日本の主要な新聞社の中でも毎日のビットコイン相場や取引所に関する報道がなされるほど、仮想通貨に対する注目は以前にも増して強まっています。

もちろん、仮想通貨自体が投資対象となるかについては賛否が分かれますが、その概念や技術的な面で、世の中の「貨幣」の概念を変えたことは事実でしょう。

ところが、こうした革新性にもかかわらず、仮想通貨に関する報道では、専門用語が多く、よく分からないと感じることがある人も少なくないのではないでしょうか。

今回は、注目したい仮想通貨の重要キーワードを集めてみました。仮想通貨関連の用語をチェックして、情報収集に役立ててみてください。

「マルチシグ」に「ホットウォレット」?注目したい仮想通貨の重要キーワード7選

1. ブロックチェーン

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*ブロックチェーン(blockchain)*は、仮想通貨技術の中核となる取引データ技術のことです。情報を集約せず、分散的に取引することから、*分散型台帳技術(decentralized Lodger Technology)*と呼ぶこともあります。

それでは、どのようにして分散化が可能になるのでしょうか。

取引履歴であるデータ(トランザクション)はブロックとしてタイムスタンプや前のブロックへのリンクとともに保存され、直前のトランザクションと鎖状で繋がれます。これが、ブロックチェーンと呼ばれている由来です。

すべての取引がブロックで連結されており、その取引は2者間だけで保有するのではなく分散化されたデータベースに複数書き込まれるので、中央管理機関を必要としないのです。

複数のデータベースに書き込まれ、かつブロックチェーンは不可逆的に作り変えることが不可能なため、データの改ざん対策にも有効です。仮想通貨とともに現れたブロックチェーン技術ですが、仮想通貨に限らず多くの分野に応用・研究がなされています。

ビットコインの売買のように、ブロックチェーンは基本的に記録されているすべての取引をオンライン上で確認することができます。ビットコインの場合は、Blockchain.ionfoなどで確認することができます。

参考:
「ブロックチェーン」とは?今さら聞けない基礎知識を解説

2. マイニング

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仮想通貨の新規発行の文脈で*「マイニング」(mining)という言葉を聞いたことがある人は少なくないでしょう。マイニングとは「採掘」*のことですが、これはブロックチェーン技術と大きく関係しています。

例えば、ビットコインでは一定期間ごとに全トランザクションを取引台帳に記録をしますが、その追記処理は、すべてのデータの整合性を確認しながら正確に記録することが求められます。その作業はコンピュータが行いますが、計算量は膨大です。

そこで、ビットコインでは、この追記作業に、*「マイナー」と呼ばれる有志のコンピュータのリソースを借りることになります。記録台帳への追記作業を手伝ってくれた見返りとして、新規に発行されたビットコインが支払われます。これを*「採掘」に見立ててマイニングと呼ぶ**のです。

しかし、ビットコインの発行総量は2140年までに2100万BTCまでと決まっており、それ以降は新規に発行される訳ではありません。そのため、GMOやDMMといったIT企業大手をはじめとして、さまざまな企業がマイニングの機会を逃さないためにマイニング事業に参画しています。

参考:
GMOに続きDMMも仮想通貨マイニング事業に参入、「DMMマイニングファーム」を10月開始 | TechCrunch Japan

3. フォーク

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*フォーク(fork)*とは、仮想通貨のルールを変更する際に、従来のルールは一切無視して、新たなルールを策定して適用することで、従来のルールとの互換性をなくすことです。

仮想通貨はブロックチェーンによって成立していますが、その技術は日々進歩しています。また、ブロックチェーンには「不可逆性」や「改ざんのしにくさ」といった特徴がありますが、改ざんのしにくさも「ゼロ」ではないため、常にアップデートが求められます。そのため、新しい技術を導入するために仕様を変更するには、フォークを行う必要があります。

フォークには*「ソフトフォーク」(softfork)「ハードフォーク」(hardfork)*の2種類があります。ソフトフォークの場合は、全てのブロックを新しく書き換えてしまいます。一方、ハードフォークでは、ある特定のブロックを指定し、そこから分岐してそれ以降を新しい仕様に変えてしまいます。

ソフトフォークでは従来仕様との互換性がある場合が多く、旧来の仕様を残したまま新仕様を利用することができる場合がほとんどです。しかし、ハードフォークの場合は完全に新しい仕様になるため、これまでのブロックチェーンとの互換性は無くなってしまいます。

参考:
ハードフォークとは|ビットコイン(Bitcoin)用語集

4. スマートコントラクト

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*スマートコントラクト(smart contract)とは、従来の契約とは区別された「賢明な契約」*のことで、広義には自動化された契約全般を指します。

仮想通貨のひとつであるイーサリアムがスマートコントラクト技術を利用していますが、この考え方自体は実はビットコイン以上に歴史が古く、1998年に計算機学者で法律家のニック・スザボー氏がビットゴールドと呼ばれるビットコインのベースにもなった分散型通貨のアイデアとともに考案されたとされています。

スマートコントラクトを分かりやすく説明する際には、しばしば「自動販売機」が例として挙がります。

自動販売機を目の前にして利用者が行う行動は、*「商品購入に必要な金額を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」の2つです。これを契約条件として見立てた場合に、この2つが実行されれば、「商品を利用者に提供する」という*「契約」**が履行されることになります。

