スマートファクトリーのメリット

工場内プロセスにおけるデジタルデータの活用により、以下のような効果が期待できます。

①品質の向上

####(1)不良率の低減
*従業員の作業内容(作業⼿順、作業結果など)をセンシング(センサーなどで計測・数値化)することで、作業内容を収集・把握できます。*ポカミスが発⽣した際には、すばやく従業員へ通知。また、過去のポカミスを分析することで、ポカミスが発⽣しやすい作業⼯程を特定できます。分析結果に基づいて、従業員を育成したり、設計を変更することで、ポカミスの発⽣を抑制し、不良率を削減・最⼩化できます。

(2)品質の安定化・ばらつきの低減

設備にセンサーを取り付けてモニタリングをします。これにより、加⼯⼨法など製品の品質データと、設備側の加⼯条件・設定値を収集・把握します。蓄積したデータを分析し、品質のばらつきの要因を特定できれば、加⼯誤差や加⼯性能の改善につながる加⼯条件・設定値をモデル化できます。

また、各従業員の作業状況(作業動線、作業時間、作業内容など)をセンシングし、データ収集する方法も想定できます。こうして収集したデータを分析し、作業のばらつきの要因を特定することで、作業の改善につながる作業条件をモデル化できます。

(3)設計品質の向上

出荷する製品にセンサーや通信機能を搭載することで、ユーザーの手元に届いてからの製品の使⽤状況や使⽤環境のデータを収集・把握できます。収集したデータと設計データとを関連付けて因果関係を明らかにすることで、品質・信頼性の向上につながる設計仕様・⽣産⽅法を分析。
この分析結果に基づいて、設計仕様・⽣産⽅法を修正・改善して最適化することで、製品の品質・信頼性向上につながります。

② コスト削減

(1)材料の使用量の削減

過去の設計事例の分析や、 解析・シミュレーションソフトなどによって、材料の軽量化や部品点数の削減につながる形状・構造等を知⾒として蓄積し、モデル化。設計改善モデルを構築できれば、材料の使⽤量を最⼩化できます。

(2)生産リソースの削減

「MES(製造実⾏システム)」 などのデータを利⽤します。作業プロセスの進捗状況や、ヒト(⼯数)、材料、 エネルギーの投⼊状況を収集・ 把握。 ⽣産の作業プロセスの進捗状況を踏まえて、ヒト(⼯数)、材料、エネルギーの予定投⼊量、予定⽣産量などを予測。この予測をもとに計画を修正・最適化することで、 投⼊するヒト(⼯数)、材料、 エネルギーを最⼩化できます。

(3)在庫削減

「MES(製造実⾏システム)」などのデータを利⽤することで、⽣産計画や⽣産実績データの⼊⼒・表⽰・確認が簡単になります。受注、⽣産、出荷の計画・ 実績データを連動させて分析することで、需給変動要因を明らかにしたり、需給を予測。予測に基づいて、調達した資材や、⽣産した製品の在庫が最⼩化となるよう、 ⽣産計画・出荷計画の作成を⾃動化・最適化できます。

(4)設備の管理・状況把握の省⼒化

設備にセンサーを取り付けてモニタリングをします。
設備の設置場所にいなくても、複数設備の稼働状況を、遠隔でリアルタイムに収集・監視。
設備に異常などが発⽣したときに、従業員への通知を⾃動化することで、監視・ 点検の管理⼯数を最⼩化できます。

③生産性の向上

(1)設備・ヒトの稼働率の向上

「MES(製造実⾏システム)」などのデータを利⽤し、 ⽣産ライン全体の設備の稼働・ヒトの作業の進捗状況を収集・把握できます。自動でデータ取得した稼働・進捗状況をもとに、各プロセスの完了予定時間を予測。⽣産ライン全体の⽣産完了予定時間が最短化されるよう、段取り替えをすることで、設備・ヒトの⾮稼動時間の最⼩化につながります。

(2)ヒトの作業の効率化、作業の削減・負担軽減

「モバイル端末」「スマートグラス」などを活⽤します。調達した資材や⽣産した製品の管理情報、 ⽣産情報、設備の稼動情報を迅速かつ簡易に⼊⼒・ 表⽰できます。作業の進捗状況に応じて、 手元のデバイスに必要な情報や作業指⽰を予測して表⽰。情報の⼊⼒・表⽰の⾃動化による作業の短時間化や、 適切な判断を⽀援し、作業プロセスを効率化できます。

また、設備にセンサーを取り付けたり、 ヒトの作業状況(作業動線、 作業時間、作業内容など)をセンシングすることで、稼働状況・作業状況を収集・把握します。収集したデータをロボットに学習させ、ヒトの⾏動を予測し、ロボットとヒトが協業できるようになれば、ヒトの作業効率を向上できます。

(3)設備の故障に伴う 稼動停⽌の削減

設備にセンサーを取り付けて、稼働状況を収集・監視。 集めたデータと設備異常とを関連付けて、設備の故障につながる兆候・条件を明らかにすることで、故障の発⽣時期を予測できます。
*この予測に基づき予防保全することで、故障の発⽣を抑制。*想定外の稼動停⽌時間を削減・ 最⼩化できます。

