4月27日、「勝手にマーケティング大学」主催のワークショップイベント「頭のネジの外し方」に参加しました。
ファシリテーターに元デロイトトーマツコンサルティング・デロイトデジタル クリエイティブディレクター府川氏をむかえ、3名の個性的な講師陣の方々と会場の参加者が一体となって頭のネジの外し方を実践しました。

今回は、座学とはひと味もふた味も違う、型破りなワークショップイベントの様子をレポートします。

勝手にマーケティング大学とは?

横山氏が主宰する「勝手にマーケティング大学」は、学生からプロのマーケターまで、マーケティングに関心のある全ての人を対象に、無料の勉強会・講演を開催されています。
コミュニティ内での交流も図れるため、同じ課題を抱えている人と交流したい、マーケティングのプロに相談したいという方にもおすすめです。

勝手にマーケティング大学
公式ホームページhttp://kmarketing-univ.jimdo.com/
Facebookページhttps://www.facebook.com/groups/220933964709132/

主催者

横山 弘毅氏

株式会社シンドバッド・インターナショナル マーケティングセクション マネジャー
マーケティングに関するあらゆるノウハウが学べる「勝手にマーケティング大学」主宰。毎回多種多様な業界からトップランナートを招き、不定期で勉強会・講演を実施。

ネジを外すための準備運動からスタート

ネジを外しやすい状態を作り出すため、開始前からアルコールが

 ネジを外すための準備運動からスタート

株式会社フリークアウトの本社にある音楽野外フェスを思わせる会場には、7つのテーブルが用意されていました。頭のネジを外すためにできるだけリラックスした状態でイベントに臨んでほしいという主催者側の意向のもと、各テーブルにはお酒とおつまみが用意されていました。約80名の、年齢も職業もバラバラな参加者の方たちは、来場した方から順にグループに分けられ、自由にお酒を飲みながらイベント開始を待ちます。

開始時刻になり、ファシリテーターの府川氏が登場しました。檀上にはイスと電子ロックキーが置かれています。

府川 誠二氏(元デロイトトーマツグループ・デロイトデジタル クリエイティブディレクター)

元デロイトトーマツコンサルティング株式会社 Deloitte Digital クリエイティブディレクター/ビジネスUX シニアアーキテクチャー。
コンサルティングファームにはこれまで無かった「クリエイティブ部門」のクリエイティブディレクターとして、様々な業種の大手企業や行政省庁のプロジェクトまで手がけてきた。

・株式会社スマイキー 取締役CFO/コーポレート事業本部長
現職では、「Socializing of all Contents=SoC」というコンセプトを世に広める企画運営、及びメディア事業のスタートアップを、クリエイティブディレクターとしては異例だが『CFO』として取り組んでいる。これは、PR/IRの観点などクリエイティブコミュニケーションを活用した資金調達や事業管理を進めるCreative Financial chief Officerとして活動している。

・攻殻機動隊realize project メディアストラテジスト
・one+nation 事務局長
地方も含めた全国にクリエイティブディレクターを育てるプロジェクトや「攻殻機動隊」という作品の世界感を通して、最新のテクノロジーを現実化するプロジェクトの戦略&メディア担当としても活躍。

超難問クイズを3分以内に解く!

頭のネジを外すことを体感するために、脱出ゲームを模したクリエイティブクイズが出題されました。

1桁の数字を表すクイズが3つ出題され、全て解けたら、壇上にある電子ロックを解除することができます。

出題クイズ(一部抜粋)

3問目

1つのクイズにつき、制限時間は3分。沈黙するグループ、活発に議論するグループ様々に入り乱れるなか、代表で檀上で暗号を入れてロックを解除した4グループのうち、1グループのみがロック解除に成功しました。

府川 誠二 氏

府川氏:普段、脱出ゲームで実施するときも正解率は5%ぐらい。普段はもっと時間をかけてやっているのに今日のみなさんは優秀ですね。数字と数字として見ているだけではこの問題は解けません。考え方、見え方、パターン様々な角度から見ること。つまり視点を変えることがポイントです。今日は、こうでならければいけないというネジを1つずつはずしてください。

ちなみに正解は…

3問目
正解:3
この画像は一見すると馬に見えますが、ここでも視点を大きく変えることが必要です。
画像を右に90度回転させると、馬がカエルに見えます。
「走るもの=2」「走らないもの=?」という問いに当てはめると。「走るもの=馬=2文字」「走らないもの=カエル=3文字」となり、正解は3です。
ちなみに、上部に記載されている3つの数字を50音の羅列に当てはめると「か」「え」「る」となるのでこちらから解くことも可能でした。この問題が最も正解率が低かったようです。

準備運動としてのクイズが終了し、本題のワークショップに入るところで、講師として招かれた3名のクリエイター陣が登壇しました。

松林 博文 氏(グロービス大学院教授 マーケティング専門 )

