「スタートアップとテクノロジーの祭典!」SLUSH ASIA参加レポートvol.2【supercell代表Ilkka Paananen氏、ガンホー代表孫泰蔵氏他】
※photo by Slush Media
4月24日(金)、お台場でスタートアップイベント「SLUSH ASIA」が開催されました。
お台場ヴィーナスフォートの隣に建設された巨大なドーム内で、今勢いのあるスタートアップ企業50組によるピッチコンテストや最新テクノロジーを駆使した製品のデモンストレーション、世界的に成功しているIT系企業の代表やアーティストなど豪華スピーカー陣28名による基調講演やセッションが丸一日かけて行われるなど非常に密度の濃いイベントとなりました。
ferretでは、各IT企業の基調講演・セッションと、スタートアップ企業によるピッチコンテスト最終審査の様子を4回に渡ってダイジェスト形式でお伝えします。
今回は、supercellの代表Ilkka Paananen氏へのインタビューと、ガンホー代表孫泰蔵氏、Rovio役員のPeter Vesterbacka氏、ハックベンチャーズ マネージング・パートナーの校條 浩氏の3名によるディスカッションの様子をお届けします。
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「スタートアップとテクノロジーの祭典!」SLUSH ASIA参加レポートvol.4【ピッチコンテスト最終審査】
インタビュー:supercell代表 Ilkka Paananen氏
このセッションは、フィンランドのスマートフォン向けゲーム開発会社であるsupercellの代表Ilkka Paananen氏に、SLUSH ASIA主宰のAntti Sonninen氏がインタビューする形式で始まりました。
「Clash of Clans」や「Hay Day」など、世界的な大ヒットを記録したゲームアプリを生み出したsupercellの成功の要因について、深く掘りさげた話が展開されました。
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経歴
supercell代表 Ilkka Paananen氏
1978年フィンランド生まれ。ヘルシンキ工科大学(現アルート大学)卒業後、2000年ゲーム開発会社のスメラ創業。同社をデジタル・チョコレートに売却後、同社社長を経て、2010年supercellを共同創業し、CEOに就任。
supercellの成功のカギは?
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Antti氏:成功の要因は?
Ilkka氏:組織をなるべく小さく保つことです。
昨年までは30人もいなかったくらい小さなチームでやっていました。
小さい組織であれば、マネージメントするレイヤーも少なくて済むし、会議の回数も減り、自分の仕事に集中することができます。
Antti氏:うまくいかない時や失敗した時はどう対処しますか?
Ilkka氏:リスクを取らない限り、ヒットゲームは生まれません。
実際、ほとんどのことは失敗します。大事なことは、失敗ができるだけ許容される環境を作ることです。
そして失敗から学ぶこと。その失敗を共有して歓迎し、それに向けた対策を打つチームをオーガナイズすることが重要です。
Antti氏:失敗に対する考え方はどのように形成されたのですか?参考にされた会社などはありますか?
Ilkka氏:任天堂から大きな影響を受けました。
何十年も圧倒的に愛されるようなゲームをモバイルプラットフォームで作りたいと考えています。
Antti氏:現に今世界1をとっているし、日増しに近づいているのでは?
Ilkka氏:何十年も続くという観点では、まだまだアーリーステージです。日本のマーケットで成功するにはまだ何年もかかると思います。
今後の展望
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Antti氏:ロングタームの考え方ですね。2年前に始まったソフトバンクとガンホーからの投資がありましたが、これについては?
Ilkka氏:私達は特別なものを作りたいと思っており、そのためには優秀な人材と多くの時間を要します。その点においてソフトバンクは、ロングタームでの発展という価値観をもっているパーフェクトなパートナーです。そんなパートナーと組むことができて、私達はとてもラッキーでした。
Antti氏:インドネシアやUSなどにオフィスがあると思いますが、地域的な違いがあるなかで会社のカルチャーを浸透させるのは難しいですか?
Ilkka氏:まず、カルチャーは浸透させるものではなく、supercelの人そのものでもあるし、私たちが所有しているものでもあります。だからまずカルチャーにフィットする人を採用することが大事です、そしてその人がカルチャーに賛同し、育んでいくといいと思います。
Ilkka氏:起業家にアドバイスはありますか?
