4月24日(金)、お台場でスタートアップイベント「SLUSH ASIA」が開催されました。
お台場ヴィーナスフォートの隣に建設された巨大なドーム内で、今勢いのあるスタートアップ企業50組によるピッチコンテストや最新テクノロジーを駆使した製品のデモンストレーション、世界的に成功しているIT系企業の代表やアーティストなど豪華スピーカー陣28名による基調講演やセッションが丸一日かけて行われるなど非常に密度の濃いイベントとなりました。
ferretでは、各IT企業の基調講演・セッションと、スタートアップ企業によるピッチコンテスト最終審査の様子を4回に渡ってダイジェスト形式でお伝えします。
今回は、Peatix Asia代表竹村詠美氏とaCommerce代表Paul Srivorakul氏のトークセッションと、IDEOのジェネラルマネージャーであるTom Kelley氏のプレゼンテーションの様子をお届けします。

vol.1はこちら
「スタートアップと最新テクノロジーの祭典!」SLUSH ASIA参加レポートvol.1【元LINE代表森川氏・DeNA南場氏】

vol.2はこちら
「スタートアップとテクノロジーの祭典!」SLUSH ASIA参加レポートvol.2【supercell代表Ilkka Paananen氏、ガンホー代表孫泰蔵氏他】

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「スタートアップとテクノロジーの祭典!」SLUSH ASIA参加レポートvol.4【ピッチコンテスト最終審査】

ディスカッション:Peatix Asia代表竹村詠美氏とaCommerce代表Paul Srivorakul氏

こちらのセッションでは、オンラインイベント作成サービスのPeatix Asia代表の竹村氏と、タイでEコマース・プラットフォームを展開するaCommerce代表Paul Srivorakul氏の2人が、東南アジア圏へのビジネス進出についてディスカッションを行いました。

経歴

Peatix Asia代表 竹村詠美氏

Peatix Asia代表竹村詠美氏
モニター・カンパニーとマッキンゼー&カンパニー社でのIT・テレコム業界などの経営コンサルティングを経験後、黎明期の99年にネット業界に転身。
ポータル事業の取締役・ビジネスディベロップメントの責任者を経てAmazon.co.jpで書籍の販売責任者・マーケティングの責任者を歴任、同社の日本経営チームにも参画。
第一子を出産後、ウォルト・ディズニーのインタラクティブメディア部門のオンライン・モバイル・携帯電話サービスのマーケティング責任者を務めた後、Peatix Inc. の前身となるOrinoco株式会社の立ち上げに参画。

aCommerce代表 Paul Srivorakul氏

aCommerce代表Paul Srivorakul氏

タイのバンコクを拠点とするEコマース・プラットフォームaCommerce代表。
2013年6月にローンチ後、わずか半年後にサイバーエージェント・ベンチャーズと aCommerceの社員、複数の戦略エンジェル投資家が出資し310万ドルの資金調達を実施。メッセンジャーアプリである「LINE」 や化粧品メーカーの L’Oreal(ロレアル)とも提携している。

### ビジネスは成長市場で行うのが基本

竹村氏: ASEANのような成長市場に進出することは、日本これからの成長にとって必要なこと。現時点での市場規模で判断するのではなく、今後どうなっていくのかに注目すべきです。スタートアップをやる人は、今日のことだけを考えてるのではなくて、明日のことを考えていますよね。会社の10年後20年後を見据えた時に、成長市場でビジネスすべきと考えて、私たちは東南アジアを選択しました。
さて、ポールはなんでECを東南アジアで展開することになったんでしょう?

Srivorakul氏: インドネシア、フィリピン、シンガポールなど、市場規模や人口増加の傾向をみるとすごく魅力的です。もちろん、会社の立ち上げや運営において様々なチャレンジがありました。
今、東南アジアでビジネスの展開を検討している方のために、これから起こり得る困難を紹介します。

例えば政治的暴動です。起きたときはどうやってそれに素早く対処するかが重要で、リスク分散のために私達はインドネシアやフィリピンなど他の国にもオフィスを持っています。
他にも激しい交通渋滞、洪水などの自然災害など、多くの障壁があります。

誰もが難しいと思うこと=チャンスのある領域と捉える

誰もが難しいと思うこと=チャンスのある領域と捉える

竹村氏: それぞれの国ごとに規則や政治動向、エコシステムが違うのは当然ですが、それに適応していくことはそんなに容易なことではないはず。そのあたりについて教えてもらえますか?

Srivorakul氏: 難しいことは何なのかを考えることが重要です。難しいことであれば、それは価値があるということです。成長市場にはたくさんの投資家がいます。中国やインドなどはすでに成長著しく、いくつかのスタートアップにとってはすでに割に合わなくなっています。本当に価値を創出したいのであれば、インドネシアやタイのような難しい市場にも挑戦していくべきです。
国によっては、その国の規制や法律などによって、自分たちのサービスの一部に制限がかかることもあるし、新たにライセンスの取得が必要になることも。他にも海賊版の商品への注意や労働法の遵守や解雇問題など、訴えられる脅威にいつも気をつけなければいけません。

シンガポールやNY、ロンドンは会社を立ち上げることも比較的簡単ですが、その分競争も熾烈なのに対して、東南アジアでの起業はそのプロセスに本当に苦労も多いが、その市場の中で圧倒的なナンバーワンになれる可能性が広がっている。投資家もとても注目しているにも関わらず、東南アジアに進出する起業はそれほどまだ多くないから、彼ら投資家にサポートされるようなビジネスモデルを東南アジアで展開することを強くオススメします。

