ゲームやWebコンテンツの制作、開発などを手がける面白法人カヤック。現在、「Twitter DM CONTENTS」と呼ばれるTwitterのDM上でさまざまな機能を組み込んで操作できる、コンテンツの普及に注力しているとのこと。その機能とは一体どんなものか、プロジェクトに関わる人たちの想いとはどんなものか。プランナーを務めるお二人にお話を聞いてきました。

プロフィール

株式会社カヤック 企画部 プロデューサー
泉 聡一氏
2012年カヤック入社。音楽、テクノロジーに幅広い知識をもつ。サンリオピューロランドの「ちゃんりおメーカー」(ACC CM FESTIVALシルバー受賞)の他、 NISSANの「Invisible to Visible」では、XR(VR+AR)技術を用いたデモ展示コンテンツなどを手掛ける。

株式会社カヤック 企画部 ディレクター
岡田 晃治氏
2017年カヤック入社。SNS時代に最適なクリエイティブフォーマットを生み出すことを目標に、花王やコクヨなどのTwitterを使ったプロモーションを多く担当。その他、広告企画制作、プロダクト開発など、数多くのプロジェクトのディレクションを手掛ける。

「Twitter DM CONTENTS」とは

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▲左から泉 聡一氏、岡田 晃治氏

ferret:カヤックが手がけている「Twitter DM CONTENTS」 はどのようなものなのでしょうか?

岡田氏:簡単に言うと、*今までWebでやってきたあらゆるコンテンツキャンペーンを、全部TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)上でできる機能のこと*です。例えば、Webサイト上でキャンペーンを打ったとします。今まではWebサイトシェアボタンを押してTwitterシェアして、TwitterからまたWebサイトに戻ってくるという流れでしたが、「Twitter DM CONTENTS」ではそれらの一連の操作をTwitterだけで完結できます。結構皆さん「Twitter DM bot」と混同されて、「ただのチャットかな?」と思われがちなので、我々は”コンテンツ”と言いたいと思っています。

泉氏:今の若い人たちの感覚だと、リンクを踏んでブラウザが開くことすらめんどくさいと思うんです。その中で、Twitterだけで完結していろんな体験とかブランドを知ってもらうことができるというのがメリットと思います。

岡田氏:何ができるかというと、「クイズ」「診断」「ストーリー」「ジェネレーター」「AI」「キーワードアンロック」の6つのテンプレートがあります。

「クイズ」は例えば商品に関するマニアクイズをつくって、その正解数に応じて知識量を測り、結果をシェアする。「俺は何問正解したよー!」とみんなに知らせることができます。

クイズ.png

「診断」では、オススメの商品を診断することが可能です。

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あと、今、注力しているのが「ストーリー」です。Netflixのインタラクティブドラマやシミュレーションゲームみたいなものができるんですよ。ストーリーを読んでいくと、AかBかといった選択肢があって、選ぶことで話が分岐していく。漫画を読み進めながらどんどん分岐して、違う結末がいくつもあるってこともできます。なので、広告っぽくなく、商品理解が深まるようなコンテンツがつくれます。

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「ジェネレーター」は、自分の顔写真を送るとアバターが自動的につくることができます。

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「AI」では、TwitterのDMに「AI」を搭載することで自由に入力されたメッセージの返答ができます。例えば、画像解析を取り込んである商品を送ると「この商品はこれだ」とAIが分析して返してくれるんです。

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最後に、「キーワードアンロック」があります。これは、イベントに参加した人にキーワードを伝えておいて、そのキーワードをTwitterでDMするとインセンティブが貰えるという仕組みです。あとは、商品に記載されたコードをDMで送るとプレゼントがもらえるなど、色々なキャンペーンに応用できます。

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ferret:先ほど「Twitter DM bot」と混同されている方が多いとおっしゃっていましたが、どう違うのですか?

泉氏:双方向な会話をしていくのが「Twitter DM bot」で、*「Twitter DM CONTENTS」はただ双方向なだけではなくて、先ほど説明したようにストーリーやAIなどのコンテンツが付いていることが違いです。「Twitter DM bot」の新型という感じで思ってくださると理解しやすいかと。*

ferret:「Twitter DM CONTENTS」を導入するメリットは具体的にどういうところですか?