Antti氏:ビジネスプランやマーケティングストラテジーよりも、一緒に働く人が大事です。
可能な限りベストだと思うチームを築いて、会社の未来のことをオープンに語りましょう。そしてもう一つ、あまり人の言うことに耳を貸しすぎないことです。
彼らのアドバイスはある特定の条件や時間において正しいこともあるが、あなたのチームやアイディアにおいていつも正しいかどうかなんてわかりません。
色んな人の意見をきくことは構わないけれど、自分のビジネスを一番理解しているのは自分であり、最終的に決断を下すのもまた自分です。
ディスカッション:ガンホー代表孫泰蔵氏・Rovio役員Peter Vesterbacka氏・ハックベンチャーズ マネージングパートナー校條 浩氏
こちらのセッションでは、ゲームアプリを開発するガンホーの孫氏をファシリテーターとして迎え、RovioのPeter氏と、多数の日米ベンチャー企業のアドバイザーとして活躍していた校條氏によるディスカッションが行われました。テーマは「シリコンバレーとヨーロッパ、そして日本におけるスタートアップのエコシステム」についてです。
経歴
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 代表取締役社長 孫泰蔵(そん たいぞう)氏
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1998年、ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社の前身となるオンセール株式会社の設立に参画し、代表取締役に就任。2002年に現行の社名に変更。同時に韓国のゲーム会社であるGravity社よりラグナロクオンラインの日本国内運営権を獲得し、PCオンラインゲーム運営事業を開始。2005年に株式上場を果たし、日本最大級のオンラインゲーム会社として展開。2011年、「2030年までにアジア版シリコンバレーのベンチャー生態系をつくる」として、スタートアップベンチャー育成のシードアクセラレーターをMOVIDA JAPAN内に設置。今後は国内外のベンチャー支援・育成に力を注ぎ、ベンチャーの活躍が、豊かな社会創造につながることを目指している。
Rovio Entertainment CMO Peter Vesterbacka氏
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世界的大ヒットゲームアプリ「angrybird」を開発したRovio Entertainmentの最高マーケティング責任者であり、Slushの共同創立者。Rovio内での肩書は、angrybirdに登場するキャラクターの名前である「Mighty Eagle」。
ハックベンチャーズ マネージングパートナー 校條 浩(めんじょう ひろし)氏
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1980年代後半に、ボストン・コンサルティング・グループにて日本企業、欧米企 業への戦略コンサルティングに携わった後、1991年にシリコンバレーに移住し、米国のベンチャー企業の日本市場参入を支援。1995年からは、マッケン ナ・グループの日本企業グループを立ち上げ、日本の大手企業の新事業戦略をアドバイス。その間、講演・投稿・出版を通して、日本企業再生のためのシリコン バレーモデルの有効性を啓蒙。
2002年、NetService Ventures Group (NSVG)を シリコンバレーに設立。現在は日本の大手ハイテク企業への経営戦略コンサルティングと米国でのベンチャー・インキュベーション及びシード投資を組み合わ せ、「スピンイン」モデルを推進。
Slush開催への挑戦
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孫氏:たくさんの起業家が世界中にいるが、エピセンターであるシリコンバレーのようなエコシステムを他の国々でも作れるはずです。フィンランド、ヘルシンキのように一般大衆化の動きがそこかしこで起こってますね。
Peter氏:2007年頃、学生に起業についてのアンケートをとったところ、散々たる結果だった。そこで友人と話して「何かしなければならない。」となった。いくつかの成功した起業家に声をかけ、スタートアップへの情熱の欠如をどうにかするためにSlushというイベントに出てくれないかと頼んだんです。
そして2008年の11月に2~300人を集めて開催しました。そこから、去年は14,000人集める規模にまで成長しました。今やヘルシンキの学生の半分が起業を志すまでに至りました。
シリコンバレーだけがイノベーションのモノポリーだということではなくて、こういった動きはヘルシンキでも、ここ東京だって大阪だって可能なんです。
校條氏:東京の環境に文句を言う人もいるが、東京に比べたら大阪は砂漠のようなもので、起業家精神に関わるものなんて本当に何もないんです。そこで今年のはじめ大阪でハックイベントを開催しました。たくさんの人が協力してくれて、12,000人の起業家や投資家が集まるイベントを成功させました。
起業家コミュニティの形成に必要なのは?
![起業家コミュニティの形成に必要なのは?(https://ferret.akamaized.net/images/553f5ce869702d597a1c0100/large.jpeg?1430215911)
孫氏:お二方はすでにこの領域でたくさんの成果をあげてきていますが、起業家のコミュニティやエコシステムを形成する上で一番大切なことは何ですか?
Peter氏:まずひとつは、イベントは誰によって作られているか、というところです。このイベントも約400人のボランティアによって成り立っている。
まさにあなたたちがこのイベントをつくっているんです。これが大事で、誰かにやれと言われてこのイベントをオーガナイズしたわけではなく、他の誰でもない自分が自分の意思で関わったということこそが、イベントの実現とサスティナビリティにつながるんです。
校條氏:このイベントというのはアントレプレナーシップにおいて記念すべきものですね。
Peter氏:なんだってできるし、なんだって起こりうるってことを知るべきです。
校條氏:*大事なのは若者。*老人を代表して言います。若者の邪魔をしないで、その道を開けましょう。それが新たなエコシステムを形成する上で重要なことです。
まとめ
SupercellのIlkka氏は失敗を恐れないことを、RovioのPeter氏は自分の意志で動くこと、校條氏は若者を尊重することをそれぞれ力説していました。
どれも今の時代を生き抜くためには不可欠な要素です。ただどれも言うのは簡単ですが、実際に失敗を恐れず、強固な意志を持って行動し、自分より歳の若い人間を尊重することができる人間はかなり限られてくるのではないでしょうか。
すべて自分の意志次第でできることですが、行動に反映させるにはそれ相応のリスクを負わなければいけないため、躊躇する人の方が多いでしょう。ただ、躊躇する人が多いということは、逆にそこを踏み越えることができれば一歩抜きん出ることができる可能性が高まるということです。
起業の有無に関わらず、自分の意志で、恐れず行動してみる、ということを少しでも心がけてみると変化が起こるかもしれません。
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