時代に合わせて消費行動が変わり、マーケティングファネルにも少しずつ変化が生まれています。インターネットの普及により価値観もコミュニケーション手段も多様化し、これまで以上に個々のユーザーに合った情報発信が必要になったことで、「共有(シェア)」という行動段階がファネルに追加されました。

今回は、従来のマーケティングファネルの意味や、変化したファネルについて、新しく追加された「共有(シェア)」で成功した企業事例まで解説します。

マーケティングファネルとは何か?

ファネルとは「じょうご」「ろうと」という意味です。理科の実験で、泥水のろ過をする時に使った実験器具をイメージしてください。円錐を逆さにしたような形で、逆ピラミッド型になっています。
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マーケティングファネルは、泥水がろ過されていくように、一番大きな上段から下段に向かって、
認知:「こんな商品があるのか」
興味・関心:「どんな商品なんだろう」
検索・検討:「購入したらどんな体験ができるのか調べてみよう」
購入:「欲しいから買おう」
を表しており、次の段階(下段)に進むにつれて確度が高まっていることも表しています。

マーケティングファネルが変化している?

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マーケティングファネルは、消費者の購買スタイルによって変化していくものです。最近ではSNSの普及により、購入のさらに先に「共有(シェア)」を加えたマーケティングファネルも登場しています。実際に商品を買って気に入れば、TwitterやInstagramなどのSNSで「こんなにいい商品があった」と共有し、拡散します。

共有は口コミ効果を発揮し、企業自身が発信する情報よりも高い販促効果を発揮します。近年、消費者はインターネットから多くの情報を集められるようになり、広告に対して厳しい目を向ける方が多いのも事実です。そのため、購入の意志決定をする際は、SNSなどにリアルタイムで上げられる情報をもとに判断するユーザーが増えている傾向にあります。

これからのマーケティング活動では、「いかに購入者に共有してもらうか」が大切です。インフルエンサーマーケティングが普及したのも、すでに多くのファンがついていて信頼されているインフルエンサーが、芸能人よりも身近な立場でリアルな体験エピソードを発信できるからです。

企業のマーケティングファネル活用事例

それでは、「共有(シェア)」によって世間の関心を集めたサービスやブランドの事例を紹介します。

PayPay(ペイペイ)

ソフトバンクとヤフーの合弁会社が運営するキャッシュレス決済「PayPay(ペイペイ)」は、2018年12月から2019年5月までに「100億円キャンペーン」を2回も実施したことで、多くの人に認知されました。

キャンペーンの内容は、支払った金額の一部が実質還元されるというもの。当選者の決済画面には、華々しく「おめでとうございます!」の表示が出てくるため、多くのユーザーがSNSで「当たった!」と自発的にシェアしました。キャンペーン実施中は、SNSのタイムラインにPayPayの当選画面が並んだ人も多いのではないでしょうか。

大規模なキャンペーン内容だけではなく、ユーザーの「シェアしたい!」という気持ちが高まる画面設計をしたことも、PayPayの知名度向上に大きく貢献しました。また、身近な知り合いがキャンペーンで恩恵を受けていると「こんなにお得なキャンペーンを行っているなら、今利用しなきゃ!」とダウンロードしたくなる気持ちも少なからず掻き立てます。

参考:PayPayの第2弾「100億円キャンペーン」は何が変わった? 第1弾との違いと注意点|IT media Mobile

COFFRET D'OR(コフレドール)

カネボウ化粧品のメイクアップブランド「COFFRET D'OR」は、数年間にわたりプロのメイクアップアーティストとカメラマンによる撮影イベント「キセキの一枚」を開催しました。

イベントの概要は、COFFRET D'ORの商品を使用してメイクアップしてもらい、フォトブースでプロのカメラマンが写真を撮影するというもの。種類によっては簡単なドレスアップも可能です。専用アプリでオリジナルフレームをつけた画像をその場でSNSにシェアすると、ノベルティをもらえるなどの特典によって多くの女性を惹きつけ、何度も開催されるほどの人気イベントになりました。

ハイレベルな写真撮影体験をきっかけに商品の認知から購入へと繋げられる点が秀逸です。プロのメイクアップアーティストに仕上げてもらうメイクアップ体験は、ファネルの「検索・検討」に該当し、使用したアイテムの購買意欲も増すでしょう。

さらに「この写真をプロフィール写真にしてお披露目したい」「特別な体験を共有したい」という心理が自然と働き、共有も難なくクリア。こうしたポジティブな体験はブランディングに貢献する、という好事例です。

参考:第四弾 「コフレドール」体験型ポップアップイベント“キセキの一枚®”体験イベント開催決定!|PR TIMES

Honeyce(ハニーチェ)

ビューティーエクスペリエンスのヘアケアブランド「Honeyce(ハニーチェ)」の新コンセプトは「生ハチミツ meets 生クリーム」。そこで、東京・名古屋・大阪の3都市にある「ロールアイスクリームファクトリー」と期間限定のコラボカフェで、写真映えする「食べるハニーチェ」を提供し、複数のデジタル施策を組み合わせて露出を増やすことで話題性を高めました。コラボカフェがオープンするとSNS上での拡散が広まり、わずか10日で約300万リーチを達成したのです。

ブランドの知名度が高くなくても、コラボなどを活用し、認知からシェアまで達成しやすくすることは可能です。起爆剤となったのはインフルエンサーです。デジタル施策として商品との親和性が高いインフルエンサーを招待し、SNS上で情報発信をしました。また、来店者がSNSで投稿したら特典プレゼントという同時キャンペーンも実施しました。

参考:ハニーチェがコラボカフェ展開|販促会議