データを活用したコミュニケーション戦略

西井氏:
dマガジンではどのようにデータを活用していますか。

佐々木氏:
対ユーザーでは、お気に入りに登録した雑誌の配信を知らせるプッシュ通知や、通信環境の無い場所でも読めるように自動ダウンロードの機能をつけたことで継続率が大幅に上がりました。また、出版社さんもお気に入り登録がされれば、PVも増えてレベニューも増える仕組みなので、雑誌のはじめのページにプッシュ通知機能を喚起する内容の文章を入れてもらっています。

西井氏:
とてもサブスクっぽい施策だと思います。いままでのECサイトのKPIって顧客の行動で言うと最後の購入、つまり売上でしか見れなかったと思います。この施策のように短期的なKPIで何が継続率に効くかという点を把握して施策を繰り返すことは基本のようでなかなかできていないところが多いですよね。
_MG_8903.JPG(株式会社NTTドコモ 佐々木氏)

2:8の法則がサブスクにも当てはまる

西井氏:
ラクスルではどのようなデータ活用をしていますか?

田部氏:
顧客一人ひとりのログが見れるようになったことで、それぞれの顧客に向き合う必要性が出てきました。とはいってもすべての顧客を重要視するとうまくいかないし、施策もばらばらになると思います。
重要なのはよく言われる 「2:8の法則がサブスクリプションビジネスにも当てはまるということです。ラクスルでも2割のお客様がおよそ8割の売り上げを生みだしています。ですので顧客データから8割の利益を生む2割のお客様を発見する能力が必要です。

西井氏:
2割のお客様かどうかはどのように判断していますか。

田部氏:
顧客となる事業主さんの販促費や宣伝費の大きさで判断していますね。そこの予算が大きければ、たとえ最初の受注がチラシの印刷だとしても、いずれは我々の販売しているCM枠も購入してくれるだろうなと思います。一方で、弊社は「CMを一本50万円から」と謳っていますが、予算が少なく、最初から50万円分のCM枠しか買う気がない顧客は、おそらくずっと50万円しか費用を使わないと思うので、あまり利益が上がりません。こうした顧客の予算費の割き方で2割のお客様かどうかを判断していますね。

心理データの蓄積がLTVを上げる

_MG_8963.JPG(株式会社IDOM 山畑氏)
西井氏:
NORELではどのような取り組みをされていますか?

山畑氏:
先ほども言ったように実際に顧客の元へ足を運び、積極的に顧客とコミュニケーションをとったことで解約する理由や利用する理由が把握できました。
弊社は本業(中古車販売)がある分、当時は新規事業であるNORELに人材リソースを割くことができませんでした。しかし、元店長など、長年現場で活躍した社員の方たちが協力してくれたんですよ。そういった方々は人当たりがよく、顧客とのコミュニケーションが円滑に進みました。
結果として、顧客の要望やクレームを聞いていくうちに、顧客それぞれの価値観や好み、ライフスタイルも分かってきたのです。NORELの特徴である顧客一人ひとりに適したサービスを提供する上で不足していた心理データが自然と蓄積されたおかげで、LTVも上がっていきました。

*山畑氏の考える顧客データの4分類。サービス開始当初は心理データが不足していたという。
1.デモグラデータ(性別・年齢・住まい・職業・収入)
2.心理データ(価値観・好み・ライフスタイル・背景)
3.行動データ(閲覧履歴・購買履歴・訪問頻度)
4.コミュニケーションデータ(要望・不満クレーム)