2019年にはラグビーワールドカップで多くの外国人が日本へ訪れ、その盛り上がりを肌で感じた方も多くいるかと思います。
そしてついに2020年、1964年以来56年ぶりに東京でオリンピックが開催されます。
2020東京大会が決定した2013年には2000万人の訪日を目標としていましたが、インバウンド市場が急激に成長を遂げた結果、2016年に2000万人を突破、そして直近の目標は当初の2倍である4000万人とされています。

日本企業としてはその4000万人の訪日外国人を集客し、売り上げを伸ばしていくことは非常に優先度の高い事案と言えます。
この記事ではインバウンド対策について、基本知識から具体的な対策、多くの外国人の集客に成功した事例などを紹介します。
どんな企業であっても「自社には関係ない」と断定せず、訪日外国人を取り込むことができないかを模索してみてください。

そもそもインバウンド対策とは?

まずはインバウンド対策とは何か、言葉の意味から見ていきましょう。

英語でインバウンド(inbound)は、「入ってくる・到着する」という意味を持っています。
これをビジネス用語のインバウンドに変換すると、日本に訪れる外国人旅行客のことになります。
つまり、インバウンド対策はこれから訪日する外国人観光客に向けたサービスや準備という意味になります。
インバウンド対策の例としては、海外で主流のキャッシュレス決済の導入や、日本語が分からなくても買い物できる仕組み作りなどが挙げられます。

インバウンドの対義語としてアウトバウンド(outobound)という言葉があり、意味もそのまま反対で「出ていく・出発する」になります。
アウトバウンドに関しては業界によって言葉の意味が変わり、観光業会では海外旅行を行う日本人のこと指し、広告業界では展示会などの自分の意思に関わらず目にする広告のことを指します。

インバウンド対策が必要とされる背景

ここ10年ほどで急激に使われることの増えたインバウンド対策という言葉ですが、その背景には冒頭でも触れたように訪日外国人の急増があります。
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、訪日外国人数の水位は2011年の621万人から年間約120〜130%ほどずつ増加しており、2018年では3119万人まで増えています。
※2017年から2018年のみ伸び率が8.7%と低い水準になっています。

参考:
年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移|日本政府観光局(JNTO)

訪日外国人が増えている理由としては、LCCによる飛行機の料金下落、中国向けのビザ緩和、日本文化への関心の高まり、外国へ向けた日本のアピールなどが挙げられます。
特に大きいとされているのが、日本政府が行った中国の富裕層向け個人旅行のビザ発給で、当初は賛否の声が上がっていましたが、訪日外国人の8割を占めるアジアの国の中でも中国が8割を占めていることを見ると、インバウンドには大きな影響を与えていることは確かです。

具体的なインバウンド対策

ではインバウンド対策を行うにはどのように進めていけばいいのか、具体的なインバウンド対策のステップを紹介します。

基本的なインバウンド対策のステップとしては、

  • 認知拡大
  • 集客
  • 回遊性の向上
  • 利便性の向上

と、国内でのマーケティングと大きく変わりませんが、もちろん外国人向けの施策が必要になります。

認知拡大

まずは自社サービスの利用、店舗への来店をしてもらうためには認知の拡大を進めなければいけません。
訪日外国人へ向けた認知拡大の方法としては、ホームページの多言語化や海外へ向けたSNSの運用、海外の予約・口コミサイトでのページ作成などが挙げられます。
ただし、これらの認知拡大の方法は自社で行うには言語力の壁がありますので、自社で難しい場合には外国語での記事制作に強い業者や外国語に特化したクラウドソーシングなどを利用すると効率的です。
また、日本ではSNSはTwitterの利用者が多いのですが、世界的に見るとFaceBookの利用者数の方が多いので、複数のSNSを運用するのがベストと言えます。