上記の例に見るように、ここでいう「契約」は書面上で作成された契約だけではなく、取引行動全般を指しています。

イーサリアムではスマートコントラクト技術が利用されています。ビットコインの取引では悪意あるユーザーの参入も結果的に許してしまうことになりますが、イーサリアムでは、さまざまなアプリケーションプラットフォームでコントラクトに関するスクリプトを組んで*「契約」情報の保持*を可能にします。

契約情報は「更新」することができますが、これはバージョン管理システムでいう「コミット」に当たり、その変更記録は随時参照可能になっています。

参考:
ブロックチェーン上で契約をプログラム化する仕組み「スマートコントラクト」

5. ICOとトークン

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*ICO(Initial Coin Offering)とは、株式でいうIPO(新規株式公開:Initial Public Offering)*にあたる「資金調達」を仮想通貨で行う場合に使われる言葉です。現在仮想通貨として広く流通しているイーサリアムをはじめとして、さまざまな仮想通貨もICOによって資金を調達しています。

IPOの場合は新規公開株を証券会社が幹事となって株を売り出すことになりますが、ICOでは特定の幹事が存在しません。代わりに仮想通貨取引所が幹事のような役割をする場合もありますが、現状では多くの場合、会社や団体が独自にICOで仮想通貨の資金調達を実施しています。

また、IPOでは新規株式の公開に関して明確な基準やルールが整備されているのに対し、ICOは会社や団体が自由にルールを設定できます

IPOは上場時のはじめに付く株価(初値)で売ることで利益を出せる場合がほとんどなので、幹事による抽選で「株を買う権利」を手に入れます。ICOの場合は、「株を買う権利」にあたる電子チケットのようなものが*「トークン」*と呼ばれ、仮想通貨が取引所に上場後に仮想通貨と交換することができます。

また、IPOで会社情報や今後の事業内容を説明する書類に当たるものは一般的に*「ホワイトペーパー」(白書)*と呼ばれています。

事業者にとっては直接的な資金調達を行うことができ、また投資家にとってはより大きな売却益を得られる可能性が高くなります。しかし、ICOには詐欺案件も多く、上場されずに消えてしまったり、そもそもとりあえず資金集めだけをして連絡が取れなくなってしまうこともあります。

仮想通貨のソースコードが公開されていなかったり、元本保証を行なっていると宣伝していたり、多段階報酬の紹介制度を利用してICOの募集をかけているものは、特に注意をすべきでしょう。

参考:
ICOで発行されるトークン、実際の使用は1割だけ-投機目的が大半 - Bloomberg

6. ホットウォレット

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ホットウォレットとは、インターネットに常時接続されて仮想通貨の取引を行うことができるタイプの仮想通貨の*「財布」*のことです。多くの仮想通貨取引所や決済・送金アプリがホットウォレットを用いているのは、リアルタイムでの送金や買い付けが可能になるためです。

しかし、ホットウォレットは常時インターネットに接続されていることから、ハッカーによる不正アクセスの温床にもなっています。そのため、コールドウォレット(ハードウォレット)と呼ばれるインターネットとは遮断して管理することのできる「財布」にほとんどの仮想通貨を保管し、ホットウォレットには最低限取引できる量を保管しておく事業者も増えています。

最近では、Ledger Nanoシリーズのように、USBタイプで個人が持ち歩くことのできるハードウォレットも登場しています。

参考:
ホットウォレット - 用語集|bitbank

7. マルチシグ

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マルチシグとは、仮想通貨の公開鍵暗号方式において、秘密鍵が2つ以上ある状態のことをいいます。それに対し、公開鍵が単一なのはシングルシグと呼ばれることがあります。

秘密鍵は、仮想通貨にかかわらず暗号化技術が使われている分野では広く使われています。

例えば、ある文書をメールで送信する場合、万が一漏洩した場合には、他人に中身が知られてしまうかもしれません。そこで、送信する前にあらかじめ文書を暗号化して送りますが、このままでは受信者も文書を読むことができないわけです。そこで、暗号化を解読することができるように鍵を用意します。

公開鍵暗号方式では、暗号文書を送る側と受信側で別々の鍵(公開鍵と秘密鍵)を置くことで、単一の鍵よりもセキュリティレベルを高くしています。通常はサーバー側に公開鍵を置き、端末に秘密鍵を置きます。しかし、秘密鍵がハッカーなどに盗まれてしまうと、第三者でもログインすることが可能になってしまうため、秘密鍵をどこに保管するかが重要となっています。

この問題に対処するために考案されたのが「マルチシグ」と呼ばれる暗号方式です。有名なのが「2 of 3」という方式で、秘密鍵を3つに分け、その中で2つが揃うことがアクセスの条件となっています。金庫の鍵が1つよりは2つや3つ必要なほうが当然セキュリティレベルは高くなります。

通常のビットコインのアドレスは1から始まりますが、3から始まるアドレスはマルチシグ対応アドレスとなるので、一つの目安となるでしょう。

しかし、マルチシグ対応を謳っている取引所であっても、実際に秘密鍵をユーザーに求めるようなシーンがなければ、その効果は薄い可能性もあります。マルチシグ対応のハードウォレットやアプリを使う場合に、そのリスクを軽減できる可能性もあるので、通常入出金する予定のある資金と分けておくことが望ましいでしょう。

参考:
仮想通貨流出、コインチェック社「日本円で返金する」 26万人に総額460億円