こんにちは。株式会社マルケトのビジネス開発本部の白井義孝です。

今回は、社内教育を簡単に提供できるオンライン学習サービスSchooビジネスプランで行った授業「デジタル化時代の次世代マーケティングコミュニケーション -デジタル×アナログの最適解を探す-」の内容について、紹介します。

もはやデジタルとアナログが分断されている場合ではないと気付きながらも、デジタルとアナログの最適解がわからず、暗中模索を続けているマーケターの方は数多くいらっしゃるのではないでしょうか。

この授業では、日本郵便株式会社 郵便・物流営業部 担当部長 鈴木 睦夫様をお招きし、EメールなどのデジタルチャネルとDMを組み合わせた「フルチャネルコミュニケーションプロジェクト」についてお話しいただきました。

1988年にP&Gでキャリアをスタートし、NTT、IMJ、コカ・コーラと一貫してマーケティングおよびデジタルマーケティング領域で活躍されてきた鈴木様は、デジタルとアナログの最適解をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

マーケティングコミュニケーションの潮流と環境によって生じている現在の課題を洗い出し、それらの課題解決にマーケターはどう向き合っていけば良いのかを紹介していきますので、参考にしていただければと思います。

マーケティングコミュニケーションの潮流と環境、現在の課題

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日本郵便株式会社 鈴木様(写真右)、株式会社マルケト 白井(写真左)

「ブランド構築」「収益の増加」「効果の証明」、これらはマーケティングに携わるみなさまが抱えていらっしゃる課題、あるいはこれから抱えるであろう課題です。

「ブランド構築」… いかにして企業のブランドを構築し、きちんと市場に浸透させていくのか。
「収益の増加」… マーケティングによって収益そのものにインパクトを与えることが求められるようになってきました。
「効果の証明」… 収益に対して、マーケティングがどれだけ貢献したのか。施策やキャンペーン単体の効果ではなく、全体としてどれだけ貢献しているのかを、きちんと証明していかなければなりません。

一方で、顧客は企業に対し、どのような期待を持っているのでしょうか。こちらは外部の調査結果をもとに作成したスライドになります。

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資料:株式会社マルケト(スライドPage8 顧客の期待の高まり)

・79%…「私」を理解し、大切にしてくれるブランドだけを検討する人の割合(出典:Wunderman)

・64%…購入を決める際は価格よりも顧客体験を重視すると回答した人の割合(出典:Forrester)

・63%…最高のブランドはカスタマージャーニー全体で期待を上回るサービスを提供していると回答した人の割合(出典:Wunderman)

これらの結果には、これまでのように40代・男性・会社員といったセグメントではなく、「白井義孝という個人を大切にしてほしい」、「顧客体験をきちんと提供してくれる企業の商品やサービスを選びたい」、「自分が求めているものを最適なタイミングで届けてほしい」といった顧客の想いが表れています。

スマートフォンはもとより、ガラケーやインターネットが無い時代からマーケティングに従事されてきた鈴木様は、「最近はデジタルによって、ありとあらゆるデータがオンライン・オフラインを問わず統合される時代になったことで、『個』が特定できるようになってきています」と語ります。

その要因として最も大きいのが*「クラウド技術の発達」と「スマートフォンの普及」*であると指摘しました。

「昔は“なんとなくこの辺にターゲットがいそうだな”というところにバサッとマスマーケティングをしていましたが、最近は度が合った眼鏡をかけているかのように、一人ひとりを特定できるようになってきました。ここが大きな違いですね。どんどんOne to Oneになってきている」(鈴木様)

一方で、「マーケティングがアナログからデジタルに振れ過ぎて、デジタルに閉じていく傾向にあるのではないか」と注意を呼びかけます。

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資料:株式会社マルケト(スライドPage10 生活者が求めているのはマーケティングではなくエンゲージメント

この図はマーケティングファネルの中における生活者の接点をアナログとデジタルで上下に分けて示したものですが、当然のことながら、生活者はデジタルとアナログを意識して行動しているわけではありません。

「生活者が行ったり来たりしているのに、企業がデジタルかアナログかのどちらか片方に閉じてしまったら、マズイですよね。デジタルとアナログで担当者がバラバラで、メッセージが統一されていないなど、様々な問題が出てきています」とした上で、鈴木様は次の3つの課題が顕在化していると話しました。

・リーチの限界…顧客全体の中でパーミッションが取れている人の割合は、約3割。その中で開封率は約2割。つまり顧客全体の約6%しかリーチできていないことになる。

・デジタル広告ブロッカー…3〜4年前から米国で大問題になっているデジタル広告ブロッカー。日本のアプリストアを見ても、2年ほど前から有料ランキングの上位に入り続けている。広告を配信しても表示されない、コミュニケーションができない状態が発生している。

・効率至上主義…ビジネスでROIを追求するために、各指標をトラッキングするのは構わないが、“至上主義”になってしまうと、効率のいい施策だけに閉じてしまい、ビジネスがスケールアウトしないというジレンマに陥ってしまう。