採用に関する調査では、93%の企業が現在の就職市場に関して「売り手市場と認識している」との回答でした。

参考:
平成29年度 就職・採用活動に関する調査(企業)調査結果報告書:文部科学省
2018年卒マイナビ企業採用活動調査(HP).pdf

需要に対して学生の数が少なく、結果的に優秀な学生は一部の大手企業などに流れていってしまう状況です。内定を出したとしても、前述したように新卒の内定辞退率が6割を超えます。また、入社後3年以内に退職する新入社員の割合も大卒は3割、高卒は4割を超えています。

参考:
新規学卒就職者の離職状況(平成26年3月卒業者の状況)を公表します|報道発表資料|厚生労働省

こうした背景から、採用活動は就職希望者の間のギャップを埋めて、密にコミュニケーションを取る努力が求められています。そこで注目を集める採用手法の1つが「ダイレクトリクルーティング」です。
  

Web業界における採用活動の変遷

ダイレクトリクルーティングの特徴に触れる前に、まずWeb業界における採用活動の変遷を確認してみましょう。

1990年台から、インターネットを活用した求人活動が行われるようになりました。時代の移り変わりとともに、採用の流れも変遷しています。

参考:
新卒採用のトレンドの変遷|採用手法の歴史を年表にまとめてみた|HR NOTE
  

1990年台後半~ 新卒求人広告の開始

現在も根強いシェアを誇る新卒採用活動の形です。人材を募集している企業が採用情報をWEBサイトに広告として掲載、それを見た学生が気になった企業へ応募するというものです。

代表的なサービスとしては、「リクナビ」「マイナビ」などが挙げられます。
  

2000年~ 新卒紹介サービス

新卒紹介サービスは2000年台に入ってから登場した採用の手法です。中途採用においては比較的一般的だった人材紹介サービスが、新卒採用にも登場したといえるでしょう。エージェントが介在し、企業側のニーズに合った優秀な人材を紹介します。基本的にその料金は成功報酬型が多いです。

昨今の売り手市場も相まって、登場からしばらくして注目を集め始めました。

参考:
新卒紹介とは?概要と新卒紹介会社総まとめ・使いこなし虎の巻|BizHint HR(人事の悩みにヒントを届けるニュースサイト)
  

2005年~ 逆求人イベントの登場

ダイレクトリクルーティングの先駆けと言えます。企業が学生に対してPRする説明会とは異なり、学生が参加企業に対して自分自身をプレゼンするイベントです。

代表としては、ジースタイラスの開催する「逆求人フェスティバル」などが挙げられます。

1対1での対話により、お互いに納得の行くまで話し合うことができるため、満足度の高い採用が期待できるでしょう。

参考:
逆求人フェスティバル開催日程 2021年卒、2020年卒、2019年卒、2018年卒|逆求人フェスティバル
  

2012年~ ソーシャルリクルーティングの登場

FacebookやTwitterのようなSNSが盛り上がりを見せ始めると、採用においても活用の流れが見られるようになります。自社の活動内容や採用に関する情報を企業のアカウントから発信する企業が登場し始めます。

また、Facebookアカウントと連携可能なビジネスSNS「Wantedly」が登場。LINEのようなチャット形式での連絡や、とりあえず話を聞くだけでも企業に連絡できるそのカジュアルなスタイルが人気になりました。
  

2014年〜 スカウティングサイトが話題に

ダイレクトリクルーティングの流れを後押しするものとして、ここ数年で注目を集め始めているのが、スカウティングサイトを利用しての採用活動です。

サービスに登録している学生を検索し閲覧。プロフィールなどを確認した上で、自社とマッチしそうだなと思った人材をスカウトすることができます。

最近では株式会社ベネッセi-キャリアが新卒向けのスカウティングサービス「DODAキャンパス」をリリース(サービスの内容は後述します)するなど、学生の採用においてもダイレクトリクルーティングの利用率が高まることが予想されています。
  

攻めの採用手法、ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは

先に述べたように、これまでの採用活動は「新卒一括採用」が主でした。年度ごとに大量に募集をかけ、そこに応募してきた人材に対して採用試験を行い、ふるいにかけることで優秀な学生を採用するというものです。いわば「待ち」の採用ともいえます。