化学薬品メーカーにて海外営業を経て、ミシガン大学経営大学院修士課程修了(MBA)。
大学院卒業後、企画関連マネジャーとして、ジョンソン・プロフェッショナル(株)に従事。現在は、グロービスのパートナーとしてマーケティング・経営戦略の講師を務める。

ECC外語学院にてトーフル・英会話講師の経験を持つ。ビジネスブックラジオ(USEN放送)では、パーソナリティーとして、数々の著名人との対談経験を持つ。近年は国際協力機構や全国市町村協会など公共機関のサポート活動を行っている。

著書に「クリエーティブ・シンキング(創造的発想法)」共著書に「ビジネスに出る英単語」(講談社)「MBA経営キーコンセプト」(産能出版)、「千本倖生のMBA式会社のつくり方」(PHP出版)、「トーイック問題リーディング編」(なつめ出版)などがある。翻訳書に「パワープレゼンテーション」(ダイヤモンド社)「すごい考え方」(中経出版)「バリュー・クリエーター」(ダイヤモンド社)がある。

西村 真里子氏(株式会社HEART CATCH 代表)

国際基督教大学(ICU)卒。
IBMでエンジニア、Adobe SystemsおよびGrouponにてマーケティングマネージャーを勤める。
デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、
2014年株式会社HEART CATCH設立。

「テクノロジー × デザイン × マーケティング」のスキルと経験を元にプロデューサー、コンサルタントとして企業のマーケティング活動に従事する。

主な受賞歴ほか:
エンジニアとして米国特許取得、クリエイティブプロデューサーとしてCannes Lion/AdFest受賞
他宣伝会議、翔泳社、マイナビなどで連載記事多数

椎谷 ハレオ 氏(チームラボ株式会社 カタリスト、京都精華大学ビジュアル共創デザイン研究員)

エンターテインメント業界において300本以上のテレビCMをプランニング、ディレクション、プロデュース。
最先端デジタルアート作品の音楽ディレクションなども手がける。

IT業界においてはチームラボ(株)で音楽SNS wacca,fm を立上げ、音楽ダウンロード・配信サイトListen Japan COO、MOVIDA JAPAN(株)執行役員を経て、2008年のiPhone国内販売を機にAPPLIYA(株)設立。

アプリ開発ではアライアンスを中心に2年間で500本のアプリを市場に投入した実績を持つ。
最近ではビッグデータの分析システムやマーケティング、プロモーションのコンサル、セッション等を行う。

登壇者が揃ったところで、本日のメインイベントであるワークショップのお題が発表されました。

ファーストフードの未来を変えるアイデアを

お酒が入り、一筋縄では解けないクイズに挑戦し、かなりネジの外れやすくなった参加者に向けて出されたお題はこちらです。

「ファーストフードの未来を変えるぶっ飛んだアイデアを考えよ」

2020年に開催される東京オリンピックを盛り上げるために、「国内のファーストフードの未来を大きく好転させるようなアイデアとは?」をテーマに、各テーブル毎に「ネジが外れた」アイデアを生み出すためのディスカッションを行います。

椎谷氏:改善レベルでは、ダメなんですよね。ぶっとんだアイディアを求めています。例えば、富士フイルムは写真のプリントではなく化粧品分野に展開することで業績を保っている。バカじゃないの?くらいのアイディアをお願いします。

グループで話し合える時間は15分間。10分でアイディアを出し、5分で発表する案を決め、檀上で発表というスケジュールが告げられ、ディスカッションがスタートしました。

ディスカッションの様子の写真

イベントスタート時はぎこちなかった参加者の方達も、準備運動として行ったクイズとお酒の力もあってかなり打ち解けてきている様子です。
議論しあいながらアイディアを一つの紙に書きだすグループ、各自でアイディアを書き出し、すり合わせを行うグループ等、各々様々な形式でアイディア出しを進めていました。

徐々に議論が活発になり会場も異様な熱気に包まれていきます。「いいね!」「おもしろい!」拍手が沸き起こったり、笑い声が絶えないグループも。

異様な熱気の会場の写真

15分後経過し、発表タイムへと移行します。
出てきたアイディアは「ファーストフード×ホテル」「少子化対策ファーストフード」「ハングリーからハグリーへ。ハグをしてくれるファーストフード」「はさむコミュニケーションプレイスとしてのファーストフード(?)」など、食品ではなく「場」や「出会いの機会」としてファーストフード店を使うアイデアが多く出ていました。
中には「殺虫剤ブランドへ転身!」と言ったものも。

発表者の様子の写真

西村氏:コミュニケーション系が多いですね。殺虫剤はすごいジャンプ力。おもしろいです。テクノロジーを使うよりも人を資源としたアイディアが多いですね。テクノロジーを使った意見が出たグループは?