岡田氏Webサイト上のキャンペーンTwitter上で完結できること、双方向のコミュニケーションができるのと、コンテンツキャンペーンを短い期間で実装できることですね。

今までの広告ってどうしてもTVCMやポスターでメッセージを伝える、一方通行なものが多いですが、これは、ユーザーとインタラクティブなコミュニケーションができるので、ブランディング向上のお役に立てるかなと思っています。あと、Webサイトより短い制作期間でつくれるんですよ。コンテンツによって変わってくるのですが、だいたい半分以下の期間でつくれます。

泉氏:漫画だと、原稿のリードタイムもあるので少し変わってきますが、Webサイトコンテンツつくるのに2ヵ月するとしたら1ヵ月弱でできます。

岡田氏:実装期間が短いんです。マーケターや広告代理店の皆さんはスケジュールがネックになることが多いと思います。Webサイトコンテンツをつくるとなると企画からデザイン、実装というフローになると思うんですが、この実装期間が短縮されます。あとデザインと実装が同時期に進められる。クイズや診断も、1〜2週間で実装ができます。Webサイトを制作するとなると2ヵ月はかかるので、圧倒的に短いです。なので、アイデアさえあれば今までより短期間でローンチすることが可能です。

あと、体験した人のトラッキングも可能です。「Twitter DM CONTENTS」だとユーザーがDM上に出てくるので、どんな人がキャンペーンに参加してくれたかが分かる。Web上だと、キャンペーンに参加した人のIPアドレスしか分からないですよね。

泉氏:それに加えて、バズを起こせる可能性も広がります。「Twitter DM CONTENTS」だとTwitterから出ずにユーザーが操作できるので、拡散してもらいやすいです。企業のキャンペーンとなると広く認知してもらう必要があるので、担当者の方もバズを期待していて、そういった意味でも効果的ですね。

チャットbotでもっと面白い遊びを開拓したい

ferret:「Twitter DM CONTENTS」を開発しようと思ったきっかけは何だったんですか?

岡田氏:技術としては以前からありますが、プロモーションに上手く使いこなせていなかったと思います。私たちが売り始めたのは2018年の末くらいからです。

泉氏:Webキャンペーンって、公開から1週間〜1ヵ月くらいで終わってしまうのに、どのクライアントも制作会社も当然、ゼロからWebサイトを力を入れてつくっていますよね。だけど、毎回ゼロから同じようにつくるよりも、本当は使い回した方が双方にとって効率がいいんじゃないかと考えました。そこで、新しくパッケージ的な売り方を考えてみようという会社の意向もあり、チーム結成に至りました。エンジニア、プロデューサー、プランナー、全員で10人くらいの少数精鋭のチームでやっています。

あと、カヤックがなぜ今「Twitter DM CONTENTS」に力を入れているかというと、カヤックは、今年で創業21年目でWeb制作会社としては老舗みたいなポジションです。移り変わりの激しいWeb業界で、いかに新しいプラットフォームや新しい技術で面白く遊べるかということを模索してきた会社であるという自負があります。

今、チャットコマースのベンチャー企業がいっぱい出てきていますよね。カスタマーサポートとかAIによる機能補助みたいな使い方もありますが、我々は、チャットbotでもっと面白い遊びを開拓したい想いから、分岐コンテンツ、分岐小説、分岐漫画などをTwitter DM botと組み合わせたんです。多分事例として世の中にあんまりないんですよ。海外で「Twitter DM CONTENTS」みたいなものがあるのか調べてみたんですが、ないんです。「こうやって使ったらもっと面白くなるんじゃないの?」ということを考えて、これからも、いろいろと試したいと思っています。

ferret:実際に企業が導入してみて反響などはありましたか?