一方、ダイレクトリクルーティングは、企業側が直接自社に合った優秀な人材にアプローチしていく「攻め」の採用手法です。学生の方から応募してくる従来の形とは違い、対象の学生が自社への興味を持っていなかったり、理解を深めていない場合がほとんどです。

なので、面談や面接などを通じて、自社への就職意欲を高めるのが基本です。

参考:
「ダイレクトリクルーティング」とは?特徴と国内サービス総まとめ | BizHint HR(人事の悩みにヒントを届けるニュースサイト)
  

ダイレクトリクルーティングのメリット

・企業側と人材の間でのミスマッチ(内定辞退や早期退職)を防ぎやすい
・自社を認知していない人材に対してもアプローチが可能。今まで出会えなかった層の人材にアプローチできる
・従業員からの紹介、SNSを使ってのやり取りなどを効果的に使用することで、採用コストを削減できる
・自社に採用のノウハウが蓄積されていく

ダイレクトリクルーティングは、従来の採用手法に比べて採用までのコミュニケーションの量が多いという特徴があります。そのため、「思っていた会社と違った……」などのミスマッチを防ぐことが可能です。

また、自社を認知していない人材にアプローチでき、かつターゲットにリーチするまでの手段を上手く工夫することで、採用コストを下げることができます。そのため、認知度があまり高くない企業や採用に際して資金が十分でない企業も実施を検討することが可能です。

そして、ダイレクトリクルーティングにおいては、人材紹介では得られなかった採用に関するノウハウが蓄積されていくため、続けていくほど安定して効果の高い採用活動に結び付いていきます。
  

ダイレクトリクルーティングのデメリット

・採用までのプロセスをすべて自社で行うため、工数がかかる
・企業の魅力を人材に伝えるため、従来の採用手法とは異なるスキルが必要になる

ダイレクトリクルーティングが、マイナビやリクナビといった求人広告媒体や、エージェントに採用フローの多くを委託する人材紹介と大きく異なる点の1つが、その工数です。

学生を探すところから、採用に至るまでの全てのプロセスを自社で行うため、外部の人材サービスを利用するのと比べて時間がかかります。後述しますが、欲しいターゲットに合わせてスカウティングサービスなどを上手に選択・利用しながら、効率よくアプローチしていくことが求められるでしょう。

また、長い間主流である求人広告とは違い、ダイレクトリクルーティングは採用側から欲しい人材にアプローチします。そのため、採用の際にはこれまで必要ではなかったようなスキルが求められることにもあるでしょう。

例えば、ダイレクトリクルーティングの場合、欲しい人材が自社に最初から関心を持ってくれるとは限りません。そのため、面談によって学生の求めるものと企業の強みを照らし合わせるなど、人材の“意向上げ”のためのコミュニケーションスキルが求められます。

このように、ダイレクトリクルーティングだからこそ生じる課題を正しく認識しなければなりません。

参考:
ダイレクトリクルーティングのメリットとデメリット|新卒採用ならOfferBox式
  

ダイレクトリクルーティングサービス10選サービス

ダイレクトリクルーティングは前述したように、採用に関して今までと異なるノウハウが必要です。また、人材を探すところから自社で行うために工数がかかるのも事実。そのような部分もあり、中々導入できない企業が多い現状もあります。

しかし、最近ではこうした課題を解決するようなサービスが多数展開されており、効率的に優秀な学生を採用することも夢ではないでしょう。

次に、そうした具体的なサービスとその特徴について紹介します。
  

1. Wantedly

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https://www.wantedly.com/

月間150万人が利用しているビジネスSNSです。スタートアップから大手まで、幅広い企業が募集を掲載しています。「ビジネスSNS」という言葉のとおり、Facebookと連携しており、ソーシャル上でのつながりを活かした採用活動が可能です。

サービス内に掲載されている他社の採用広報ページも非常に参考になります。人気の高い企業がどのような情報を伝えているか、チェックしてみるのも良いでしょう。

学生とのやり取りにおいて、チャット形式で気軽にコミュニケーションを図ることができるカジュアルさも特徴です。
  

2. OfferBox

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http://offerbox.jp/company/

18卒就活生の7人に1人が利用した、新卒特化のダイレクトリクルーティングサービスです。人工知能を用いて、行動履歴を解析してデータと照合。そのうえで最適な学生を提案します。