西村氏の問いに会場からは「ドローンを使う」「ドローンデリバリー」「3Dプリンター使って製造業になる」といった発言が飛び交いました。

質疑応答タイム

発表に一区切りついたところで、講師陣の方々への質疑応答タイムが始まりました。
発言のハードルを低くするため、Facebookのイベントページで質問を受け、講師陣が回答するスタイルとなりました。予想通り、自由な質問が多数投稿されていきます。

マーケティングは恋愛そのもの。ドキドキしないとダメ。つまらないと感じたらやらない方がいい

Q:(アイデアを出すためには)トイレに行くといいんですか?

西村氏:アイディアが出る場所ってこと?私は話をしているときが多いです。言葉になってない思考が、ちゃんと言葉になることで整理される感じ。

府川氏:僕もそうですね。みなさんも今日ワークショップをやって感じたと思うんですが、1人でいても何も浮かばない。でも何人かで話すと浮かんでくるんです。話をしているうちにアイデアが湧いてきます。

Q:マーケティングと恋愛は関係性がある?

松林氏:関係性があるというか、そのものですよ。傷ついた経験がないと浅くなる。死んじゃうと生き返ってこれないけど、恋愛は失恋しても生き返ってこれる。失恋が多い人の方がマーケティングに向いている。失恋したことがない人のマーケティングはダメだと思う。一番大事なことは失恋しているかどうかだと思いますね。

椎谷氏:失恋の数と離婚の数は関係性ありますか?

松林氏:よくわかんないですね。自分で決めてください(笑)

西村氏:まぁでも、マーケティングはプロダクトを世に売り出すことだから、自分自身が惚れ込まなきゃいけない。いかに惚れ込んだかっていう経験がないとダメなのかなって思います。

府川氏:あと、どんなに練りに練ったプロジェクトでも、ドキドキしないとだめだと思います。最近も先輩と話してたら「ふかちゃん、つまんないことは、1ミリもやらなくていい」と言われて。ネジ外れました。

登壇者一同:同じ!同じ!!

松林氏
僕つまんなかったら全く来ないですから。面白くないところには行った時点で負けているから。面白いことだけ求めない人とは付き合いたくないんです。極論。

府川氏:そういえば打ち合わせ一回も来ませんでしたしね…(笑)

椎谷氏:僕は、自分から凄いアイデアが出るなんて思ってないんですよ。だから思ったことなんでも言って、それに対する周りの反応にはものすごく敏感。そこを「いただきます」と。

西村氏:なるほど。だから面白い人がいる環境に飛び込んでいくと。

椎谷氏:良い悪いとかはなく、相手の反応が面白いんですよね。

松林氏:皆さんせっかくこうして集まってるんで、ここに上がって、セッションしましょう。

自分が欲しいと思うものを作るのが「ものづくり」

4名の様子

松林氏の「セッションしましょう」という言葉をきっかけに、参加者の中から数名が登壇し、会場全体を巻き込んだセッションが始まりました。
自己紹介する人、抱えている問題を話す人、その問題に答える人も登壇するという、講師と参加者の境界が無い非常に自由な場が生まれていました。

そしてものづくりについての質問を投げかけたある参加者に対して、椎谷氏からものづくりについての鋭い意見が飛び出します。

椎谷氏

椎谷氏:マーケットが求めてるものを作るのって、超ビジネスだよね。それは自分がやりたいことじゃない。僕は昨日、自分のベランダで縁側を作ってたんですよ。DIYで。休みの日に縁側でお茶を飲みたいと思ったから。だから作った。ものづくりってそういうことじゃないの?

マーケティングの起点になるもののとして「マーケットイン」「プロダクトアウト」という2つの概念が存在します。
新しくモノを作りたいと思った場合は、「プロダクトアウト(=自分が作りたいと思ったものを作る)」思考を徹底した方が良いのかもしれません。

自分のカテゴリや役割にとらわれるな

また一方で、参加者からはこのような質問も出ました。

Q:アーティストとデザイナーの違いってなんでしょうか?

西村氏:なぜ区切りをつける必要あるんでしょうか?