また、ヒトへのすばやい通知にもつながります。過去の故障事例を分析することで、正確な原因究明や適切な対策の⽴案につながります。

④製品化・量産化の期間短縮

(1)製品の開発・ 設計の⾃動化

設計事例をデータベースとして蓄積しておけば、過去の事例を容易に参照できるようになります。解析・シミュレーションソフトを利⽤すれば、構造などを解析できます。設計仕様を満たし、かつ、⽣産しやすい形状・構造等を知⾒としてモデル化。構築した設計改善モデルを⽤いて、製品設計を⾃動化することで、製品開発・設計期間を短縮できます。

(2)仕様変更への 対応の迅速化

「E-BOM(設計部品表)」や「M-BOM(製造部品表)」などを利⽤すれば、部品の詳細情報を簡単に表⽰・確認できます。E-BOMやM-BOMをデータ連携することで、開発、 設計、⽣産のデータを⼀元管理。もし仕様変更となった場合、影響範囲を事前に分析でき、仕様変更の対応時間を最⼩化できます。

(3)⽣産ラインの設計・ 構築の短縮化

「⽣産ラインシミュレーター」を利⽤し、パソコン上で⽣産ラインを設計。
⽣産ラインのレイアウト、⽣産能⼒、作業⼯程、搬送ルート、投資コストなどを事前に評価・検証できるようになります。⽣産現場へ実装することで、構築時の試⾏錯誤を削減。⽣産ライン 構築期間を短縮できます。

⑤⼈材不⾜・育成への対応

(1)多様な⼈材の活⽤

各従業員の作業熟練度、 知識、⾝体能⼒、使⽤⾔語などを、データベースとして蓄積。
各従業員の特性情報を利⽤できます。 ヘッドマウントディスプレイや、⾳声認識などのウェアラブルデバイス、 パワーアシストスーツ、⽣体センサーなどを活⽤し、ヒトの能⼒を拡⼤することで、特性が異なる多様な⼈材を活⽤できるようになります。

(2)技能の継承

熟練技能者の技能(段取り 調整⼒、状況判断⼒、 ⼿わざ、トラブル対応⼒など) をセンシングし、データベースとして蓄積します。収集したデータを分析し、 熟練技能者が優れている点を明らかにすることで、技能・ ノウハウ・知⾒を体系化。体系化した技能・ノウハウ・ 知⾒を国内外の拠点へ共有することで、技術継承し、ヒトの能⼒を向上できます。また、それらをスマートロボットに学習させることで、ヒトを代替できるようになります。

⑥新たな付加価値の提供・提供価値の向上

(1)個別ニーズに合わせた多品種の製品の提供

各製品に共通する部分を定義して、製品の構造、 設計・⽣産プロセス、加⼯基準などを共通化。設備・ヒトへの作業指⽰・ 部品供給や段取り替えを⾃動化・効率化することで、多品種の製品をフレキシブルに⽣産できるようになります。

(2)顧客ニーズに合わせたオン デマンドな製品・ サービスの提供

「ERP(統合業務管理システム)」「MES(製造実⾏システム)」「SCM(サプライチェーン マネジメントシステム)」などのデータを活用します。受注、 調達、⽣産、物流、販売 などの計画・実績データを、 簡単に表⽰・確認。そのデータを分析することで、需要を予測できます。社内関係部⾨やサプライチェーン全体で、 ⽣産計画・物流計画を最適化することで、顧客ニーズに合わせてオンデマンドに製品・サービスを提供できるようになります。

(3)提供可能な加⼯技術の拡⼤

「MES(製造実⾏システム) 」などのデータを活用します。⽣産の進捗状況を収集・ 把握し、共同受注を⾏う企業間で データ連携。各企業における加⼯時間・ 加⼯ロット単位などの違いを考慮して、全体で⽣産計画・物流計画などを最適化することで、共同受注⽣産体制を構築し、様々な加⼯技術を提供できるようになります。

(4)新たな製品を先回りした企画・提案

出荷する製品にセンサーや通信機能を搭載します。その後の製品の使⽤状況や、使⽤環境のデータを収集・把握できるようになります。このデータを分析し、 ユーザを⾏動観察する (⼈間⼯学、⼼理学などの観点から分析する)ことで、 ⾮顕在ニーズを把握。先回りして製品・機能・サービスを企画・提案することも可能になります。

(5)製品に関連した新たな サービスの提供

出荷後の製品の使用状況をデータで把握することは、製品改善につながるインサイトや、別⽤途への製品利用実態など、新たなインサイトを獲得できます。製品に関連した新たなサービス・アフター サービスの提供につながっていきます。

(6)製品性能 の最⼤化・ カスタマイズ化

出荷する製品にセンサー・通信機能を搭載することで、製品の使⽤状況、 使⽤環境のデータ、製品の制御データを収集・把握できます。このデータを分析すれば、ユーザの手元での製品使⽤⽅法の傾向を把握できます。 使⽤⽅法の傾向に合わせて、製品の制御設定値を最適化することで、製品の性能を最⼤化・カスタマイズ化できます。

(7)製品への新規機能の追加

製品に通信機能を搭載し、この通信機能を通じてソフトウェアを遠隔アップデートすることで、製品に新規機能を追加できるようになります。

参考:「 スマートファクトリーロードマップ 」〜 第4次産業⾰命に対応したものづくりの実現に向けて 〜|経済産業省 中部経済産業局