竹村氏: 複数の地域にまたがった進出戦略は簡単ではないが、リスクを回避できるしグローバル市場においてのプレゼンスを高めることもできる。

**Srivorakul氏:**東南アジアの巨大マーケットは、まず中国、そしてインド、その次に東南アジアがくる。全ての国々が融合した市場は、スタートアップや投資家にとってこれ以上ない参入機会でしょう。

竹村氏: 日本のスタートアップに東南アジアをオススメしたい理由として、日本にはたくさん魅力的なコンテンツがあることも挙げられます。たとえば日本の質の高いサービス。日本人が当然だと捉えているサービスを海外に持っていくことができたら、それは大きな競争利点になります。

Srivorakul氏: 起業家がみんな考えなければならないことは、自分たちがやろうとしているビジネスは一体何なのかということと、それにまつわる全ての障壁とそれらの乗り越え方です。もしなんの障壁も問題も見つからないとすれば、それこそ問題だ。ビジネスは問題解決だ。ビジネスを推し進める上でのあらゆる困難を紹介してきたが、とにかくプッシュし続けること。*毎日胃が緊張や不安でやられていないような状況が続くなら、それは十分な問題解決をできていないということ。*ビジネスを始めることは大変だけど、その先の大きな成功のために、みなさんが起業への道を進むことを心から応援しています。

プレゼンテーション:IDEO General manager Tom Kelley氏

こちらのセッションでは、アメリカのデザインコンサルティング会社IDEOのジェネラルマネージャーを務めるTom Kelley氏による「Creative confidence(創造力に対する自信)」を身につけるためのコツについてのプレゼンテーションが行われました。

経歴

IDEO General manager Tom Kelley氏

IDEO General manager Tom Kelley氏

兄のデイヴィッド・ケリーとともに、デザインコンサルティング会社IDEOを設立。わずか15人のデザイナー集団から従業員600人の会社へと成長させる。ベストセラーとなった『発想する会社!』『イノベーションの達人!』など著書多数。
イノベーション文化を築き、組織の潜在的な創造力を引き出す方法について「TED」をはじめ世界30カ国以上で講演する。UCバークレーのハース・ビジネススクールと東京大学の「iスクール」でエグゼクティブ・フェローを務める。

Creative Confidence(創造力に対する自信)

「Creative Confidence(創造力に対する自信)」から始まるスタートアップについて話したいと思います。
Creative Confidenceは2つのパートから成り立っています。

1.natural human ability (潜在的能力)
フレッシュなアイディアを思いつく力は誰もが持っている能力です。幼稚園児がその証拠です。幼少期の頃はだれでもクリエイティビティの塊。どんどんアイディアが湧いて溢れます。

2.Crourage to act (行動する勇気)
手を上げて、あなたのアイディアを表現する勇気のことです。たとえばこのような経験があるんじゃないでしょうか。
上司や上役がいる会議で、あなたは何かアイディアを思いついたとします。でも、からかわれるんじゃないかとか、キャリアに傷がつくのではないかとか、そういう心配をして結果アウトプットしない。こういうことは、世界中のどの会議室でも起きていることです。

Adobeの5カ国の合計5000人からとった世界的な調査により、日本は世界一クリエイティブな国であるということがわかっています。
まさにここ東京が世界一クリエイティブな街なのです。でも日本人は自分自身を信じていません。能力はある。問題は勇気のなさです。

Creative Confidenceを育てるには?

Creative Confidenceを育てるには?
あなた自身のCreative Confidenceを育むには、2つの方法があります。
1つは、*「いつも現状を疑う」*ことです。
創造は現在ではなく、未来のためになされるものです。なので先を考えて創造しなければなりません。そのためには、周りの世界をよく観察することです。
とくに人間の行動は注意深く観察しましょう。それによって発見があり、人々が何を求めているかヒントを得られます。

2つ目は、*「プロトタイプと学習のサイクルを加速させること」*です。大事なのは他の人よりもはやくこのサイクルをまわすことです。実際の顧客からフィードバックをもらい、彼らの意見を注意深く聞いて下さい。その意見をもとにできるだけ速く、できれば一日の中でも何回も、サイクルをまわすことが大切です。失敗から学び、それを次のステップに活かす。その繰り返しです。

スタートアップを考えている皆さんは、この2つを念頭においてください。
そうすれば自分だけの創造的自信を形成し、育み、そして強化することができるでしょう。

まとめ

Peatix竹村氏とaCommerceのSrivorakul氏との対談では、東南アジア進出は様々な手続きや特殊な地域性により非常に難しいものではあるものの、だからこそチャレンジしてほしいと話されていました。一見すると困難が多く、他の人間が手を出しづらいものにほど大きなチャンスがあるという、起業家精神の根源となるような部分を提示されていました。
一方、Tom Kelley氏は、日本人の、行動する勇気の無さを指摘しました。
アイデアがあってもアウトプットすることができないというのは、人と違うことをするのに大きな抵抗を感じる傾向にある日本人に特に多いのでしょう。
人と同調することで安心感を覚えているのでは、現状から抜け出すことはできません。より良い状態に持っていくためには、何かを変えていかなければいけません。
Tom Kelley氏の言うように、創造力はだれにでも備わっている力なのだとすれば、まずは勇気を持って新しいアイデアを1つ発言してみましょう。

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