質問者:デザイナー志望の生徒から結構聞かれたりすることがあるので。

西村氏:カテゴリに対して憧れるのってもったいない。デザイナーになりたいとかじゃなくて、作りたいものがあるから結果デザイナーになるっていうのならわけるけど、カテゴリにとらわれるのはもったいないなとは思うけど…そこのところどうなんでしょう?ハレオさん。

椎谷氏:デザインはビジネスだよね。感覚だと思われてるけど、全く感覚的ではない。ビジネスだから。一方でアーティストは人生。何にもとらわれることがないから、自分のやりたいことを吐き出す。僕はそう思ってる。

自分のカテゴリや役割にとらわれるな

松林氏:自分の役割にカテゴリに囚われた瞬間、人の魅力って10分の1ぐらいになっちゃうと思う。自分の感性とやりたいことを突き詰めれば、レッテルなんて周りが勝手に貼ってくれるんですよ。すると名刺も会社もいらなくなる。そういうところに囚われてる現代はものすごく時代遅れ。僕がここに来ているのは、そういうものを全部剥がしたいから。自分が自分であるために人と触れ合う人間でありたい。

府川氏:僕も賛成ですね。なりたいものになればいいなと思いますね。

西村氏:それで言うと、皆さんグロービスとかチームラボとかトーマツとかネームバリューがあるところに所属されてて結構それって武器だと思うんですけど、私はそういうものをいったん取っ払いたくて会社つくりました。プロデューサーでもマーケターでもなんでもよくて、消費者もどうでもいい。まず自分が作りたいものを作ることによって市場ができると思ってチャレンジしています。

ワークショップ2回戦へ

質疑応答に一区切りついたところで、講師陣から「もっとネジを外せるはず」という言葉を受け、2回目のワークショップへ突入しました。

椎谷氏:普段、職場などでこれ言ったらまずいかもな~ってこと、あるでしょ。今日は言ってください。職場ではできなくても、今日はできるから。さっきのディスカッションでは言えなかったなあということを2回目で発言してください。

グループメンバーを変更し、お題はそのまま「ファーストフードの未来を変えるぶっ飛んだアイデアを考えよ」です。

 2回目のワークショップの様子
暑いくらいの熱気に包まれた会場では、メンバーが変更になったにも関わらず1回目より更に熱い議論が繰り広げられていました。
講師陣の言葉に刺激を受けたのか、お互いアイデアを遠慮せずに発散し合っている様子が見てとれます。

2回目のワークショップの様子

2回目の発表では「ファーストフード×オリンピック」「宇宙人にサンプリング(?)」「ポテトの替わりにIDチップを食べる(?)」「テーマパーク的ファーストフード(日替わりでテーマが変わる)」など、一見すると突拍子もないアイデアが次々に発表されました。

プレゼンの方法にも変化が生まれました。1回目ではグループの代表1人が話すだけでしたが、2回目は寸劇を交えたプレゼンを行うチームや、熱唱する方まで。
参加者の方たちの「~してはいけない」「こうでなければならない」といった固定概念が外れた瞬間だったのかもしれません。

大盛り上がりのままイベントは終了し、その後も賑やかな雰囲気のまま、交流会が続きました。

参加者の声

イベント終了後、参加者数名に今回参加しての感想を伺いました。

「普段、仕事でも会うことのない方々と一緒に交流できてよかったです」(会社代表)

「会社にいると、会社の文化に染まってしまうので、他業種の方の考え方やアイディアを聞けるのはとてもおもしろかった。次回も参加したい」(営業)

「年齢も仕事もバックグラウンドもバラバラの方と話をするだけでも刺激的なのに、一緒にアイディアを出しあって案を考えることは初めて。貴重な体験でした」(マーケティング担当者)

普通に仕事しているだけでは出会わない業種の方々との一風変わった交流から生まれた突飛な視点、アイディアを目の当たりにして、皆様大いに刺激を受けたようです。

府川氏:これは隠さないといけないんじゃないか、これはダメなんじゃないかと考えてしまうのは、ネジがついている状態。ネジをはずして発言しても、誰かが助けてくれるし、受け入れてくれるんです。だから新しいプロダクツが作られたり、プロジェクトが実行できると思うんです。はみだしたってOKなんです。

西村氏:今日のネジがはずれた感覚を、ぜひ持ち帰ってください。

まとめ

クラブミュージックを流し、お酒も飲むという一般的なセミナーやイベントとは大きくかけ離れた雰囲気のなか、「頭のネジを外す」という主旨のもと登壇者、参加者から様々な意見が飛び交いました。

登壇者の方達が共通して力強く言っていたことは「自分がつまらないと感じたことはするな」、「カテゴリにとらわれるな」というところです。
「こうしなければいけない」「こうあるべきだ」という「ネジ」をつけたまま生活していると、自分の素直な感覚を見失いがちになってしまいます。
そのような常識や既にある枠組みを一旦取り払って、自分の理想は、自分がやりたいことはなんなのかを徹底的に考えてみると自然と「ネジ」を外せるのかもしれません。

大企業でも簡単に経営破綻に陥ってしまう現代において、確かに肩書はほぼ意味をなさなくなってきました。
自分の所属する企業名や役職名がなくなっても世の中を渡っていけるという自信を持つこと、そして自信を持つために行動することが、これからの時代には必要なのかもしれません。

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