オファーの送受信にあえて制限を設けることで、限定感を演出しています。オファー開封率はほぼ100%で、承認率も平均40%を超えるなど、成果に結びつきやすいサービスであると言えます。
  

3. DODAキャンパス

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https://campus.doda.jp/enterprise/

株式会社ベネッセi-キャリアが提供する学生と企業のマッチングサービスです。

規模としては国内最大規模で、2017年現在、PanasonicやYahoo!Japan、日産などの大手企業をはじめとした3,500社以上と契約しています。

ベネッセホールディングスのもつ約40万人の高校生データベースを活かして、低学年の段階からキャリア意識を持った優秀な学生に対してアプローチが可能です。
  

4. ニクリーチ

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https://jinji.29reach.com/

ビズリーチが提供する就活サービスで、「おニクでつながる」という言葉どおり、優秀な学生をスカウトし、マッチングすればお肉をご馳走するというシンプルかつユニークなシステムになります。

登録学生の上位3校が、早稲田、慶応、東大となっており、優秀層が多く登録していることも大きな特徴です。
  

5. LabBase

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https://labbase.jp/

「理系学生」をターゲットにしたダイレクトリクルーティングサービスです。実際に、上位大学の19卒理系学生の4人に1人が登録しています。

理系学生は特に「待ち」の採用では獲得が難しいと言われますが、そうした学生に対して積極的にアプローチするためのソリューションになるサービスです。
  

6. Matcher

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https://matcher.jp/docs/enterprise

学生とOB、OGをつなぐサービスです。「就活相談にのるので、○○してくれませんか?」という合言葉のもと、社会人が学生にお願いをすることができる独特のシステムが話題に。

スカウトを送ることもでき、その場合は「○○するのでオフィスに遊びに来ませんか?」という合言葉でアプローチができます。

志望職種としては、総合職志望の学生が7割以上を占めているという特徴があります。
  

7. シンアド就活

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https://syn-ad.com/2019/sessions/recruiters

広告・ネット業界」を志望する学生が多く利用しているサービスです。また、MARCHランク以上の学生が全体の6割を超えているという特徴もあります。

昨年12月に、採用担当者から学生に向けオファーを送ることのできる「シンアド就活【D.O.】」を(β版)の提供を開始しました。
  

8. ジョブラス新卒

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https://jobrass.com/business/

就活生の4人に1人が利用している、大規模な逆求人型の就活サービスです。

豊富な登録学生数に加え、国公立、早慶上智・GMARCHといった学生が約半数を占めているため、優秀な学生に出会いやすいサービスといえます。
  

9. iroots

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http://iroots.jp/lp/company/

新卒のスカウトに特化したダイレクトリクルーティングサービスです。スカウト開封率87%と、学生に興味を持ってもらいやすい環境があります。

学生に対しての適性診断を行っており、その結果から、企業に最適な人材を探すことが可能です。
  

10. 逆求人フェスティバル

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https://www.gstylus.co.jp/aboutgf

非大手志向の学生が多く集まる逆求人イベントで、参加する学生の中から採用したい学生を指名し、個別で面談を行います。

実際に学生のプレゼンを聞き、そのキャリア意識や思考力、プレゼンのスキルなどを踏まえたうえで総合的に判断し、採用につなげることができます。エンジニアやデザイナーなど、ジャンルごとにイベントを開催しているので、採用ターゲットに合わせてイベントに参加できます。
  

まとめ

企業が優秀な学生に直接アプローチするダイレクトリクルーティングは、中途採用のみならず、新卒採用の新しい形としても注目を集め始めています。

優秀な人材と密なコミュニケーションを取り、お互いに満足感の高いマッチングが可能になる反面、その実施にかかる時間的なコストや、採用ノウハウの問題からもハードルが高い部分もありました。

しかし近年、そうした課題を解決するためのサービスが多数展開されています。

サービスによってコストやサポート体制、登録する学生の層や志望業界などの特徴がありますので、自社が求める学生や、採用にかけられるリソースに応じて、導入を検討してみてはいかがでしょうか。