集客

認知拡大と近いフェーズにはなりますが、認知を広げた後は実際に利用者・来店者を集める集客を考えなければいけません。
先ほど認知拡大で挙げたホームページやSNS、他サイトへの掲載などの手段に広告・宣伝を掛け合わせると効率的な集客ができます。
国内での広告や宣伝は年々難易度を増しているためオーガニックマーケティング広告に頼らない集客)が好まれていますが、外国に向けたマーケティングはまだ全体での露出量が少ないため広告や宣伝といったマーケティングも有効とされています。

回遊性の向上

回遊性を高めると一見他の企業やお店に売り上げが分散してしまうように思うかもしれませんが、インバウンド対策を行っている商店同士が協力することで大きなマーケットを地域で作り上げたケースはいくつもあります。
特に小さなお店の並ぶ地域では、おすすめのお店として店舗を紹介し合うことで売り上げを相互に伸ばし、さらには訪日外国人にとっても便利ということで口コミが広まって観光客増加も期待ができます。

利便性の向上

観光庁のアンケートでは、外国人観光客が日本に訪れた際に不満に感じることとして、以下の5つが挙げられています。

  • 店員とコミュニケーションが取れない
  • 無線LAN環境がない
  • キャッシュレス決済が利用できない
  • 多言語の案内がない
  • 公共交通機関の使い方がわからない

これらの不満は年々解消されてきてはいますが、不満を感じなかったと回答した外国人は3割程度と決して高い水準ではありませんので、まだまだ改善の余地があることがわかります。

参考:
外国人旅行者に対するアンケート調査結果について|環境庁

【業種・業界別】インバウンド対策の事例

では最後にインバウンド対策の事例について見ていきます。
しかし、業種や業界によって必要なインバウンド対策は異なりますので、必要な対策と事例をセットで紹介します。

飲食店

飲食店で行うべきインバウンド対策はやはり多言語対応です。
全てのスタッフが英語や中国語などを話せるようになるというのはあまり現実的ではありませんが、多言語対応のメニューの準備や翻訳機の準備などはあまりコストを必要としないながらも外国人観光客には嬉しい対応です。

同時翻訳機の「ポケトーク」を提供しているソースネクスト株式会社は、人気ハンバーガーチェーンのモスバーガーにポケトークを提供し、2020年に向けたインバウンド対策の実証実験を進めています。

コンビニ

外国人にとってなんでも揃う日本のコンビニは非常に珍しく、日本観光の一つにコンビニを盛り込んでいる外国人の方も少なくないようです。
コンビニで求められるインバウンド対策はキャッシュレス決済の導入でしょう。

コンビニ大手のローソンは2017年の1月から中国で最も使用されているキャッシュレス決済の「Alipay(アリペイ)」を導入、中国の旧正月にあたる1月24日から2月5日のAlipay利用者数を調査したところ、その人数は5万人超えと非常に多くのユーザーが利用していることが実証されました。
2019年10月からのキャッシュレス・ポイント還元事業のスタートによって非常に多くのコンビニでキャッシュレスは導入されています。
しかし、多くの国産キャッシュレス決済サービスは海外のキャッシュレス決済には対応していないため、インバウンド対策としてのキャッシュレス決済システムの導入はあまり進んでいないのが実情です。

体験型・アクティビティ

少し前まで中国人をはじめとする訪日外国人の日本での消費と言えば、爆買いと呼ばれる大量購入が目立っていましたが、最近ではアクティビティなどの体験型コンテンツに消費が集まっています。
体験型やアクティビティに求められるインバウンド対策は、多言語に対応している予約サイトでのページ作成などが挙げられます。
アクティビティに特化した世界最大のプラットフォームであるViatorなどに登録している日本企業は多くの訪日外国人からの予約を獲得しているため、複数のサイトに登録することをおすすめします。

まとめ

4000万人の訪日外国人が目標とされる2020年がやってきます。
東京オリンピックによる増加もありますが、2021年以降も方に違い国人は増加すると予想されています。
20202年のみの対策ではなく、長期的なマーケティングの観点で見てもインバウンド対策は必須と言えますので、最適な施策はなんなのか、ぜひ検討してください。