岡田氏:大きな反響を呼んだのは、2019年の1月に行なったコクヨさんの整理できない青春キャンペーンでした。DM上で漫画が分岐するコンテンツで、ボタンを押すとストーリが始まって、漫画を読み進めていくと選択肢があって、選ぶとまたストーリーが分岐して……という感じで進めていって終わり方を4パターン用意しました。

この漫画、結構長いんですけど、ストーリーが面白くつくられていて、予想外のオチになるんです。シミュレーションゲームみたいな感じで選んでいくので、新しい感覚でユーザーに楽しんでもらえたと思っています。実は、このコクヨさんのキャンペーンの反響が大きくて、Twitterのシステム上限を超えたため一時的に公式アカウントのDM機能が止まっちゃったんですよ(苦笑)。

商品がバインダーだったので「バインダー買う、このストーリー面白い」とか「この展開すごい」「DMでできるなんて天才か」など、ストーリーに対してもユーザーから面白いと大好評でした。「Twitter DM CONTENTS」に対しても、この仕組みは面白いって高い評価をいただきました。プレゼントキャンペーンはプレゼントに当選したいからシェアする人が多いんですが、コンテンツが本当に面白いからシェアしてくれたってことを実現できたかなと思います。コクヨさんも想定していた反応の約10倍あったとおっしゃっているほどです。

▲整理できない青春キャンペーンTwitterページ。迎えた結末をシェアすると抽選でバインダーセットがもらえるキャンペーン(※キャンペーンは終了しています)


創作意欲を刺激する技術をつくるのがカヤックの役目

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ferret:「Twitter DM CONTENTS」はどういう人たちに使っていただきたいですか? 

泉氏:我々としては*開発の裏テーマが、「創作意欲を刺激する」*なんです。広告代理店のプランナーさんも、「カヤックとアイデア出したら面白いことできるな」ってひらめく瞬間が一番面白いと思うんです。そういうコンテンツを提供していきたいです。

プランナーさんにこの技術を見せて、*「これだったらこんな風にできるじゃん」みたいに意欲を駆り立てたいなっていう意図もありますね。「こういうことできますよ」って見せるのが新しい技術を生み出すカヤックの役目かなって。*今後プランナーさんとかに使っていただいて、一緒に、面白いものを世に発信していけたらいいなと思います。

岡田氏:*企業のオウンドメディア担当者など、マーケターの方にも使っていただきたいですね。*「Twitter DM CONTENTS」ではアンケートを実施して回収することもできる。マーケターにとって必要なデータを集めることにも適しているんです。それに新しい広告手法としても使える。だからマーケターにも使っていただけるかと思っています。

ferret:今後お二人が目指すところは何ですか?

泉氏:きっと、「TwitterにDMあるな。でもあれって押したことないな」という人は意外に多いと思うんですよ。だから大きいことを言うと、我々としてはTwitterのDM機能の存在感を上げていきたい。Twitterにはタイムライン以外にも遊び方があるっていうことをいろんな人に知ってもらって、他にも競合が出てきてほしい。みんなでチャットの活用法みたいなのを広げて開拓していけたらいいなと思っています。

岡田氏:*カヤックとして、クリエイターさんやプランナーさんに使ってもらえるような技術を提供していきたいなと思っていて、そのひとつとして「Twitter DM CONTENTS」があるんです。*消費者が普通の広告を見てくれない時代だと言われていますが、面白い広告には反応してSNSでシェアされる時代でもあります。技術という部分では、我々はTwitterのDMやAIなどに力入れていって、ユーザーが体験したくなる部分をつくれるようになるフォーマットや技術を提供していきたいと思っています。

ferret:今後は日本にとどまらず、海外でも「Twitter DM CONTENTS」を広めたいですか?

岡田氏:海外に出ていきたいですね! 日本の漫画は海外でも人気ですし、Netflixのインタラクティブドラマもあるから、分岐漫画なんかは海外でも通用すると思います。

ferret:ありがとうございました!

アイデアの源になるかもしれない

「新しい技術をつくっていくのが役目」ということから、モノづくりにかけるカヤックの想いが伝わってきました。

面白い企画を考えられるアイデアの源となったり、情報収集ができる新たなツールとして活用できそうです。